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第五章 九尾のお蜜 子分の気持ち1

藤平が心配していた五黄は荳傘村(まめかさむら)にいた。
世の吉に頼まれたと云うのもあるが、久しぶりにお蜜の顔も見たかったので気楽な気持ちで向かったのだ。

荳傘村はお蜜の子分達や家族、親戚、それに知り合い等が住む小さな村である。
お蜜の屋敷は、この村を見下ろすように小高い丘の上に建っている。
いつもなら、ひょいとお蜜の前に現れて驚かすのだが、今回は貞吉に話を聞いてからにしようと歩いて村に向かった。

桃吉が驚いたように五黄はとても大きな体をしている。2メートルはゆうにある!
横幅もかなりあるので、それ以上に大きく見え、猫と云うより白熊。
体毛は真っ白なのだが、背中に『火炎太鼓』を背負っている凄い猫である。

だが、目はとても優しい光を放っていた。
自分を見て子猫に泣かれた事がないのが自慢である。
村を通り過ぎ、緩い登り坂を歩いていると、勢い良く駈けてくる者がいる。


「大親分ーッ!お~大親ぶぅ~ん!五黄の大~親分!!」


「あれ、誰だっけ?」

「ひでえなぁ~、伊佐ですよ。忘れないでくださいよぉ」

「ごめんよ」

ニコっと笑う五黄。

五黄はえらぶらないしたまらなく愛嬌があるので、どこに行っても好かれる。
特に子分連中からは信頼も厚く、人気もある。

「伊佐にも言ってあるだろ?親分なんて年寄りみたいでイヤだよってさ」

「そんな事言われたってー!あっし達には雲の上のお方ですよ。大親分と呼ばせて頂くだけだっておそれ多いいのにッ」

「やっぱダメなの?」

「へい、そればっかはきけませんね(ハッキリ)」

伊佐は五黄が大好きなのである。
貞兄が兄弟分の世の吉に、今回の件を頼んだと聞いてからずっと村の出入りを見張っていたのだった。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
isabanzai.jpg


「おいら嬉しくて涙が出ちまう~(泣)」

「ふふ、待たせたね」

「おいら、大親分がいらしゃるのを毎日毎日、肉球折り数え、首を長ぁぁ~くして待っていました」

「その割に首は伸びていないね」

「え?親分のいけずーぅ」

嬉しくて仕方ないものだから、五黄の周りをぐるぐる回る。

ニャらん・ラ・らん♪

「伊佐、目が回っちまうからやめろよ」

「ニャ?へぇーい!」

「屋敷に案内してくれるのかい?」

「へい、もちろんです」

グルグル喉を鳴らしながら先を歩き出す伊佐の後ろ姿は、世の吉が訴えていたように、テカテカした股引(スパッツ)を履かされている。
尾っぽだけは出ているが、踝(くるぶし)まであるので窮屈そうだ。

伊佐は振り向くと、五黄が自分の姿を見ているのに気づき溜息を漏らす。(フゥ...)

「伊佐よ、貞に俺が来た事を伝えてきな。それからその股引脱いじまいな」

「でもぉ...姐御に、、、」

「かまわないよ、その為に俺は来たんだ。だいち脱がねえと走り辛いだろ?」

「うッ...(涙)おっ、大親分・・・」

伊佐は泣きながら、いまいましい股引を脱ぐと、晴れ晴れしたらしく勢いよく走り出す。


ニャったぁぁーー!



道に股引を脱ぎ捨てたままに行ってしまったので、五黄は拾って歩き出した。

「伊佐はよっぽどだったんだな。世のが言ってはいたが、確かに不憫だねぇ」





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第五章 九尾のお蜜 子分の気持ち2

しばらく行くと子分達が尻尾をピーンと立て、緊張したニャ面持ちで整列して待っていた。

「五黄の大~親分!いニャッしゃいやしぃーッ!」



「ふふ、壮観だねぇ」

五黄が言うが早く、泣き顔になった子分達が駆け寄って来る。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります。
nakituku.jpg



大おニャぶぅぅ~ん!ニャぁぁーッ!にャぁ~~!ふんギャ、ニャぎゃーッ!



いい男猫達が泣き騒いでる。その上、どの猫も股引姿をしているので思わず感心してしまう。(ほぉ...)
お蜜の子分は百人ばかりの筈だが、来たのはその半分にも満たない猫数。
そいつらをかき分けて、息せき切った貞吉がやってきた。

「ごッ、五黄の大親分!態々のご来駕(らいが)に恐縮するばかりで、穴があったら入りていでげす。ヘイ」

「貞、どこで覚えたの?そんな大層な言葉」

「ニャへへっ。大親分にお目にかかったら絶対に言おうと練習したでげす。ヘイ」

「ふふ、可愛いこと。伊佐にも言ったのだけど、その大親分って言うの止めないかな?
えらい年寄りに聞こえるよ」

「お言葉ですが、えらい年寄りには違いないでげす。それに幾ら大親分に言われても聞くものじゃありませんで、ヘイ。
おぉ~い、みんなぁー!いい加減泣き止むんだ、みっともねぇッ!」

「へぇーイ」

「ヘーイ」

「へぃ...ッ」(ショボン)

貞は珍しく五黄並みに大きく、柄は薄茶と黒の斑模様だ。
この世界で五黄以上に大きい猫はいない。

「伊佐に聞いたのですけど・・・」

「お前達も脱いでしまいな。だけど伊佐みたいに脱いだままはいけないよ」

五黄は伊佐の履いていた股引を貞に見せる。

「げッ!伊佐ぁーっ!おそれ多くも大親分さんに、こんな薄汚いものを持たせるなんてぇのは、どういう了見だぁーーッ!!」

貞はもの凄い猫パンチを伊佐にする。


バッシッーン!


(い"ッニャっ、涙)

「すッ、すいません!あっしはつい嬉しくて嬉しくて、、、」


「言い訳すんニャーーッ!」


また猫パンチを伊佐にしようとしたので五黄が止める。

「やめなよ、そんなつもりで云った訳でないよ。
この股引がイマイマしいのはわかっているよ。

だけどあっちで脱いでこっちで脱いでと、大人数がやらかしたらいけないだろ?だいち子供の教育に良くない。一緒にまとめて裏庭にでも捨てて置きなと言いたいのさ」

「へい。でも大親分に、、、」

「貞、いつものお前らしくないよ。いけないよ、お前はただでも手がデカイんだからよ」

「大親分ほどじゃありませんでげす」

「何を言うんだい、この紅葉(もみじ)みたいにカワイイ手を」

「紅葉って・・・」

グローブのような手を出して、五黄がしらっとそんな事を云う。

「ニャは、やだなぁ~」

あっははは~

ニャひひひ

にゃははぁー

ピリピリとした雰囲気が五黄のおとぼけで、和やかになる。
皆、ひとしきり笑っていた。

「貞、早く脱ぎなよ」


「へい!そんじゃ~てめえ達も大親分がああ仰って下さるんだ、チャッチャッと脱いじまえ!」


へぇーーい!



子分達は脱ぐとホッとしたのか、へたり込む者もいる。

「てめえ達!大親分の前でだらしねえぇぞ!」

「そんなにキリキリ怒るものじゃないよ。辛かったんだろよ。さて。じゃ、ここに座って貞の話でも聞こうかい」

「とッ、とんでもねえでげすッ!サロンにテエー(tea)を用意しているでげす」

「なんだ?そのサロンてのは」

「行けばわかるでげす。ヘイ」

横を子分達がそれぞれ股引きを持ち、ニコニャコしながら五黄に会釈し通り過ぎて行く。

(ゾロゾロ、ゾロゾロ)

子分達が行く先に異様な建物を見た!

