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クルミ 21 月夜の晩 

前回

甘酒に酔い、いい気分で眠ってしまったクルミ。
どこで目が覚めることになるのやら?


はじまり、はじまり



二人は薮で足が擦り傷だらけになっても気にせず、走れるだけ走る。

兄貴ーーッ!ちょっとーッちょっと待ってよおっ!一休みしてよーッ」

テレは辺りを見回す。いい幸いに月夜の晩、猫っ子一人もいないので安心してその辺に座った。

はぁあーー!よく走ったなあーッ」

ふうーっ、こんなに駈けたの久しぶりだよ」

「駕篭の中は大丈夫かよ?」

トチが背中から駕篭を降ろすと、クルミが転がり出た。

「うぐぐ...」

「兄貴ー!此の子狐、辛そうだよぉ-ッ」

「あっ、そっか!ちびにはキツかったよな。外してやんな、どうせ何所にも逃げられやしないさ」

「はいよ」

「あ---ッ、苦しかった!おじちゃん、これも取ってよ」

「あっ、ごめんね。直ぐに取るからね」

トチは手足の縄を解く。

「痛かったぁぁ~ぎゅうって結ぶんだもの」

「そうかい?こっちのテレおじちゃんがやったんだよ」

「おい、余計な事言うんじゃないよ」

「ふーん、加減も知らないのね」

「ぶっほッ、何を言うこのクソガキ!」

ぁ~ぃ」

クルミは態とらしくトチの陰に隠れた。

「兄貴!こんな子狐にそんな大声出すものじゃないよッ、こんなに怯えてるよ。大丈夫だよ、おじちゃん二度とそんなことさせないからね」

「本当?」

「本当だよ、このトチおじちゃん信じてよ。だけど成る可くならお兄ちゃんって呼んで欲しいなあ~」

「ふぅーん。痛くしないのなら、呼んでも良いよ」

「絶対、守るから安心しなよ」

「阿呆くさッ、何をくだらねえ事言ってんだよばーか!行くぞ」

「どこに?」

「叩くよ。いいから、子狐ふん縛って駕篭に入れろ!」

「そんなことできないよッ!」

てめえ、兄貴に逆ろうってのかッ?」

「違うよ!違うけど、、、可哀相だよ」

「おめえがやらねえんなら俺がやるぞ」

「わかったよ」

クルミが恨めしそうにトチを見る。トチは『ごめんね』と言いながら軽く縛る。

「口にはもういいじゃないか?」

「黙っているんならいいけどよ」

「静かにしてるよな?」

クルミはトチを睨(にら)みながら頷(うなづ)く。

静かにするってよ!ほら駕篭に入れるからね」

そっと駕篭に入れる。

「ねぇ、なんか敷く物ないの?チクチクするの」

「あっ、ごめんよ!これならどうだい?綺麗じゃないけどお尻に敷いてな」

トチは着ていた半天を丸め駕篭の下に敷く。

「うん。ありがとう」

「へへ、気にすんなよ」

「おい行くぞー!」

テレはさっさと歩き出す。トチはテレと距離を詰めようとはしない、大分離れてしまっても気にしない。

「おーい、早く来いよー!」

わかってるよー!ったく五月蝿いんだから、、、そう言えば子狐ちゃんの名前は何て言うの?」

「・・・」

「平気だよ、五月蝿いのは先を歩いているから聞こえないよ」

「ほんとぉ?」

クルミは駕篭から顔を出さない。

「ほら、見てご覧な」

クルミは『そっ』と顔を出し、トチの言っている事が本当なので安心する。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
tukiyonoban.jpg


「ふぅぅ…、あたいはね、クルミって言うのよ」

「そうかい、良い名前だね!」

「お兄ちゃんは?」

「へへ、お兄ちゃんって言ってくれたね。おいらはトチ。あのおっかないのがおいらの兄貴のテレだよ」

「ふぅ-ん。ねえ、ここはどこなの?」

「えっ!どこかな-?でも、もう少しで戸の宿だよ」

戸の宿は本街道から、かなり外れている、とても寂れている宿(しゅく)である。猫宿から《卍宿》の【御係所】に行こうとする者達は汚い安宿には泊まらないし、風体の良くない者達の溜まり場になっているので避ける。本街道沿いには葛傘村があり、そこで宿をとる。値段も安く繁盛をしている。

「ねえ、あたいの事どこに連れて行くの?」

「えっ?・・・・しのあのそののめだよ」

「なぁに?よくわかんないよ」

「うん、、、それよかクルミちゃんは幾つなの?」

「あたいはね、三吉と同じ七歳だよ」

「へー、三吉ってクルミちゃんの友達なの?」

「そうよ、あたいはね、お友達は三吉だけなの」

「そうか、そういやおいらにも里に一人だけいたけど全然会ってないなあ」

「ふぅーん。ねえ、お兄ちゃん【猫宿】って知ってる?」

「えっ!?知ってるも何も今そこに向かってるんだよ!」

「そうなの?そしたら東雲楼(しののめろう)とかいうのは...」

「そこだよ、そこに行くんだよ」

本当ッ!?本当なの!?そしたらあたい、コノミ姉ちゃんに会えるわー--!」

トチは驚き、立ち止まる。そそくさと駕篭からクルミを出し、手足の縄を解く。

「あら?どうしたの?こんなことしたら怒られるよ」

「いいんだよ。お前、姉ちゃんが東雲楼にいるって本当なのか?」

「本当よ、あたい何度もこの耳で聞いたもの」

「そうか、、、可哀相にな...」

「売られたのよ、姉ちゃん」

「売られたのか.....」

「あたいも売られた」

えっ?どう言う事だよ」

「あのね、あたいも売られてあそこに居たの。だけどね、とてもあそこが好きだったったの。だけどね、あたい役立たずだから、大嫌いな親元に戻されるとこだったの。でも良かったぁ-あ!姉ちゃんに会えるものー!」

「良かねえよ、とんでもねえ話しだ!二度も売り買いされるなんて!こんなちびにそんな辛い真似をさせる訳にはいかねえよッ!」

「どうしたの?」

「おいら、そんな可哀相な話し聞いた事ねえよ!絶対に東雲楼になんか行かせねえ!!

「どうしてよ?あたい姉ちゃんに会いたいッ会いたいッ---!
うわぁーーーん!





つづく









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クルミ 22 痛いよぅ 

前回


目的地が東雲楼(しののめろう)と聞いたクルミは行きたいと泣き叫ぶ。一方のトチは二度も売らせることは出来ないと心に誓う。



はじまり、はじまり


クルミがあまりに大きな声で泣くものだから、テレが戻って来る。

「うるせえなあ!どこに誰がいるとも限れねえのによッ」


どこに誰が居ようとかまうもんかッ!


テレはトチがとても興奮しているので驚く。

「どうしたんだよ?ああ、五月蝿いねえー、ガキを泣かすんじゃねえよ」

「可哀相なクルミちゃん、ごめんね、このろくでなしに好きにはさせないからね」

おい!何言ってんだよッ、何がろくでなしだよッ!」

「だってそうじゃないか!この子はね、姉ちゃんを東雲楼に売られてんだよッ」

「へえー、なら丁度良いじゃねえか」


なんだってぇえーッ!?もう許せない!
このヤローっ!!



