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第九章 親子 世の吉一家2

前回


あっという間に晩ご飯が終わってしまった。もっと話をと思っていたが三吉はすでに夢の中。心地良さそうに寝息をたてている。


はじまり、はじまり


「ねぇ、お前さん」

「なんだい?」

「こう見ると、三吉もお種も大分大きくなっていたんだね、、、」

「本当だなあ、、、三吉の髭なんてこんなに長いのがあるよ」

「あら、本当だよ!この子は男前になるよ~」

「おいらに似てるものなあ」

「何、言ってるんだよッ、あたいの系統だよ!この色男振りはね」

「まっ、確かにそうかもな」

「そうだよ~、見なね。おメメも大きいし、柄も綺麗な薄緑だよ。この肉球の綺麗な色を見てみなね、ツヤツヤしてるよ~」

「ふふ。お種も綺麗な子だし、楽しみだなあ」

「あぁ、そうよさぁ~。お種の亭主になる奴はあたいがしっかりと選ぶんだ。あたいみたいな苦労はさせたくないからねぇ~」

この言葉に世の吉はピッと切れた。


「このあまぁーッ!何を言いやがるッ!


何さ!本当の事だろがッ!ちょいと、あんたッ!子供が起きちまうだろッ。文句があるんなら外に出なよ、相手になってるッ!」

「何をたごとつきやがるッ!悔しいが今晩は特別に勘弁してやるッ!」

「あぁーら、そうですか!ふんだッ

この夫婦は仲良くし続けると云うのは無理のようである。お陽は世の吉に『あっかんべー』と舌を出すと布団を被って寝てしまった。世の吉も喧嘩相手が寝てしまったので、つまらなそうに行灯の火を消し寝てし まった。

お陽は朝も早い内から起き出すと大きな溜め息をついた。(ふぅーぅ)

「あ~ぁ、悲しいねぇ、、、目が覚めちまったよ。ずっと今日が来なきゃ良かったのに・・・でも、そんなこと有る訳ない、、、あーーッ、あたいらしくもない!そうよッ!

グズグズ思っているのはあたいの性に合わないもんね!三吉にとびっきりの朝飯を食べ させてあげよう!」

お陽は昨晩に洗って笊(ざる)に上げておいた餅米とうるち米、とろとろと弱火で煮たささげを蒸篭(せいろ)に入れ、茹だった釜の上に置く。強火で一気に蒸し上げるのだ。鉄鍋を良く焼き、煙が出ると一旦、火口(ほくち)から離す。今度は鍋に油を注ぐ。

そこに極々、細く千切りした牛蒡(ごぼう)と人参と生姜を入れて炒め始める。お陽は舌に絡(から)み付くように細い金平が大好きである。砂糖・醤油・出汁を入れてしばらく炒り煮すると金平が出来上がった。

お陽は赤飯を炊く時は必ず金平を作る。実家の真似である。『お種も嫁に行ったらこうするのかな、、、』と少し考えた。昨日の鯛のアラで味噌汁を作り、小口切りした葱(ねぎ)を散らして出来上がり。

蒸篭から勢いよく湯気が上がってる。蓋をずらすと、ささげの煮汁をまき、蓋をする。その間にぬかみそを出す。頃合いを見計らって蒸篭を釜から外した。ようやくお赤飯が蒸し上がった。いい匂いにつられて家族が起きて来る。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
lastmorning.jpg

「おはよう!早いとこ顔を洗ってお出で」

「ああ」

「わぁ~、いい匂いだぁー。」

「お腹空いたね~」

「今日は赤まんまだよ。美味しいよー、早く顔洗いな」

「わぁーい!」

子猫達は足早に井戸に行く。その後をのそのそ世の吉がついて行く。今朝は世の吉も神妙にしている。文句を言う元気も無いようだ。そんな事は知らぬ子猫達は仲良く井戸で顔を洗っている。

