スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

クルミ 31 憧れのお方

前回

クルミが猫宿に行ったことがわかった。表面では落ち着いている風の茂吉と紫狼、心の中は心配で悲鳴を上げたいくらいだ。


はじまり、はじまり


キナはイライラして店の中をうろついている。テレとトチは何か言うとキナが癇癪(かんしゃく)を起こすものだから怖くて声も出せない。

ちきしょーッ!どうすりゃいいんだッ?こいつら行かせても役に立たない、あたいが行くにも店が有る。手が足りねえ!
ちきしょぉーっ!!

クルミが消えた後、一心不乱に探したが見つからずどうにもならなくなりその日は諦めた。翌朝、頭の皿をよく冷やし考え直す。テレをよくよく問いつめると東雲楼の事を白状した。

まさか東雲楼にコノミが居たとは知らなかったので驚き急いで東雲楼に行き婆猫のお紋から詳しく話しを聞く。クルミが来た事もわかったので追いかける事にしたのだが、いざそうなると、このままテレとトチに行かせてもクルミを探すことが出来るか怪しい、、、

第一信用ならない。自分が行きたいが開店したての店があるので悩んでいたのだった。そんな時に店のドアが開く。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
akogarenookata.jpg


「こんにちは」

「ちょいとッ、店はまだなんだよ!それに休むかもしれないんだから、さっさと帰っておくれッ!」

キナの邪険な声にもめげず、ドアからちょこんと紫狼が顔を出す。

「キナさん、あたしです。紫狼ですよ」

キナは忘れもしない、愛しの紫狼の顔を見ると驚き声も出ない。一瞬の間がある、、、

キャぁああーーーッ!!紫狼様ぁ~~~♪

キナは驚くべき反射神経でドアを開けると紫狼に飛びついて押し倒し、そのまま熱烈なチューをする。

ぶっ・ちゅぅう♡♡♡・・・・・・・

紫狼は顔を真っ赤にしながら、されるがままになっている。邪険に離したらキナが傷つくと思うからだ。あくまでも紫狼は優しい。

「紫狼兄ちゃんの顔が真っ赤かだあ~!」

三吉が囃(はや)す。

「これ三吉、からかってはなりませぬ。さてキナとやら、いい加減に紫狼を離してはどうかな?紫狼」

「あっ、は、はい!キナさんお離し下さい」

「え~、仕方ないわねえ」

こらッ、キナ!こちらには茂吉様もいらしているんだぞ、いい加減にしろッ、おかま河童!」

顔役の点吉が堪らなくなってキナを叱る。キナは改めて周りを見回す、見知らぬ藤色のふわふわ猫に賢そうな目をした子猫が居た。そして店の前には町中の者達が野次猫となり凄いような猫だかり。

きゃッ!あんらぁ~すみません!」

キナは急いで平伏し縮こまっている。紫狼に立つように言われ、立ち上がったが恥ずかしそうに俯(うつむ)いている。

「ふふ、キナは紫狼が好きなのですね?」

「父様先生!」

「はい!もったいなくもキナは紫狼様とお会いしてから片時も忘れた事はございません」

「あたしは茂吉です。この子は三吉で、クルミの兄弟と云っていいでしょう」

もっ、茂吉様ーッ!?あ、あたしめは、しがないおかま河童のキナでございます」

そう言うと急いで様子伺いをしていたテレとトチを引き摺(ず)って来る。

てめえ達!こちらにお見えなのは畏れ多くも茂吉様に紫狼様に在らせられるぞッ、てめえ達がして退けた悪行三昧を
キリキリ申し立ててみやがれーッ!!

大袈裟に言うと、ボーっと突っ立っていた二人を蹴倒(けたお)し三人揃って平伏す。

「この大馬鹿者達は恥ずかしながら私めの弟達です。どうぞこの馬鹿達のお話をお聞きになって、魂沈めなり、なんなりのお裁きを御下しくださいませ」

「あ、兄貴ぃーッ!そんなあー!」

ひぇえーーーッ!

「お黙りッ!いいからとにかく事の顛末を隠し立てなくお話しするんだ!!」

テレとトチはつっかえ、つっかえながらも今までの事を話し出す。うるさい野次猫達を静かにさせようと点吉は忙しい。

「わかりました。テレ、そしてトチ、あなた達がしてきた事は褒められるものでは在りませんがクルミと出会い、気持ちを変えることが出来ました。素晴らしいことですよ」

「そうですね」

紫狼も続ける。

「へっ?...でも、あっしらどうすればいいのか・・・」

「クルミのことは心配ないですよ。後は私達にお任せ下さい」

「茂吉様、でも急がないとあの子は子供なんですから」

キナが東雲楼のお紋から聞いた話をする。

「そうですね。急ぎましょう!それからキナさん、紫狼から聞いてますよ」

「あんらぁ~恥ずかしい....」

「いいえ、クルミへの数々のご温情、この茂吉忘れるものでは在りません。テレとトチがあなたの弟であったと云う事、理由はどうであれ、あの子が無事に猫宿に着けたのも全て天のお計らいと云えます。ありがとうございます」

「ありがとうございます」

紫狼も言う。

「ありがとう!おじおばちゃん」

三吉も言ってみる。

茂吉達はキナに深々と頭を下げた。猫宿の者達は有り得ない光景に只驚くばかり。後にキナの店は《茂吉様・紫狼様御用達》という看板を掲げ、大いに繁盛をした。ただ、テレとトチにゲイを仕込もうとしたが、二人はあくまで拒否し、今では兄弟で仲良く駕篭かきに精を出している。





つづく

スポンサーサイト

クルミ 32 木平の親切

前回

キナによりクルミの情報がわかり、後は粒傘村に向かうだけだ。



はじまり、はじまり


茂吉達はここでもクルミに会えなかったが猫宿の者達に労いの言葉をかける。

「どうもありがとう。これでクルミの行き先もわかりました」

茂吉は点吉や猫宿の者達に礼を言い、キナ達を温かく見守るようにと告げ、早速、雲階段を呼び寄せ空高く去って行く。



              ♢



さて、話しは少し戻る...クルミはあれから一体どうしているのだろうか?

猫宿から東に向け駈け通しだったクルミは少し休憩をとっていた...

粒傘村は猫宿から東に向け狐街道を行く。この街道は猫宿を境にして東に【狐】西に【狸】と呼び名が変わる。東へ真っ直ぐ行けばそのまま狐国に向かうので、その呼び名になった。
(猫国図参照)

狐街道から西街道の起点が始まり、その西街道を南に行くと粒傘村に出る。狐街道も中々賑やかで人通りもあり、屋台もちらほら出てる。クルミは大好きな焼き餅の屋台に寄ると大きな餅を買い頬張っていた。

お腹が一杯になって、ふかふかした柔らかそうな草が生えてる道路脇に座り込む。うとうとして来て気持ちが緩んだのか?何だか足の裏が痛くなってきた。そっと足の裏を見ると、酷く赤くなっている。もう少しで皮が剥けそうだ。

いやだぁーッ、こんなにあんよが赤いッ!
痛いって思った途端に余計に痛くなってきたぁああー!