「おい、なんだあアレ?」





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第五章 九尾のお蜜 子分の気持ち3

お蜜屋敷


挿絵参照↑↑↑  絵をクリックすると大きくなります

余りの衝撃に走り出す。近くで見るとあり得ない建物が建っていた!
五黄が知るお蜜の屋敷は、美しい日本家屋だった。渋い『銀鼠の瓦』『蒸栗色の土壁』どこかしこをとっても風情ある屋敷に違いなかった。

だが...目の前には、古びて趣のあった檜の柱は白ペンキで塗られ、輝くような美しさを見せていた瓦はなんと赤く塗り潰されていた。
てっぺんにはご丁寧に旗まで立ててある。

「こりゃ、何かのまじないかぁ?」

「違うでげす、大親分!あの看板見てくだせい!」

〔CASTLE〕

「きゃあする?」

「大親分、キャッスルって読むんでげす」

「なんだよ、キャッスルって」

「へい、城っていう意味らしいでげす」

「城?こりゃ城なのかい?」

「へい、姐御いわく。
お姫様はお城に住んでいるものょ。そしてお城の壁はぜ~んぶ白で屋根は赤いのょぉ。
旗も立てなきゃいけないの。王子様がお姫様の居場所がわかるようにね、ウフ」

貞はお蜜の口まねをする時は、体までクネクネする。

「誰が姫様だよ」

「もちろん、姐御でげす」

「いつから姫になったのよ?」

「かぶれ猫が置いてった『眠りニャ姫』とか、『ニャンデレラ』とかいう本の影響でげす。
詳しく知らない村の連中はキャッスルなんて云いません。姐御がとうとう頭にきちまったってんで、みんな茶化して『キッテル!キッテル!』と呼んでるんでげす」

「あれ?ここに門冠り(もんかぶり)の立派な五葉の松があった筈だけど」

「へい、立派な松も伽羅(きゃら)の大木も百日紅(さるすべり)も全て引っこ抜きましたでげす」

「なんでそんな乱暴なことを!」

「ニャーデン(ガーデン)を作る為らしいでげす」

「なんだぁ、そのニャーデンてのは?」

「西洋の庭らしいでげす。

コニャファー(コニファー)やら、ニャンジー(パンジー)にチューニャップ(チューリップ)てな花を植えるらしいでげす。
たくさん本を取り寄せては自分は、ぱらぱら捲(めく)るだけで後はあっし達に読んでおけと、、、。

【楽しいDIニャン】

《あニャたもできる・基礎講座シリーズのペンキの塗り方》

この本は御陰で役に立ちましたでげす」

「アレはお前達が塗ったの?」

「へい、子分総出でげす。屋根から落ちる者続出でした。今だに松葉杖の奴もいるでげす」

「不憫だねぇ」

「へい、今度はニャーデニングでげす、もちろん本を取り寄せやした。

【私のグリーンニャーデン】

【ハニャのある暮らし】

《あにゃたもできる・基礎講座シリーズのニャーデニング》

立派な木を拝みながら切り倒した時に、不幸な事件がおこりやした」

「どうしたの?」

「へい、それがでげす 村の源助爺いが庭の植木を全て倒すと聞いたもんで慌ててやって来て、
『その冠りの松を倒したらたたりがあるーーッ!』って、、、。そんでもお構いなしに切っていたら、ウーンって云ってぽっくりあの世に・・・旅立ちやした(ウッ...涙)

さすがの姐御もその時だけは考えたようでしたが、結局この有様でげす。あっし達の間では源助爺いの一件を肝に銘じているでげすよ...(涙)」

「凄いことになってるのね」

「へい...死傷者十名・逃亡者三十名でげす」

「さっき俺の周りに居たので全員だったの?惨澹(さんたん)たる有様だね」

「前説はこの位にしときます。本番はこれからでげす」

貞は厳めしい顔をして玄関に向かう。よく見ると板戸には全て釘が打ってある。
真ん中の板戸には取っ手代わりなのか、荒縄を丸く結んである。

「すごいね」

「へい、ドアでげす」

「確かにドアには違いないねぇ」

「取っ手が足りなかったので、工夫したでげす。

大親分!中に入ってニャっくり返らねえで戴きてえ」

「わかってるよ、大分慣れたよ」


!?ーーーーッ!!!


ひっくり返りそうになった。

家の中の壁はもちろんのこと、全くお構いなしに白ペンキが塗りたくってある。素人猫が刷毛で塗ったものだから、斑模様になって地が見えている。
その上、赤い毛氈(もうせん)が広間を突っ切ってずっーと長く続いている。

「これ何よ?」

「へい、赤絨毯(じゅうたん)でげす。姐御の部屋まで続いているでげす」

案内をする内に貞は悲しくなって来た。






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第五章 九尾のお蜜 子分の気持ち4

kobunnamida.jpg


挿絵参照↑↑↑  絵をクリックすると大きくなります

「大親分に申し訳ねえでげすが、あっし達が普段居る部屋があるんです。
そちらの方が落ち着いて話もできそうなので、如何でげすか?」

「ああ構わないとも。その方がいいよ」

玄関を出て少し行くと、外からも出入りができる二十畳程の和室がある。
土間があり、腰かけてお茶を飲んだり、畳で横になることが出来るといった部屋である。
五黄と貞が行くと伊佐を入れてそこに五人程居た。

「お邪魔するよ」


ニ"ャ"っ!?


子分達が驚いて鯱(しゃち)ほこ張っている。

「貞兄いー!大親分をこんな部屋にーーッ」

貞は子分達にうるさく指図して、座敷を整える。

「申し訳もなさ過ぎて言葉もありませんでげす、、、
でも、大親分のあまりに驚く姿にあっしもなんだか悲しくなりやした。
サロンにテエー(tea)を用意はしていたんですけど、あっちの部屋より、こちらの方が落ち着かれると思いやしたでげす」

「ありがとうよ。俺もあまりなのに只、驚いてな」

「ここはいじらせないようにあっし達で死守しました」

伊佐が熱いお茶を運んで来た。貞は干菓子をすすめながら、自分もホッとしたようにお茶をすする。

「ここはいいでげす。あっし達の汗も涙も知っている部屋ですから」

貞がしみじみ云う。伊佐や子分達が嗚咽を漏らしはじめる。

「もっと早く来てやればよかったな」


「お、大親分ーーッ!!」


貞達は耐えていたものが一気に吐き出されたように大泣きした。


ニャぎゃー、にゃギャーッ


貞達が泣き止んで落ち着くまで五黄は、子分達の肩に手をポンポンとおいてまわった。
五黄の暖かい大きな手に触れられると、子分達は自然と落ち着いて来た。

「お見苦しいとこをお見せしやしたでげす」

「いいじゃないか、俺は何も見てないよ」

五黄の優しさに胸を打たれ、皆じーんとする。

「屋敷の話は後で聞くとして...。世の吉にあらましは聞いてるけど、そもそもきっかけは何よ?」

「ヘイ。それがでげすね!
きっかけはノン吉兄貴が、人国かぶれのジョニーを連れて来た事が始まりでげす」

「えっ、ノンが?ノンが連れて来たの?」

「へい」

「あらら。騒動の種を持ち込んだのノン吉だったの?それは知らなかった。
それじゃ、詫びるのはこっちの方だよ」

「滅相もねえでげす!お気になさらないで下せい。あっし達はノン吉兄貴を恨んではいやしません。
兄貴は三日ご滞在しただけですぐにお発ちです。
いけなかったのが、あのかぶれ野郎を置いていったことでげす。
持って行ってくれりゃ良かったんですけど」

「そりゃ、いけないね」

「初めは兄貴も連れて帰るつもりだったようでげしたが、もう姐御がいけねえ。
『連れて帰れば一生恨む』と大騒ぎ!それで結局置いていったんでげす」

「虫が起きたね、あいつの虫は特大だよ」

「ヘイ、そうなんでげす。
あの野郎もノン吉兄貴が居た時は大人しくネコ被っていたんでげすが、兄貴がお帰りになった途端、姐御の色だっていうんで急に威張り出したんでげす。
最初はあっし達も兄貴の連れだと思いますから我慢していたでげすよ。
姐御に『ハニー』なんて変な呼び名を付けたりしてもでげすよ」

「?・・・・」

「その上、屋敷に汚い字で看板書いたり、部屋をサロンだのホールだの呼んでいても耐えていたんでげす」

「辛かったねー」

「だけど、どぉーうにも我慢がならねえ事が起きたんでげす!」

「なによ?」





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第五章 九尾のお蜜 子分の気持ち5

「姐御が野郎からイングリッシュとか云うのを教えてもらえと。あっし達だけに習わさせていたんでげす」

「自分はよ」

「『とっくに個人レッスンを受けてる』って...聞くのもアホらしくなりまして」

「さもあらん」

「そしたらあの野郎、ますます付け上がりやしてね、授業だとか云ってえらそうに、あっし達に命令するんでげす。
やれ発音が悪い!やれ物覚えが悪すぎる!ってね。
あの日もいつものように文句を並べてたら、そこに亀が授業に遅刻したんでげす」