トチはテレに殴り掛かる。突然、襲って来たのでテレは逃げ損ね、トチに思いっ切り殴られた。


わぁあーーーッッ


ぼこぼこ殴られテレはのびてしまう。

「へへ、のびちゃったよー!やれば俺だって出来るんだな、ウンウン」

クルミは目の前で突然起きた事に驚いて泣き止む。トチはクルミの元に行くと笑いかける。

「へへ、びっくりさせちゃってごめんね」

「ぅ・・・」

「おいらが怖いの?」

「ううん、だってびっくりしたの」

「そうだよね、おいらもびっくりしてるもの」

「どうして?」

「だって、まさか兄貴をのしちゃうなんてね!意外に兄貴って弱かったわ~へへ」

「そうなの?でも、あたい、殴ったりするの嫌いょ」

「ごめんねー、でもあんまりだったんだもの」

「ぅうッ、痛ってぇえー!」

「起きた?兄貴」

「何が兄貴だよッ!この野郎、いきなり殴るなんてよッ!はあーー、痛いわ」

「へへ、兄貴がいけないんだよ」

「なんでよッ」

「だってそうだろう?、くるみちゃんはね、売られてたんだよ」

「え?どう言うことよ?」

「この子は売られた先から逃げて来てたの」

トチの話しは微妙に違ってきている。

「そ、そうなのか?...」

「そうだよ!こんなに小さいのにさ。いくら兄貴でも二度も売るなんて非道を許されるのかよ」

「だって...知らねえもの、、、」

「でも今知ったんだからね!」

「・・・そうだな」

「あたい、姉ちゃんに会いたい」

「・・・・・」

「ねえ、叶えて上げようよ!クルミちゃんの姉ちゃんも救ってさ、この子に会わせて上げようよ!」

「ばか・・・」

「何よ?」

「お河童善しもいい加減にしろよ!どうして俺達程度が郭の足抜けなんてさせることが出来るんだよ、少し考えりゃわかるだろうが」

「だけど・・・・」

「ふん、いいから行くぞ!」

テレはそう言うと顔をしかめながら歩き出す。

「クルミちゃん、あの兄貴はイヤな奴に見えるけど本当は違うんだ。説得するのに時間が懸かるかも知れないけど安心して!今においらがきっと善いようにしてあげるからね」

「うん」

「ここは薮が深いから駕篭に乗りな」

トチはクルミを背負い駕篭に乗せる。トチは少し泣いた...過去を思い出したのだ。自分達兄弟もそうだった....

テレとトチの兄弟には上にもう一人兄がいて、三人で親に捨てられた。ある日、突然親が家に帰って来なくなった。探したが皆目、分からず、腹を空かしフラフラしていると親切なおじさんが声を掛けた。

そのおじさんは『飯を食わした礼をしな!』と言い三人を売った。売られた先は商家だったがとても酷い扱いを受けた。一番上の兄が十七に成ると三人で逃げた。その後は兄が物売りをしながら育ててくれた。兄が苦労し店を持つと二人は独立して今に至る。

「兄貴はどうしてるかなぁ?大分会ってねえなあ、、、、」

「くぅぅ」

クルミは寝てしまう。お腹も空いていたのだが駕篭で揺られている内にすっかり寝入ってしまった。
目覚めた時、知らない部屋にいた。障子はボロボロ、歩くと畳が凹む。枕元にはおにぎりと冷めたお茶が置いてある。

おにぎりをパクパク食べた。お茶を飲んでいると襖隔てた向こうから、うんうん唸り声が聞こえてくる。変な声にビクッ!としたが、そっと襖を開けるとテレが脂汗を流し唸(うな)っている。

そばに寝ているトチは気が付かないのかぐっすり寝ている。クルミは急いでトチを起こす。

「トチ兄ちゃん!おじちゃんがおかしいよ、ねえねえ、
起きてょおー!


涎を垂らし寝ていたトチは無理矢理、起こされる。

「むにゃむにゃ・・・なあに?クルミちゃん」

「トチ兄ちゃん!ほら、おじちゃんおかしいの!」

「えっ?あれ?兄貴!兄貴!どうしたんだよッ」


「ふんげーーッ、痛ってえーーッッ!!
腹がっ、腸が熱い捩(よ)じれるーーー!!!



挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
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テレは転げ回っている。

わあッ!大変だあーッ!!どうしよう、どうしよーう!
あわわわ」

トチが大騒ぎしてたので隣の部屋の客が来る。

「うるせえなあ!あれ?トチ!どうしたんだよ?」

顔なじみの狸のぎ助だった。

「どうしよう、兄貴がッ!」


痛いーッ、痛ぃいー、
腹が痛いよーーッ!



「どうしよう??薬なんて持ってないよーッ」

「ありゃテレが変になってるよ、下に行って薬貰って来てやるよ」

「頼むよッ!」

トチがテレの汗を拭いていると宿の主人の殿次が来て薬を飲ませるが、それでも腹の痛みは全く取れない。


ひぃーッ、いだぁーーいッ、
痛いッいだいよーーッ!



「困ったなあ、医者が居る葛傘村までは急いで行ったって・・・」

「助けてやってくれよッ、おいらが行ってくるよ!」

「おめえは身内なんだから、そばにいた方がいいよ」

「そしたら、おいらが行くよ」

「ぎ助、すまねえ!」

「いいって事よ」

ぎ助は急いで宿を出て行った。だが、どんなに急いでも明日の昼にはなってしまうだろう...




つづく




クルミ 23 クルミの知恵 

前回


苦しみ悶えるテレ、救いの手は明日まで来ないのか



はじまり、はじまり

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります

kuruminocie.jpg


「ねえ、トチ兄ちゃん」

「なんだい?」

「あのね、あたいね、前に目が見えなくなった時があったのよ」

えっ!そうなの?それで?」

「その時にね、とっても良いおじいちゃん先生に助けてもらって治ったのね。そのおじいちゃん先生はあたいのそばにいる時に色んなお話しを皆にしていたの。

『お腹が死ぬ程痛くて捩(よじ)れるような時は【はこべの青汁】を飲ませると、不思議と腸の腫れと痛みに効く』って言ってたよ」

本当か!?