「どうしただすか?」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
mokubeishnsetu.jpg

訛りのある声に驚き振り向く。それはそれは綺麗な狸が微笑んでクルミを見ている。

「あんよがどうかしただすか?」

「え゙っ、、、」

クルミは金輪際、騙されたくないので誰も信用すまいと固く誓っていた。

「何でもないです、構わないでください」

「でも、酷いようだすよ・・・」

放っておいてょッ

二人の言い合いを見ていた屋台の親爺が堪りかねて口を出してきた。

「お嬢ちゃん、そんな言い方するもんじゃねえよ。この方は木平さんと云いなすって、立派な狸なんだよ。【不思議膏】をあっしらみたいな貧乏人でも買えるように、そりゃ安値で売ってくれているんだよ!お陰でどれ程助かっているか知れなえ。その上、男の俺でも惚れる程の好い男振り」

「やだすなあ~、そんな照れるだすよ~」

「そうなの?おじちゃんって薬売りなの?」

「そうだすよ。見ればお嬢ちゃんのは豆が潰れそうなのと、潰れたので痛そうだす。この不思議膏を塗ったら楽になるだすよ」

クルミは『じーッ』と木平の腹を探るような目つきをして睨んでいたが、足の痛さには勝てない。

「おじちゃん、そっと塗って頂戴」

「はいはい、そしたら少し足に水をかけてからにしますよ。泥が付いたままじゃ塗れないからね」

木平はクルミの足に水をかけ泥を濯(すす)ぐと手際良く薬を塗って包帯を巻いてくれた。

「わぁ、ありがとう!これなら痛くないから歩けるわね!」

「今日は歩かない方がいいだすよ。塗ったばかりだし、明日になれば少しはいいと思うだす」

「でも・・・あたいどうすればいいのかわかんないし...じゃ、この辺で寝るわ」

「とんでもねえ、お嬢ちゃんだッ!野宿するってか!?親御さんはどうしなすった?とんでもねえよッ!」

「まあまあ、そんなに怒らねえで、、、何か事情がありそうだす。それじゃどうだろ、この先にわすが厄介になったばかりの父宿(ととやど)があるから、そちらまでわすが送りますよ。キスケさん、悪いけどわすの荷物を預かってくれませんか」

「ああ、いいともよ、任せてくんなよ」

「そしたら、このお嬢ちゃんを父宿まで送ってきますよ」

「ああ、そうしておくれ」

キスケは木平から薬箱や背負っている荷物を受け取ると屋台に戻って行く。

「あたい、行くなんて言ってないのに」

「ごめんだす、勝手に決めてしまっただすね。わすのしてることは親切の押し売りだっただす。申し分けねえだす」

クルミは生意気な事を云うガキだと怒られると思っていたので、この木平の返事は意外だった。

「えっ?あたい、、、あたいの方こそ、おじちゃんに親切にしてもらっているのに...」

「ごめんだすよ。わす、どうもお狐様を見ていると、大事な友達を思い出すもんでつい気になってしまうだすよ」
(本編 第八章 お蜜再び参照)

「そうなの?」

「へへ、わすのたった一人の友達なんだすよ」

「へぇ~、あたいにも一人だけ、三吉って友達がいるわ」

「そういえば、お嬢ちゃんのお名前は?」

「あたいはクルミっていうのよ」

「可愛い名前だすね、わすは木平だす。そしたら日が暮れるといけないだすから、わすの背なに乗って、道々お話しようだす」

「うん」

クルミは木平の温かな人柄に触れ、尖った気持ちもいつしかなくなっていた。

「クルミちゃんは、どこに行こうとしていただすか?」

「あたいね、粒傘村に行くのよ」

「えっ?粒傘に?」

「どうしたの?」

「なんだあ、わすはその粒傘に寄って来たばかりだすよ」

「えーーっ、そうなのぉーー?」

「わすの恩狸の稲子さんに毎年お薬を届けているんだすよ」

「友達がいるの?」

「そうだすなあ、恩在る方だすよ」

「ふーん。あたいは姉ちゃんに会いに行くのよ」

「へー、なんてお名前だすか?」

「コノミって云うのよ」

「それなら豆腐屋のおかみさんだす。なるほどクルミちゃんとおかみさんは柄がそっくりだ」

知ってるの!?ねぇッ、姉ちゃんは元気だったッ?幸せそうだったッ?ねえっ!」

「クルミちゃんは姉さまが好きなんだすね。わすがお会いした時はいつも元気にお店に出ていなすっただすよ。それに富吉さんとは仲良しだすよ」

「ふーん、良かったあ~!早く会いたいなぁ~」


木平はクルミとお蜜が重なるようで、知り得る限りのことは何でも答える。クルミも今までのことを全て話す。




つづく











まだ雪が降り始めの頃に旦那が撮りました。
あまりに可愛い(親馬鹿丸出し)のでアップしました。
おーちゃんの足跡&おーちゃんの右手です。

クリックすると大きくなります
Ochanashiato.jpg

クルミ 33 道々

前回

木平と知り合ったクルミ、知りたかったコノミの情報を知ることが出来た。

はじまり、はじまり


挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります

michimichi.jpg



「クルミちゃんはこんなに小さいのにご苦労しなすったんだすなあ...でも勘違いされていることがあると思うだすなあ」

「なあに?」

「クルミちゃんがお世話になっていた茂吉様という方はわすの恩猫様だす。それはそれは尊いお方だすよ。そんなお方がクルミちゃんを売り買いなさるなんて有り得ないことだすよ」

「そうなの!?でもあたいの母親が迎えにきたもの、、、」

「それは、多分取り返しにきたには違いないでしょうが、きっと今頃クルミちゃんのおっ母様はこっぴどく怒られてどっこかにやられてますよ、違いないだすよ!」

「そうかな?」

「間違いないだすよ!そんな非道な親を許すわけねえだす。クルミちゃんは御存じねえようだすが、茂吉様はこの世の万物を裁く権限をお持ちと云う凄いお方なんだすよ」

「よくわからない-」

「本当にとんでもなく御偉い方なんだすよ」

「ふーん。父ちゃん先生ってそんなに偉いの?」

クルミはいつのまにか父ちゃん先生と茂吉を呼んでいる。茂吉が知れば泣いて喜ぶだろうに、、、

「いいんだすか?きっとそりゃぁご心配なすってますよ」

「そうか!そうよねッ、あたい三吉との約束も破っちゃったし・・・でも姉ちゃんにも会いたいし、、、」

「そすたら、わすが茂吉様のとこに行って教えてきますよ。お知らせすればきっとご安心されるだすよ」

「そんな事、頼んでもいいの?」

「気にすることはねえだすよ。わすは卍宿にも用があるんだすもの」

「そうなの?そしたらお願いします!」

「喜んで御用を承るだすよ」

「へへ」

「ふふ」

二人はすっかり仲良しになり、端から見るとまるで親子のようだ。夕方近くになると目指す父宿に着く。「ととやど」とは藤平が茂吉から云われたことに案を得、街道沿いに捨て子を預かる施設を始めたことからによる。

最初は子供だけを預かっていたのだが、その内に銭の無い者や病気をした者までタダで泊まらせるようになり、現在に至っている。

藤平縁(ゆかり)の者が宿の主人をしている事もあり、捨て子を引き取りに藤平が来ると父(とと)様と呼ぶので、世話になった者が藤平父様からいつしか「ととやど」と 呼ぶようになった。

二人は仲良く宿で一泊すると木平に粒傘村までの丁寧な道の地図と沢山の不思議膏を貰う。木平は心配そうだったがクルミは足の痛みも消えて元気だ。

「おじちゃん!心配しないでよ、あたい行く気満々なのー!」

「わすが連れて行ってあげたいだすよ」

「駄目よ、だっておじちゃん大事な商売道具を屋台に置いてきたもの」

「あっ!そうだっただすよー、迂闊だっただす」

「大丈夫だよ、あたい父ちゃん先生のとこには必ず帰るし」

「失敗しただす・・・」

「いいから、あたいはもう行くわね」

「無理しないで!あんよの薬は忘れないように、わかってるだすね」

「うん!そいじゃあね~

クルミは、可愛い尾を振り振り元気よく出掛けていく。木平はいつまでも名残惜しそうに見送っていたが、クルミの姿が遠くに消えてしまうと肩を落とし、元来た道を戻って行った。

クルミは木平の心配をよそに快調に歩を進める。木平から自分が売り買いされたわけではない事や、姉の様子が聞けて嬉しくて仕方ない!