「そしたら?」

「あの野郎!遅刻の理由何一つ聞きもしねえで、亀に頭っから怒りやがって、言うに事かいて『木偶(でく)の坊の無駄飯食い』ときたもんだ!これにはあっし達も怒ったねえ、
あっしが手を出そうとしたら、すでに亀の奴が殴っていやした。


てめえに無駄飯食いなんて言われる筋合いもなければ覚えもない!
てめえーの方こそ、無駄飯食いの居候めーッ!我慢の限界!堪忍袋の緒が切れた!』
ってね」



「で、尾っぽを切ったの?」

「ヘイ!こっちは堪忍袋の緒を切ったんでげすから、奴には尾っぽを切ってやりました(ニャヒヒ)」

「同じ【お】の字でも違うでないの」

「へへ、あの野郎、ひぃひぃ泣きながら
『テールがっ、テールがっ』て。
あっし達も勢いがありやしたから、

『その汚いテルテル持ってどこにでも行きやがれーーーッ!
このスットコドッコイのすかんぴん』って」



「追い出したわけね」

「へい。スーっとしたでげすよ~。
あっし達はこれでいつもの日常に戻れる!ニャんて糠(ぬか)喜びしていたでげす。
そしたら、あの野郎!飛ぶ鳥後を思い切り濁して行きやがったんでげすよ」

「言いつけたのね?」

「ヘイ。あの野郎がある事ない事、姐御に言いつけたもんだから、
怒ったねぇーーッ、恐ろしいの恐ろしくないのってもう半端じゃなかったでげすよッ」
omitukowai.jpg

挿絵参照↑↑↑  絵をクリックすると大きくなります

「ふふ、怒ると怖いものね」

「全くでげすぅ。あっし達の顔を見るなり
『あたいの色に手え出しやがった~!』
普段は人並みサイズの九本の尾っぽが天井まで届く程ふくれて、それがもぉー、別の生き物みたいにあっし達に向かって来る。

それに目はランランの真っ赤か!口は裂けているんですッ!それが巻き付いてきて、絞め殺されるか食われると思いやしたから、ひたすら謝りやしたッ」

「それであの股引なんだ」

「ヘイ。その上にあの屋敷でげす」

「ふーん、なるほどね。よーくわかったよ」

「五黄の大親分!あっし達は今回の一件で、ほとほと姐御に愛想が尽きたげす。今までも男を取っ替え引っ替えしていやしたけど、ここまでの分別なしはなかったでげす。

あっし達はもうウンザリでげす...(涙)どうか大親分のお身内にして下せえぇぇ。
もちろん、あっし達は居候にはニャりません。





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第五章 九尾のお蜜 子分の気持ち6

tofuya1dai.jpg


挿絵参照↑↑↑    絵をクリックすると大きくなります


こう見えても『手に職持つ二足のわらじ』決してご迷惑は御掛けしやせんでげすから...」

「貞は豆腐屋だったね」

「ヘイ、伊佐も豆腐職人でげす。こいつら全員豆腐職人か豆腐売りしてるでげす」

「うちの村の豆腐屋、誰だっけ?」

「あいつはあっしの弟子の太吉でげす。優秀だったんで暖簾(のれん)分けしたんでげす」

「九味豆腐はおいしいもの」

「ニャひ。大親分に褒められると照れるでげす。姐御の九尾から一字戴きやした、苦心の末の九味豆腐。
今はこうして弟子が増えやして、今じゃ全国展開しているでげす」

「お蜜の子分でないの?」

「あっしが吸収合併しやした。手に職を付けた方がいいでげすから」

「遣り手だねぇ」

「それが姐御の我が儘で、折角の職人や売り手が怪我したり逃げ出したり、、、姐御はわかっていねえんでげす!どうやって、おまんまを食べているか」

「貞はえらいね。お前は俺が会う度に成長しているね。最初に会った時はまだほんの子猫だったのにね」

「ニャだなぁ~、そんな昔のこと。恥ずかしいでげすよ」

「でも貞よ、もう少しだけ辛抱しないかい?俺はまだお蜜の顔も見ていない。

そういや、お蜜は何してんの?」

「お昼寝でげす。シエスタとか云ってます」

「仕方ないねえ、そろそろ顔を見に行くかな」

「大親分!あっし達のことは?」

「ふふ。今まで辛抱したのだろ?」

「ヘイ!」

「それじゃ、もう一日位待てるだろ」

「どういうことで?」

「俺のひげが教えるのさ。そのかし、お前たちはお蜜の前に出ない方がいいね」

「ご心配無用でげす。あれ以来、あっし達に会う事もしねえでげす。用事を言付けに来るのはお熊婆なんでげす。さすがの姐御もお熊婆には大人しいでげすから」

「うちのお滝みたいなものかね」

「とんでもねえ、あの婆に比べたらお滝さんは子猫でげすよ。お熊婆ときたら平気であっしらに猫パンチしますからね。ある意味お熊婆の方が厄介でげす。姐御みたいに鼻から間違っているならいいんでげすよ。だけど、あの婆は云ってる事は正しいから始末に負えない」

「そうなの?」

「ヘイ。あっしが愚痴をこぼすと『何、言ってるんだいッ!お前はこのごろいい気になっている!ちっとばっかし豆腐が売れてるからって天狗だよ、みっともない!

だいたい、照る日曇る日、お前達が苦労したことあるかい?えッ!あるのかいッ?機嫌ようお前達が商い出来るようにって、天の神々様にお嬢がお願いしているんだッ!!

その為にあの美しい尾の毛を毎日毎日一本、また一本と抜いて祈願にお使いになって三十年。一日たりともお休みならずになさっているから、今じゃ尾の毛が少なくなって...(ウルウル)

御可哀想で泣けるよーッ。(涙涙)そんなお嬢の息抜きに、一々角立てて!源助爺は寿命だったんだよ!それを妙な噂して全くッ!どニャつも、こニャつもなってないよッ!!』って。
あの婆はそう言ってあっしを怒鳴り付けるでげすよ」

貞の様な古手の子分は理解できても、新しく子分になった者は豆腐作りの修行の為、貞に弟子入りしている猫達なので、お蜜の事をわかってはいない。余計な厄介ごとを持ち込むだけとしか見ていないのだ。貞はいわば板挟みになって苦しんでいる。自身でどうにも仕様がないので、自分達の気持ちとお熊婆の思いを伝えたのだ。

「ふふ、貞の気持ちはよくわかったよ。それじゃ、お蜜に会おうかね」

五黄が『スゥー』っと掻き消えた。子分の中には腰を抜かす者もいた。


ウニャーッ!!