「うん、本当だよ。このまま放っとくと、このおじちゃん可哀相だよ」

「よし!親爺、まだ【はこべ】が生えているとこってどこかな」

「軒下の柔らかい土のとこにも生えてたなあ、あそこならけっこう出てると思うよ」

「わかった!皆も手伝ってくれーッ

「ああいいよ!」

「勿論だよ!」

宿の泊まり客も総出で手伝う、沢山のはこべが採れた。クルミの指示通りにさっと洗うと刻んですり鉢ですり、それを布巾で包み、ぎゅっと絞るとお猪口一杯くらいにはなった。

「急いで飲ませて」

「わかったよ」

トチは痛がって転げ回るテレに何とか飲ませる。最初は痛がっていたが、その内に転がらなくなり腹は押さえているが少し楽になったようで息づかいが整って来る。

「おいおい、すげえなあーッ
、このちび狐の言う通りだよ!」

「たまげたなあ!」

「まだ、はこべあるよね?」

「ああ、沢山あるよ」

「そしたら洗っておいて」

「もっといるのかい?」

「もう少し経ったら又飲ませた方が良いし、絞り立てがいいと思うの」

「うん、わかった!」

「それから、おじいちゃん先生はね、『はこべ汁は後で煮詰めてドロドロにしたのをはこべがない季節に使うんだ』って」

へえー!たまげたよ~、いくらでも生えてるから作っとけばいいんだね?」

「そうよ、また困った時に使えるよ

「へーッ!感心したよ~!」

主人の殿次も客も大いに感心する。一時間程経つとテレは痛みも取れて気持ち良さそうに寝始めた。どうやら、はこべが効いたようだ。

少し飲ませてから皆は寝るのも忘れ、はこべ汁を煮詰めた。とろとろになる迄には朝方になってしまった。クルミは台所で丸まって寝ている。

「しかしすげえなあ~、トチの知り合いかい?」

「そうじゃねえよ、小さな友達だな」

「お陰でテレは命拾いだな!」

「全くだよー、良かったよー!」

「起きたら、美味い朝飯食わしてやろう」

「ああ、そうしてやってくれ」

殿次が張り切って朝食を作り、クルミを上座に据えて皆で食べた。腹がくちくなると寝ていなかったので皆でごろごろ眠りだす。昼近くになって戸をドンドンと叩く者がいる。


開けてくれーッ、ぎ助だあ!
医者を連れて来たぞーッ!



戸をガラガラ開けると眠そうな顔のトチを見て、ぎ助は勘違いした。

「間に合わなかったのかッ!?....うぅ....急いだんだけどなあ、、、、、」

「ふわぁーーーッ、眠たいなあ~」

「何だとッ?泣いてたんじゃねえのかよッ!

トチはぎ助に説明をし、態々来てもらったので医者にも一応診てもらう事にした。

「ふーむ...確かに腫れていたようじゃが、今は大分に引いておる」

「先生、兄貴は大丈夫ですか?」

「うむ、このまま三日は安静にな。だが腫れが引くとは・・・」

「はこべの青汁を飲ませたがいいって、クルミちゃんに教えてもらって急いで飲ませました」

「ん?よく知っていたなあ、感心感心。劇的に効いたようじゃ。いやはや、わたしより余程の名医じゃ。青汁は盲腸にも腸捻転にも効くのよ。医者しか知らぬ事、大したものだ」


へーッ!すげえなあー


医者は感心しながら帰り、トチは薬をもらって一安心した。

「良かった!これで安心だわ」

「本当だよー!」

「ぎ助ありがとうなッ、恩に着るよ!」

「気にすんなよ!でも恩に着るのはクルミって云うあのおちびにだぜ」

「本当だよ、兄貴はクルミちゃん様々だよ」

「テレも変わるかもよ」

「そうだといいけど・・・」

ぎ助達とは悪仲間だった。小さな盗みもするし、テレとトチがしていたような女衒紛(ぜげんまが)いの事もする何でも屋だ。

そんな奴らだが少しは良心もあるし、友情には厚かったりもする。不思議なものだが仲間意識は強いのだろう。トチは、ぎ助達に今迄の事を話す。

「かわいそうになあ~」

「おいら、ますますクルミちゃんを姉ちゃんに会わせたくなったよ」

「そりゃそうだよ」

「テレの奴、命の恩狐に何て言うのかね?」

「生意気言ったら俺らが許さねえよッ!」

宿の主人も客達も皆クルミの味方だ。ぽんぽん腹になって気持ち良さそうに寝ているクルミを見ると皆、仏心で一杯になる。

「可愛いねえ~」

「何か大分会ってねえ、子供を思い出しちまった」

「そりゃいけねえよ、帰ったがいいよ」

「帰ろうかな?」

「帰りなよ」

里心だす者ありと今までに無い不思議な雰囲気になってくる。クルミが起きた。皆は、ますます善い者になろうとした。




つづく









この話にある「はこべの効能」は凄いものがあります。
実際に明治の頃、渡欧したお役人が彼の地で盲腸炎になりました。
その時、身近にあったのがウシハコベだったそうですが、
同じように青汁を飲ませた処、劇的に治り公務を無事終えたという逸話が残っています。
私も作ったことがありますが、時間はかかりますが冷蔵庫に入れておけば腐らないので便利です。
お正月に七草粥で食べますが、はこべにこんな力があることを知っていると味わい深いものになると思います。

ぴゆう

クルミ 24 はこべの青汁

前回

クルミの知恵で命拾いしたテレ、宿の者は感心するばかりだ。


はじまり、はじまり


「ねぇねぇ、あたい思うんだけど」

「なんだい?」

「どうしたの?」

むさ苦しい男達が雁首を並べている。

「おじちゃん達、このはこべ汁を売ったら?」

「えっ?あっ、そうか!皆の為になるものなあー」

「そうよ、はこべなんてどこにでも生えてるし、煮詰めるのなんて簡単だもの。悪い事してご飯食べるより、喜ばれて食べるご飯はよっぽど美味しいよ」

いやーッ、本当だよ!」


全くだあー!


皆、クルミの意見に賛成をする。早速はこべを採ってくる者、洗う者、刻む者、煮詰める者、細い竹筒に詰める者と分業した。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
hakobenoaogiru.jpg

クルミも一生懸命手伝い、翌日には竹筒に入った百個程のはこべ汁が出来た。

「おじちゃん達、すごいねぇ~!」

「へへ、クルミちゃんに褒められると嬉しいねえ~」

「なんかいい気分だよー」

「そしたら、売りに行かないとね!」

「ああ、だけど只の【はこべ汁】って売ってもなあ...」

「こんなのはどうかしら?

『あら不思議ぃ~♪ポンポン痛くて捩れたら♪お猪口一杯この薬ぃ~

飲んだら忽ちよぉーくなる♪あ〜ら不思議ぃ~♪あら不思議」

ひゃーいいなあ!そりゃいいよ!」

「太鼓を鳴らしながら歌ったらどうだろう?」

「いいねー、それデンデン鳴らしてさあ~」

宿の主人、狸の殿次が納屋に行くと古びた太鼓を持って来る。

「これ鳴らしてみるか?」

「よーし!」

「♪デンデコ、デンデコ、デンデンデンデン・・・♪」


みんなー、歌ってえー!