とんとん飛び跳ねて歩きたい程にご機嫌だ。昼過ぎにはお握りを食べ、竹筒から水をゴクゴク飲むとお腹が一杯になり、今度は道を少し外れ人気のないとこで休もうと考える。そんな気になったのも、目の前に美しい花畑がどこまでも広がっているからだ。

クルミは花が大好きだ。旅をしてから色んな花を見る事が出来るのも凄く楽しい。此の花々を百花繚乱というのだろうか?の種類が豊富だ。

芥子の花よりも大きく、花びらがグラデーションになっている、香りも爽やかで柑橘類の匂いがする。この花は常世(とこよ)花と云われ、余りそばにいると酔ったようになり常世の国に連れて行かれてしまうと云われている。

クルミはそんな事は知らない。木平がいれば花畑には近づかないように注意しただろう。花の美しさに目を奪われ、どんどん歩いて行く。いつしか花の上に気持ち良くなって寝てしまう。

どのくらい寝ていたのだろうか?クルミは周りを見回したが、どこを見ても美しい常世花に囲まれている。花の匂いも少し強くなっている、歩き続けるうちにどこから来たのかもわからなくなっていた。

「ありゃーあたい何処から来たんだっけ?何か変なのぉ」






つづく








今回の雪はたまげました。
秩父や山梨県に比べると少ないけど
慣れてないから雪かきが大変でした。
今も庭にはどっちゃり雪が残っていて寒いです。
水曜日も雪が降るのかなぁ〜(T_T)
tumorimashita.jpg

クルミ 34 風神とクルミ

前回


木平と別れ、本当の独り旅が始まる。目の前には美しい花畑、行かずにはいられない。



はじまり、はじまり



クルミは小さな背を一杯に伸ばしても花しか見えないので諦めてトボトボ歩き出す。

「まっ、いっかぁ!だってこーんなに綺麗なんだもの」

歩いていると段々、登りになって行く。花で地面が見えない程になっているので地形がわからないが、どうやらこの先は丘になっているらしい。

「高い所なら行く先がわかるかも!わからなくてもいつかはどこかに着くわ~」

確かにそうかもしれないが、クルミは何だかこの旅の所為で大胆になっていた。歩き疲れる程だっだが何とか辿り着き、振り返ると花畑一面が見渡せる。

きゃああーー!きれーーい!
わぁ~、父ちゃん先生にも紫狼兄ちゃんにもクヌギ姉ちゃんにも、三吉にもそれからそれから、コノミ姉ちゃんにも皆に
みーんなに、見せて上げたぁーい!!

クルミは一人、はしゃいでいた。

「あれ?どうしたことだろ?こんな所に狐の子がいる」

クルミはふいに声がするので振り返る。さっきまでクルミだけだったのに、いつの間にか目の前には、青く薄い衣を着た知らない種族がそばに立っていた。

「えっ!?あんた誰なの?それにあたいが見たことない種族ね」

「ふふ、驚かしてしまったね。どうしてこんな所にいるのかな?」

「ちょっとー、まずあたいの質問に答えて頂戴」

「ふふ、怒ったかな?わたしは【風】と云うものだよ、宜しくね」

「へへ、あたいはクルミって云うのよ。でもそれって種族の名前なの?」

「うーん、わたしの名前だね。種族って言われてもなあ...」

「知らないの?知らない事って多いいわよね!あたいも自分の事なのに知らないことだらけよ。父ちゃん先生や紫狼兄ちゃんは『まだ知らなくてもいいよ』って言うけど、あたいは知りたいもの」

「そうなのかい?」

「そうよ、このお花の名前だって知りたいわ!何でも知りたいわ!」

「クルミは知りたいだらけだね。この花は【常世花(とこよばな)】というのだよ、普通の者はこの花畑には入らないのだよ」

「ふぅーん、あたいこのお花に誘われて、つい入っちゃったのかしら?」

「そうかもね。わたしもつい来てしまうもの」

「あたいと一緒ね!」

「ふふ、そう云う事になるね」

クルミが話している相手は【風神】である。

クルミは神様を見た事がないので『知らない種族』くらいしか思っていない。風神も其れが面白い、こんな事があるから、たまに下界に降りてくる。

下界ではまず最初にここに寄る。【常世花】で結界を創っているので誰も来れない。だがそんな結界をさらりと越えたクルミが面白かった、、、【恵み子】というのは楽しいものだ。

風神はもっと良い景色のとこに行こうとクルミを誘う。

「ほら、ここからだとクルミが目指している粒傘村が見えるよ」

「えっ?あたいの行きたいとこがわかるの??」

クルミが見ると遠くにうっすら、村が見える。

わぁーーー!あそこに姉ちゃんがいるのね!
よぉーしッ、行ッくぞぉおーー!!

クルミは今日中には着けると思っているがそうではない。今、見ているのは蜃気楼のようなものなのだ。嬉しそうにバックから黒飴を取り出すと風神にあげる。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
fujinkurumi.jpg

「あたいの気持ちよ、あたい本当は迷っていたの。でもお陰で助かっちゃった!風のお兄ちゃんありがとう!」

「ふふ、くれるのかい?ありがとう。それではわたしもクルミにお礼をしよう」

「あらいいのよ、あたいそんなつもりじゃないの。あたい黒飴大好きなのよ!三吉は蜂蜜飴。まだまだ子供なのね」

「ふふ、三吉とは仲良しなんだね」

「うん!あたいの大好きな友達よ!三吉の居た菰傘(こもかさ)村にも行ってみたいけど、まずは粒傘村に行くの。でも姉ちゃんに会ってから菰傘村に行くのはきっと無理だわ...」

「どうして?」

「だってね、ついでに訊いたんだけど菰傘村ってとっても遠いいんだって!それに父ちゃん先生がひどく心配しているし、三吉ともお約束破ったし、木平おじちゃんが父ちゃん先生にあたいの事を伝えてくれるようになっているんだけどあたいも少しいけないとこもあるし、、、

でも三吉の母ちゃんって優しいんだって!優しい母ちゃんってどんな猫なのかなぁ...お種って妹、どんな子なのかなぁ~?って」

「会ってみたいの?」

「うん、、、あたい、我が儘なの...」

「ふふ、そしたら黒飴のお礼に今からクルミを粒傘まで連れて行って上げよう。そしてもう一つ、これを上げよう」

【風神】は、たおやかなドレープを創っている長い袖を引き千切るとクルミに渡す。

「あっ!そんなことしたら寒いでしょ?あたいみたいに毛が生えてないのにぃ」

「ふふ、寒くはないよ。此の衣は《青衣》と云って、これを纏(まと)って行きたい所を言えばそこに連れて行ってくれるよ」

ひゃーッ!便利なのねッ!」

クルミは受け取ると軽さに驚く、そして大事にバックに仕舞う。衣はとても大きいのに小さなバックにスルッと入ってしまった。

「それからクルミはけっして我が儘ではないよ。今のクルミにとっては知りたいと思う事は必要だからなのだよ。茂吉にはわたしがきっと伝えよう」

「えっ!?風の兄ちゃんって、父ちゃん先生の名前知っているの?」

「ふふ、わたしも知りたがりだからね。何でも知ってるよ」

「あたいと良く似てるわね!」

「そうだね」

「あたいと友達になってくれない?」

「いいとも。楽しいね、わたしにも友達ができたなんて」

「そしたら、友達記念に、も一つ黒飴上げるね!」

「ふふ、友達になれて良かったこと」

【風神】はクルミに息を『ふっ』と吹きかけた。あぁ~ら不思議!クルミは気が付くと粒傘村の外れにいた。







つづく




クルミ 35 再会

前回

常世花の花畑で風神と出会ったクルミ、二人は友だちになったそうな。


はじまり、はじまり



「ふぅぅ...頭がくらくらする~、あれ?【風】のお兄ちゃんはどこ?・・・あれぇ?足が治ってる-ッ!不思議だわぁ...
ぁあっ!?やっと、やっと来たぁあーーッ!!