この日が三吉と過ごす最後の朝餉(あさげ)世の吉もお陽も胸が一杯になってしまって中々喉に通らない。それでも努めて顔に出さないようにいつも通りに振る舞った。自分達がメソメソしていれば、負けん気の強い三吉でも後ろ髪が引かれるだろう。

世の吉夫婦は、三吉の性格が手に取るようにわかっていた。いつも通りにする事が、この子への自分達が出来る精一杯の《はなむけ》だと夫婦は考えた。

「ねえ、母ちゃ~ん、おいらが【恵み子】だったらどうする?」

「ったく、又言ってるよー。【恵み子】様なら学校に行かなきゃいけないだろう?」

「そうだよ、おいら学校に行くんだよ」

「はいはい、どうぞ行って下さいな」

「いいの?行っても・・・いいの?だって行ったらそのままで、もうお家には帰れないんだよ?」

「そうかい。じゃ、それだけ大変なお勉強するんだろうよ」

「だけど、、、おいら母ちゃんが『行くな!』って言えば止めとくよ」

お陽は『そうしておくれー!』と言いたいのをぐっと堪(こら)えた。

「何言ってんだい!小さくても男猫がこうと決めた道を母ちゃんの気持ち次第でコロコロ変えるようじゃ、三吉は【恵み子】じゃないね、やっぱりだ!」

「本当だ!とてもじゃないがそんな【恵み子】様はいやしないな」

「えー、だってぇ・・・おいらが居なくなってもいいの?」

「良い訳ないだろ!だけど将来、立派なお仕事をするってわかっているから我慢してやるんだよッ!ねえ、お 前さん!」

「そうさ!だから三吉はあっちに行ったら、頑張って人一倍お勉強して、早くお役人様になって、この世のお役に立つようになるんだよ」

「ねぇねぇ~、なぁにぃ?【恵み子】様って」

「お種・・・」

お陽は自分の心とお種に言い聞かせるように話した。

「いいかい、お種。兄ちゃんはね、今日から遠いい所に行くんだよ。お種も寂しいだろうけど、それは父ちゃんも母ちゃんも同じだ。だけど、兄ちゃんの方がもっと寂しくて大変なんだよ」


「ニャんでぇぇー?


「兄ちゃんは立派なお役人様になる為に、大変なお勉強をするようになるんだよ。お家から学校は遠いいから通う事は出来ないの。だからこうして兄ちゃんと一緒に居られるのは今日だけなんだよ、、、」

お陽は溢(あふ)れる思いを抑え、つまる言葉に苦労しながら話した。


そんニャの嫌ーーっ!!いニャだぁぁーー!いニャいニャぁーーッ!


大きな声でべそをかく。

「お種、泣かないで。一緒に赤まんま食べて、兄ちゃんの門出を祝ってあげようね」

三吉は黙っていた。昨日の尾頭付きの鯛も、今朝の赤まんまも、全て親の心づくしだった事を理解した。三吉は自分が【恵み子】だと言っても、ちっとも相手にしてくれない親に腹を立てていたが、それが全くの勘違いだとわかった。

自分の里心が疼(うず)き、このまま家に居ようと一瞬思った。だが、やはり三吉は【恵み子】この世に使命を持って産まれた子だった。己の生き方は産まれた時から決まっていた。今は悲しいが親もわかってくれている。

「父ちゃん、母ちゃん、ありがとう、、、。おいら頑張るよ。お種、兄ちゃんが居なくなっても死んじゃう訳じゃないよ。こっからは遠いいけど、お勉強してるだけだよ。会えないのは悲しいけどお種も兄ちゃんを笑って送っておくれよ」

三吉がとても大人びた事を言うので、改めて驚いたが、これが【恵み子】なのであろうと理解をする。家族は無理にいつもの朝のようにした。

「さっ、もっとお食べ」

「うん、おいら沢山食べるよ」

「そうしな。金平だってお赤飯だって沢山あるんだからね」

黙ってぽろぽろ大粒の涙を流し泣きながら食べていたお種は、食べ終わると外に駈けて行ってしまった。





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