♪デンデコ♪デンデコ


あら不思議ぃ~♪♪ポンポン痛くてー、捩れたらー

デンデン

お猪口一杯ーー、この薬~~♪


大騒ぎである。クルミを先頭にして宿の周りをデンデン太鼓を叩いて大声で歌う。何周も何周も廻り続け、皆、心から楽しんで歌った。

後にクルミが恵み子様と判ると【恵み子様の薬】として有名になり、【河童の不思議膏】と並び賞されるほど重宝がられ、いつしか家庭の常備薬になった。

ガスもまさか茶飲み話しがこんなに役立つとは思わなかったろう...知恵は惜しまず、授けておくものである。

テレは具合が良くなるとクルミに土下座して謝った。
命の恩狐に感謝して泣く、余程辛かったのであろう...感謝も一入(ひとしお)だった。

すっかり良くなるとテレもトチもクルミ様様である。願い通りに姉と会わせ、一緒に暮らせるようにしてあげるんだとすごい鼻息。テレの河童の変わり様には皆も驚く。

「ねぇ、何してるの?」

「へへ、クルミちゃんを乗せる蓮台を作ってるんだよ、屋根も付けるんだよ」

「すごぉーい!これにあたいが乗るの?」

「そうだよ、ふかふかのお布団も敷くんだよ」

「新品の布団を殿次がくれたよ」

「わぁ~楽しみ!あっ、そう言えば、あたい三吉と約束していたんだわッ!あぁ...もう何日も経っちゃった、、、」

「今から急いで戻るかい?」

「うーん...でも姉ちゃんに会いたいッ!姉ちゃんに会ってからにするよ」

「そうか、そうだよね?そしたらテレ兄貴、急ごうぜ!」

「ああ急いで作ろう!」

翌日に仕上がった蓮台は中々立派だ。屋根もあるし、中を隠せる様に幕もある。

「雨が降っても風が吹いてもクルミちゃんはこれで寒くなくて済むな」

「そうだろう?いい出来だよー」

「さて、そろそろ行こうか?」

「さっ、クルミちゃん、乗ってみなよ」

「うん!嬉しいなぁ~、こんなのあたい初めてだもの」

クルミが乗るとテレが先棒を持ち、トチが後になって担ぐ。

「すげえ、御姫様みたいだ!」

「俺達のクルミ姫だよ!くれぐれも気をつけてなー、テレ、トチ優しく運ぶんだぜ」

「ああ、任せといてくれ!」

「兄貴、行こうぜ」

「おじちゃん達、またね~」

クルミちゃん、気をつけてね~

帰りに又寄ってね~


こうしてクルミは猫宿へと旅立つ。残った宿の者達はクルミに厳しく言われたので、はこべ汁をとても安い値段で売る事にした。



つづく




クルミ 25 依頼

前回

クルミの提案で、はこべの青汁で商売をすることになる。安い値段で売り、皆に喜んでもらう。これで半端な奴らも生きていく張りができたろう。クルミご一行は皆に見送られ猫宿へと旅立つ。



はじまり、はじまり




そう言えば、紫狼はどうしているのだろう?

      
           ♢


            
紫狼はようやく連傘のガスの元に到着をした。雲階段とはいえ、猫国を一週間かけ、北から南へと大移動したのでお順とこん竹は疲労困憊で、さすがの減らず口も出ないようだ。

紫狼は屋上に二人を放ち、一人ガスの書斎に向かう。ノックをすると「どうじょ、開いてましゅよ」いつもの声。
中に入るとガスと机を並べ、もう一人河童がいる。その河童はにこにこして、とても良い顔をしている。

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「ガス先生お久しぶりです。あれ?なんか、お若くなられたような、、、」

ふあふあ、若いって~大助しゃん」

「良かったですね」

「あの...すみませんがこちらの方は?あたしは紫狼と申します」

「わたしめは大助と言います。先生のお手伝いをさせて頂いてます」

まったあ~、大助しゃんは河童が悪いでしゅよ」

「だって私は弟子ですよ」

「じゃ、ガスも大助しゃんの弟子でしゅ」

「あのう...大助様とおしゃられるのですか?」

「はい紫狼様、お初にお目にかかります。どうぞ宜しくお願いします」

「こちらこそ、宜しくお願いいたします」

「大助しゃん、紫狼様は恵み子様なんですよ」

「それは、それは」

大助はガスから色々とこの世界の事を聞いているので中々詳しい。オロも驚く程、知っている。

「月狼達も紫狼様がいらしゃったのを知れば喜びましゅよ」

「月狼達はまだ修業をしていたのですか?」

月狼達は狼族の村である月影村の出身で、そこは紫狼の里でもある。紫狼は優秀な者達を積極的に卍宿の医学校に行かせ学ばせている。月狼やシャナ、海狼もそこを卒業してからガスの元で修業しているのだった。

「無論ですよ、ちっとも出て行きましぇんよ。この頃は大助しゃんにも教えてもらっているので尚更でしゅよ」

「ほほーそれはそれは」

ガスは大助との経緯を詳しく紫狼に話す。※大相撲参照

「では父様先生が猫宿に行って騒動を収めた時の事ですね」

「ほほー、しょんなに猫宿は騒動でしゅたか?」

「はい。皆、言う事を聞かないと魂沈めされると聞いて、急いで片付けをしたらしいですよ」


ふあふあ


はははは


三人で笑った。紫狼はここに来た用件を言うと「任せなしゃい」と快い返事をガスから貰う。それから紫狼は月狼達と久しぶりに会い、楽しく二、三日を過ごす、長旅の疲れも取れると再び、雲階段に乗り帰って行った。

お順とこん竹は最初の日こそは食事も長屋に持って来てもらえたが、翌日からさっそく働かされる。お順は患者の看護、こん竹は雑用だった。レレは紫狼からよくよく聞かされているので二人に全く容赦ない。

「ちょっとッ、お順!どうしてそう包帯の巻き方が下手なのッ」

フン

「いい?こうして仕上がりが麦の穂に見える様にやるのよ」

お順はレレに教えてもらっているのに、下げる頭も聞く耳もないので威張られてると思い腹が立って仕方ない。長屋に帰るとこん竹に肩やら腰を揉ませながら、愚痴三昧の日々を送っていた。

「あのメス河童!いいようにこき使いやがってさッ」

「ああ、おいら達が逆らえねえの見越してんだよ」

「頭に来るよッ!」

どうやらこの二人、魂沈めされなかったことを感謝する処か、このていたらく。腐った性根は治らないとみえる。

卍宿に帰った紫狼は焦燥し切った茂吉に驚き、事の仔細を訊く。茂吉達はあれから必死になって探した。三吉の約束した場所には日暮れになってもクルミは姿を現さなかった。

蜘蛛の紋次に頼る他ないと紋次の子分達を総動員して糸を出させたがクルミの行方は杳(よう)として掴めなかった。何日かすると紋次達の糸で真っ白になり、卍宿一帯を覆ってしまい宿(しゅく)の者も困り果て苦情を言ってくる始末。

茂吉は最初、頑として聞き入れなかったが恵み子達に説得され、仕方なく紋次達の糸を引き上げさせた。そんな時、紫狼は帰って来た。茂吉は唯の親馬鹿に成り果てていた...クルミが心配で身も世も無い様子。

「父様先生、、、、、」

「ふふ、情けない話しよ。こうまで阿呆になるものか...」

「そんな事はありません!あたしも同じです。でも少しはお休みになられないと・・・」

「横にもなれぬのよ、クルミの顔が浮かんでしまって・・・」

がっくり項垂れてしまった。






つづく


クルミ 26 帝子と夢子

前回

紫狼はガスに二人を任せると安心して帰る。校長室には憔悴しきった茂吉が居た。睡眠も満足に取れないようだ。


はじまり、はじまり


二人が話をしている校長室の窓際に何やら黒い影がモゾモゾしている。そのうち、その黒い影は人形(ひとがた)になり窓を開けようとしているが、開け方がわからないらしく苦労をしている様子。