目の前に、《ここより粒傘村→》と、大きな道案内がある。クルミは迷わず村に入り、行き会った村の者に豆腐屋の場所を訊ねた。豆腐屋に近づいて行く内に心臓がドキドキする。コノミは大きなお腹を抱え、埃っぽい店先に水を撒いていた。

「いやだねぇ、豆腐に砂埃が入っちまうよ~」

「コノミ、そんなに気にすんなよ、苛々してると腹の子に悪いよ」

「だってさぁ~」

「姉ちゃんッ!、、、」

「えっ?」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
kurumisaikai.jpg


振り返ると忘れられない顔があった。会いたくて会いたくて仕方なかった、たった一人の妹...

「ウソ・・・」


姉ちゃぁああーーーん!!


クルミーーーーーッツ!!!


二人は抱き合って泣く、富吉が驚いて近づく。いつの間にやら猫だかりができている。コノミは泪で妹の顔が見れない、クルミもそうだ。

二人はお互いの顔を手で擦って見ようとするのだが泪で見れない。そんな二人の様子を見ていた富吉もやはり泣いている。コノミから妹の事を散々聞かされていたので、胸が熱くなる。


クルミーーーッ!


姉ちゃーん!


「さあ、こんなとこじゃ何だよ、コノミ、クルミちゃんを中に入れてお上げよ」

「ああ、ああ、そうだね!そうだね、とにかく入りなよ。連れはいるのかい?」

「ううん、あたいだけ」

「なんてまあ-ッ、何でもいい、詳しい話しは幾らでもしよう、とにかく入りな」

うん!




               ♢





茂吉達の気持ちは浮き立っていた。粒傘村に行けば会えると思うと嬉しくて仕方ない。もし会えなかったとしても今度こそは周辺を探すだけでいい。

「父ちゃん先生、もう着くの?おいらネムネムなの、、、」

「もう少しですよ、三吉は寝ていなさい」

「三吉、雲に包まりなさい」

「はーい」

紫狼は三吉を雲で包む。ふかふかの雲から顔だけチョコンと出して覗いてる三吉、中々愛らしい。三吉は気持ちいいのか直ぐに寝てしまう。

「父様先生、おナマを言ってもこうして寝ていると可愛い子猫ですね」

「本当です。この子だけでもそばに居てくれるので安心です」

「大事なお宝ですね」

「ええ、そうですとも」

「あれ?あれはっ

遠く、雲に乗る【風神】の姿が見えた。

風神様!

茂吉と紫狼は慌てて平伏そうとしたが、アっという間にそばに来る。

「ふふ。茂吉、紫狼久しぶり」

「風神様、お久しぶりで御在ます」

茂吉も紫狼も平伏(ひれふ)す。

「茂吉、こちらに参るが宜しかろ、お出で」

三人は薄青い雲に乗っていた。

「風神様、、、」

「お前の行き先は知っていますよ。先ずはわたしの話しを聞いてからにしましょう」

「あの、、風神様」

「紫狼、風神様に従いなさい。何もかもご存知のようです」

「ふふ、わたしの宮にでも行こう」

【風神】は《風雷宮ふうらいきゅう》に着くと、寝ている三吉を素敵な金剛石のベッドに寝かせてくれた。風雷宮は金剛石で造られていて、キラキラ輝く美しさは目を射るようなものではなく、心穏やかになる輝きで、その美しさは例えようもない。

風神は手ずから茂吉達に美味しいお茶をいれ、勧める。紫狼は畏(おそ)れ多くて固まってしまう。

「さあ飲みなさい。お前達は寝てもいないし、食べてもいない。三吉が起きたら食事にしよう」

「ありがとう御在ます。ですが、あたしは心が急いてなりません」

「ふふ、クルミに会いたいのだね?」

「ご存知なのに?」

「紫狼、控えなさい」

「あの子は姉と漸(ようや)く会えましたよ、ご覧」

【風神】が『サッ』と手を振ると大きな鏡が現れる。その鏡にはコノミと泣いて抱き合うクルミの姿を映していた。


ああ!クルミ、、、」


クルミー!!


二人は鏡に縋(すが)り付く。

「父様先生、あの子は元気そうです!」

「おお、本当にそのようです」

「ふふ、クルミは大分成長したようだよ」

「はい、とても顔がしっかりしているようで」

「ええ、こう何て言えばいいのか、、、とても逞(たくま)しくなってます」

「お前達に間違いはなかったのだよ」

「えっ?」

「・・・・・」

「お前の心の底にはいつも疑問があった。あの子可愛さ故、愛しい故に目を瞑(つむ)り、恵み子にしてしまったか?健やかな暮らしをさせたいが為に浅はかな過ちを犯したか?と、、、幾ら心宥(なだ)めても忸怩(じくじ)たる気持ちは消えなかった。そうではないかな?」

「風神様・・・」

「だからこそ、クルミは旅に出なくてはならなかった」


ええーッ!!!


「紫狼も同じ事。クルミが恵み子であると云う確固たる自信を持ち得なかった、愛するが故にな。だがどうじゃ?三吉と同じ程、いや、それ以上に恵み子ではないか」

「あっ...」

「ふふ、気が付かぬか?恐れ入った親馬鹿よ」

「面目次第もございません」

「もう、ただあの子の行方知りたさで一杯でした」

「戸の宿の殿次が申したろう?あの子のお陰で荒くれ共の性根が変わったと。河童兄弟の気持ちもな」

「ええ、そうでした」

「父様先生!あたしは嬉しい!!」

「紫狼!」

二人は抱き合って喜んでいる。






つづく


クルミ 36 恵み子の証

前回


茂吉と紫狼は鏡に写るクルミの姿に涙する。



はじまり、はじまり



挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
megumikonoakashi.jpg


「あのような真似が出来るのは理知る恵み子なればこそ。情と理をもってなしているではないか」

「あぁ、本当に!」

「ええ、ええ!その通りです!」

「わたしは茂吉がキナと云う河童に『天の計らい』と言うた時はどきりとした。知っているのかと、、、」

「とんでもない事です。ですが冷静になって考えればわかることでした。あたしも紫狼も親馬鹿に成り下がっていました、、、クルミを恵み子にした事に自信も持てませんでした」

「そんな悩みがあるに我らに相談もしない、寂しいのお」

「・・・」

「我らは頑固親爺のそなた達の悩みを解決するには言の葉で言うても無理と思うた。故にクルミに旅をさせた。あの子は立派に成し遂げている、自ら恵み子であると証明した」

「はい、何より嬉しゅうございます」

「そしてお前達のもう一つの蟠(わだかま)りである肉親との覚悟の別れもクルミは心得ているようじゃ」

「そうなのですか!?」

「だからこそ、姉に会いたかったのであろう。姉にきちんと別れをしたかったのだろ。真に健気な恵み子よ」


クルミーーーッ!


