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クルミ 46 源吉とお順

前回

嫌だと言っても重病人の世話をさせられるお順。


はじまり、はじまり



お順は仕方なく部屋に戻る。折角ものを尋ねているのに、何て不親切なんだろうと腹が立って仕方ない。そのままふて寝しようと畳に横になってみたが、腹が空いて来た。

「ちょいと爺さん!食事はどうなっているんだい?」

「あたしはよく知りませんが、お昼にはいつもお粥を頂いています」

「違うよ、どこで食事を貰いに行くんだよッ、あんたのはわかるけどあたいのだよ」

「さあ、、、それは...げほげほっ」

「ああー、たまんないよッ!仕方ないや信竹に訊きに行くよ」

迷いながらも何とか信竹の居る部屋に辿り着く、中腹で尋ねると信竹は先程より一層、冷たく言い放つ。

「お前は一体何様のつもりよ?ここは罪人が万分の一の罪滅ぼしの為にある場所。お前は部屋にある帳面を見たか?部屋の帳面に決まり事が事細かく書いてあるわ!それでも尚、分からぬ事を尋ねるのはわかるが、そんなこともしていない、、、呆れたものよ、
下がるがいいわ

取りつく島もなかった。お順はガス病院と全く違う事を沁みじみ感じる。ガス病院では不貞腐れていてもレレ達が何やかんやと声を掛けてくれた...

今思えば親切に何でも教えてくれた。何よりも明るかった。笑い声がいつもしているような病院だったが、ここはまるで違う。何かが張り詰め、空気まで違う気がする。

すごすご部屋に戻り、帳面を探すと確かに畳の上に置いてある。古びている帳面には院内の地図も時間割も何もかも書いてあった。此の部屋は女郎花(おみなえし)という名前らしい。

其れから二週間余り、病人とほとんど話す事もなく淡々と仕事をこなしていた。病人は手間も懸からずに至極大人しく、食事をさせ寝かせると手持ち無沙汰になる。

ふと『あの鈴蘭百合の花畑に行ってみよう』と思った。廊下を歩いても誰とも会わない、相変わらず静か過ぎてもの悲しい。花畑が近づいてくると堪らなく良い薫りが漂ってくる。

腹立ち紛れで中庭を通った時は、薫りにも気付かなかった...考えれば勝手なものだ。中庭と云っても広く、どこまでも花畑が続いているように思えた。どんどん歩いて行くと先の方に誰か居る。座り込んでいるようで 、どうかしたのかと思って急いで駆け寄る。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
genkichiojun.jpg

「どうしたんだい?加減が悪いのかい?」

声をかけたのを後悔した、、、振り向いたのはあの不親切な猫だった。どうやら嗚咽を漏らしていたようだ。涙を拭いもせず、振り返る。

「とんだとこを見られたぜ、墨吐きの源吉も形無しだぜっ」

「えっ?あんた、墨吐きってあの盗人で有名な?」

「今じゃ只の下働きだ、だけどそれも終わっちまった・・・」

「どう云う事だよ?」

「ふん、俺の大切なお方が今朝方、亡くなっちまったのよ。もっともっとお世話したかったのによ・・・あんなに喜んで下さってよ、俺の無骨な手に体を預けなすって、逝っちまった、、、」

「まあ、あんたが気を落とすのも無理はないさ、世話してる病人が死ねば誰だってね。だけどあたいらが面倒見ているのは余命が無い者なんだから仕方ないよ」

てめえ!呆れるぜっ、お前は何にも知らねえみたいだな。あのお方の余命がなくなったのも全て俺の所為なんだよ!不幸な一生にしたのも全部俺の所為なんだ、俺が命を縮めたんだ!」

「え?何でだよ?・・」

「これも俺のしてのけた罪なんだろう、、、おめえも同じ捕縛糸の有る身の上、満更、縁がねえ訳じゃねえしな、話すのも辛えが仏の供養にもなるだろ」

「・・・」

「俺は蟻牢に三年入れられていた。根性が治らねえから逆らってばかりで、蟻酸も散々かけられたよ。見てみなよ」

源吉の体の至る所に残るやけどの跡を見た、声もない。

「その内に逆らう気が失せて、大人しくなったふりをしてみたと思いねえ」

「ふりだったのかえ?」

「ああそうさ。だけどそんな事は御係所のお役人様はお見通しだったよ。後で気が付いたんだが、こ助さんがこちらに来るまでの間の繋ぎに収容されていたのかも」

「こ助さんって?」

「俺のお世話したお方だよ。俺はまんまと役人を騙したと思ってほくそ笑んでたさ。なあに病人の世話なんて云ったって、適当にこなしてりゃいいし、何よりも見張りもなければ、院内なら出歩くのも自由なんだ。

こんな願ってもねえ事はねえ!端から大人しくしてりゃ良かったってよ!ってな。傷跡嘗めながら思ったもんだぜ」

「ふーん」

「おめえもそうだろうよ、適当にしているだけだろ?」

「えっ?あっ、あたいは誠心誠意、真心尽くして面倒見てるよ」

「ふん、嘘つけ!そんな玉かよ、そんなご立派なお方の尾に捕縛糸は付いてねえよ」

「何さッ」

「第一、てめえは面倒見ているお方の名前くらいは知ってんだろうな?」

「えっ?・・・そっ、それは、、、」

「やっぱりな!名前も知らねえご仁に誠心誠意だってよっ、笑わせるぜ」

「ふん!もういいやね、こっちが大人しく聞いてりゃ、ずけずけと、もういいよッ!

