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クルミ 55 古い写真

前回

怒りに任せてお順を叩くコノミ、朝太郎が憎いのは昔のお順であって今のお順ではないと訴える。


はじまり、はじまり



朝太郎はお順の後を何とはなしに付いて行く、そして見ていた。あまりに責められるお順が哀れになり、自分の悪事を言うことになっても、止めたいと思った。

朝太郎の告白を聞くと夫婦は驚き、呆れる。だが朝太郎の気持ちもわかる。コノミとて鬼ではない、到って優しい心の持ち主。

「いやね、コノミさん、富吉さん。何かあっしみてえなのが知り合いみたいに口を聞くから、気を悪くされるでしょうが、すっかりお順さんに聞いていたもんで、知っているみたいで、、、すいやせん」

「・・・」

「いいんですよ」

「だけど我慢して聞いてくだせいよ。謝るっていうのは、口で言う程、楽じゃねえんですよ。それを顏が腫れ上がる程叩かれても、泪流しているなんてのは、腹の底から詫びていなけりゃ無理なんですよ。わかりますか、あっしなんか口じゃ平気で悪かったよなんて言いますよ。

だけど腹から悪いなんて思った事なんて、これぽっちも無しで来ましたよ。しつこく、くどくど言われりゃ『こんなに謝ってんのにわからえのかって』逆に怒り返したりしてね」

「いや、そうですよ、あっしだってそうですよ、商売してますから、いろいろありますから、よくわかります。客に文句を言われりゃ、その場は頭を下げるが、その場限りですよ。こいつだって商売を一緒にしているんだから、分かっている筈ですよ。それがこの頃、店が大きくなったもんで、奥様面してこんなみっともない事するんですよ」

「あんただって『旦那様』って云われているじゃないか、何さ自分ばかり良いカッコしてさ!」

「・・・」

「あっしは心底、詫びるお順さんを許してやって欲しいだけです!本当に分かり合えるのは、血肉を分けた母子だけって言いますもんね」

「朝太郎さん、その通りですよ!さっ、あっしと中に入っておくなさい、朝餉はまだでしょう?こんなわからず屋放っておいて、お袋さんとご一緒にどうぞ!あッ・・あれれ、お袋さんは??」

お順は伸びていた、朝太郎に突き飛ばされた勢いと叩かれ続けていたので気を失っていた。


あっ?!お袋さん!!


「あっ、お順さん、こいつはいけねえや、あっしが突き飛ばしたから」

朝太郎が抱え上げようとしたその時、コノミが止めた、そっとそっとお順に近寄る。

「母ちゃん・・・母ちゃん・・・あんなに身なりに五月蝿かったのに・・・こんなに汚い・・・」

コノミは母に付いた泥を払いながら、泣いた。泪は頬を伝ってお順の顏に落ちる。温かい泪に気が付く、腫れて膨(ふく)れた瞼の先に、コノミの泣いている顔。


コッ、コノミぃーーーっつ!すまなかったよぉおおーーーッッ!!


母ちゃんーーー
もういいよ、いいんだよ、来てくれただけでいいんだよ。
ゔわ゙ぁああああーーーん


抱き合う母子に富吉も朝太郎も、店の者達も泣いた。

コノミはお順が来る筈がないと思っていた、いくら茂吉の手紙に書いてあっても、信じられなかった。手紙を貰ってからは、否定しながらも期待する。そんな自分にも腹が立つ、なのに用事を探しては外に出る。狐の姿がないと尚、腹が立った。

『ほらご覧な!来るわけないさ、幾らなんだって子供に謝るもんか、あれだって親のつもりだもの、あたいに無駄足させて、あの女狐ーッ、そうだ、来たとしてもきっと、お銭をねだりに来るんだよ、そうだよ、そうに決まっている。チキショウ!!』そんな苛々がつのっていたコノミだった。