「困った親馬鹿じゃ。お前達は今少し辛かろうが辛抱するように。その内に何やら便りがあるであろう。さあ三吉を起こすがいい、一緒に食事をしよう」

こうして茂吉達は風雷宮で素晴らしい食事をごちそうになり、学校に戻って行く。茂吉達は風神に、便りがあるまで辛抱するようにと云われていたが、クヌギ達と《この世鏡》にクルミの日々を映し、何かあれば直ぐに迎えに行こうと決めていた。親馬鹿は全く治らない。

そんな事を知らないクルミはとても元気だ。毎日コノミにくっ付いて離れない。コノミもクルミと一緒にいられる幸せを噛み締めている。

「本当に仲のいい姉妹だね」

「ふふ、あたいの自慢の妹だもの。どうよ?此のお耳と尻尾の綺麗なことったら!」

コノミが自慢するのがわかるほどクルミの毛の赤は美しい。

「あたいなんかとは桁が違う気がするもの」

「やだぁーあたいの毛は姉ちゃんと一緒よ!」

「そんなことないわよ、姉ながら惚れ惚れするわ」

「あたい、恥ずかしい~」

こんな会話を毎日している姉妹だった。富吉も呆れるが、コノミが幸せそうなので嬉しい。そんなコノミも、クルミから色々と話しを聞いているので、ことの重大さはわかっていた。

自分が晴れて自由の身になった時、元締めの貞に許しを得、狐宿の店に行った。クルミを引き取ろうと思ってのことだ。憎い母親の顔を見るのもイヤだったので、富吉から訊いてもらったが知らないの一点張り、、、

近所で訊くと確かに行方知れずとの事。その後も探したが皆目、行方がわからず、泣く泣く諦めたのだった...そんなクルミから『大きくなったら売られる筈だった』と聞くと腸が煮えくり返った。

母親が自分と同じ目にさせようとした事に狂いそうになる。そしてご飯も満足に食べれなかった事を聞くと、心が千切れた。耳から血が出そうなくらい話しを聞くのは辛かった...

でも、そんなクルミが高名な茂吉に引き取られ暮らしていた事を聞き、喜びもしたが不安にもなる。茂吉の事は知らないわけではない。猫宿に来てから『大相撲』の件も聞いていたので、どれ程の力あるお方と畏(おそ)れもした。
※大相撲参照※

だが、クルミから聞く茂吉に紫狼、他の恵み子達や友達の三吉の話しには泪が溢れる程に嬉しい事ばかり。クルミは地獄から救われていた。『もしやしてクルミは尊いお方達に心配を懸けているのでは?』と思い至る。

富吉とも相談をして、元締めの貞吉に長い手紙を送った。畏れ多くて直接手紙は出せない。それから三週間あまり、貞吉からの返事もなく、いつの間にか忘れていた。

コノミは日毎に大きくなっていくお腹の所為で、今までの様な自由も利かないので苛つく事が多いい。するとクルミは上手い具合にコノミを宥(なだ)めてしまうので富吉はクルミ様々である。ある日、クルミはコノミの大きなお腹に耳を当てていた。

「姉ちゃん」

「なあに?クルミ」

「この子の名前、考えた?」

「ううん、そう云えば考え損ねてたよ」

「あたいの所為だね」

「そんなこと有る訳ないさ!あたいはお前がこうして側にいてくれて何よりも嬉しいよ」

「へへ。あたいね、お願いがあるの」

「今日の晩のおかずかい?何でも好きなの作ってあげるよ」

「違うよ、あたい姉ちゃんが作ってくれるものは何でも好きだもの」

「もう、可愛いんだから~」

クルミはこの愛らしい妹に頬ずりする。本当に仲良しの姉妹なのだ。惨く離したお順の罪は深い。

「あたいね、この子が女の子なら『クルミ』って名前にしてもらいたいの。男なら『三吉』って」

「どうしてさ?お前も子供もクルミじゃ、呼んだら二人して振り返るし、それに・・・あっ、そうか!お前は大きいから、おクルミで、この子はちびクルミって呼ぼうか?」

「違うょ...」

「変かねえ?もっと違う呼び名を考えようか?」

「姉ちゃん、そうじゃないの・・・あたい、このまま姉ちゃんと暮らせないの」

「どうしてよ!?何言っているのよッ!!
あたいはお前と離れるなんてもうイヤだよっ!!

「あたい嬉しいッ!ずっとこのまま暮らしていたい、、、だけどあたいは戻らなきゃいけないの」

どこによッ!?だってお前は売り買いされたわけじゃないんだから何も心配はいらないんだよっ!あたいと富吉で貞吉兄貴様によーくお願いしてるから

「違うの...姉ちゃん、あたいは【恵み子】なの」






つづく




クルミ 37 そうだよね

前回


クルミが恵み子だと知り、驚くコノミ。どうするのだろう。


はじまり、はじまり


「ぇええーーっ!?だっ、だってお前は、、、そんなこと言ってなかったじゃないかっ!茂吉様のとこには置いてもらっていただけなのかと思っていたよっ!」

「違うの!あたい病気ばかりしていたから、父ちゃん先生があたいを病いに罹(かか)らないよう恵み子にしてくれたの」

「そうなの?」

「うん。あたいね、恵み子ってどんなだか知らなかったの。だけどね、三吉が色々と教えてくれたの。三吉はきちんと大切な親や兄弟とお別れをして来たのよ」

「え゙・・・」

「だからね、あたいは姉ちゃんときちんとお別れをしたいと思っていたの」


イヤだよっ!あたいはイヤだよ-ッ!
お前を二度と離すもんかッ!!


コノミは聞くのも嫌そうに耳を塞いでいる。

姉ちゃん!だからこの子にあたいの名前を付けてあげて、、、そうすればあたい嬉しい!だって、いつまでも一緒にいられるもの」

「何言うんだいッ!生意気言うよッ、あたいはお前を離すもんかっ!
絶対に絶対に離すもんかぁあーーーーーー--ッツ!!!

コノミは外に駆け出し行ってしまった。話しを聞いていた富吉がクルミのそばに来る。

「そうだったのか?クルミちゃん」

「へへ。お兄ちゃん、姉ちゃん怒って行っちゃったよ」

「いいさ、おいらが何とでも言うさ」

「すまないね」

「へへ、クルミちゃんはそんなとこはコノミそっくりだね」

「へへ」

富吉はクルミに店番を頼むと森の中にある湧き水の池に行く。コノミが好きな場所だ。案の定、ぼーっとしているコノミがいた。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
soudayone.jpg


「おい、何だよ、こんなとこにいたら冷えちまうよ!」

「だって...だって、あたいのクルミがッツ、、、うわぁああーーん!

「仕様がねえなあ~、ほらお出で、沢山泣きな。後はクルミちゃんの前で泣いたらいけないよ」


ぅうわぁああーーん!クルミーーーっつ!!!


