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クルミ 48 知ってしまった

前回

源吉の話に何かを感じるのだろうか?


はじまり、はじまり



源吉は大声を上げ、泣いて泣いて泣き抜いた。そして、よれよれしながら立つとお順が差し出す手を振り払い、ふらふらと花畑の中をどこまでも歩いて行く。

お順はぼーっとしてしまった...源吉の話しを考えたり、信竹の言葉を思い出す。ここは罪人が万分の一でも罪滅ぼしする場所...そして源吉の『時間がねえんだよ』と云った言葉。

もしかしたら自分が看護してる爺狐は関わりあいの在るものなのか?名前さえ訊いていなかった。急いで女郎花の部屋に取って返す、ちょうど爺狐は目が覚めていた。吸い口を飲ませてから、初めて名前を訊く。

「今更、尋ねるのも何なんだけど、名前は何て云うのさ」

「ああそうでしたね。あたしは唐(から)カンという者です、あなたは?」

その名前を聞くと真っ青になり、部屋を大急ぎで出て行く。忘れようとしても忘れられない名前だ。喉に引っ掛かった骨のように・・

その昔、母とお順を引き取ってくれた篤志家の狐。長じるまで世話になりながら何の恩返しもせず、挙げ句の果て、母との仲を邪推し、罵り、銭を盗んで出奔した相手だった。

でも唐カンはお大尽だった筈。どうしてこんな所に?それに母親は?、、、考えれば、考える程分からなくなった...何をどうすればいいのかもわからずに歩く。ふと気付くと信竹が目の前にいる。

「唐カンの具合はどうかな?」

「あッ、あの・・・唐カンって、あの唐カンなんですか?」

「他に唐カンはおらぬ。お前の償いを受け止めてもらえるよう、尽くすしかないわな」

「あの、、、ご存知なのですか?」

「知らぬでどうする、その為にここはある」

「あの・・・」

「唐カンより聞く事よ」

信竹はそう云うと去って行く。お順はとにかく話しを聞いてみようと思い直し、部屋に戻る。

「どうしたんですか?突然部屋を出られて」

「ああ、すまなかったよ、気にしないでおくれよ」

「そうですか、それじゃ少し休みます」

唐カンは余程、具合が悪いのであろう。顔色が青い。その日は到頭、訊かずじまい、頭の整理ができてはいなかったからだと言分けをする。

翌日になり、又その翌日になっても訊けない。逡巡をしている時に部屋の戸を叩く者がいた。出てみると源吉が立っている。

「どうも。俺はここを出て行く事になったんでそれで挨拶しとこうと思ってね」

「それはご丁寧に。でも一体どこへ?」

「へへ、これ見ておくんなよ」

源吉が差し出したのは何の飾りもない小箱だ。古びてはいたが作りが確(しっか)りしている、何よりも木目が美しい。

「すてきな小箱だね」

「そうだろう!これはこ助さんがこさえたもんなんだよ。かみさんへお作りなすった物なんだが、今じゃたった一つの形見だよ。俺にって頂いたんだ」

「いい物貰ったね」

「ああ。これを見ていると、こ助さんの丁寧な仕事の一端でもわかるよ」

「わかるようなことをお言いだね」

「へへ、俺さあ、指物師になろうと思ってるんだ。今からじゃ遅えけど何事もやる気だろ?
信竹様が口聞いてくれて、職人の学校に入れてもらえるようになったんだよ。こ助さんが憧れていた桑師(くわし)になれるように頑張るんだ」

「何だい、桑師って?」

「指物師の中でも桑って堅い木材を扱う特別なお方だよ。生半の者には出来ねえそうだ。俺もいつかはそんなお方に成れるように頑張るんだよ」

「へー、頑張りなよね!」

「ああ。それでお前さんはよ、訊けたのかよ?」

「・・・」

しっかりしろよ!これだけは言っといてやるよ。こちらに来る御病人さんは、間違いなく良いお方達なんだ!俺達みてえにあら探しや裏切り、深読みなんてすることはねえんだ。

そんな正直者だから貧乏くじをお引きなすったんだよ。素直に訊けば、包み隠さずお答え下さるよ。とにかく言ってみな、愚図愚図してる暇はねえんだよ!」

「う、うん、ありがとう」

「へへ、少しは素直になったな。じゃあな!」

源吉はそうして病院から去って行った。その後の源吉は血の滲むような苦労の末、学校を卒業すると有名な桑師に弟子入りし、修業を重ね、到頭、立派な桑師となる。お順は源吉に後押しされるよう、思い切って唐カンに訊く事にした。

