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クルミ 53 朝太郎

前回

キナの好意を得、テレとトチの籠に乗り込んだお順だったが、申し訳無さに腹痛を偽り、姿を隠す。


はじまり、はじまり



それから一月程、お順はようやく粒傘村の入り口に立っていた。

一旦は行く気になったが立ち止まったり、進んだりと逡巡(しゅんじゅん)する気持ちが歩を鈍らせる。それでも最後にはここに来るしかない。鈍かった足取りも近づくにつれ覚悟が決まる。

体毛は益々薄汚く汚れ、長旅がけっして楽でなかった事を足に巻いてある汚い包帯が物語っている。足の豆でも潰したのだろう、少し右足を引き摺っていた。姿はそんな有様だがお順の目は輝いている。

「やっと、やっと来たよ、、、」

感慨深げに村の名前が書いてある棒杭を見て、そのままぼーっと立ち竦んでいた。今にも降り出そうな曇空が、これからの出来事を予感させる...一歩踏み出すごとに足が重くなっていく。

『やっと来たのに・・・』引き返したくなる気持ちに『帰れ!帰れ!』と言う弱気な自分...それを叱りつける自分がいた。それでも『前に踏み出すしか己にはない!』と鼓舞(こぶ)して歩くが、いつしか逡巡している間に、道端に座り込んでしまった。

「どうしなすった?」

振り向くと熊がいた。

「え?あ、あの足が痛くて・・」

「そりゃ、難儀だな!あんた旅の人かい?」

「はい」

「そしたら旅籠があるから其処に連れて行ってやるよ!安いけど良い旅籠だよ」

「でも、ご迷惑じゃ?」

「な~あに気にするなよ、俺も其処で厄介になるのさ」

親切な熊の名前は【朝太郎】と云い、熊族の本業というべき渡大工をしていると云う。朝太郎は気持ちのいい熊で何くれとなく親切にしてくれる。礼を言い、部屋に下がるとホっとした。宿代を節約してきたので布団に寝るのは久しぶり、それだけで嬉しい。

風呂に入ると夕飯も摂らずに眠る。夜半にお腹が空き、台所に何か食べ物があるかと思い、部屋を出る。嬉しい事に握り飯があった。もそもそ食べていると足音が聞こえる。

お順は行灯の火を吹き消すと咄嗟(とっさ)に隠れた!盗み喰いしてるのを咎(とが)められでもしたら恥ずかしかったからだ。来たのは朝太郎だ、何故か頬っ被り(ほっかむり)をしていてる。

会った時とは全く様子が違い、キョロキョロして怪しい。見られているのも知らず、戸をこそこそ開け外に出て行く。お順に好奇心が沸いた!むくむく頭をもたげた好奇心には勝てない。たまらずに後を付ける。

体に似合わず俊敏(しゅんびん)で素早い!見失わない様にするのが精一杯だ。商店街の通りから横道に入る。急いで追付くのと朝太郎が板塀を乗り越えたのが同時だった。

あっ!

お順は口に手をやり、板塀のそばに行く。すると裏木戸が中から開く。顏を出したのが朝太郎だった!その場に居たお順と目が合う。

あ゙っ!

お順はどこにあったというのか?凄い馬鹿力で朝太郎の鼻を掴むと引きずり出す。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
asatarou.jpg


ぶひひひぃいーーーっ!


お黙りっ!いいからこっちにお出でな!」


容赦なく鼻を引っ張るものだから、朝太郎は手も足も出ない。少しでも離そうとすると余計に引っ張られる。


ぶひひぃーっひひーっ!


「いいのかい?そんなに大声出して!あたいはいいけど、お前は怪しいよッ」

ひッ」

お順は手頃な空き地を見つけるとそこまで連れて行く。

「いいかい?あたいが離したからって逃げたら承知しないよ!あたいが大声上げてやるよ。わかったら返事しな!」

「ぶひ」

「よし、大人しくしてなよ!」

観念したのか、大人しい。見事に赤く腫れた鼻を擦っている。

「あんた、もしやして墨吐きの源吉さんを知ってないかい?」

「えっ!?兄貴をご存知で?」

「そうか、あんたあの朝太郎さんなんだね」

「あの、、、兄貴はどうされてるんですか?捕まったきりで・・・もう魂沈めされちまいましたか?」

お順は源吉の話しをした。

「そうだったんですかい?あっしの家に寄る前にそんな事がね、、、そんじゃ、兄貴は盗人から足をお洗いなすったんで?」

「源吉さんはとてもいい目をされてたよ。どんなに辛くてもきっと桑師(くわし)になるって」

「兄貴は一本気だから羨ましいですよ。でも何で、あんたが兄貴を知っているんで?」

お順は一番言いたくない事を訊かれる。

「・・・あたしも裏卍(うらまんじ)にいたのよ」

「ぇえーーッ!あんたが!?」

お順は長い話しをする。己を振り返りながら、、、それはお順にとっては辛くもあったが結果的には良かったのかも知れない。生き様を語る事で、罪深さを改めて知ることになり、これからの償いが如何に過酷であろうとも受け止める覚悟が出来た。