富吉の胸の中で思い切り泣く。今までが走馬灯のように頭に浮かんでは消える。不思議と楽しい思い出ばかりが浮かんでくる、、、殆どは姉妹にとって辛い思い出ばかりなのに何故かそんな事は浮かばない。

「あんた、あの子は恵み子なの」

「ああ、そうみたいだな」

「あの子、自分の名前をこの子に付けて欲しいって...」

「そうしよう!男なら三吉だろ?」

「うん。クルミの大切な友達らしいよ」

「どっちも恵み子様だ!ありがたいなー」

「あたいの妹だよ」

「そりゃそうさ!いつまでもあの子はお前の可愛くてならない妹だろ?」

「うん、あたい離れたくないッ!」

「お前、寂しかったものなあ、、、」

「あたい茂吉様に直訴する!クルミをこのまま、あたいのとこに置いて下さいって」

「そうだな。お前が望むならそうもしよう、、、だけどそれはお前の望みだろ?」

「ぇ゙・・・」

「お前も恵み子様が、どれほど尊いお方達かは分かっている筈だろ?どれほど大変な仕事をされているかをさ」

「知ってるわよ、知っているけど・・・」

「おいらはもう何も言わないよ。お前の気持ちもクルミちゃんの気持ちも痛い程わかるもの。
無理にお前の気持ちを曲げさせ、聞かせるなんて事はとてもできねえ。苦労を知ってるからな」

「あんたって優しいのね。あたい嬉しい」

「お前には俺がいるって言いたいのよ」

「・・・忘れてたょ」

「へへ、いいって事よッ」

二人は仲良く店に戻ってきたのでクルミはホッとした。コノミも富吉も敢(あ)えて何も言わないし、クルミもその事には触れなかった、、、言わなくてもわかりあえる時はいずれ来るだろう。

             

              ♢



話は少し前に戻る。
茂吉は木平の訪問を受けていた。木平は一年に一度、不思議膏を携えやってくる。国中を旅しているので、茂吉は土産話を聞くのを楽しみにしている。今回はクルミの事もあるので急いで来たのだ。

「茂吉先生様、わすはまさかクルミちゃんが恵み子様なんて知りもしねえで、大変な失礼をしたようだす。それにあの子を粒傘に送ってやる事もすねえで非道な話だすよ」

木平はいつも校長室に来るだけで宿舎には行った事が無いので、今まで一度もクルミと会っていなかった。

「何を言います、木平はまた徳を積みましたね。クルミが木平とそこで別れたからこそ、又新たな出会いがあったのです。その事により親馬鹿のあたし達も救われました。お礼を言います、ありがとう」

「そんなあ~、わすこそ嬉しいだす!」

その時、校長室のドアが開いた。

「久しぶりぶりぃー♪お元気ぃーーッ?」

ヒョコリ顔を出したのはお蜜だった。これには木平も驚く!顔を出したお蜜も同じだ。


きゃやーーーッ!!木平ぇーーーッ!!


お蜜様ーーーっ


二人して茂吉そっちのけで抱き合い喜んでいる。茂吉は二人の間柄を知っているので、この突然の珍事も落ち着いて見守っている。
※第八章 お蜜再び参照※







つづく



クルミ 38 ヒィハァ〜

前回

富吉に慰められるコノミ、クルミを見送ることが出来るのだろうか。


はじまり、はじまり


「ふふ、良かったですね。お蜜様、コーヒーでも如何ですか?」

「あら、茂吉!居たの?」

「ええ、先から居ましたよ。それにあたしの部屋に来たんでしょ」

「あんらぁ~、そうだったわ~」

「すんませんですッ、お蜜様と会うのがあんまり久すぶりだったもんで嬉すぐで嬉すぐで、、、恥ずかしいだす」

「いいんですよ、お互い素晴らしい生き直しをなさっているのですから」

「やぁねえ~♪茂吉はお世辞が巧くてよ」

「いいえ、本当の事です。お蜜様は益々輝きを増したご様子」

「本当だすよ、綺麗だすー!

「やっぱり女だから褒められると嬉しいわ~!でも図に乗らないように気を付けないとね。あっ、そうそう、クルミって子、どうしたの?」

「どうしてお蜜様がご存知なのですか?」

茂吉は驚く。

「それがさぁー、貞がねっ」

お蜜の話を纏(まと)めるとこうなる→富吉とコノミ夫婦は貞に長い手紙を出した。

兄貴~、矢吉の早飛脚です」

「何でげす?」

「粒傘の富吉からです。なんでしょうね?あいつんとこのカカアが腹ぼてだって云ってやしたから生まれたのかな?」

「バカ、そんなことで早を頼むかよ!由々しき事でも出来たでげすかな?」

「それから、矢吉の奴、『割り増し貰いてえ』って。死ぬ程飛ばしたって息巻いてます」

「しょうがねえなあ、呉れてやるでげす」

「へい!」

貞は手紙をさっそく読むと顔色を変えた。

「こいつは俺の手に余るでげす!ガス先生に相談するしかねえでげす!」

急いでガスの元に出掛ける。ガスは相変わらず大助と二人三脚で楽しく暮らしていた。レレの案内でガスの部屋に行くと運動不足の貞はよれよれで見るも哀れ。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
hieehaer.jpg


ひぃいはあぁ~、
ひぃいはあぁ~ひいひいひいはあはあはあ


「貞しゃんは相当、運動不足でしゅねえ~」

「へひぃッ」

「ゆっくり座りなさい」

「へひぃッ...大助様、あひがとうでげふ、げほげほ」

二人は貞が落ち着く為にお水を飲ませたり、団扇であおいだり大騒ぎだ。貞が漸(ようや)く富吉からの手紙を見せるとガスは嬉しそうに頷(うなづ)く。

なんとッ!これは何と云ってもお蜜様に知らせなくてはなりましぇぬッ!」

「本当でげすか!?」

「だってそうでしゅよ、富吉は貞の子分。云うなればお蜜様の子分でもありましゅもの」

ニャーーッッ!姐御の子分に違いないでげす!確かにそうでげす!へい、絶対でげす!間違いないでげすッ!」

「貞さんはお蜜様が大好きですものね」

大助が思わず言ってしまった。

「ニャあ~、そんニャあ~♪嫌でげすよ~本当の事言ったら~」

クネクネしているのは見ないふりをしよう。

「・・・」

「ガスも貞しゃんには負けましぇぬッ!ガスだって、ガスだって、、、
お蜜しゃまぁーーー!!

「・・・・」

大助は言葉も無い。二人は大助にも手伝ってもらい、知恵を絞って手紙を書いた。

「これなら、姐御もきっとお帰りでげす!」

「お蜜しゃまも寄ってくれるでしゅよ」

「それはいいですけど、富吉達の事はどうするのですか?」

「それはあっしには無理でげす。茂吉様にあっしみたいなのが関わるなんて畏(おそ)れ多すぎるでげす」

「ガスしゃんはどう思うのです?」

「ふーむ。考えることはないと思うでしゅよ」

「何故ですか?」

「だってこの件は茂吉様がお関わりなんでしゅよ。ボケ茄子が幾ら考えてもあのお方の知恵には敵いましぇんよ、無駄でしゅ」

「確かにそうでした」

「本当でげす」

「いい幸いにお蜜しゃまにご登場してもらうでしゅよ~」

「流石でげすなあ~、ガス先生!」

ふはふはふはふは

わっははは

悪知恵は働くものである。ガスは茂吉から預かっている知らせ蜻蛉の筆次に三通の手紙を持たせた。筆次は紙次の弟である、紙次には菰傘村の藤平の処に印次と云う弟もいる。筆次は三通は重いと文句を言ったがコンペイ糖を貰うと黙った。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
gokigenfudegi.jpg


そうしてお蜜は筆次から手紙を受け取り、まず茂吉に話を聞こうと此処に来たのであった。

「三通の手紙?」

木平が訊く。

「二通はガスと貞から『遊びに来て下しゃーい』のお誘い手紙」

「何だぁ、ガス先生様も貞さんもお蜜様に会いたいだすよ」

「本当にしっかりしてるわよ。一番の用事の事はこれぽっちも書いてなくて、貞なんか凄いわよ『新しい豆腐を試作したが是非に味見して頂きてえでげす。あくまで試作なので狐国にはお送りできねえでげす。姐御のお帰りをお待ちしてるでげす』」


ははは


「ふふ、楽しいですね」

「ガスはも少し頭使ったみたいよ、『月狼を狐国にやりたいと思うが就きましては、ガスめが病院建設の実地検分をしたいと考えておりましゅので、出来うるならばお蜜しゃまに迎えに来て頂きたく』だって!月狼だけ寄こせばいいのにね」