「今日は気分良さそうだね」

「ええ」

「中庭に行ってみようよ。鈴蘭百合が綺麗だよ」

唐カンは初めて中庭に連れて来られ、酷く感激したようだった。

わーー!なんて素晴らしい事でしょう!天国みたいですよ。お由(よし)さんに見せたかったなあ」

【お由】とは紛れもないお順の母親の名前だ。お順はとぼけて訊いてみる。

「お由さんってどなたです?」

「あたしの終生変わらぬ友達でもあり、同士でもあり、好いたお方です」

「おかみさんですか?」

「いいえ、結局、添えませんでした。お嬢さんの許しを貰えなかったのでね」

「え?・・・でも、一緒に暮らしていたのでしょう?」

「家は一緒でも、あの方はまるで下僕のようにあたしに使えて下さいました。あのくらいの事を死ぬまで恩に着て、、、」

「あの、、、それじゃ、亡くなったんですか!?」

「はい、ついこないだに、、、到頭、一人娘と会えず終いでした」

「・・・・」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
shittuteshimsttuta.jpg






つづく



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非公開コメント

やはり、自分が迷惑をかけた相手だったようですね。
でもお順をそんなに恨んでいるようでもないし。
あんな卑劣な母親だったお順も、子供だった時代があるんですよね。
それを思い出すことで、何かに気づくのでしょうか。
あんなひどい事をした女ですから、ちょっとやそっとでは反省しないかもしれないけど。
ともかく、罪人に罪を償う機会を与えられるこの場所は、無意味に罰を与えるよりも、効果的な裁きの場所ですね。

前回にもまして深いお話に感動しました。
お順の心が次第に揺れ動いて行くさまが感じ取れます。
それに最後までお順に改心させようと努力する源吉の
一途さにも感心しました。
お順も自分の行いが悪い事だとは分かっていたんですね。
だから唐カンさんにも怖くて聞けなかったんでしょう。
という事はまだ良心のかけらは残っていたんですね。
ようやくお順も自分のやったことを見つめ直し、犯した
過ちに気付き、心から反省の涙を流す日も近いような気が
します。そうなって欲しいですね。
今回の挿絵も雰囲気があって本当にきれいだと思います。

こんにちは。

お順さんの知っている過去、本当の過去、
そして母が亡くなったこと・・・。
あまりのことで自分でも整理がつきません。

もっと人を信じ、聞く耳を持っていたら
違う人生が待っていたかもしれませんね。
そして、それに関わる周りの人々も。

源吉さん、立派になられましたね。

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こんばんは。

ほう、やはりお順が迷惑をかけた人?でしたか。
母親との間を勘ぐり、あげくの果てにお金を盗んで逃げたと・・・。
その事で母は一生下僕のように唐カンに尽くして亡くなり、唐カンは娘の
許可を得られないからと一緒になるのを諦め・・。

さあ、これからですね。お順が心を入れ替え、どれだけ心から
看病出来るのか。

源吉は気持ちを改め、心から詫びつつ看病し、苦労しながら
立派な桑師になったのですね。

きっとお順も今度こそ生まれ変わるのでしょう。


なんという巡り合わせなんでしょうね。でも、お順の気持ちもわからないではないかな。多感な時に、母親に恋人らしき人ができたら、自分は邪魔者だって思うかもしれないです。たぶん、2度と会うことはないって、お順も思ってたでしょうね。しかし、お大尽だったのに、どうしてここに来たんでしょう?お順の母親もなくなってるんですね。もし、お順が改心できるとしたら、会わせてあげたかったかも。

桑師、初めて聞きました。
秩父は養蚕が盛んだったので
そこらじゅうに昔 葉を刈った桑の木が残ってるの。
小さい木でも根が丈夫で なかなか抜けないんだって。
そのくらいだから 丈夫な材が出来るんだろうね~

実は甘くて食べられるし
葉は蚕を育て 薬にもなり 幹は固い材になる。
桑の木というのは宝物なんだなぁ。
源吉は そんな宝を扱う職人さんになったんだね。
元が半端者でも 立派になれるんだっていうのは
希望の光だね。
お順も どうしようもないように見えるお順も
そんな道を歩いていかれるのかな。。。