「さすが大親分!姐御にもおよそ出来ねえ芸当だ」





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第五章 九尾のお蜜 女猫お蜜1

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五黄はお蜜の寝間にいた。

場所は変わらずに二階だが、部屋を見回すとやはり大分変わっている。
五黄は藤平に洋館をプレゼントする程だから、洋室のしつらえはわかっている。

だからこの部屋はチグハグでおかしな印象を持った。壁紙は趣味がいいとはいえないし、窓には極彩色のカーテン。

家具と云えば空気で膨らむ安っぽいビニールソファー。猫のぬいぐるみが置いてあるのはご愛嬌か。

鏡台の上にはこれまた安っぽいプラスチック製の櫛や手鏡が置いてある。
五黄は何でも屋の甲助に、お蜜が騙(だま)されて買ったのがよくわかった。

甲助を一度こっぴどく叱らなくてはと思った。
五黄はノン吉と甲助だけに『人変わりの術』を教えてあった。

人国の物でもこちらに役立ち、且つ美しい品と判断した物を買いに行かせる為に伝授したのであって、勝手にこのような品物を売買する許可は与えていない。

民が眼鏡等を使用できる様になったのも、五黄のそんな計らいあっての事だ。
腹を立てながらもぐっすり寝ているお蜜に近づく。

だらし無くベッドから下がっている九本の尾の毛は、確かにまばらになっている。

剥(は)げているのもある。
五黄がお蜜の尾をさわると毛が見る間に生えて来る。ニヤッとしてお蜜のそばに行く。

ベットの枕元には五黄の絵が飾ってある。色が居ても居なくてもお蜜の心は一筋らしい。

プレゼントした螺鈿(らでん)細工の宝石箱は開いていた。お蜜は指輪を全てはめている。

五黄は指輪を持ってくるのを忘れた事に気づくと、自分の毛を一本抜いて手に乗せ、フっと息を吐きかけた。

すると、、、あ~ら不思議!!一本の毛が美しいエメラルドの指輪になった。
五黄は満足げにうなずいて、優しくお蜜を揺らして起こす。

「お蜜、、、起きなよ。お蜜、俺だよ」

「うぅ~ん、眠いんだよぉ~、お熊、もう少し寝かせておくれょ~」

もう一度揺らすと薄目を開けるお蜜。

「あら?お熊が大きくなってる!」

「バカ、俺だよ。いい加減に起きなよ」

「やだわぁぁ~、また突然に来るのだからぁ~、寝顔を見られちまったじゃないかぃ~。恥ずかしいったらありゃしないよん、もぉ~」

「ふふ、そんな仲でもないだろうに」

「だってぇ、せっかくお前さんがいらしゃるなら・・・あたしだってそれ相応の身支度や準備だってするのにぃ~」

「お、そうだお蜜、忘れない内に、、、何だってこんなに指輪をはめてるのさ?全部塞(ふさ)がっちまってる」

「だってお前さんと一緒な気がするのだもの。この頃ちっとも来てくれないからぁぁ」

お蜜は指輪を全て外して、指を差し出す。『あ・うん』の呼吸か、五黄がはめてやると抱きついて来る。

「あたし嬉しいぃ~!」

「これで無沙汰を許しておくれ」

「もちろんだょ、お前さぁ~ん!」

お蜜が心底惚れているのは昔から五黄だけ。あまりにも長い間来ないでいると、腹が立ってやり切れずに虫を起こす。元々相手に惚れてる訳でもないのですぐに捨てる。

不思議と五黄は自分が虫を起こすと、噂を聞きつけてやってくる。
今回も違いないと思った。

「ねぇお前さん。今度は長逗留しておくれょ。この前みたいに月半ばで帰っちゃいやだょぅ~」

「わかってるよ、今回はお前が帰れって言うまで居るからさ」

「本当かい?本当だね?信じてもいいのかい?」

「本当だとも」

「うれしぃーッ!」

馬鹿ップルぶりでは世の吉夫婦と大差なく、こんな会話を飽きもせずに百年単位でやっているのだから年期が違う。二人の圧倒的な勝利である。アホくさ。

それから言うに言われぬ二人はあま~い時間を過ごす。
お蜜は食事にしようと五黄を誘う。二人は寝間から出ると続き部屋に入る。
そこの調度品も悲惨な有様だったが、何も言わなかった。




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第五章 九尾のお蜜 女猫お蜜2

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挿絵参照↑↑↑   絵をクリックすると大きくなります

お蜜は下の階にいるお熊に声を掛ける。

「お熊~、旦那様がおいでだよ。お食事の支度をお願いよ」

お蜜は食事の仕度ができる間にお茶を入れる。

「ねぇお前さん、この部屋どう思う?」

「どうって」

「うふ。気に入ってくれたかしら」

お蜜はとてもきれいな藤色の猫である。耳毛だけは白く、とても良いアクセントになっている。

九本の尾は藤色から濃い紫色へとグラデーションになっていて、他の猫とは比べようもなく美しい。五黄は見る度に思うのだが、お蜜の九本の尾っぽが、からまないのが不思議でならない。

「お前さんたら、何考えてんのよぉ~あたしが何度も呼んでいるのにッ」

「へっ?いや別に。随分きれいだなあって見とれていたんだよ」

「もお、お前さんたら、いやあねぇぇ~、本当のこと言って」

「・・・・・・」

五黄は忘れていた。お蜜は半端じゃないナルシストだったことを。
それが原因で猫になった事をすっかり忘れていた。

お蜜の自慢話を適当に聞いているとドアをノックする者がいる。

「お嬢、お食事をお持ちしました」

「ありがとう、お熊。入って頂戴」

お熊は入って来ると手際よくテーブルに食事をセットした。

「お熊は元気そうだね」

「はい、旦那様。旦那様がいらっしゃるのがわかっていれば、もっと美味しいものを用意しましたのに」

「どうしてそんな事を言うのだい?」

「だってこんな代り映えのない品ばかりで・・・」

五黄はここの豆腐料理が好きだった。貞の作る九味豆腐は絶品であるだけでなく、どのように加工しても豆腐本来の美味しさが生きている。

特にお熊が調理する豆腐料理の数々は飽きる事がない。

「俺はお熊の作る食事が大好きだよ。お蜜には悪いけど、ここに来るのはお熊の料理を食べたいと思って来るのかもね(笑)」

「ひどいわ~!あたしはおまけなの?」

お蜜はそう言いながらも、身内同様のお熊を褒めてもらうのがうれしい。お熊はお蜜をかばう為には平気で誰にでも憎まれ口をきくものだから、好いてくれる者もいないし、まして褒めてくれる者等五黄以外にはいないと思い込んでいる。

「旦那様はこの熊めの拙い手料理をいつもお誉めくださる。熊は果報者でございます」

「ふふ、大仰な事を言うよ。それじゃ頂きます」

五黄は食事をどんどん平らげていく。お蜜もお熊もいつもながらの食べっぷりに感心している。

「ねぇお熊~、これお豆腐かな?とても喉ごしが良くて美味しいのだけど」

「はい。それはざる豆腐より弛(ゆる)めのものを使います。とても柔らかいので青竹に入っています。
井戸でよく冷やし、その冷えた処に夏なら茗荷、生姜の極々細い千切りを。

今は春ですので、たらの芽を茹でて煮浸しにしてから、これも良く冷やして、お召し上がる直前にそっと豆腐の中に忍ばせます。

そこに冷えた胡麻だれを掛けたのでございます」

「さすがだねぇ~、豆腐の甘さとたらの芽の苦みが堪らなく美味しいよ」

「お気に召されて何よりでございます」

「本当に美味しくて気に入ったよ。藤平へのお土産にしたいよ。でも、太吉の豆腐屋でもあるのかな?」

「これはまだ、どこにも売っていません。貞によりますと加減が難しく弟子達にも教えられないそうです。
ですから、ぜひお土産にしてお持ち下さいませ」

「お熊ったら何を言うのよッ!お土産なんてぇ~、もう帰るみたいじゃないの・・・」

「そんなことないよ、ねえお熊」

「はい。旦那様がお土産にしたいと仰って下されたのを貞が聞けば、喜ぶと思います」

「ふふ、お熊は貞と気が合うのかい?」

「とんでもないことです。あの馬鹿は御嬢の御苦労も忘れて、自分だけが苦労していると思っている唐変木です。この前だって散々に叱ってやりました。

尾の毛を禿げにしてまで、役立っているお嬢をわかっちゃいないんです。
猫一倍自惚れが強いお嬢が、この頃は傍目(はため)でも目立つ程におなりで、、、

誰にも会わずに閉じこもって、昼間はシェスタだとか云って、子分達には言い訳までなさって、、、あの馬鹿たちは何にもわかっちゃいません。

見て下さいまし!御嬢の尾を」





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第五章 九尾のお蜜 お熊の秘密1

「何するのよッ、お熊!やめてょッ!」

「いいえ!旦那様によぉーっく見てもらうんです」

どたばたしている二人を眺めて五黄は笑っている。

「お熊、お蜜の尾は綺麗なままだよ」

「えッ?そんな」

「何言ってるの?」

お熊とお蜜はお互いを見合って二人で尾を見る。

「生えてる~!生えてるわぁ~!あたしの毛が!」

「はっ、生えてる!禿げちょろりんじゃない!」

お熊は身体中の力が抜け、その場に伏せてしまった。涙が次から次へと溢れ五黄の心配りに心底感謝した。

「お前さんの仕業なの?でもいつ?」

「俺からのお土産かな。お熊何してんだよ、立ちなよ。そんなじゃ話ができねえよ」

お蜜に支えられ、お熊は立ち上がる。

「熊は嬉しゅうございます。御嬢の我が儘をきいて下さり、猫にさせて頂いて以来の喜びです(涙)」
okumanohimitu.jpg

挿絵参照↑↑↑   絵をクリックすると大きくなります

元々お蜜は猫ではなく狐だったのだ。それも九尾の狐。お蜜には姉がいる。『金毛九尾のお風(ふう)』
お蜜は妹として暮らしていたのだが、お蜜はいつも我慢がならなかった。