すると今度は窓を遠慮がちにノックする(コン..コン...)ノックする度にバラバラと手が崩れる....不気味だ。紫狼が気が付き急いで窓を開けた。

「どうしたのです帝子、随分と久しぶりだこと。父様先生、帝子です」

茂吉は珍しい名前を聞くと、項垂れていた頭を上げる。

「おお、さっ、入りなさい」

「帝子、入りなさい」

「はい、それでは取り敢えず夢子と私だけにしておきます」

黒く、もぞもぞ動いていた人形がバラバラ崩れ落ちる。窓には二匹の蟻が居た。一匹はとても大きい蟻で帝子と云う女王蟻、もう一匹は娘の夢子だ。二匹の蟻はそそくさ駈けるように二人の前に行くと、丁寧にお辞儀をする。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
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「お久しぶりのお目もじ、この帝子、嬉しゅうございます」

茂吉も少し元気になってこの小さな訪問者と話す。

「ふふ、お前達の仕事ぶりには頭が下がりますよ、お前が離れても平気なのかい?」

「はい、帝子の引退も近い気が致します」

「なんと!そう言えば、もうどの位経つかね?」

「はい、九百年にあいなります」

「ああ、そうだね。あたしが御係所を始めて、そのままお前に頼んだのだものね」

茂吉と帝子の付き合いは古い。茂吉が御係所を始めると天の神から【捕縛蜘蛛の紋次】【知らせ蜻蛉の紙次】【記憶天道虫の丸子】【牢獄蟻の帝子】達を、僕(しもべ)にせよと下された。

紋次は何度も度々出ているので説明はいらないが、知らせ蜻蛉の紙次と記憶天道虫の丸子は、いつも茂吉のテーブルの上にオブジェのように、じっとしている。

知らせ蜻蛉は名前通りに茂吉の手紙の専用配達虫。記憶天道虫の丸子はその丸い体の中に信じられない程の情報を蓄えている。

茂吉が関係をする有りとあらゆる事を全て記憶しているので、茂吉は何かある度に丸子に向かって話し、記憶させ忘れると聞き出す、、、便利なのである。

この者達 には其れぞれに兄弟や子分達が沢山いる。群を抜いているのが、牢獄蟻の帝子である。帝子には数が分からない程多くの兄弟子供達がいて、普段はその子供達と暗い地下の穴蔵で牢になっている。

それは蠢(うごめ)く蟻で出来た牢なのだ!その凄まじさ恐ろしさは見たもの誰もが震え上がる。御係所の施設の一つにこの蟻牢がある。罪深き者と判断された者はこの牢獄に入れられ入れられたが最後、絶対に脱獄はできない。

こんな逸話が残っている...脱獄を企てた者が食事を差し入れた看守を人質にして帝子達に牢を開けろと迫った。元から牢自体が開けるも閉じるも小さな蟻達が集団で手足を繋げてしている事、食事を差し入れる時もその場所だけ手を離し看守が通れるだけを開けるのだった。

帝子達に迫った罪人はとんでもない目に合った。蟻達が一斉に罪人目掛けて蟻酸を尻から出すと、罪人の皮膚は焼け爛(ただ)れ火ぶくれとなり見るも無惨な姿になったと云う。恐いのである。

「帝子、引退してどうするの?」

「はい、帝子は茂吉様のお側に居とうございます。そして茂吉様と他の仲間達と暮らしたいと思います」

「ふふ、帝子は可愛いこと。帝子がそうしたければそうしなさい」

「ありがとう御在ます、帝子の夢が叶います」

「でも帝子が居ないと牢の方はどうなるのですか?」

紫狼が訊く。

「帝子はその為に夢子を連れて来たのだろう」

「はい、私の仕事は夢子に継がせたく、茂吉様にそのお許しを頂きたいと思い、連れ参った次第でございます。夢子、さっ、ご挨拶を」

帝子のそばに控えめにいた夢子は、茂吉や紫狼に向かって深々お辞儀する。

「夢子でございまする。真に不束者(ふつつかもの)では御在ますが、母に負けぬよう精進し相務める所存、どうかお許し下さいますよう」

「ふふ、ありがとう、夢子。どうか宜しくお願いします」

「はい!」

夢子は平伏している。

「帝子は良い娘御を持ったものよ」

「はい、帝子の自慢の娘で御在ます」

「さもあらん。夢子、この毛はあたしの髭(ひげ)の毛です。指揮棒にして使って下さい」

「なんと幸せなこと!さっ、夢子頂きなさい」

帝子は嬉しそう。

「はい、ありがとう御在ます!」

茂吉は自分の髭を一本抜くと夢子に差し出す、夢子は押し頂いて畏まる。夢子は早速、茂吉の髭を持ち窓枠に立つと指揮棒の髭を振る。

ざわざわとしながら蟻達は人形になると夢子を手の上に乗せる。夢子は振り返りお辞儀をすると人形の蟻達もお辞儀をする。そしてザワザワ音をさせながら去って行った。





つづく








今年最後のアップとなりました。
いろいろとあったような無かったような
思うに夏の暑さと冬の寒さが過激になってきた気がします。
のんびりと陽を楽しむ春や秋が短いのは寂しい限り

クルミは来年も続きます。
どうかのんびりとお付き合いを頂けたらと思います。
来年もどうか宜しくお願いします。
m(_ _)m

ぴゆう

クルミ 27 楽しい旅

前回

帝子は引退し、茂吉の側で余生を暮らしたいと嬉しい言葉、沈んでいた気持ちも晴れる出来事だった。


はじまり、はじまり



帝子ぉー!


紋次、紙次、丸子ーぉ


さっきから話しを聞いていた虫達が堪らなくなって帝子に抱きつく。いい光景である。

「ふふ。紫狼、帝子達に美味しい金平糖を上げておくれ。夢子達もそんなに遠くには行っていないだろうから、あの者達にもたっぷりとね」

「はい、畏まりました」

紫狼はさっそく色とりどりの金平糖を帝子達に、そして夢子達を追いかけて行き、沢山与えた。一時、虫達と楽しそうに話していた帝子が口を拭き拭き、茂吉の前に来る。

「茂吉様、今紋次から聞いたのですが、恵み子様が行方不明と?」

「おおそうよ、紋次にも手伝ってもらったのだが中々見つからぬ。あたしも途方に暮れているのだよ」

茂吉はクルミのことを話す。

「それならば、私めにお任せ下さい!引退仕事にします」

「どう見つけるのだ?」

「はい、茂吉様。私めには兄弟がまたタンとおりまする。その者達は全世界に暮らし、蟻のいない土地などこの世に在りはしませぬ。兄弟に一声懸ければ雑作なく行方は知れると思いまする」

なるほど!気が付かなんだ、早速頼みます」

「承知しました」

早速、帝子は知らせ蜻蛉の紙次の背に乗り、開いている窓から急いで飛び出していった。

「紫狼、あたしも老いたものです」

「父様先生いけませんよ、そんな事をおしゃるのはまだまだ先です。第一、五黄様に叱られます」

「ふふ、あたしがそんな事言ったら確かに怒りますね。あー、でも安心しました」

茂吉が帝子に任せ安心した当のクルミはどうしているのだろうか?話しは少し遡る。


               


               ♢





河童のテレ、トチ兄弟と蓮台に乗るクルミ達は至極快調に旅を続けている。二人は思いのほか息の合う担ぎっぷり。『えい!ほっ、えい!ほっ』と足を稼ぐ。

狸の殿次から紹介状をもらっていたので、どの宿でもいい扱いを受ける。意外にも殿次は中々の顔だったようだ。

いってらしゃいませー!

