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落語「大盤」  作・泡柳亭武律

落語「大盤」  作・泡柳亭武律


 ええ、落語家の仕事というのは、こうやって皆様にバカバカしいお笑いをご提供させていただくことでございますが、ただ座っていりゃあバカバカしい話が出てくるわけもございません。座付き作者というものがございまして、そいつが書いた原稿に手を加えてこうおしゃべりするわけでございます。

 この座付き作者、優秀なのに当たれば半分は勝ったようなものでございますが、中にはとんでもないスカをつかまされることもある。例えば、いちばん上の文字が「泡」、次の文字が「柳」、真ん中に「亭」が来て、四番目が「武」、どん尻が「律」という作者が来たら、もうあきらめるしかないというわけでありまして。

 で、この落語は誰が書いたかですが、そんなこたァどうでもいいことでございますよね、ええ……。

 さて、一年中いつだって春と秋がいっしょくたになっているようなこの猫国。今日ものんきに朝ごはんをいただこうと、住猫たちがそれぞれの家に植わっている大事な三本の木、すなわちミルクの木、バターの木、パンの木から恵みをいただこうとした。

「あれっ?」

「あらっ?」

「ニャんだっ?」

 ミルクの木も、バターの木も、パンの木も、ひとつも実がなっておりません。実がなっておらぬということは、収穫ができぬということでございまして、収穫ができなかったら食べるものがございません。