「ははは、流石にガス先生は理由が奮ってらしゃる」

「あたしも可笑しくてね!だから久しぶりに会いに行こうと思って」

「それはいいですね」

「それはそうとして、、、貞に云わせれば富吉もあたしの子分だから、あたしに何とかして欲しいらしいのよ。それに茂吉相手は畏れ多くて貞には出来ない相談らしいの。ガスはいい幸いで、貞に乗ったみたいよ」

「ふふ、しようが無いですね。でも、富吉もコノミも今頃は心を痛めているでしょう」

お蜜は茂吉に夫婦からの手紙を見せた。

富吉夫婦の手紙には切々とした言葉が綴られていた...クルミを思う姉の心情が溢れるばかりだ。

「いい姉様ですね、コノミは」

「本当にね、あたしもジーンとしたわ。あたしの姉様みたいよ」

木平は茂吉から手紙を見せてもらって感動して泣いている。茂吉はクルミ出奔の経緯から今までを全て話す。

「あたしは親馬鹿を止められなくて、毎日この世鏡であの子を見ています」

「茂吉ったら、親馬鹿じゃないわよ!いい親よ」

「ふふ、風神様は親馬鹿と云ってらしゃいました」

「あら!神々様こそ、とんだ親馬鹿よ。だって茂吉や紫狼がクルミを恵み子だって確信持てないのは可愛そうだからでしょ?」

「あっ、本当だすなあ〜」

「あたしは幸せ者です」

「きっと今も大鏡であたし達の事を見てるわよ。だって親馬鹿の本家本元だもの、決まってるわ!」

神々達は鋭いお蜜にドキリとした、、、内緒である。






つづく







今回は張り切って挿絵を二枚にしてみました。何でかなぁ〜春だからか
ニャハハハ

ぴゆう

クルミ 39 三杯のお茶

前回

お蜜が登場したことで事体は動くのであろうか。


はじまり、はじまり



お蜜は木平と共に学校にしばらく滞在をした。木平は畏れ多いいと恐縮していたが、宿舎の恵み子達とも仲良くなり、とても楽しい時を過ごす。三吉とは特に親しくなった。三吉は自分が離れてからの菰傘村の様子を聞く事が出来、たいそう喜んだ。

三吉がこの時、木平に手紙を渡したのは言うまでもない(短編・お種愛し)そしてお蜜は名残惜しむ木平と再会を約し粒傘村へと旅立つ。

「ここかしら?確かに旗が目印になっているわ」

富吉の店には大きな幟旗が揚がっている。貞の方針で『目立つが一番!』と、どんどん高く大きくなっていった。派手なのは猫国の者は大好きなので貞の読みは当たり!今では【九味豆腐きゅうみどうふ】の名前を知らぬ者は居ない。お蜜が豆腐屋の店先に降り立つ。

「いい店じゃない」

うわあッ!


ひゃぁああーーっ


村の者達は突然、空から降りて来たお蜜に腰を抜かし、富吉とコノミはお蜜に気が付くと慌てて店先に出て平伏す。

「富吉、久しぶり!」

「あっしを覚えていて下さったんですかッ!?

「あたしは子分の顔は忘れないよ」

富吉がお蜜に会ったのは都合二回程、貞に弟子入りした時と暖簾分けを許してもらい粒傘を後にする時だけで、それも部屋の端の方で平伏しているだけだったのに、、、富吉は感激してしまう。

「コノミっ、お蜜様だ!畏れ多い事だー!」

「はっ、はい、こッコノミでございますッ!」

「お前がコノミかえ?腹の子に触るよ、ほらお立ちよ」

「でっ、でも...」

お蜜はコノミ達を立たせると、そばでぼーっと突っ立っていたクルミに挨拶をする。

「ふふ、カワイイ恵み子だこと。あたしはお蜜だよ」

「あ、あたい初めて見たものだからビックリしちゃって・・・あたいクルミです!」

「あたしが来たのは貞から聞いたからだよ。さあ、あたしを外にこのまま立たせておくのかえ?空を飛びっぱなしで来たんだよ、喉がカラカラなんだ」

「申し訳もねえ事です!」

「気が付きませんでッ、ささ、汚い所ですが、クルミもご案内して」

「お蜜様、こちらにどうぞ」

クルミは直ぐに落ち着き、いつものおしゃまなクルミに戻る。さっそくお蜜の手を取ると店の奥に連れて行く。富吉が座布団を勧める。クルミが水を持って行こうとすると、コノミが止める。

「あれ?お蜜様にはお茶をお出しするんだよ」

「いいの、姉ちゃんはお湯を沸かしてよ」

クルミは台所に急いで行くと冷たい水をお蜜に差し出す、お蜜はごくごく一気に飲んだ。鉄瓶の前で中々湧かないお湯にコノミがイライラしている。

「姉ちゃん、此処に入れて」

「だって、まだ温いよ」

「いいの、それからそのまま湧かすのは止めないでよ」

「いいの?知らないよ」

コノミは温い湯を茶瓶に注ぐ、茶葉が少しづつ広がっていく。

「姉ちゃん、今度は熱いお湯を入れてね」

「はいよ」

クルミはお蜜にまた湯のみを差し出す。お蜜は温いながらも爽やかな香りと、ほんのり甘く感じるお茶を美味しそうに飲み干す。最後に濃いめで熱々のお茶をクルミは持って来た。

「今度は熱いので気をつけて下さい」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
sanbainoocha.jpg


お蜜はそんなクルミをじっと見ている、心底感心をしている様子だ。

「恐れ入ったね、どこで覚えたんだい?」

「あたい、紫狼兄ちゃんが急いで来たお客様にそうしているのを見てたから、真似したの」

「でも紫狼は端からお茶にしてたよ」

「えーっと、お蜜様はお空を飛んでいたから、普通より喉がカラカラだと思ったの。そしたらお茶より、まずはお水が飲みたいだろうと思ったの」

「すごいねえ~、その通りだよ!飛ぶのは喉が渇くのさ。竹筒の水なんか直ぐに飲んじまうもの」

二人の会話を聞いていたコノミが突然泣き出す。クルミは驚いて姉の元に駆け寄る。

「いいのよ、いいの平気なの、平気よ...」

「姉ちゃん、どうしたの?なんかあたい悪い事したの?」

「違うの、違うのよ・・・」

お蜜が二人のそばに来る。

「コノミ、わかったんだね?」

「はい、、、あたい...いつまでもこの子をあたいの知っているクルミとッ、、、」

「違うかえ?」

「ええ、あの頃の妹じゃない..立派に成長してました」

「姉ちゃん・・・」

「クルミ、あたいもわかったよ。あたいにあんな真似はお天道様がひっくり返ったって出来やしないよ、お前はそれを咄嗟(とっさ)に出来るのだもの・・・恵み子様ってのはお茶を入れる事一つとっても違うんだね」

「コノミ・・・」

富吉も心配そうにしている。

「あんた、あたい漸(ようや)くわかったよ」

「コノミ、あたしはね、この子が恵み子である前にお前の妹と云う事がどれほど大事で大切な事かを知ってるよ。それは茂吉も紫狼もよくわかっていることさ。風神様に諭されたって云うのもあるが、クルミの気持ちを知った上で愛する者と別れが出来るのを待っているのさ。いつまでも待っているってね、、、」


茂吉様がッ!?・・・」


「そうだよ、あいつらはクルミが居なくなって、そりゃ死にもの狂いで探したらしいのよ」

えっ!そうなの?」

「クルミ、後で会ったらよーく謝るんだよ『ご心配をかけました』ってね。もう茂吉なんかよれよれになっていたらしいよ」

「茂吉様がそんなに?・・・」

「おいッ、コノミ!」


あんたぁー!