「お気をつけて!」

宿の者に気持ちよく送り出され、二人は走っている。

「ねえ、兄貴よ」

「何だい?」

「殿次の奴、こんな良いものなら何でもっと早くに呉れないんだろうね?」

「本当だよ~、あいつがこんなに顔役だったなんて知らなかったよ」

「あたいの為にくれたんだから仕方ないよ」

クルミが蓮台からチョコンと可愛い顔を出す。

「ちげえねえや!」

「『クルミちゃんを粗末な宿には泊めるなんて許さねえ!』って言ってたもの」

「俺達には『その辺の草っぽにでも寝てろ!』って言ってたもんね」

「きゃははは」

「ひでえー話しだ!あはははは」

「ははは」

「クルミちゃん!今日の夜には猫宿に着けるよ」

「本当?

「そうだよね」

「ああ。トチ、頑張って走るぞ!」

「クルミちゃん、揺れるからちゃんと掴まってよ」

「はーい」

クルミも最初は蓮台が揺れるので気持ち悪くなったりしたが今は大分慣れ、外の景色や本街道を行き交う様々な種族を見るのが楽しい。十分旅を楽しんでいる。

あっ!綺麗な花が咲いてるーッ、降ろしてぇー、降ろしてよーッ

「もおー、少し前に休んだでしょ?」

「いいじゃんよ、クルミ姫の言う通りにしなきゃ駄目だよ」

「しょうがねえなあ」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
tanoshitabi.jpg

クルミは楽しくて仕方ない。花を沢山摘むと座って休んでいる頭の皿の上に一輪づつのせる。テレもトチも馴れているので怒らない。

「今度のお花は何て名前なの?」

「これはね【白花猫の目草】っていうのよ。このお花は色んな種類があるのよ」

「へぇー!クルミちゃんは何でも良く知っているね」

「へへ。あたいの居たとこはね、たくさーん御本があったから、あたい御本読むの大好き!」

「そんじゃ、そろそろ行こうか?これからどんどん橋を渡るから大人しくしていてよ」

「うん」

クルミを乗せて二人は、賑やかなどんどこ橋を渡る。橋の上には沢山の屋台が出ている。獲れたての魚や干物、飴屋、焼き餅屋等、商売が盛んに行われている。クルミは見ているだけでも楽しい。

「お餅買ってよぉ~」

「え?だって握り飯あるんだよー」

食べたいーっ!買ってぇ~、買ってよぉ~

「はいはい」

テレはクルミが我が儘を言う度に苛々する時もあるが何だか楽しい。二人だけで旅をしていた時より楽しいのが不思議だ。トチはニコニコしっぱなしだ。熱々のお餅を食べ終わるとクルミはお腹が一杯になって寝てしまう。

「あらら、お姫様はもうお寝んねだよ~」

「へへ、楽しいねー!テレ兄貴」

「本当だな、何だか悪くねえな」

「うんうん、悪くねえ、悪くねえとも!」

クルミが寝ているお陰で寄り道せずに済むので、旅は快調に進む。夜半になってようやく猫宿の華やかな灯りが見えてくる。猫宿は夜の方が賑やかだ。

「おい、そろそろ見えてくるぞ」

「ひゃー、懐かしー!」

「バーカ、そんなに久しぶりじゃないだろが!」

「へへ、ちげえねえや」

善い行いをしているだけで風景も違って見えるというもの。二人は馴れた道を走っていく。

「クルミ姫、起きてるかい?」

「あたい、眠たいぃ...」

「今日はよく寝るね」

「あたいは育ち盛りだから眠たいのぉ」

「そーですか、そんじゃ塒(ねぐら)に着くまで寝んねしていな」

「はぁ~い」

二人は喧噪の町中を塒に向かいひたすら歩いていく。飲屋街に入ると開店したての店が祝いの花で一杯になっている。

「兄貴、あんなとこに店ができてるよ」

「どうせ直ぐに潰れるさ」

「猫宿は厳しいとこだもんね」

「そうさ」

二人が店の前に差し掛かろうとした時、ドアが開く...

「ありがとうね!又来てよ。これっきりじゃ嫌よ、ご贔屓になってよねぇー!」

「ああ、わかったよ!またな」

「じゃあねえ~」

客を送り出した店のママと二人は目が合う。


う、うわーーーっ!!


ひゃやややーーーッ!


二人は腰を抜かすほど驚いた。







つづく






明けましておめでとうございます。
何か、休みが長かったのに疲れている私がいる。
主婦には休みが休みじゃない週間でござったような
通常運転に人数が増えるので余計に働いたような気がする。
お年玉を貰いたいくらいだ!!
何やかんやと(-_-;)ブーたれながらも良いお正月でした。
今年ものんびり続けていきたいと思っております。
今年も宜しくお願いします。
m(_ _)m

ぴゆう

クルミ 28 姐兄さん

前回

調子よく、猫宿に着いたご一行、待っていた者は!



はじまり、はじまり




きゃーーっ!!ちょっ、ちょいとっ、どーぉ言うことっ!?
ねえッ!どう言う事?どう言うことなのよーーッツ!!
...やい!返事しろってんだよッ!

「兄貴ぃ~」

「キナ兄いぃ...」

バカッ!兄貴なんて言うじゃねえよッ、『ママ』って言えって幾ら言ったら分かるんだよ!いいから、こっちに来いッ!」

二人はクルミを乗せた蓮台を店の前に置くと、凄い顔したキナに呼ばれスゴスゴ店に入る。なんとテレとトチの兄貴と云うのはおかま河童のキナだった。客が居なかったので、二人をカウンターに座らせた。

「どう言う事か俺にきっちり話してみやがれッ

キナはしっかり兄貴に戻っている。

「あのぉ、、、おいトチ、お前が話せよー」

「ぇえーー!何でおいらなのよッ」

「どっちでもいいから言ってみろッ!フラフラしやがってーっ!
連絡もとれやしねえ!

「ごめんよう~、怒らないでよぉー」

テレはすっかり可愛くなっている。

「俺が猫宿に島を変えたって連絡したくても、てめえ達はどこにいるのかさっぱりだ!こんな姉貴不幸な弟達がいるもんかよッ!」

「すまねえ~、だって兄貴が...何つうか、かんつうか、、、そのぉ...兄貴が『姉貴』になっちゃっているのがどうもそのぉ・・・」

「何言ってやがる!『ゲイは身を助く』っていうんだ!御陰でお前達、飯が食えたんだろっ?」

・・・・・

「へっ?うん、、、だけどよぅ・・・」

「いいから、お前達はこれからあたいの店を手伝うんだよ」

え゙ーーーッ!?イヤだあーー!!

うるさい!黙れ!!ちょうど河童手が足りなかったんだ、いい幸いだ、ゲイを仕込まないと~」


うわーーーッツ!!