しかし亭主の前で項垂れる薄汚い母、叩きながらも内心では驚きだった。朝太郎に言われるまでもなく、コノミの知る母と目の前の母との違いに戸惑う自分。

顔立ちも声も同じ、間違いなく母なのに、トゲトゲしかった雰囲気も毒ずく舌も今はまるでない。得心した時、優しいコノミに戻っていた。

そう、コノミはいつもきれいな母が好きだった。たまに優しくされると嬉しくて仕方なかった。クルミが産まれてから、三人で仲良く暮らしていた時があった。忘れていた遠い記憶を思い出す。

親子は今までのやり直しをするように一日、一日を過ごす。コノミは渡された櫛の話しを聞くと、不思議な巡り合わせに驚く。いつか【魂納めの宮】でクルミに会った時、この櫛を上げようと二人で話し合う。

その後のお順は茂吉の許しを得、卍宿病院に務めている。裏卍に務めたかったが、それは許されなかった。毎年、鈴蘭百合をコノミに、キナに、そしてガス病院に送っている。お順はたまに休みを貰うと、生き直しをしている源吉や朝太郎に会う。朝太郎は今では源吉と一緒に修業をしている。

さて、クルミとはどうなったのか。

茂吉が計らい、会える様にしたのだがクルミが聞かない。『会えば気持ちが変わり、元に戻るかも知れない』と言い張る。『このまま良い母でいてほしいから、あたしと会うことを目標にして頑張って欲しい』と言う。茂吉はいつか時間が気持ちを変えるだろうと、そっとしておく事にした。


            ♢            



それから数十年後。
沢山の見舞いの者、医者も看護師もある病室の前に溢れている。この病人は余程、皆に好かれているのだろう。誰もがその病人の死期が近いことを知り、押し黙っている。その中を一人の狐が押し分ける様に進んで行く。その美しい姿を見ると、自然と暗い顏も和らいでしまう。

「すみません、通して頂けますか」

美しく成長したクルミだ。ようやく入れた病室の主は今にも息を引き取ろうとしている。

母ちゃん、あたしです、クルミです。やっと会えました」

目を薄く開けたお順の目は、どこまでも優しく澄んでいる。顏の白髪も増え、灰色が白くなっていた。髭も大分抜けている。

「ぁーーあ・・・」

か細い手をクルミに差し出す。

「母ちゃん、頑張ったね、頑張ったね、あたしはどれほど嬉しかったかしれない、母ちゃん・・」

「ク・・ルミ、、、やっと会えた。これで思い残す事なく宮に・・逝ける」

「母ちゃん・・・」

枕元に古びて薄汚れた写真がある。気まぐれて撮ったのかはわからないが、そこには確かにクルミの誕生を喜ぶ母子の姿が写っている。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
furuishashin2.jpg


それからのお順はクルミの温かい看護を受けた。よほど嬉しかったのであろう、三日後、、、安らかに旅立つ。
振り返れば、いろいろあった母子だった。家族だけで暮らした日々は少なく、離れていた時がずっと長かった。

だがお互いが思いあう心に距離も隔たりもない。クルミが姉の無事を祈る、母の生き直しを願う、コノミもお順もしかり、会うことはなくとも紛れもなく家族だった。

別れた後の生き方が母子を本当の家族にしたのだろう。








おわり






クルミも一年に亘りましたが、ようやく終わりました。
振り返れば、この物語を書き始めたキッカケは、
三吉のその後を書きたいが始まりでした。
友達が欲しいな・・・
浮かんだのは赤い耳と尾っぽのおしゃまな狐の女の子、名前はクルミ。
決まった途端、彼女は目をくりくりさせながら、自分の物語を話し始めました。
そして最終話となり、今は唯、ホッとしています。
長い間、お付き合い下さいました皆様に、心より御礼を申し上げます。
また、充電期間をしばらく頂き、復活をしたいと思います。
次回は爺ちゃん、婆ちゃん達が主役の中編です。
お題は三猫文殊旅。
猫国はまだ続きます、いつになったら終わるのやら・・・
どうか宜しくお願い申し上げます。


ぴゆう拝


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プロフィール

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Author: のくにぴゆう
猫国の住民達の物語を書いています。
作者はコメを食べて生きてます。
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