この残酷なまでの真実に、お順さんは真人間に戻れるのか、はらはらします。

たしかに、ここが最後の試練ですね。

ここで失敗したら、お順さんはもう二度とチャンスがないでしょう。

親としてはバカで、世渡りとしては悪辣で、根性が曲がっていて救いようがない。

そういうやつほど往生に近い、と親鸞聖人はおっしゃっていたような。

裏を返せば、取り澄ましたようなうわっつらの偽善を、このお順さんはなにひとつやってこなかった、ということで、ある意味わたしなんかよりはよっぽど正直であります。

そうか、だから、魂沈めではなくここに連れてこられたのか。

いろいろと考えさせられました。

やっぱりあなたは救われないとダメだ!

ああ

源吉っつあんは、
おかげで改心して素晴らしい生涯を生きられたんだねえ・・・

お順も段々マシになってきているよう・・・・・
恩人の唐カンさんに少しでも恩が返せるように
頑張って欲しいね・・・・・・

お母さんとは遂に理解しあえなかったのね・・・
辛いなあ~~・・・


お順の独り合点なふるまいが、
唐カンと自分の母親の二人の生涯を
狂わせてしまったのですね。
本当は、自分のしたことに少しでも罪の意識があったから、
事実を知ってしまうのが怖かったのかな?
んー、どうしたら、償えるのか・・・。

あぁ…やっぱりね~
お順本人に何かが起きるのでなければ
唐カンさんしかいないかなと思ってましたが…
何故、この場にいる羽目になったのでしょうね。
お順が家出の際に盗んだお金が原因になったとか…

若気の至りで親から逃げただけなら、我が子にこんなひどい事をしないはず。
お順の性格は生まれつきとしか思えません。
何かに心動かされて狐柄が変わるようには、とても見えませんが
そのお順をここに置くという事は、何かお順に立ち直る見込みがあるのでしょうね。
クルミ達のためでしょうかしらね。

こんばんは^^

お由はきっとお順を心配しながら亡くなったんだろうね。

お順は今まで、自分のことが何よりも一番で周りにいるもの達の事など

考えたこともなかったのでしょうね。

自分の欲のために利用するだけ、それが我が子でも同様だったのだから

尚のこと罪は深いですね。

お順の生い立ちが気になります。

源吉は立派な職人になってよかった^^


晴れませんな~

limeさん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

唐カンにすれば恨むより、認めて欲しかった。
それだけなんだと思います。
唐カンもまた、良い狐なんだと思います。

お順は罪人として、看護をさせているわけではありません。
自分が後ろ足で砂をかけた相手から
どのような狐生を生きてきたかを聞かせるために
茂吉が用意をしたと云えます。

このままでは、お順は周りを不幸にしたままです。
それは許されないことです。

静かな場所で、独り、深く内省することも大切なことです。
v-391

園主さん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

ありがとうございます。

源吉もシンパシーを感じたのでしょうね。
お順に良い所が在るとするならば、美しい柄でしょうかね。
美しい柄は七難隠すそうです。

勝手人生始まりの第一歩が、唐カンとお由への砂かけですね。
忘れようとしても忘れられないでしょう。
もう逃げる場所はありません。
聞くしかないですね。
次回はもっと耳が痛くなることでしょう。

遠近感が結構、気に入っています。
いつも褒めて頂いてお恥ずかしい。
v-402

Mieさん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

ですね。
唐カンから聞く母の物語は耳が痛いばかりでしょう。
それでも聞かなくてはなりません。
どこにも逃げ場所はありません。
今までは逃げてしまえば、
知らんぷりできたけど
今回ばかりはそうはいきません。

本当にそうですよね。

源吉も努力が報われました。
v-410

鍵コメMさん、いらっしゃ〜い!