才覚も美貌も何もかも姉と比べられる事に耐えられなかった。
確かにお風の輝く金毛はこの世のものとも思えぬ美しさ。

例える言葉もない程の『品格』と『風貌』、『才気』と慈愛に満ち溢れる『翡翠色の目』お蜜がひっくり返っても、そっくり返っても勝てる相手ではないのだ。

悶々とした日々を送るお蜜の気持ちを知っていたのは、乳母のお熊だけであった。
お蜜も決して劣る容色ではなく、美しかった。只あまりに片方の桁が違い過ぎた。

お熊にはどうしようもなく、慰めるしかできない。それとて逆にプライドを傷つけてしまう。お熊が途方にくれている内に、いつかお蜜は伏せるようになってしまった。

人前に出るのが嫌になったのだ。日に日に痩せていく姿を見て、浅はかなお嬢と叱る気も失せてしまう。女心がわかるお熊だけにお蜜の姿が切なかった。

思い切ってお風に談判をしに行った、階段をいくつも昇った先にお風の居室がある。

「このお屋敷からお嬢をお出しになさって下さい」

お風は狐払いをするとお熊をそばに呼んだ。
いつもながらにお風の美しさにはため息が出る(ほぉ~)でもお熊は泣きながら訴えた。

「このままではお蜜様が死んでしまう、、、あなた様は、お蜜様の姉さまなのだから、どうかわかって欲しい」

「お熊、ありがとう。お前の気持ちが心底ありがたい。お礼を言います。わたくしはお蜜の病が気うつだと思っていました。原因も薄々感じていましたから、なぜなの?と、問いつめて叱ってもせんない話です。

姉として妹一人、慰めてやれないのですから情けないことです。この病を治せるのは残念ながらわたくしではない。
この世で出来るのは五黄様だけです、あの方のお力にお縋りするしか法はないです」

「どうなさるのですか?」

「あの方にお蜜を猫にしていただくのです」

「えーッ?えーッ?」

「わたくしだって本当は嫌です、悲しいのです。だからと言って、少し離れていれば良いということでもない。
同じ狐族であればお蜜の心に安らぎはないでしょう。

猫として、猫国で暮らせば病いも癒えてきっと落ち着くでしょう。
普通の者を変えるのならわたくしにも出来ますが私達のような妖力の強い者を変えることがお出来になるのは五黄様だけなのです。

五黄様には書状をすでに送っております、その内に良いお返事が頂けると思います。
そうしたら、お前はお蜜に五黄様のお話をするのです。

このようにね、、、、、

『お嬢、噂に聞いたのですが、猫国の五黄様は何にでも姿を変えて下さるそうです。お屋敷をそっと抜け出してお熊と一緒にお頼みに行きましょう、きっときいて下さいます』

わかりましたか?このように言うのです」

「でも、それではお風様がお困りに・・」

お風は天の神々から狐国を与えられている、この国の王なのである。
其れぞれの国には要となる兄弟を授けているのだ。猫国は五黄と藤平の兄弟、狐国ではお風とお蜜の姉妹。

兄や姉が国の王と成り、弟や妹は王を補佐し生涯を王と国の為に尽くす。




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第五章 九尾のお蜜 お熊の秘密2

お風はその大切な補佐を、他国にやるばかりか姿まで猫にするというのだ。
神々からお叱りを受けるのを覚悟しなくては出来ないことであった。

それはまた、迷惑をかける事になる五黄にも云えることなのである。
大それた事をお風はお熊に語っているのだった。

お熊は自分の短慮を恥じた。お風にした直談判は唯の八つ当たりでしかなかったのに、叱る処か詫びても下さった。お蜜もお蜜だが、自分も付ける薬のない愚か者だと己を恥じた。

お風が黄金色に光り輝く意味に納得した。国の要である王は必ず黄金色をしている。
五黄は背中に『黄金色の模様』

河童族のまま子は『黄金色の甲羅』
狸族の狸兵衛は『黄金色の太い尾』というように。

そして藤平やお蜜たちは必ず『白銀色』となっている。

「何も心配ありません。わたくしにとっては、お蜜はかけがえのない存在であることに変わりはないのです。
お蜜の幸せはわたくしの幸せなのです。

それよりお前に是非にも、お蜜に使えてもらいたいのですが、、、そうすればお前も猫になる事になります。とても行ってくれとはわたくしには言えません」

「何をおしゃいます!熊には身内なぞおりません。居たとしてもこのお屋敷に上がってからは縁も切れました。なんの斟酌(しんしゃく)もありません。どうぞ行けとお熊におしゃってくださいませ!喜んでお蜜様のお側にお使い致します」

「ありがとう・・・お熊。お前にまで苦労を掛けてすまないことです」

お熊は遠い過去の記憶にとらわれ、お蜜に肩を揺さぶられ、やっと気が付いた。

「つい昔を思い出していました」

「そんな大昔のことを?」

「ふふ、お熊は大変だったものね」

「お嬢と見つからないようにお屋敷を抜け出して、お嬢の尾で空を飛び、国境に着きました。お屋敷まで一気に行くつもりでしたが、妖力が弱くおなりになり、どうにもなりません。それは五黄様が他国者に強い妖力を使用出来ぬように、お国全体に術をお掛けだと後で知りました」

「無駄な争いを避ける為だよ」

「粒銭を持っていたとはいえ、途方に暮れました」

「あの時は楽しかったわ」
omituais.jpg

挿絵参照↑↑↑  絵をクリックすると大きくなります

「あれ程に気落ちして身も世もない有様だったお嬢が、生き生きとなさって心底楽しそうでございました、お買い物も沢山なさって」

「だって皆、あたしを見てきれいだって褒めてくれるのよ、それにどれも美味しいし、楽しいし、鬱々(うつうつ)なんかしてられなかったわ」

「ほんに現金なお嬢です」

「知らせをよこせばいいものを。迎えをやったのにな。俺の屋敷に着いた時には二人ともよれよれだったな」

「とんでもない事をお願いしに行く者が、旦那様からのお迎えを受けるなんて滅相もございません!這ってでもお熊はお屋敷にお伺いする覚悟でおりました」

「あら、そうだったの?」

「当たり前です!お熊が悲壮な覚悟をしてましたのに、お嬢ときたら『猫に成ったら何色が良いかな~ぁ』ですって、、、お熊は付いてきたのを後悔しましたよ」

「あら知らなかった」

「そうでしょうとも!」

ムッとした顔をしてお熊は黙り込む。五黄がお熊をいたわるように話し出す。

「お前だから、案内もないのに俺の屋敷に間違いなく来れたのさ。狐国と猫国の国境から俺の屋敷は遠いもの。本当に感心しているよ」

「旦那様にそうおしゃって頂けますとお熊の気持ちも報われます。ひと月あまりの長い旅の末にお屋敷に着いたのが真夜中でした。朝まで御門前で時を過ごすつもりでございました。

あの時、偶々(たまたま)お屋敷から出て来られる人影に驚いていると、なんと弟の藤平様!私共も驚きましたが、藤平様も驚かれたようで、お互い暫くその場を動けませんでした。

熊は御門前を拝借している事をお詫びし、朝になったらお尋ねしたいと申し上げました。藤平様は、私共を早速お屋敷にお連れ下さいました。

そして手早く手際良く、とても美味しいコーヒーを入れてくださいました。あの時のコーヒーの味は生涯忘れられません」





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第五章 九尾のお蜜 お熊の秘密3


「藤平がお蜜がやって来た!って、血相変えて寝間に来た時は驚いたよ」

「そう言えば、、、ついぞ忘れていましたが、あの時なぜ藤平様があんな夜中に御門前にいらっしゃったのでしょうか?