ありがてえなあー!


「クルミは可愛がってもらっているんだね!」










つづく

クルミ 40 祝い鯉

前回

クルミの成長に納得をするコノミだった。


はじまり、はじまり



「そうさ、あいつら風神様に散々親馬鹿って云われたらしいよ」

「お蜜様、あたい達姉妹には親はあっても無いが同然でした。いえ、いっそ居ない方がまだ良かった...居なければ恋しく思う事も出来ました。だけどあたい達には生みっぱなしの親がいた、、、

あたい達は愛されることもなく、また愛した記憶も無い、そんな親子でした。あたいはそんな親には希望も持たなかったし、愛情もなかった、、、だけどこの子だけにはそんな辛い思いをさせたくなかった...役不足だけどあたいが親になろうとしました。

あたいは大きくなったらこの子とあの安酒場を出ようと決心してました。なのにあいつに突然、売り飛ばされた。クルミに別れを言う暇さえ許されなかった、、、そして富吉と出会い、貞兄貴様のご好意を受けるまでのあたいは地獄でした。

でも地獄にいたあたいでも、『いつかクルミに会う!会って一緒に暮らす!』という希望だけは捨てなかった。ひかされた後、我が儘云ってこの子に会いにいった時、既にこの子は行方不明...死にたかった。だけど富吉に止められて『必ず会えるよ!』って、、、『生きてりゃ会えないわけねえ!』って...ゥッ...」

コノミは涙で言葉が詰まって出て来ない。

「コノミ・・・」

富吉も泣いている、お蜜もクルミも泣いていた。外で立ち聞きしていた村の者達も泣いている。

「姉ちゃ...ん」

コノミは下げていた頭を思いっきり上げた。

平気だよ!あたいね、お蜜様の話を伺ってよくわかったんだよ。あたいがこの子と暮らしてもあんな真似は教えられるものじゃない、それに何よりもクルミに親が出来たんだって。

あたい嬉しい!よれよれになるほどクルミを心配してくれる親がこの子を育てていてくれたんだって、こんなありがたい話なんてありはしないよ、ねっ!お前さん」

「ああ、本当だよ!クルミちゃんは幸せなんだな」

「姉ちゃん」

「あたい、お前が幸せなら、もう何にも言わないよ」


姉ちゃぁあーーん!


クルミとコノミはしっかり抱き合った。お蜜はそんな二人を見ながら富吉に言う。

「あの子の迎えは心配いらないよ、明日にでも茂吉が来るからね。それから富吉、クルミが旅立った後、コノミはがっかりすると思うよ、今は強がり言っているけどね。だけどコノミには今お腹に子達がいる。きっとあの子達が立ち直らせてくれるよ。それまでお前も辛いだろうが辛抱しておくれ」

「とんでもねえ、あっしには過ぎた女房です!何を言われても平気ですよ」

「お前、いーい男だねえ~、惚れちまいそうだよ」

「へへ」

「それじゃ、あたしは行くよ」

「本当にありがとうごぜえやしたっ!」

「いいってことさ」

お蜜はそっと外に出ると、立ち聞きしていた村の者達にコノミ達をあたたかく見守ってほしいと頼み、空高く飛んで行く。

クルミは旅立ちの日を翌日に決める。姉がわかってくれたのに、自分がグズグスと滞在していれば、姉のやせ我慢が保たないだろうと思ったからだ。クルミはコノミに愛されている事がとても誇らしかった。

「姉ちゃん、あたいお願いがあるの」

「なんだろ?もう驚く事は無しにしてくれよ」

「違うの、あたいね、旅立つ前にお赤飯と鯛の尾頭付きを食べて行きたいの」

「何だあ~、そんなことかい?目出たいことなんだものね!クルミの門出だもの、わかったよ!」

コノミはさっそく富吉に伝えると富吉は急いで魚屋に走った。しばらくすると尾を下げ帰って来る。

「ちきしょぅっ」

「どうしたんだい?鯛はよ?」

「この辺は【産海(うみ)】が遠いいだろ?だから無いんだってよッ、どうしよーっ」

「うーーん!そしたら鯉は?鯉だって目出たいよ!鯉のぼりなんてあるし」

「そっか!鯉なら、かな平さんに頼めば見事なの釣って来てくれるよ!よし行ってくらあ~」

かな平とは木平の恩狸の稲子の亭主である。中々のつり名狸で通っている。かな平は喜んで引き受けると仕事そっちのけでさっさと出掛けた。

「稲子さん、悪いね、かなさんに無理言っちまって」

「何言ってんの!水臭いよ。あの宿六、いい幸いなんだよ、ここんとこ『行きてえよー』って、愚痴っていたんだもの。それにお役に立てるんだもの、あたいだって嬉しいよ!」

そして、かな平は見事な鯉を釣って来るとニガ玉を手際よく取り、下処理を済ませてから富吉の家に持って来た。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
iwaigoi.jpg

「コノミちゃん、ニガ玉取ってあるからやりやすいよ」

「わあー、大きな鯉!クルミ~、見てご覧!こんなに凄いの釣って来てくれたよ」

「うわぁ~!見たこと無いね!鯛より、鯉の方があたいに相応しいね」

「ふふ、凄いこと言うよ。確かにクルミちゃんには相応しいかもね、それじゃ」

「ありがとうございました!稲子さんに宜しく」

「はいよ」

富吉はかな平の後を追いかけて行く。かな平を労いがてら、飲みに行くつもりだ。富吉はコノミに『最後の晩だから二人だけで昔話をして過ごしな』と言ってあった。

コノミはさっそく鯉を腹開きにし、塩を振る。下処理をかな平がしていてくれたのでとても楽だ。クルミは楽しそうにそばで見ている。火を熾(おこ)し炙(あぶ)り始めると鯉の腹から油が滴る、その度に煙がボワッと立ち上がる。

「わあ!もくもくだあ~」

「すごい油だね、きっと美味しいよ!楽しみだねー」

「ねえ、富吉兄ちゃんが帰って来ないよ」

「いいのさ、今晩はあたいとクルミだけで過ごすのさ」

「どうして?この鯉、きっと美味しいのに」

「その内、酔っぱらって帰って来るよ。それよりもう出来たよ、開いたから出来るのが早くていいね」

「なんか、尾頭付きだけど干物みたいだ」

「はは、本当だね!だけど新鮮だし、美味しいからいいよね」

「うん!」

この晩のお菜は、大根のみそ汁、こしあぶらのお浸しだ。こしあぶらはクルミと遊びながら採りに行ったので沢山ある。ひょろっとした木は良く曲がるので採りやすく、天ぷらにしたり、ごま和えにしたり楽しんだ。











つづく








今回はコメント欄を閉じました。ちょっと野暮用でコメ返が出来そうにないのです、スミマセン。
来週は開けますので宜しくお願いします。


ぴゆう




プロフィール

 のくにぴゆう

Author: のくにぴゆう
猫国の住民達の物語を書いています。
作者はコメを食べて生きてます。
コメくださ~~い!
ブログ内の小説、画像の無断転載、コピー、転用は禁止です。

もくじ
最新記事
リンク
当ブログはリンクフリーです。
最新コメント
いろいろ
今まで紹介をしなかったのですが、それも変だなと 三ニャンを宜しくお願いします。

母のみーです。 mi3.jpg

息子のちーです。 chiko1.jpg

娘のぽーです。 po1.jpg

揃い踏み mcp1.jpg

木登りおーちゃん Ochan.jpg

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ





検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QRコード
pictlayer
画像をクリックすると大きく、もう一度クリックすると閉じます
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。