こんにちはー

私のほうが我儘させてもらってます。
なんか、悪くて仕方なかったので
気が晴れました。
始めからこうすれば良かった。
へへ

そういう方も居ますよね。
疲れますね。

自分が邪険にした唐カン
本人が語る物語は冷静には聞けないでしょう。
v-390

うにゃままちゃん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

ですね。
お由はとても綺麗な心の持ち主でした。
それだけにお順のしたことは衝撃だったでしょう。

さて、それが許されるか
次回はお順にはキツイでしよう。

二つ名を名乗っていたくらいですから
ある意味、根性があったのだと思います。
今では押しも押されぬ桑師です。

これが最後のチャンスですね。
v-391

むらななちゃん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

恋人だと言い切った事は、母親を貶めていたことになります。
お由はそんな狐ではありません。

お由は働くことに一生懸命だったし、
其の姿を見せることで
怠け者で遊び癖のあるお順が
わかってくれると思っていたのかもしれない。
それが何処で糸をもつれたのか
陰日向なく働く姿に惚れたのが唐カン。
これ見よがしに働いてると邪推したのが怠け者のお順。
見方によってこうも違う。

お順は本当に反省すべきです。
v-391

園長さん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

父親から昔、聞かされました。
今頃になって、話の断片が蘇ってくる。
不思議なことです。
銘木の話は面白かったです。

桑って枝はとっても柔軟なのに面白いですよね。
秩父はそうだったのですか。
そう言えば、父がよく食べる人を見て「御蚕(おこ)様みたいだ」
なんて言ってましたよ。
蚕ってよく食べるから、桑を採るのが大変だったそうですよね。
山で一度だけ、天蚕の繭を見つけたことがあります。
薄緑で美しかったです。
園長さんも見たことあるかな?

源吉はこ助が叶えられなかった夢を必死の努力で掴みました。
こ助家族もあの世で喜んでいると思います。

そうなるべきなんですけどね。
v-390

ポール、いらっしゃ~い!

こんにちはー

次回では、唐カンの物語を聞くことになります。
お順には衝撃でしょうね。
でも、受け止めるしかない。
どこにも逃げ場所はないのだから

まさに往生するしかないですね。
ぷぷ

欲に正直でしたね
我欲の為なら何でもする。
店を小奇麗に改装したいから、コノミを売る。
分かりやすいですね。

我を通すのもコレまでということです。
v-391

かじママちゃん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

魂納めの宮で役人に褒めてもらえますね。

まだまだです。
後悔をするとしたら
唐カンの物語を聞いてからですね。

お由は本当に残念でした。
苦労の多いい、幸薄い狐生でしたが愛する唐カンに看取られ逝きました。
そして、彼女は一生懸命に生きたことで
お順に何かを残せると思います。
v-391

きらたるちゃん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

ですね。
それも今になれば運命だったとしか
言い様がないですけどね。
それにしてもお順は馬鹿ですよ。

次回では其の真実と向き合うことになります。
逃げ場はありません。
誰もアドバイスもしません。
独りです。
どうするのでしょうかね。
v-390

ごんばさん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

大当たりですね。
唐カンも順調な狐生ではなかったようです。
でも、彼の側にはお由がいてくれた。
それだけでも、幸せだったといえます。

そうですね。
生まれつきの阿呆ですね。
幸せの価値を銭でしか判断できず、
欲の向くまま、気の向くまま
他者を傷つけ、知らんぷり
それではなりませんね。
次回、唐カンから聞く物語で
ようやく、気がつくのかもしれません。

其の通りですね
ぷぷ
v-410

どーちん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

ですね。
情愛深き母でした。
そして、心根の真っ直ぐな正直者でした。
こんな素晴らしい母親を手本にしなかった
大馬鹿者ですね。

次回、唐カンが話す物語に衝撃を受けることでしょう。
どんなに辛い真実でも受け止めなければ
先には進めないです。

今日もポソポソしてますがな。
明日も大雨らしい。
全く、体まで湿気るよ。
除湿機、掛けっぱなしだわ。
v-16

こんばんは~~♪
お順と唐カンの関係にはびっくりです。
お順は母親を手本にしないで どうしてこんな性格になってしまったのでしょう?
これからの唐カンの話の中で少しはわかるのかしら。
今回の挿絵もとっても綺麗。
黄色のお花は何なのでしょう。
アクセントになってて素敵です。

りんだちゃん、いらっしゃ~い!

こんばんはー

びっくりでしたか。
へへ
どうしてですかね。
母の背を見なかったとしか、言えませんね。
汗水流して働く母は、働くことでお順に教えていたに違いないのにね。
馬鹿な娘ですね。

ありがとうございます。
黄色いのはね
こちらで言う猫じゃらしです。
狐の尾のようにフカフカで、子供達がこれで遊ぶそうです。
ニャンてね。
ぷぷ
v-398
プロフィール

 のくにぴゆう

Author: のくにぴゆう
猫国の住民達の物語を書いています。
作者はコメを食べて生きてます。
コメくださ~~い!
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