 いや、よく考えれば、肥沃な猫国の大地、そう食べるものにはこまらないはずでございますが、

「(トントントン! トントントン!)すみやせーん! パンとバターとミルク、わけてほしいんですが!」

「あらお隣さん、うちもそちらに借りに行こうと思っていたんですよ! うちのが、きょうは猫らしくバターミルクのパン粥を食べたいなんていっていたので」

「えー! ニャんてこった。この村のパンとミルクとバターの木は、これで全滅ってえことですぜ」

「うちのは、いくらほめてもほめてもほめちぎっても無駄でしたけど、お隣さんのは?」

「うちでは嬶が最前からやってるんですが、なんにもなっちゃいません」

 いざ食べたいものがなくなると、無性に食べたくなるのがニャン間の性(さが)でございます。

 村から村へと伝令が飛び、これが自分たちの村だけではなくて全猫国規模にまで広がっていることがだんだんとわかってくる。

 猫国の者はもう顔色が真っ青でございます。

 ほめたってなだめたって、親木にいいつけるぞと脅したって、木は黙ったまんまです。まあそりゃあ木なんだからしかたがありませんが。

「五黄さまには相談したのか?」

「それがだめみたいニャんだ。お屋敷の門は閉じていて、中でなにをしているのかは、さっぱりわからニャい」

「ニャにか、おれたち悪いことでもしたのかニャあ。団栗銭で花札やって酒を飲んだのが悪かったのかニャあ」

「毎日のことじゃニャいか!」

 これではご飯を食べるどころではございません。猫国のものが全員、しょんぼりした顔つきで、自分の悪いところの反省を始めた。

 そのうちに、

「そうだ……五黄さまや天狗さまや神様に謝りに行こう。いま謝れば、許してくれるかもしれニャい」

 だんだんとこういうことを言いだす連中が現れまして、まあぞろぞろと、四方八方から菰傘村の五黄屋敷へとやってくる。

 迷える猫たちがはっと見ると、お屋敷からは妖しげな煙がもうもうとたちのぼっているではございませんか。猫たちは地面に膝をこうつきまして、

「うえーん、うえーん……」

「おいらたちが悪かったです……」

「許してくださあい……」

「フニャああッ、フニャああ」

 老若男女身分の違いを問わず、ひとかたまりのでっかい団子みたいになって泣いている。

「フニャああああッ、フニャああああ」

 そのとき、五黄屋敷の扉がぎいいいっと開いた。

「ニャんだ、ニャんだ、騒々しい」

 現れた猫影を見て、そこにいた全員の顔が、ほっとしてフニャっとなった。

「五黄さま!」

「おーてん様もっ!」

 と同時に、なんとも甘いいい香りの風が、家の中からどおっ、と……。

「五黄さま、ニャんですかこれは?」

「ニャにを作ってらっしゃるんですか?」

「それはそうと、うちのミルクの木とパンの木とバターの木が……」

「どうしたらいいんでしょう?」

 みんなの訴えを、困った様子で聞いていた五黄さまでありましたが、

「皆の衆、入りなさい。手伝ってもらわなければならニャいことがある。それにしても、桃吉とうーてんのやつときたら……。桃吉ッ! うーてんッ!」

 急に馬鹿でかい声で怒鳴りました。

「うーん……」

 屋敷の隅では、桃吉とうーてんが酒樽を抱っこして寝ておりました。

「うーん、五黄さま、なんでしょ……」

「おーてん様、うーてん、もう飲めないよ……」

「ああッ! とっておきの銘酒、『天狗ころし』を全部! こんな強い酒、ふたりで飲んだのか?」

「烏天狗たちもいっしょに……こんなめでたい日でありますので、前祝の一杯が二杯、二杯が三杯に……」

「バカっ! バカバカっ! 頼んでおいた仕事はどうしたんニャっ!」

「仕事……」

 そのとたん、ふたりと烏天狗たちの目がぱっちりと開いた。

「いま何時ですか?」

「もうとっくに昼を回っているっ! お前たち全員、蔵の後ろで謹慎っ!」

 怒りに顔を真っ赤にしたおーてんに命じられ、酔いもすっかりさめた桃吉にうーてんに烏天狗たちは、しおしおと、日のささない蔵の裏へと歩いて行きました。

 わからないのは猫国の住猫たちです。

「なにがあったんで?」

「うむ。それなのじゃが、あれを見たまえ」

 案内されるままにぞろぞろと来た一同は、中庭の甘い香りのただ中にあるものを見て、うわっ、と、腰を抜かした。

「な、な、なんですかい、あのばかでかいウェディング・ケーキのお化けみたいなものは!」

「だからもなにも、ケーキだよ。人間界で、われわれの物語を書いてくださっている、のくにぴゆうさんが、病から癒えてブログを再開なさったので、そのお祝いに、超巨大なケーキを焼いて、お贈りしようと思ってな」

「それと、猫国中の三本の木がなにも出さなくなってしまったのとは……」

「ケーキの土台のスポンジを作るために猫国中のパンの木にお願いし、甘いクリームを作るために猫国じゅうのミルクの木にお願いし、飾りのお菓子を焼くために猫国中のバターの木にお願いして、それぞれ力を貸してもらったのだよ。急ぎなもので、木々にも皆にもたいへんな思いをさせてしまったようだが、間に合ってよかった」

「み、水臭いですよ、五黄さまにおーてん様、ひとことおっしゃってくだされば、あっしらだってこんなに取り乱したりしなかったですよ。魚でも米でも野菜でもなんでも食べて待ちましたよ」

「ひと晩のうちに猫国中にこのことを断り協力を求める触書を出すつもりだったのだが……それをやるはずの桃吉とうーてんと烏天狗たちが、まさか神酒を飲んで酒盛りをし、昼まで眠るとは思ってもおらんかったわい。これはわしと五黄の共同責任というところじゃ。すまん。詫びといってはなんだが、そこに、猫国じゅうに配るはずだったケーキに宴会のごちそうも作ってあるので、どうか皆、おなかも減ったろうから、食べて行ってはくれんかな。給仕だが……桃吉ッ! うーてんッ!」

「は、はいッ!」

「やりますッ! やらせていただきますッ!」

 そこで行われた、全猫国規模の宴会については、ことさら申すまでもございません。大盤ぶるまいという、たいへんにおめでたい噺でございました。



クリスタルの断章のポールが即興で書いて下さりました。
もうなんて幸せなのでしょう。
これだけの作品をさっと書いてしまうのだから驚きです。
賞を頂いている作家さんだけあります。
また、実に柔和なよくできた方でもあり、私めなんぞは修行足らずで恥じ入るようなことばかりなのですよ。
真似したいのに真似ができない。
へへ
思い出しますとポールに喧嘩を売るような事を書いたりと
赤っ恥丸出しの散々な奴なのに見捨てることもなく、
まったく、穏やかな大海に挑んでいた蛙のようなもので、
敵うわけがない。
これからも宜しくお願いします。
本当に有難うございます。

ぴゆう
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ありがとにゃーーー

猫国の皆を待たせていたようで、申し訳ありません。
へへ
ミルクの木やパンの木にバターの木。
そんなに登場もさせてもいないのに、よくぞ覚えてくださっている。
本当に嬉しいノォ〜
ウルトラ大きなケーキだろうなぁ〜
その上で寝てみたい。
むふぅ~v-389

こんにちわ~~♪
びっくり~~~
ぴゆうさんの快気祝いに猫国てんやわんやの騒ぎですね(。^p〇q^。)プッ
ポールさんとぴゆうさんの素敵な友情に乾杯です~~~♪

お帰りなさ~いv-315
待ってたよ。

ポールさんの猫国からぴゆうさんへの
贈り物。良いですねえ。素敵な関係ですね。

これからまた猫国見られるの楽しみにしてま~す。
でもあまり無理はしないでね。

素敵な贈り物だにゃ~♪

わ、わ、わ、ポールさんの作品だぁ!
しっかし、凄い才能だわねぇ・・・今更ながら、驚いた!!
猫国に余程精通しないと、この物語は書けないもの。
ウルトラ大きいお祝いケーキ、お裾分けに肖りたいもんだわさ♪

姐さん、ホントに幸せ者だにゃ~^^
いい友達ってーのはね、私も含めて大事にするんだよ!(爆)

りんだちゃん、いらっしゃーい!