おかげで私どもは恥ずかしい身なりを、お屋敷の方々に晒(さら)す事なく済みましたが、、、」

「ふふ。藤平はね、子供が捨てられてないかを見に行っていたんだよ。捨てる親は人目に触れたくないだろ?だから子供を夜中に捨てるのさ。

本人はそのまま行ってしまうのだからかまやしないよ。だけど捨てられた子供はどうなのよ?大がい乳飲み子だよ。
そのままにして朝まで置いたら体にさわる処か命も危ないよ」

「そうだったのですか!藤平様は自らそのような功徳をなさっていらしたのですね」

「私たち、藤平さんに拾われたのね」

「何を言うんです!本当にお嬢はわかっていらしゃらないッ!」

「なぁ~にょぉ。もうお熊は怒ってばっかり!」

「まあまあ、二人とも・・・結局こうしてお蜜は好きな藤色の猫になったんだから良いのじゃないか」

「そうね。お熊の御陰で、わたしは無事にお屋敷に着いて、そしてこんなにもきれいな色の猫になれたのだものね」


「どの口が言っているんですーーッ!」



お熊はもの凄い猫パンチをした。

挿絵参照↓↓↓   絵をクリックすると大きくなります
tatakarete.jpg

バッチーン!!


五黄も驚いたが当のお蜜はそれ以上だっただろう。


「なッ、何するのょッーーーッ!お熊ーぁぁ!」



「馬鹿な事を恥ずかし気もなく喋る口を叩いてやったんです!もうッ、もうッ、熊は堪忍できません!お嬢の余りの情けなさに耐えられません!


お暇を頂きますッ!!!」


お熊は部屋を出て行こうとした。慌てたのがお熊に叩かれたお蜜だった。怒りの原因もわからずにすがりつく。五黄がお熊を止めて椅子に座らせる。

「旦那様、いいえ五黄様。お止めくださいますな!熊の気持ちは昨日今日なった事ではありません。猫になってからのものでございます。考えに考えての事なのです!」

「この際だから、このわからずやのバカ女に腹の底から言ってやりな。俺が許すから」

お蜜は五黄にまでけなされ、キッとする。そんなお蜜を五黄は睨む。

「お蜜、黙ってきくんだ」(静かではあるが凄味がある声だ)

お蜜はシュンとして項垂(うなだ)れてしまった。

「さあ、お熊よ。お蜜は黙らせたから遠慮なしに話しておくれ」

「はい、ありがとうございます。旦那様がそう仰有って下さるのなら、熊も溜まりに溜まった痼(しこ)りを吐き出させて戴きます」

「いいとも、いいとも」

「熊が一番に情けなく悲しく思うのは、お嬢は人様の気持ちを『思い遣る』という事と『感謝する気持ち』が欠片(かけら)もない事です!

口が裂けても言わぬと心にも誓っていましたが冥途の土産には重すぎます。

いいですか、お嬢!お嬢は今の今まで一介の使用人に過ぎない熊が、あなたをどうやってお屋敷からすんなりと、連れ出すことが出来たとお思いか?

長い旅路を熊の粒銭だけで済んだとお思いか?
夜中に突然尋ねた私どもを旦那様がいとも簡単に猫にされたとお思いか?

その事を考えたことがおありですかッ?」

「えぇ~だってぇ・・・猫に馴れるのに大変だったしぃ・・・」

「ええ、ええ、そうでしょうとも!旦那様に用意して頂いたこの立派なお屋敷を、こんな有り様にしても恬(てん)として恥じる気持ちもなく、それどころかどうせ旦那様に『このお部屋気に入った?』なんてきいているに決まってます!」

「なんで、知ってるの?」

「知らぬ熊とでもお思いかッ?こと程左様に考えなしのあなた様には熊の言葉も無駄とは思いますが、熊の最後の置き土産とお思いになり、これからの生涯をお過ごしなさい!」

「お熊ぁ・・・」

「そもそも、あなたを猫にとお考えになったのはお風様なのですよ!」

「えッー、どうして?なぜなの?」

「あなたは、唯、ただ一番キレイと言われたかった。狐国では所詮あなたはどんなに頑張って見た目を飾っても、
お風様にかなわないものだから、すねてお部屋に籠られた、、、

かなう訳ありませんよッ!こんなに醜い心をお持ちなのだから。いくら飾っても無駄なことだったのです!
熊はあなたの、そこまで醜い心に気が付かないで、お身体が悪くなられたと思い込みました。

とんでもありませんでした!
狐国を出たら、あんなに元気で。熊はずっとあなたの嘘を見破れませんでした。元から病いでもなかったのです。

お風様は『気うつ』とおしゃっていましたが、『仮病』なのよとは言えなかったのでしょう、、、





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第五章 九尾のお蜜 お熊の秘密4


お風様があなたを猫にするのに、旦那様に『くれぐれも、、、』と書状でお頼みなされて。

それがどれ程の大事かあなたは何も考えずに、今までよくおめおめと生きて来られたものです。

旦那様やお風様にも、どれ程の御迷惑を掛けたか!
子供でも何かしてもらえばお礼を言います。

あなたはそんなこともできない!お風様にとって姉妹で国を治めるという天の決まりを敢(あ)えてお破りになることがどれ程大変なことかッ!

そして、あなた様を猫にする五黄様とて同じこと。
お二人して罰を覚悟して『天宮』においでになられたことを熊は存じてます」

「なんで知ってる?」

「熊にも狐国にたった一人だけ友がおります。お風様の乳母でお勢と言います」

「あのお勢は熊の友達だったの?」

「はい、そうです。お風様は泣いて五黄様に詫びられたと聞いております。五黄様は今のままのお蜜では、狐国の害になっても益にはならない。

俺が預かったのだから心配をするな。と、、、そして笑われてたまにはお風も俺も、『天のおもう様』、『おたあ様』に会いに行くのもいいことさ。きっと喜んで下さるよ。

そうおしゃって下されたとお勢は手紙に書いてきました。

神々様は、お二人の気持ちを汲み取ってくださいましたので、罰を受けはしませんでしたが、それからの狐国には災厄が度々ありました。

その度に五黄様から有り余る程のご支援を頂いたと書いてありました。
遠い菰傘からの御支援のお品の中には沢山のお野菜もあったとのこと。

不思議にも今朝採れ立ての野菜のように瑞々(みずみず)しく美味しかったと、、、涙の痕がある手紙でした。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
shien.jpg


お嬢は今まで一度でも、ご自分が出てしまわれてからの、狐国を心配されたことがありましたか?」

「少しはあったわよ」

「嘘おっしゃいッ!熊は狐のきの字もお嬢から聞いたことなどありませッん!

第一、そんな暇もありませんでしたよね?(ジロッ)

せっかく猫になったのだから~ぁ、今まで出来なかったことをするんだって、遊んでばかりの毎日。男は取っ替え引っ替えでしたからね。
それでもなんとか我慢もできました。少しは貞達子分の為になっていましたから、、、」

「少しじゃないわよッ、わたしは尾を禿げにするぐらい頑張ったもの!」


「それが何だというのですかーッ!!」


「だって・・・」

「そんな尾の一本や二本なくなったっていいぐらいです!
それを大層なことのように言って、子分が一生懸命にしている仕事の後押し位するのは当たり前じゃないですか!普段遊んでいるのですからねッ!」

「治さない方が良かったかな」

「はい、『禿げチョロ』で良かったんです。旦那さまは貞達の哀れな股引姿をご存知ですね?」

「ここに来る時に脱がさせたよ」

「えっ?だっていつもみたいに私の部屋に直接現れたのじゃなかったの?」

「やはりそうですか、、、さすがに旦那様です。
熊がどうにも我慢がならなくなったのは貞達の事もあります。

貞を筆頭にしてあの子分達は、毎日毎日朝早くからおいしい豆腐作りをしています。
夜の仕込みもありますから、決して楽な仕事ではないのです。

今までは貞達に迷惑を掛けるような事もなく、男遊びをなさっていましたよ。
処が今回はジョニーとかいう人国かぶれの猫にうつつを抜かし、変な言葉を子分達に習わせたのです。どうして貞達に必要なのです?