腹が立ってその場から去ろうとしたが、源吉に手をがっちり握られた。

「何するんだよッ、離しやがれ!

「離さねえよ!てめえには時間がねえんだよっ、俺っちの話しはどうでも聞くんだな」

源吉に無理矢理に座らせられたお順はそっぽを向いた。






つづく


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美しいお花畑は汚く濁った心を真っ白にするためのものなのでしょうか。
お順もまだ純真な心に戻れる可能性があるという事でしょう。
とにかく何もない所で、自分が不幸に陥れた方を看病し、どれほどの苦痛を与えてしまったのかを知ることで、自分を見つめ直す機会を与えてもらったのですから・・・。
これまで散々悪い事をしてきた者が、自分の悪事に気づき反省し、心から後悔して涙ながらに語れば、説得力がありますよね。
これでお順の心が少しでも動き始めれば、自分自身が救われることになるのでしょうが。
でも期待できそうな気がします。
きれいな挿絵はその場の雰囲気をよく感じさせてくれます。

こんにちは。

前いたところが良いところと思えるなんて
今までなかったことかも。

自分の気持ち一つ、行動一つで世界は開けるのにね。
この花園から帰るとき、薫りに気がつくような
気持ちになればいいのだけれど。

まぁ、まぁ、ごめんなすって・・・あれから、寝てしもうて(・・;)
お順同様、不甲斐無い奴でござんすm(__)m

担当の重病人は、お順の悪行の所以とかかわりのある人なんだ。
そういう決まりになっているのかな?
己の業の深さに、早く気付きなよ、お順。
そんなことを想いつつ読みました。

>てめえには、時間がねえんだよっ・・・て、この意はなんでしょね?
今回はね、これがものすご~く気になったのよ。
この言葉が、これからの物語の方向性を示すか。
こちら的には、わくわく気分ですが・・・(笑)

満開の鈴蘭百合が綺麗だ。
想像でしか判らんが、こちらまで芳香が漂って・・・そんな気がした。
構図もいいねぇ!
このアングルで、写真を撮りたいぐらいだよ。

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名前はあまり関係ないですけどね。
知っている知らないは。
助けるのに必要なのはただ信じればいい。
・・・と私は思っているんですけどね。
どうなんでしょうかね。
助け合いは嫌いですけど、
助けるのは好きなのは自己満足かもしれませんね。

こんばんは~~♪
スズラン百合の花畑 白いお花が綺麗ですね。
肩を落とした猫の尻尾についてる紐が哀れを感じます。
お順はこれから源吉にどんな話を聞かされるのでしょう?
続きが早く読みたいものです。

いよいよ語られる恐怖の真相! ってやつですか?

どきどきしますね。

お順に明日はあるのか、それともここで終わってしまうのか、

今看護している重病人こそが実は最後の審判者なのか。

いろいろと不吉な妄想が……。

根っからの悪党は居ないといいますが、このお順は、どうなのでしょう。
できれば自分がやってきた悪事がどんなに酷い事かを思い知らすことが出来ればいいのですが。
実際の刑務所は、どうもそう言うシステムではない様な気がします。再犯率が多すぎる・・・。
病人の看護をするというのは、一番いい方法かもしれませんね。
まだ、人間の心が残っている罪人ならば。

自分がやってきた悪事の顛末を見せつける・・ってことかな?
何気なくその場しのぎでしたことが、
相手の一生に、どれだけの傷を与えるのか。
普通の人でもわからないよね。
さぁ〜、どうなっていくのか、楽しみだ。

ガス病院とは違って、結構自分で考えて、自分で動かないとダメなようですね。何もわからないって、なんだか心細いですよね。ちょっとかわいそうかな。でも、今までの行いを考えると、同情するのはなぁと思いますね。これから源吉の話が、どんな話かとっても気になります。早く聞きたいです。大切な人を亡くして、これから源吉がどうなるのかも、気になります。心の隙間が埋められると、いいのですが・・・。

こんばんは^^

ふてくされる相手も居なければ心細いだろに

それでも病人に対しては何の興味も無く、適当に世話をするだけとは

源吉の話を聞くことが、救われる為のラストチャンスなのかな

ここはコノミとクルミのために普通の母親になってもらいたいところだけど

どうなることやらですな~

雨の日は肌寒いね^^

梅の季節はなんだかソワソワする変な女です^^ハハ



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鈴蘭百合、綺麗です。
この花たちは今までたくさんの者たちの
懺悔や感謝の独り言を聞いてきたのでしょうか。

