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クルミ 5 キナの店

前回

余りに細く小さな手、紫郎は涙が止まらない。


はじまり、はじまり


本来なら有り得ない激情が紫狼の体を駆け巡る。
今日は恵み子の確認と親への挨拶だけで帰るつもりだったが、クルミは満足に食事も摂れていない状態で、とても段階を踏んでいる場合ではない。

一刻も早く此の場からクルミを連れて行きたい!

時間を掛けていれば、この子はもしかしたら死んでしまうかもしれない、、、しかし恵み子とは茂吉が認めなければならない。

紫郎は葛藤する。

恵み子と云う特別な子は稀にしか産まれて来ない。産まれて来たとしても恵み子の職業に就けるのはほんの一握り。実際茂吉が千年近く役所を運営していても、僅か二十人ばかり。

恵み子候補は産まれるが、真に恵み子に成り得るのは滅多に無い。幼くして恵み子として茂吉に選ばれたのは三吉とこの紫狼くらいなものだった。

普通は長い年月を掛け徹底した調査をし、本人と親と再三に渡る面会をして『これなら間違いない』と確信をすると茂吉に伝える。

茂吉はどんなに忙しくとも恵み子を確認しに行くのは必ず自分で行く、そして魂に話しかけ「我と我が同胞と恵み子の道を歩や」と聞き、魂と契約をする。紫狼だけがしていると思い込んでいるがそうではない。

恵み子と認められ迎えが来るのは、十代半ば前後の子供達が圧倒的に多いい。親とゆっくり大切な時間を過ごし、双方を納得させ引き取る。そうなったのも、実は紫狼が訴えたからである。

茂吉が藤平に言っていた、立ち直れない程に落ち込んだのがこの紫狼だった。【魂納めの宮】で再会するしかなかった親に、ひと言も言わず家を出た事を心底、後悔した。だから茂吉に訴えた。

自分と同じ目に他の恵み子達をさせたくはなかったからだ。そんな忸怩(じくじ)たる思いもあったが、そのことを吹き飛ばしてしまう程、クルミは悲しいくらい痩せて小さかった。

自分を見て泣いている紫狼を見て不思議に思う。いつの間にか警戒心は無くなっていた。よく見るととても綺麗な狼で優しく穏やかな声で話す。

クルミの知っている男達は酒臭い息でぞんざいな口を利くが、紫狼は自分と同じ高さになって話しかけてきた。自分の膝が汚れるのもお構い無しに、クルミやキナの膝の砂を払ってくれた。

「ねぇ・・なんで泣いてるのぉ?悲しいの?」

キナは何かを決めたように泣いている紫狼を店に誘う。

「兄さん、こんな往来じゃ幾ら何でも人目があるからさ、ちょいとこちらにお出でな」

キナはクルミの手を右手で取り、左手で紫狼を掴むと二人を連れて店に入る。カウンターに座るように言うと、さっそくクルミに朝ご飯をこさえた。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
kinanomise.jpg


大根の煮物・小松菜と油揚げの煮浸し・若布の味噌汁、ご飯は炊きたてだった。キナは遠慮する紫狼にも馳走してくれた。

「つまんないものばかりで恥ずかしいけど腹の足しにはなるからね」

クルミはものも言わずに一生懸命に食べている。昨日の晩から何も食べていないのだ。キナはそんなクルミを見ながら泣いている。

「そう言えば、あなたのお名前は?」

「えっ?あらやだ!」

キナは急いで泪を拭くと微笑むが、化粧が落ちて凄い顔になっている。だが、紫狼が余りに自然なので本人は全く気付かずスペシャルな笑顔で答える。

「あたい、キナよ♪」

「あたしは紫狼です」

「ふふ、色男の名前は忘れないわよ~」

下を向いて夢中でご飯を食べていたクルミがご飯のお代わりを貰おうと顔を上げるとビックリする。

「おばちゃん、顔が真っ黒になってるよー」


え゛ッ!?


慌てて店の鏡を覗くとアイラインやマスカラがとれてしまって酷い有様。

きゃやーーッ!恥ずかしいッ!もう紫狼さんの前であたいったらぁあッん!!」

キナが急いで二階に駆け上がろうとした時、紫狼が声を掛ける。

「キナさん、恥ずかしがる事はありませんよ」

「だってえーッ」

「あなたはとてもお美しいですよ。美しい心の泪があなたに相応しくないお化粧を洗い流したのですよ」

「えっ」

「だってそうでしょう?この子を見て流した泪はあなたの美しい心から流れたものですよ、慈愛に満ちた泪です。とても美しかったですよ」

「あら、そんなぁ...」

キナは今の今までそんな優しい言葉を言われた事など金輪際なかった。途端に嬉しくなってタオルでごしごしと顔を拭く、途端にオス河童になる。

あれーッ?おじちゃんになってるー!」

「クルミちゃん、そんなことありませんよ。あたしには美しく綺麗なキナさんに見えますよ」

「そうなのぉ?」

「そうですよ、クルミちゃんには見えませんか?この方の美しい心が・・・」

「うぅーん、、、でもさっきより良いみたい!」

「あら、そ~お?じゃ、このままでもいけてるかしらん?」


いけてる


二人して同じに言うと可笑しくなって大笑いをした。




つづく

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