訊けばあの野郎は亀が授業に遅刻したからって、木偶の坊の無駄飯食いと言ったそうなんです!わたしは悔し涙があふれましたよ、、、

亀は疲れている貞に少しでも休んでもらいたいと、貞の分まで夜の仕込みを頑張っていたのですから・・・」

「知らなかったわ」

「ふんッ!貞達の言い分一つ訊かずに、平気であのかぶれ猫の告げ口だけを聞いて
『あたいの色に手え出しやがった』って。下卑た根性だから口まで汚くなってッ!子分達にはあんな股引を穿(は)かせてッ!!」

「股引を脱がさせたら俺は驚いたよ。言うと傷つくと思って言わなかったけど、腹回りがすっかり禿げて赤剥(む)くれになっていたし、足の毛も薄くなっていたよ」

「なんとまぁ、、、よっぽどこんな色狂いの馬鹿猫の尾っぽを治すより、貞達を治して欲しかったです!」

「本当だ。さっそく治してやるよ」

「有り難うございます。河童の不思議膏を毎日塗っているものだからこの頃は効かなくなったって、零(こぼ)していました。それも塗らなくて済むようになりますね」

「そうだね」





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第五章 九尾のお蜜 お熊の諫言1


「はい。貞達も今頃はせいせいしていることでしょう、、、でもそれだけでなく、熊が一番堪忍ならない事がありました。

旦那様からの大事な賜り物であるこのお屋敷を、城にすると言い出して、仕事で疲れている子分達に無理矢理あんな事をさせ、死人やら怪我人まで出させたなんて信じられませんッ!!

美しかった銀鼠の瓦はあの通り。見事な植木も全て引っこ抜いて、、、
熊が恐れていたのは旦那様がいつかお見えになって、このお屋敷の無惨な姿をご覧になったらどうしようということでした。

貞達には我慢しろと言った処で、いつか必ずお耳に届くのでは?と思っていました。
そして到頭お見えになられました。

お嬢が能天気に熊に声を掛けた時は心臓が凍りそうでした。
でも、いつものように直接お部屋にお見えの御様子。

部屋が少しくらい変わっていても、気になさらないに決まっていると・・・愚かにも一瞬そう思ってしまいました。それでもビクビクしながら食事の支度を台所でしていました。

すると目の前をコソコソ股引を穿(は)いていない亀が横切りました。
そーっと台所の隙間から覗くと、貞も伊佐も他の子分達も同様に何も穿いていません。これは子分達の一存でした事ではないとわかりました。

自分の思慮のなさを知りました。
旦那様はご存知でいらしゃる、このことを承知でお嬢にお会いになっていると合点いたしました。

お嬢の明るいお声は、単純に旦那様のご来駕(らいが)を喜んでいるだけと思うと一段と情けなく、人の気持ちを思いやるなんて一生出来ないのだろうと、、、

そして、熊は旦那様にいつ怒られるだろうかとビクビクしていました。
そうしたら、怒るどころか料理を褒めてくださる。貞から何もかも訊いているのに。

お優しい、いつもの旦那様に熊は申し訳なくて堪(たま)りません。
そんな懐深い旦那様への感謝も、お風様への感謝も、頑張っている子分達への感謝も何もないこの馬鹿猫にほとほと愛想が尽きたのでございます。

そして何よりもこんな馬鹿猫を、今まで甘やかしてきた己に腹が立って仕方ないのです!うッ、、、」

お蜜はお熊の容赦ない言葉にショックを受けてる。

熊は思いを一気に話すと床に倒れてしまった。


バタン!!


驚いて二人が熊を支える。

挿絵参照↓↓↓   絵をクリックすると大きくなります
okumakangen.jpg


「どうしたの?ねえ?お熊!」


「お熊しっかりしろ!」



「だっ、旦那様・・・御見苦しい処をお見せして申し訳なく・・・・・」

「お前ッ!もしかして『身魂抜き(みたまぬ)』をしたのか?」

聞いて驚いたのがお蜜だった!あまりの衝撃に体が震え出す。
身魂抜きというのは、死にたいと思う者が特別な役人に頼んでしてもらう行為である。

普通は『身魂抜きの宮』でしてもらう。自らが行えばあり得ない苦痛を味わうからだ。しかしお熊も元狐。歳もかなり経ている。覚悟も違っていた。

身魂抜きをしても少しの間は、体は元のままである。己の肉体は抜けた魂を抱え『魂納(たまおさ)めの宮』に向かう。

「そうまでして、お蜜に諫言(かんげん)したんだね?」

「はい、、、このままのお嬢では、たとえ狐国にお帰りなさっても、お風様のお役に立つ処か迷惑を掛けるだけっ...ッぇ......」

お熊は息絶えた、同時に姿が九百年ぶりに狐へと戻った。
片時も忘れずにいた狐の姿。あれほど焦がれた、戻りたかった。
やっと戻れたというに魂は留まれない。




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第五章 九尾のお蜜 お熊の諫言2

前回
お熊は猫になって以来、悶々として暮らしていた。自分が信じたお蜜がこんな筈ではないと、言い聞かせながらの日々だった。身魂抜きと云う行為に走ってしまったのも、溜まりに溜まった思い故の結果だった。
全てを理解する五黄は、お蜜の業の深さも知っていた。並の女ではない。九尾のお蜜なのである。
諌(いさ)めてきく女ではない。どうしても目覚めさせるには贄(にえ)となる者が必要だった。
そして、お熊自身は何も知らずに息絶えた。
狐国の全てを五黄に託して。


はじまり、はじまり



「お、お願いだからッ!お熊をッ!お熊を助けてーーっ!助けてぇぇーーーッ!!」

「難しいがやってみよう、だめでも恨むなよ」

「恨みませんから、早くッ!早くッっ!!」

「それではお前はこの部屋から出て行きなさい。さすがの俺でも神経を集中しなくてはならない。早く行け!」

お蜜が出て行ったのを見届けると、部屋にある大きな姿見の前に立った。
主のナルシスト振りと比例するように、そこかしこに鏡がある。

背中を不器用に鏡に写しながら、『火炎太鼓』の中心にある黒毛を一本抜いた。

「やれやれ、毛を一本抜くのも大仕事だよ」

ブツブツ呟(つぶや)きながら、横たわっているお熊の前に座る。
抜いた毛をお熊の薄緑色の腹の上にのせる。すると毛は生き物のように、スルスルお熊の体の中に潜り込む。

青ざめた顔に生気が戻り呼吸も始める。お熊が目を開けた。

はッ!?

「お熊、そのまま静かにお聞き。これからお前をお風の元に連れて行くよ。お風から預かったのはお蜜だけじゃないからね」

その言葉にお熊は泣いている。

「お前の苦労は並でなかったよ、貞はお前の気持ちを十分理解していたよ。
こんなにもお蜜の事を、お熊も貞も思ってくれているのにね、、、お前達の方がよっぽど上等だよ。

さてと。お前の魂を戻したのは、このままお蜜の世話をさせたいからじゃないよ。
お前ならわかるね?」

お熊は頷(うなづ)く。

「俺はあいつをこれから試してみるつもりさ。あいつの姿も変えて全ての妖力も奪う。そして放逐する。
貞や子分達もわからないくらいの姿に多分なるだろう。

あいつがお前の望む者になれるかどうか、それを楽しみにしてお風と一緒にお前は狐国で待つがいい。思いやりも感謝もない愚か者で終わるのか見ててみよう」

五黄はそっとお熊を抱き上げた。

突然、居室にお熊を抱いて現れた五黄を見てお風は驚く。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
ofushinshitu.jpg

「お風よ、よくよく事情はお熊から訊くが良いさ。但し、今のお熊は勝手に身魂抜きをしたばかり、
俺が魂を戻したが、一度抜けた魂を体に押し止めておくには、本人の強い意志が必要なのだ。

お蜜にこうまでして使えてくれた事に心底感謝して、手ずから看護をしておやり」

お風は五黄の気持ちに感謝して、お熊を自分の寝台に寝かせるように頼んだ。

「意識がないみたいだな、目があくまでそばに居ておあげ」

「はい、そう致します。わたくしはお熊にこうして再び会うことが出来て望外の喜びです。まこと、五黄様にはお礼の言葉もなく」

「このまま目覚めを待ちたいがそうもいかない。急いでやることが残っているからね」

お風の前から消え、五黄は元の部屋に戻った。
部屋を追い出されてから、大分時間が経つので、苛々したお蜜は騒いでいる。

「しょうもない奴だね、入って来な」

「あら?お熊はッ?お熊がいないじゃないッ!!」

「俺も頑張ったが手に余ったよ。すまなかったな」

「なんでも出来るって思っていたのに!お熊ぁーッ、お熊ぁぁーーッ!!