二人が急いで店を出ようとするが、何せキナは二人の親も同然、よーく心得ている。耳を掴まれ動けない。

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うえーーーん


ひぃいー


「いいから、観念しな」

「兄貴ぃ~、だけど、俺達にはしなきゃいけないい、、、
いっ、痛てぇえーーッ

「みっ、店の前の蓮台にッ、、、ク、クルミちゃーーんッ!

えっ!?クルミ??聞いた名前だよ、狐の子のクルミか?」

二人は耳の痛さに泣きながらこれまでの事を説明した。キナはスヤスヤ寝ているクルミを連れてくると二階のベットに寝かせる。

「何てまあ...どういうのよ、こんなに大きくなって・・・あんなに細かった子が、、、ウッ」

泣いてるキナを二人は不思議そうに見ている。キナはクルミとの事を懐かしそうに話すと二人はすっかりしょげてしまった。自分達の昔と重なり言葉が出て来ない。

「兄貴ぃ・・・俺はとんでもねえ事しようとしていたよ。トチに言われても知らんぷりしていた。そんな俺をクルミ姫は救ってくれたんだ、、、」

「そうだね、この子は本当に恵み子様なんだね、そう思うよ。あたいが口を酸っぱくしても直らなかったお前達のひん曲がった性根をこうして真っ直ぐにしてくれたんだもの・・・有りがたいことだよ」

「そうだよね、おいらなんか胸が一杯だよ」

「さあ下にお出でよ、クルミは寝かせて上げよう」

三兄弟は久しぶりの再会を喜んだ。テレとトチはしこたま飲んで寝穢(いぎたな)く寝てしまう。キナはカウンターの中で椅子に座ったまま寝ている。

朝方になりクルミは目が覚めると知らない場所にいるので一瞬驚いた、二人の家なのかも?と思い直し階段を下りる。

何やら懐かしい雰囲気に包まれた、、、、この店も狐宿の店と造りが同じなので懐かしく感じたのだろう。昔のようにカウンターを覗いて見ようとした・・・が、止めた。

寝ている二人に気付かれないようにソッと店を出て蓮台からバックを取ると急いで逃げた!クルミはここでも勘違いをしてしまった。

自分を騙し、母親の店に連れて来たんだと考えた。カウンターの中を見れば懐かしいキナの顔があったのに・・・クルミは駈けた、何でもいいから怖い母親のいる店から逃げたかった。

「はあ、はあ、びっくりしたー!掴まったら大変だったわッ。やっぱ河童は嘘つきなのね、信用したのに・・・頭来たわ!」

クルミは少し落ち着いたので歩き出す。

「ここはどこなのかしら?あの河童は猫宿って言ってたけど・・・訊いてみよ」

通行人に訊くと猫宿であるとの答え。少しだけほっとするとクルミは東雲楼(しののめろう)の場所も訊いてみる。怪訝(けげん)な顔をされたが『姉ちゃんがいるんだ』と言うと教えてくれた。

目印の赤い門は直ぐに見つかる。そこだけは他の場所とは違い、昼時なのに朝と変わらない静けさに満ちていた。道の左右には緑色や青色と、色とりどりの建物が建っている。

どの建物にも酒席楼とか霞楼と云う大きな看板が掛かっている。しばらく歩いているとやっと見つけた!目の前に【東雲楼】と大きな看板が掛かっている朱色の建物があった。店の前でどうしようかと迷っていると、中から年老いた婆猫が出てきた。




つづく




クルミ 29 行く先

前回

テレとトチと兄弟だったキナ。クルミがそれを知るのはいつのことだろう?


つづく


「ふぁ~年寄りにはきついよ、引退したいでありんす・・・」

「あのぉ、、、おばあちゃん」

「へっ?誰だい、あんた」

突然声をかけられ驚いた婆猫はクルミを見ると怪訝な顔をする。

「何だい?どうして子供がこんなとこにいるんだい

「おばあちゃん、ここって東雲楼なの?」

「そうだよ、字が読めるのかえ?こんな難しいのに」

「あたい、この読み方だけは忘れないもの」

「ふーん。で、なんだい?あたしゃ忙しいでありんすよ」

「あのね、ここにコノミ姉ちゃんが居ると思うんだけど・・・」

「コノミ?うん?・・・あっ!セキレイちゃんの事かえ?」

「なあに、セキレイって?あたいはコノミ姉ちゃんを探しているのよ」

「コノミはセキレイって源氏名だったのよ。そういや、お前は柄がセキレイそっくりざます」

「あたい、妹だもの」

えーっ!?お前セキレイの妹?、、、」

この婆猫はとっくに引退して今は遣(や)り手婆になっているのだが遊女言葉が抜けない。気もいいし、女達には好かれているので店では重宝がられ結構忙しい。婆猫はクルミを連れ店裏に周ると小さい声で話し出す。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります

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「あのね、セキレイはもうここには居ないよ」

えーーッ!?どうしてなのッ?
あたいは姉ちゃんに会いたくて、会いたくてこんなとこまで来たのにぃーーッ!!
うわぁあーーん!

「ちょいとッ、泣かないでな!悪い事じゃないんだからさッ、いいから泣かないで聞くでざます!!

宥められてもクルミは中々泣き止まなかったが構わずに話し出す。

「セキレイはね、ひかされたんだよ。今じゃ立派なご新造さんでありんすよ」

「どう言うこと?ご新造さんってなあに??」

話しによると、コノミは豆腐屋の富吉と云う猫に一目惚れされた。富吉は三日に上げずに通い詰め、到頭店を売るまでに至った。豆腐屋の元締めの貞と云う親分にこっぴどく怒られたが、何としてもコノミと所帯が持ちたいと泣いて頼んだ。

元々暖簾分けしてもらう程、腕のいい職人、このまま放り出すのも惜しい。結局、貞は根負けしコノミに懸かった大枚の木の皮銭をあっさり積み自由にさせ、相思相愛の富吉と一緒にさせたそうだ。

貞は富吉にこれ以上の遊び癖がついたらならねえと富吉の故郷の粒傘村に引っ越しをさせた。今では二人仲良く粒傘村で豆腐屋をやっているそうだ。

この世界では種族の違いに関係なく結婚する。
元から産まれて来る子は前世でなりたい種族に【魂納めの宮】で契約をしている。子供達の魂は種族を選び望みの種族の母親から産まれる。

母親が猫であれば猫の子に、狐であれば狐の子にと種族が同一なのは血肉を分ける母親だけだ。だから河童の母親から猫の子は産まれないし、間の子も産まれない。

母親とは血肉の縁であって、魂の縁ではない。父親も同様である。この世で血肉を分け与えるだけの儚い縁であるが故に尚一層深い繋がりになる。だから、この世界では同種族同士の結婚もあるし、違う事も間々有る。

クルミはその話しに驚いたが、姉が幸せに暮らしていると聞いて喜んだ。そして増々会いたくなり粒傘村に行こう!と決心し、婆猫に挨拶もそこそこにして駆け出した。

コノミに意地でも会うと思い定め、勢いよく駆け出したのはいいが、どちらに行けばいいのかもわからずに戸惑ってしまう。

粒傘村の場所を尋ねても、知らない者が多いい。猫宿は猫国一の繁華街だけあって他国からのおのぼりさんがとても多いからだ。その事に気が付いたクルミは「そうだ!古い店の者だったら知っているに違いないわ」と早速《創業三百年》と看板に書いてあった飴屋で粒傘村への行き方を訊ねる。

予想通り親切に教えてもらい、大雑把(おおざっぱ)な地図まで書いてくれた。気をよくしその店で黒飴を沢山買うとバックに仕舞い、人混みに紛れ小走りに猫宿を出ると東に向かう、、、

その頃キナの店では大騒ぎだった。

クルミに朝餉を食べさせようと二階に行くと既にもぬけの殻、寝腐っているテレとトチを無理矢理に起こす。寝ぼけ眼の二人は店の外にある蓮台を探すが、クルミの唯一の持ち物であるバックもない、、、二人はようやく焦りだす。

兄貴ぃー!クルミ姫がいないよーッ!!