あれぇ〜
早速にありがとうニャ〜

そうなのよ嬉しい限りでございますのよ。
うっう・・・
泣けますよ。
本当に優しいお方ばかりで泣けます。
復帰して良かったよーー
v-406

うにゃままちゃん、いらっしゃーい!

きっとうにゃままちゃんに違いない!

ただいま〜〜
嬉しいよぅ〜

ほんとうに良いお方なんよ。
年下なのに人格が出来ているというか。
もしやしてポールは半分、仙人じゃないかと・・・

ありがとにゃ〜ん。
うにゃままちゃんもだよ。
ブログを見ると楽しく小旅行しているのがわかるよ。
疲れすぎないようにね。
のんびりが一番だよね。
v-398

llama姉さん、いらっしゃーい!

全くでござるよ。
おおーーそう言えばパンの木があったわニャンてv-389
キャハハハ

即興で書いちまうんだから、すげえ!
ショートショートをあれだけ書けるのだから頷けたりもする。
兎にも角にも嬉しい限りでございます。

そうしますです!
きっぱりんこ!
v-391

なんてステキな贈り物・・。
ぴゆうさん、いいなぁ・・。
ポールさんのお人柄がうかがえますね。
ミルクとパンとバターの木、
うちにも欲しくなった・・。
4にゃんずもいるのだから、
何処かに、こっそり生えてないかなぁ・・?(笑)

最初はまったく別な話を考えていましたが、よく考えるとちょっとふさわしくないかな、と思い直し、あわてて「知っとけば面白い!」を何度も読み返し、そういやパンとミルクとバターがあればお菓子ができるな、この場でお菓子といったらケーキだな、とひらめきました。

後は「その場のノリ」でした(^_^;) 

だから、オチのところがちょっと不本意で。なにか気の利いた洒落がひとつあればもっと締まったんですがねえ。そこだけが心残りです。

喜んでいただけたからいいか!(プラス思考)

おかえりなさい

良かったあ
久しぶりのアップ
やっぱりいいもんですね
これからもよろしくお願いいたします~

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きらたるちゃん、いらっしゃーい!

でしょう。
嬉しいことだよねぇ〜
幸せ者です。

ぷぷ
4にゃんずに訊いてみたらいいと思うな。
きっと知っているはずだにゃ
v-392

ポール、いらっしゃーい!

まったく、すげえ!の一言。
ありがたいことよ。
なんか帰ってきたなぁ〜って実感したよ。
ノリものりのりで書いてくれたんだね。
海苔が食べたくなったわい。
けけ

いややいや、中々にいいものでござる。
私なんかだと大盤振る舞いを
「大判ブルマー舞」なんて勘違いをする
大きなブルマーを履いた世の吉を登場させたくなる。
センスがズレとるなわたし。
大体、ブルマー自体、説明しないとわからんよね。
ぷぷ
本当にありがとうございました。
v-435

あゆみちゃん、いらっしゃーい!

ありがとう〜
へへ、嬉しいノォ
こちらこそ宜しくねぇ〜
v-398

本当にしゅてき!!!

しゅてきな良い御噺でした~~\(≧▽≦)/
良かったですね~~!!ぴゆうさん!!!
これも人徳の賜物!!!天晴です!!!

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ぴゆうさん。
こんばんは♪

すてきなお話。
ポールさんからいただいて、良かったですね☆
そうですか、
木々がそろって、ぴゆうさんの為に・・・
木々もそうですが、こうしてポールさんのように、
素晴らしいお話を贈ってくださる方がいるぴゆうさん。
人徳がおありですね☆
これもぴゆうさんの人柄があっての事だと思います♪
楽しく良いお話でした☆

こんにちは〜

巨大な・・・いやいや超巨大なケーキで
お祝い、それはそうでしょう♪
おかえり〜

かじママちゃん、いらっしゃーい!

またまたあ〜
しょんことはないのですよ。

ポールの有り余る才能がなせる業なのではないかと。
幸せでござーーる。
v-398

さやいちちゃん、いらっしゃーい!

こんにちはー

いいものを戴きました。
へへ

マタマタあ〜
真面目にそんなことはないです。
悲しいかな、もう人徳の欠片もないのでございます。
ポールにあると思いますよ。
良いお方でございます。

ありがとうねェ〜
viviちゃんも調子が良さそうで良かったよ。
v-398

Mieさん、いらっしゃーい!

ただいま~~~

これはMieさんが大好きなバターケーキと思われる。
次回はバターケーキ大好きなMieさんと薄雪草さんをご招待をしなくてはね。
v-392
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Author: のくにぴゆう
猫国の住民達の物語を書いています。
作者はコメを食べて生きてます。
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