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クルミ 47 雪の夜

前回

無理やり座らされたお順、源吉は何を話すのだろう。


はじまり、はじまり


「耳さえ聞いてりゃいいって事さ」

「ふん、さっさと話しなよ」

「俺は掴まるまで大盗賊だのと云われていい気になっていた...墨吐きなんて二つ名も烏賊が墨吐いて逃げちまうみたいに鮮やかに盗みに入っていたからさ。

家人を殺めるなんて一度もないし、盗みに入ったお店(たな)が潰れたなんて聞いた事もねえ。まっ、其れが盗人の俺のちっぽけな誇りだったと思いねぇ」

「・・・」

「掴まって『魂沈めされても悔いなき!』ってな。それが有無も云わせず蟻牢だ!魂沈めじゃねえ。命あるだけ、まあいいかって片っぽじゃそうも思っていたさ...それで三年経って病人の世話だとよ。

何かあるのかと最初はびくびくしていたが、一向にそんな気配もねえ。その内に暇なもんで、病人と話すようになった・・・適当な奴もいなかったしな」

「あんただって適当にしていたんじゃないか!」

「そうさ。こ助さんも最初は手も懸からねえで、どこが病気なのかと思う程元気だったんだ。だけど、お前は聞いた事あるかい?こんな言葉。[治る病は卍宿、見込みあるならガス病院、死んで帰ろう裏卍]」

「何よ、それ」

「ここはその【裏卍】なんだよ。普通の者には縁がねえ、訳あり者の居る場所さ」

「そしたら、あんたの病人も罪人なのかい?」

とんでもねえッ、とんでもねえ話しさッ!
お天道様が逆さになっても有り得ねえ話よっ!!」

「そうなの?」

「ああ、そうさ!お前はお世話しているご仁の事を、何も知らねえままで済ます気か?」

「あたいは来たばかりだし、そんな暇はないよ」

「何が来たばかりだ!愚図愚図してりゃあ、泣きを見るのはお前さ・・・今のうち、今のうちに話さなきゃ駄目なんだよっ」

「え?・・・」

「こ助さんは俺に気を許してくれ、話すも辛い過去を話してくれるようになったんだ・・・あのお方は腕のいい指物師(さしものし)だったんだよ。その日はご贔屓の旦那に頼まれ、こさえた箪笥を届けに出掛けていたらしいんだ。

旦那にえらく喜ばれて、つい話し込むうちにすっかり遅くなっちまったらしい。その晩はひどく雪が降って来て足下も悪いって、気が進まなかったが旦那に無理に止められ、結局お屋敷に泊まる事になったそうだ。雪深い夜で一晩で驚く程降り積もったらしい。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
yukinoyoru.jpg

朝になって旦那から過分にお代を頂戴して、雪を掻き分け、掻き分け家路に急いだそうだ。其れと云うのも、おかみさんが足を怪我されていて、松葉杖なくては歩く事も出来ない上に、乳飲み児もいるんで朝飯に間に合うようにと急いだ。

だが雪がひどく積もっていたから難儀して、どうにか家に辿り着いた時はすでに昼過ぎだったらしい。戸にまで降り積もっていた雪を退かして漸(ようや)く家に入ると、えらく家の中が寒かったそうだ。

戸の近くに不思議にも炭が置いてあった、、、まだ燻(くすぶ)っていたのもあったらしい。こ助さんはおかみさんが気を利かして家に入ったら暖かいように、玄関の土間に炭でも置いていたのかと思ったそうだ。

とにかく寒いから囲炉裏の火を点けようと、ふと開いてる襖の先を見たらおかみさんがまだ寝ていたらしい。こ助さんは少し腹が立った『亭主が仕事から帰って来たのに起きてもいいんじゃないか?』ってな。

『いい加減に起きろ、昼過ぎだぞ!』って怒っても知らんぷりしてる。その内、変だなと思い、かみさんの顔を見ると息をしていない焦って隣の赤子を見ると、その子も息がない

後でわかった事だが、玄関の土間で焚いた炭が原因だったらしい。運悪く、雪が家を包むように降り積もったから、悪い煙が抜ける事なく家中に充満したらしい。

その内に炭が不完全燃焼とか云う変な状態になってどんどん悪いものを出した。かみさんも赤子もそんな事とは知らずにお亡くなりなった・・・」

「あんたと関係ないじゃない」

「いいや、間違いなく俺の所為なんだよ。俺はあの日、博打で摩(す)っちまって銭がねえわ、雪が降ってきやがったから野宿も出来ねえ。それで歩いていたら丁度お誂(あつら)え向きに一軒家があったのさ。様子を伺ってみると家人はもう寝ている。

そっと戸を引いてみたら、なんと開いた、心張り棒をかっていなかったんだ。今思えば、こ助さんの帰りを待っていたからなんだろうな...俺は『しめた!』と思って家に入り、家人にバレないように注意して竃(かまど)に火を熾(おこ)した。

だけど竃を向いていたら、いつ誰かが起きて来てもとっさにはわからねえから、いつでも逃げる事が出来るように引き戸のそばに薪を置いて、暖を取りだした。しばらくそうしていたよ。

その内、もう少し先に行けば朝太郎っていう知り合いの野郎の塒(ねぐら)が近所だった事を思いだした。何もこんなとこでしょぼい真似してなくたって、そいつのとこに行けばいいんだって。それで俺は焚き火の後始末をする事もなく出て行ったのさ」

「それがこ助さんの家だったの?」

「ああ、俺の考えなしがあのお方を不幸のどん底に蹴落(けお)としたのよっ。こ助さんは恋女房と初めての子供を一辺に亡くされた...それからは荒れなすって酒に、博打とあっという間に身を持ち崩した。肝の臓をやられるのも無理のない程の酒浸り、それで結局、ここに来られた訳だよ」

「だけど、それって事故じゃないの!あんただって好きでした訳じゃないし」

「そうかね?態とじゃなかったら良いのかよっ?やるとてやったわけじゃねえってな。そんな事はてめえに言い聞かせる慰めにしかなんねえよ。

だけど俺は一瞬、あの時、水をかけようかと思ったんだ!だが面倒だから『いいや』って、そのままにして行ったのよ。俺はてめえがした行動がこ助さんを不幸にした事だけはわかった。

少しでも気働きをすればこう成る事は分かり切っていた筈、、、俺の心ない行為がこ助さんの一生を台無しにしちまった、
もう取り返しがつかねえッ

「その事をこ助さんは知っていたの?」

「どうしようかと迷った、、、あの方の狸柄に触れると居たたまれなかった・・・だけど卑怯者の俺にはどうしても言えなかった。喉まで出かかったが言えねえ・・・

その内にあの方は目が見えなくなり、耳が聞こえなくなりと段々、弱りなさってきた。俺はこ助さんの聞こえない耳に話したよ...聞こえないとわかっていたから・・・何とか言えた。

そしたらあの方は・・・心で聞いて下さったんだな、泪を流しながら、『いいよ、いいんだ、これも運命だったんだ』って、、、」










つづく



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