「お蜜、今更泣いてなんになる?」

「だってお熊がいないから・・・お熊がぁぁ...」

「お熊が居ないと不便だものな。お前に少しでも思い遣りが有れば、あんな死に方をせずに済んだものを」

「どうしてそんなことを言うの?わたしだって悲しいわッ!だって、わたしの乳母なのよッ!あなたに何が分かるのよーッ!!」

「わからないね。わかりたくもないよ」

「ひどい!酷いわっ!わたしがこんなに悲しんでいるのにッ!」

「これから、もっと自分を哀れむが良いさ」

五黄はお蜜を見すえた。体に異様な変化が起きて来た。
最初は右耳が捩(ね)じれ、もう片方の左耳は半分に折れてしまった。

愛くるしかった両目が濁り出す。口だけは異様に大きくなっていく。
きれいな体毛は全て泥のような色になる。『九本の尾』は一本だけを残して消えてしまった。
残った尾っぽも汚らしく縮れて丸まっている。

お蜜は自分が醜く変わっていく有様をそこら中に置いてある鏡で否応もなく見せられた。


ぎゃぁぁーっ!


お蜜は失神した。五黄は顔を叩いて起こす。

「お蜜、俺はお前を今から放逐する。ここにお熊が猫国に来た時に、持っていただけの団栗(どんぐり)銭がある。
これをやるからどこにでも行け!」

有無を言わせず、お蜜を村境まで飛ばした。





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第五章 九尾のお蜜 お熊の諫言3

前回

お熊は五黄に連れられ、狐国に戻った。お風はお熊の変わり果てた姿に、涙した。
お熊独りに苦労をさせ続けたと今更ながら思い知る。これからきっとお熊は良くなるだろう。
一方のお蜜は、妖力を奪われ、姿も変わった。そして問答無用で放逐されてしまった。
愚か者に終わるか、それは今後のお蜜次第と言っておこう。

はじまり、はじまり



「ありゃ~、えらく酷い姿になっちまったよ。相当の重症だね。治るかな?
だが、あいつだって九尾のお蜜。できない事もないだろう。だけどあいつ凄く恨むね。おおこわッ」

ちっとも怖そうじゃない五黄は部屋を出て階下に降りて行く。
日に何度も姿を消していると、さすがに疲れるらしい。
貞達は神妙な顔をして、自分たちの部屋で待っていた。

「邪魔するよ」

「大親分!!」

声を揃えて子分達が反応するので笑う。

「お前ら、息が合ってるね」

「へいッ!」

返事まで一緒になっている。
貞達の間に座ると、見事な彫りが有る銀煙管(ギンぎせる)をポケットから取り出す。

「大親分にタバコ盆をッ、それから伊佐は美味しいお茶を入れてきな!」

「俺はこう思うよ。お前達は俺の身内になりたいと願っているようだが、もうお前達は独立しても充分じゃないかなってね」

「どういう事でげすか?」

「何もね、お蜜に照る日曇る日守ってもらわなくてもさ、貞の九味豆腐は美味しくて評判だし、雨の日に商売したって構わないだろうって事よ」

「あっし達は一向に構いませんが姐御が・・・」

「心配無用だよ。あれは納得したから」

「ほッ、本当でげすか?」

「本当だとも。あれも、お熊も元は狐だったのだよ」

「えぇーっ?嘘ぉーーッ!」

知らなかった貞達は、心底驚いている。
何代も代替わりするうちに、どうでもよい事柄になっていたのだろう。

「貞の九代前位に、お蜜とお熊主従は来たのさ。その時にお前の九代前の、えぇ~と、、、鶴吉だったけかな?あいつを子分にさせ、ここに住まわせたのよ」

「へぇーッ、あっしのご先祖さまが?・・・知らなかったでげす」

「ふふ、面白いね。まっ、『九尾のお蜜と九代目の貞は良い縁だった』そう思って今までの間違いは許しておやり」

「許すも許さねえもねえでげすッ。あっし達を認めて下さるなら、文句なんかありやせんでげす。
さっそく姐御にお礼を言いに行くでげす」

「ふふ、お蜜とお熊はもうここには居ないよ」


「えぇーッ!?どうしてでげす?」


「何ねえ、あんなお蜜でも、さすがに姐御だったと云う事よ。お前達がそこまで立派になった今、安心して故郷に帰れます。帰って姉様のお役に立ちたいと思います。

お前達に会って褒めてもやりたいが、会えば別れが辛くなる。
家族も同然の子分でした。わたしの我が儘(まま)をきいてくれた子分達に最後にありがとう・・・。そう言ってお熊と旅立ったよ」

挿絵参照  ↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります

kobuntachi.jpg

貞達は大泣きした。


ニャギャーッ!ニ"ャキャーーぁッ!


「別れは辛い。お前達も突然で心の整理も付かぬ程だろう。しかし、お前達も男だ。いつまでもメソメソしていれば、断腸(だんちょう)の思いでこの地を去ったお蜜に申し訳も立たぬだろう。しっかり頑張れ」

「あっし達は大親分や姐御のご厚情を、無にしねえように一生懸命に働くでげすぅぅッ(涙)」

「そうしておくれ」

「いつか、ここにお戻りになられると信じてもいいでげすよね?」

「どうかな。あいつの姉は九尾のお風なんだよ」


「え"ぇぇーッ!?そんなッ、そんな大それたお方だったんでげすか?」


「お風の狐国を支えて、助ける役目があいつにはあるんだよ。あいつもこれから大変な仕事に勢を出さなくてはならない。遠い狐国で頑張っているお蜜を、いつまでも応援してあげようじゃないか」

「わかりましたでげす、、、うぅッ」

貞達はまだ泣いている。

「お前達はよくやっていたそうだな。お熊からもよ~く聞いたよ。俺は青竹に入った豆腐が美味しくて驚いたよ」

「へい!あれはお熊婆が、あっしにこうしたのは作れないか?と云うもので、工夫したものでげす。お熊婆は口は悪いが、あっし達の食事をどんなに朝早くても『文句一つ・愚痴一つ』零(こぼ)さねえで作ってくれたでげす、、、う"ぅッ」

また子分達は泣き出す。

「あっしには不思議膏も塗ってくれやした・・・」

嗚咽(おえつ)と共に、あっちでもこっちでもそんなことを言っている。

子分達の顔は涙でくしゃくしゃ。垂れた鼻水がヒゲを伝わり足元を濡らしていた。

「あっし達のお袋でげしたぁぁ~!」

「ふふ、お熊もきっと喜んでいるよ。お熊がお前達の下半身の禿げチョロを治して欲しいと言っていたよ。さっそく治すかね」

五黄が『ふーっ』と子分達に息を吹きかける。あぁ~ら不思議!
子分達の赤剥(むく)れや禿げた部分が治ってしまった。

一瞬、回りの空気が変わったのを感じた。とても言葉に表せないが、柔らかくとても優しい空気。五黄の凄さに貞達はその場に平伏した。(ニャニャーい!!)

「ふふ、困ったね。感謝するならお熊にね。それからお蜜に良く尽くしてくれたお前達に、何か褒美をあげようと思ってね。

例えばどうだい?この屋敷を潰してお前達の豆腐工場を建てるっていうのは」

貞はきっぱり断る。

「どうしてさ」

「大親分にこれ以上のご厚情を賜(たまわ)る訳にはいけねえでげす。それにあっし達は姐御に十分な広さの作業場を頂いておりやす。今のままで十分でげす、へい。」

「いいのかい?」

「へい!」

「それじゃ、屋敷を元の姿に戻すかい?」

「それもいいでげす」

「だって、あれほど厭がっていただろうに」

「いいえ。今となってはそれが姐御のご意志だったんでげすから、これでいいでげす。あっしたちは考え違いをしていました。

もう一度、瓦をきれいに塗り直したり、ニャーデニングとか云うのもやってみます。なんでもいいから、姐御の気持ちに触れていたいでげす、へい。」

「いじらしいね。じゃ何もしなくていいのかい?」

「お願いが一つだけあるでげす」

「何よ?なんでもいいな」

「姐御とお熊婆の近況をたまに教えて頂きてえでげす」

「承知した。それじゃ俺は行くよ」






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