「どうしてだあ?」

「お前達どういうことだよッ!あの子は猫宿なんて初めてなんだよ。こんな風紀の悪い所に居させられるもんじゃないよ、急いで探してお出で!そんなに遠くに行ってるもんか、きっと迷子になって泣いてるに決まっている。
あーッ、可哀相なクルミ~

キナは昔の哀れな狐の子のクルミしか知らない。大きくはなってはいても、キナにとってクルミは昔のまま。恵み子に成ってからのクルミは賢く強く、見違える程の変身を遂げていたのだが、キナはクルミとひと言も話していないのでわかってはいない。





つづく




クルミ 30 戸の宿

前回

コノミに何が何でも会うと決めたクルミ。今はまっしぐらに突き進むだけだ。


はじまり、はじまり



一方、茂吉達はどうしているのだろう。
蟻の帝子と知らせ蜻蛉の紙次が戻り、帝子から報告を受ける。

「茂吉様っ、クルミ様の行った先がわかりました!

「早く、早く言いなさい!

「はい。何でも足跡が戸の宿周辺にあったそうです。でも不思議な事に何歩か歩いただけのようでその後足跡はなく、何処に行ったのかもわからないようなのです。とにかく其れきりで消えてしまわれているそうです。今、周辺にも探りを入れておりますから、明日中には知れるかと」

!!、戸の宿とは一体どういう事でしょう」

「父様先生、もしかしたらクルミは勾引(かどわ)かされたのでは?」

「おお、だから紋次の糸でも探りようがなかったのかもしれない。何か駕篭とか袋に入れられていたのかもしれない、、、可哀相なクルミ...こうしてはいられない!さっそく戸の宿にいきましょう!」

はい!あたしもお供を致します」

「茂吉様、戸の宿周辺としかわからないままでは・・・」

帝子が慌てている二人に言う。

「帝子、大丈夫ですよ。もしクルミを勾引かす様な悪い奴らでも野宿は避けたいでしょう。まだ夜は冷えますしね。それにあそこには宿が有ります、きっとそこに泊まったのでしょう」

「流石は茂吉様です。帝子は惚れ惚れします♪」

「ふふ、帝子は可愛い事を言います。紙次もさぞや疲れたでしょう。色々と苦労を懸けましたね。さっ、もう休みなさい。ありがとう」

二人は外に出ると茂吉は早速、雲階段を呼び寄せる。その時急いで駆け寄って来る者が居た、三吉である。

父ちゃん先生ーッ!紫郎兄ちゃーん、何処に行くのぉーー?」

「おお、どうしたのです?もうネムネムの時間ですよ」

「寝てなんかいられないよ!おいらだってクルミが心配で心配でしようがないんだものぉ」

「三吉や、どうやらクルミの行方がわかりそうなのです。今少し辛抱してお待ちなさい」

イヤだぁー!おいら、きかないよ、絶対に一緒に行くもの」

「いけませんよ、そんな我が儘は」

「紫狼、三吉も心配なのでしょう。仕方ないです、連れて参りましょう」

「本当!?わぁーい!おいら大人しくしているよ」

「父様先生は三吉に甘いのですから。ふふ、わかりました」

茂吉達は雲階段に乗り、急ぎ戸の宿へと向かう。戸の宿では狸の殿次が茂吉達の来訪にひっくり返って驚き、この宿では最高級の部屋に通される。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
tonojyuku.jpg


嬉しそうにお茶を出す殿次は、まるで狸が変わったよう だ。来訪の意図を知るとクルミの事について詳しく話す。クルミをクルミ姫と呼び、荒くれ達も今は教えてもらったオオバコ汁を売る事に精を出し、まともになっていると感謝をしていた。

茂吉から【恵み子】であると聞かされ二度驚く殿次は、すまなさそうにテレとトチが蓮台を作り、クルミを乗せ猫宿に向かったと云った。

「なぜ、猫宿なのですか?」

「へい、何でもクルミ姫の姉様がいらしゃると云う話しでしたが、其れ以外はとんと...」

「ねえ、クルミが言ってたけど、姉ちゃんが郭ってとこに売られたって」

三吉が口を挟む。

「なるほど。クルミの姉は猫宿のどこかの郭に売られたのかもしれませんね、、、だとしたら紫狼、あの子を連れて来た時にキナと云う河童から何か聞いていませんでしたか?」

「迂闊(うかつ)でした。何も聞いてはいません、ただ、売られたとしか・・・あっ!キナは今、猫宿におります。狸宿ではうまく商売がいかないので、猫宿に店を出したとこの前手紙が届きました。父様先生、さっそく猫宿に参りましょう!」

普段の茂吉なら、町の者が驚くので雲階段は成る可く目立たないようにするが、今回は気が急くので町の中心に雲階段を着けた。下りて行くと既に町の者達は平伏して控えている。

大相撲大会の時に茂吉に怒られていたので、茂吉の姿を見ると急いで平伏(ひれふ)した。知らせを受けた町の顔役も急いで現れる。

「も、茂吉様ッ!いかがされたのでしょうかッ!?」

顔役の点吉は大相撲大会の時の騒動を、いとも簡単に治めてしまった茂吉に敬服しきっている。

「ああ点吉、すまないね、気が急くものだから、こんな町中に下りてしまって」

「とんでもございませんいついかなる時も茂吉様のご来駕(らいが)を喜ばぬ猫宿の者はおりません!」

「ふふ、皆に畏(かしこ)まれていると話しも出来ませんよ、さっお立ちなさい」

「とんでもねえ」

点吉のそばにいる者が言う。

「あれから町中の掃除は町内ごとに当番制にしやした」

「ふふ、其れは素晴らしいですね」

「父様先生、ご用件を」

「ああ、そうでした。点吉、こちらにキナと云う河童が店を出していると思うのですが、どちらです?」

「はて?お前達知ってるか?」

「ああ、それならつい最近できたおかまバーですよ」

「どちらです?」

「へい、ご案内いたしやす」

茂吉達一行は、ぞろぞろキナの店である《バー黒河童》の前に着く。




つづく


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 のくにぴゆう

Author: のくにぴゆう
猫国の住民達の物語を書いています。
作者はコメを食べて生きてます。
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