泣きながら話すお順、飾る事も嘘をつく事もない、今までの全てをぶちまける。朝太郎は最初『へー』とか『うー』とか言っていたがその内に黙り込んでしまう。

「ふふ、あんまりなもので声も出ないだろう?あたいも自分で話していてイヤになったよ。だけど、本当に本当なのさ、、、あたいが止めたのは只、盗みをするのを止めた分けじゃない。あの店はコノミと富吉さんの店なんだよ。あたいが死んでも守らなけりゃいけない店なのさ」

「あんたの娘さんの?・・・」






つづく








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むふ・・・姐さん、こんばんは♪

朝太郎、盗人熊でしたかぃ。

「ぶひひぃーっひひーっ!」で、思いっきり笑わせてもらいました。
ここは、楽しいやねぇ!
鼻を掴む、シッポじゃなくても、効果あるんだねぇ(笑)
いいこと聞いたから、今度姫で試してみよう(爆)

そうか、コノミの店に盗みに入ろうとしたのか。
そりゃ、お順は身を挺しても止めに入らねばね。
それで底力を振り絞ったのか・・・もう立派に母親じゃん。
お順、すこ~しだけど、一歩前に進んだね。

さてさて、今から来週はどうなるんだろうと、楽しみじゃわ。
つづく・・・・・はいはい、判ってますってv-392

そりゃあ守らなきゃなあ。

しかしお順さん……。

火事場の馬鹿力が出るのはいいけど、相手が刃物持っていたら、逆に……だよ。

望みがあるのなら命を粗末にしてはだめだよ。

ひとつ間違えれば娘にわびるどころか、顔を合わせることすらできなくなるところだよ……

おはようございます~~♪
お順はついにコノミちゃんのすぐ傍まできたのですね・・よかった。
コノミちゃんの家を死んでも守らなきゃいけない家と・・・
もうしっかり母親になりましたね。
それにしても今回の挿絵 鼻が真っ赤になって痛そう。
お順て凄い力持ち!(。^p〇q^。)プッ

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え〜すごいつながり。びっくりしてしまいました。
朝太郎さんはお順さんに会えたことで人生が
かわるかも。いい熊さんになってね。
お順さんも、心がキッパリきまったことと思います。
次こそ、一歩を・・・

この出会いも、貴重な出会いですね。
なんと、あの源吉の弟子?
そしてコノミのお店の主だったとは。
このことが、何か今後の運命を変えるのでしょうか。
こんなに心を入れ替えたお順、応援しないわけにはいきませんね。

まだまだお順の心の中では、葛藤があるんですね。
でもあれだけの長い間ひねくれていたんですから当然でしょう。
朝太郎との出会いが、お順の決意を強める結果になったのは、
救われますよね。
何事もそう簡単には運ばないのが世の中ですから・・・。
これからのお順に期待するしかないですね。

挿絵の中の朝太郎はホント痛々しいですね。お順の強そうな眼に
怖いくらいの鋭さを感じました。

おおおっ 何の因果か、
コノミちゃんに会う前に こんな事件に出会うとは!

でも こういう時は
わがままだったり はねっかえりだったりした者のほうが
うまく相手を抑える技術があるなぁって
思ったりする。
その点 お順は適役だったんじゃないだろうか・・・

もしかしたらこの先
子供たちに償いをしたら
お蜜さまのお使いっていうお仕事もできるんじゃないかなぁ。
んふふっ(^m^)先々の就職をあっせんしてみました(笑)

おや、おや、おや・・・。
なんとまぁ、不思議な巡り合わせ・・・。
って言うか、朝太郎がお順と出会ってしまったのは、
運命ですかね〜?
盗っ人の朝太郎も熊生の転機なのかな?
お順も、娘夫婦の至近距離に入ったみたいだし・・・。
(^_^)

鼻いたそー。耳も引っ張ったら痛いけど、鼻も痛いだろうなぁ。しかし、一見、人のよさそうな朝太郎、なんとも怪しい奴だったんですね。よりに、よってコノミの家に入り込みなんて。それを見つけたのが、お順でなんだか、色々つながってますね。今のお順をみれば、昔のお順とは全然違いますよね。さて、この後どうなるのかな?もう、娘との再開は、目の前です。朝太郎がからんで、どう話が続くのか楽しみです。

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llama姉さん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

でした。

よく見ると舌も掴んでいるのですよ。
ブヒィィィなんて言葉も出ないのかもしれない。
ニャハハハ
少しは楽しいこともないと重いものね。

全くその通りです。
いつしか親になり母になっていたのでしょうか。
一月の間に語られない物語があったのかもしれません。

ぷぷ
つづくを書くのも後二回。
寂しいような・・・・
v-16

ポール、いらっしゃ~い!