ここに来るまで変われなかった者にも
まだ道が残されているこの世界は
本当に慈悲深いなぁ。。。

園主さん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

この鈴蘭百合は特別な花で、ここと極楽山脈にしか咲いていません。
茂吉が死出の旅ゆく者達の慰めになるようにと育てられています。

源吉の話が何を伝えることになるのでしょう。
看護される病人が知らずに語る物語に
自分が関わっていたことを知る衝撃。
まずは受け止めることから、始まるのだと思います。

お順はまだ何も初めていませんものね。

いつもありがとうございます。
v-410

Mieさん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

ですよねぇ。
ガス病院での日々は反発はしていても、
悪くはなかったのかもしれませんね。

全くその通りです。
源吉の話を聞くしかないですね。
それからですね。
v-410

llama姉さん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

とんでもないでござる。
無理は禁物だよ、コメなんて気にせずに寝てくだされ

其の通りですね。
業の深さに気づく処か、今は何もわかっちゃいない。
源吉がどうやら、行く先を示してくれるようです。

この言葉は何よりのアドバイスです。
源吉は自分がそうであったようにお順もそうであろうと
思ったからですね。

嬉しいにゃ~~
この世界で最高位の花です。
姉さんに撮ってもらいたいのぉ
v-410

LandMさん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

罪人が病人を助けるのではありません。
寧ろ、助けられるのです。

この場合、普通の助けるとは違います。
普通なら、助けるのに相手の名前は関係ありません。
助けるのに相手の名前を訊くなんて変なことです。

お順の場合は絶対に名前を知ることが大事なのです。
v-391

りんだちゃん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

白い花ってやっぱいいですよね。
私がちびの頃、季節になると
山にけっこう山百合がポツポツと咲いていました。
今は盗掘で見る影もなくなりました。
寂しいことです。

手に取るなやはり野に置け蓮華草

その場にあるからいいのですよね。

源吉の泥に塗れ、肩肘張って生きた人生も終わりました。
これからは生き直しになりますね。
v-410

ポール、いらっしゃ~い!

こんにちはー

恐怖というか懺悔ですね。
この懺悔話には色々と意見も出てきましょうが
そんなものです。

お順に明日はあるのか
死ぬまで唯、生きていくのか
それとも一生懸命に生きていくのか
本人次第ですね。
v-391

limeさん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

私は性根が腐っている者も居ると思います。
コンクリの犯人なんて、更生をさせる必要があるのかと
今だに疑問です。
刑務所で更生させるなんてキレイ事ですよね。
私は世の中から隔離をしているんだと思っています。

この世界に魂沈めがあるのは、
生きるという修行をさせることすら無意味な輩に対する罰です。
滅多にありません。
この世界は善良な者が楽しく生きていく世界と云えます。

お順は何もわかっていませんね。
愚かなことです。
v-390

きらたるちゃん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

ですね。
其の中でも一番、罪深いものになりますね。

鋭いですなぁ〜
これは茂吉が言わんとしていることを
言われたようです
考えのない行動がどのような事になるか
源吉はどうも身に沁みたようです。
v-390

むらななちゃん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

いえいえ、可哀想ではありません。
其のくらいのこと、何でもありはしません。
看護も初めてではないのですもの。

源吉の話がお順にどのように影響するのか。
彼女次第ですね。
これでわからなければ
どうしようもないです。
v-390

どーちん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

全くだね。
張り合いもないよね。

間違いなくラストチャンスだと思う。
お順に親切に教えてくれるのは源吉だけだね。

雨の日は寒いよ
梅雨には早いのかな、湿気が鬱陶しいよ。
v-393

園長さん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

ですね。
鈴蘭百合の花畑は
誰かを誘うように道を開けてくれます。
聞いてもらうだけで心が晴れる
そんなことってありますよね。

茂吉が諦めないのですかね、
それとも魂がそうなのかもしれません。
v-410

こんにちは~。

お順いい前の方が良かったと思う時があるなんて。
今から自分が看ている病人との係わりを知ってその人の
ために尽くせるようになるんかなぁ。
墨吐きの源吉の話はお順の心に響くのか?

性悪ののお順も鈴蘭百合のようにきれいな心になれるのかな。
なって欲しい。

うにゃままちゃん、いらっしゃ~い!

こんにちはー

ぷぷ
何だかんだと構ってくれる者がいる幸せ
今更、思い出しているのかもしれません。

自分と重ねることが出来るかどうかですね。
それができれば
源吉も吐露した甲斐があるというものです。

どんなに大変だとしても、なって欲しいです。
v-410
プロフィール

 のくにぴゆう

Author: のくにぴゆう
猫国の住民達の物語を書いています。
作者はコメを食べて生きてます。
コメくださ~~い!
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