こんにちはー

何があっても守らなきゃならないですね。

朝太郎はどうしても出したいキャラでした。
源吉と会った意味、同じように罪を背負う友達としてだけでなく
これからも支えになって欲しいと思いました。

朝太郎を威嚇できたのも、それだけの迫力があったから
我が身の事を考えているようでは、まだ先ということ。
そうじゃないから、出来たことでしょう。
v-16

りんだちゃん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

ですね。
迷う足はとても重く、一歩が中々出なかったでしょう。
それでも来た。
この事が、もう一つの後押しになるでしょう。

よく見ると舌を掴んでいるんですよ。
お順も凄いことをします。
ぷぷ
v-389

Mieさん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

広いようで狭いですね。

その通りだと思います。
朝太郎のキャラは源吉とお順の間にいてもいいかなと思いました。
これから歩む道に友だちがいたらいい。
何もないのは寂しいものね。

あと一歩です。
v-391

limeさん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

ですね。
弟子というか子分ですね。
朝太郎は良いキャラでございます。

主ではなく、盗人です。
盗人がお店に入るときの鉄則、まず逃げ道の確保でございます。
なので、朝太郎はまず一番に裏木戸を開けた。
そういうことです。

お順の友達になれるといいですね。
v-389

園主さん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

ですね。
心の葛藤があったとしても
それは逃げたい気持ちと折り合いをつける事だったと思います。
今更、悪いことをしたのはわかりきっている。
詫びて許されなければ、自分の来世の望みも叶わない。
結局は自分の為になることです。
でも、今回のことで後押しをされることでしょう。

やっぱり娘は可愛いのでしょう。
母親の迫力でしょうか。
よく見ると舌も掴んでいるんですよ。
ぷぷ
v-410

園長さん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

必要なことでした。
朝太郎を出演させたかったんですねぇ。
ぷぷ

全くですね。
朝太郎も源吉の消息を知ることが出来て嬉しかったでしょう。
元々、朝太郎はそんなに悪い奴じゃない。
お順がもしやして更生させるかもしれません。
そんな未来も含めて

お順の職業斡旋、ありがとうござーーる。
お蜜もびっくりな狐ですよね。
きっと、自分の適職は本人が一番わかっているかも・・・
v-391

きらたるちゃん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

はい、運命ですね。
朝太郎がこのままでも宜しくない。
気の良い奴だけに真っ当になるべきです。
方や、お順には後押しが必要でした。

もう目の前ですね。
戸は開いている、ノックだけです。
v-391

むらななちゃん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

痛いだろうね。
よく見ると舌も引っ張っているんだよ。
けけ

これからのお順には友達も必要です。
源吉共々、相応しいかと思いました。

むらななちゃんも気が付きましたか
そうなのです、全然、違っている。
何より大切なことです。
生まれ変わることは出来なくても
生き方は変えられる。
それが今のお順ですね。
v-410

鍵コメMさん、いらっしゃ〜い!

こんにちはー

こういうことになりました。
いつも嬉しいお言葉、ありがとにゃんです。

ブヒィィィしか思い浮かびませんでした。
へへ
v-16

こんにちは~。

汚い身なりと反対にお順の心は美しくなっていってるのですね。

早くコノミに会って心から謝って心がつながると良いね。

熊の朝太郎と出会ったのも何かの縁なのでしょうね。
兄貴分の源吉のことを語り、自分のして来たことを語ることに
よって朝太郎も変わると良いな。

こんばんは~(^0^*)ノ

まさか、そんなことに!!!
それにしても事前にとっ捕まえる事が出来て
本当に良かったこと・・・
ああ!!そっか!!
あの雪の晩に源吉が火の始末もせずに泊まりに行ったヤサの
朝太郎か・・・

これで朝太郎も改心できるのかな??
お順は無事に、コノミ夫婦に逢えるのかな・・・?
続きが待ち遠しいです(^^;)

うにゃままちゃん、いらっしゃ~い!

こんばんはー

ですね。

♪ボロはぁ着ててぇも心はぁ錦ィ〜〜

この言葉を言う時、
水前寺清子の歌い方で言ってしまう・・・
ドラマの「ありがとう」良かったなぁ〜
おっと脱線しまくり

この縁は生涯の友になった源吉が引きあわせたものでしょう。
お順のように変われますとも!
v-392

かじママちゃん、いらっしゃ~い!

こんばんはー

全くでございます。
その通りーーーー!
繋がっていました。
改心した源吉。
きっと朝太郎の行く末を案じていたでしょう。
その思いが引きあわせたのだと思います。

きっとね。

貝が合体できない・・・
かじママちゃんみたいに可愛く出来ない。
不細工な顔にはなるのに・・・
v-16
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 のくにぴゆう

Author: のくにぴゆう
猫国の住民達の物語を書いています。
作者はコメを食べて生きてます。
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