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夜矢 1 出会い




はじまり、はじまり


「ねえ旦那、もう止しにしておくれよ~しつこいねえッ」

「なんだよ、つれねえなーこれからじゃねえか」

ふんッ!銭分のお務めは終わってるよ!」

なんだとーッ!このあま、ふざけた言い方するじゃねえッ!」

ふん!いいからサッサと帰っておくれ。くさくさするよ」


ちきしょーっ!覚えてやがれッ!


襖を蹴破るように客が出て行く、夜矢は男臭い部屋の匂いを消そうと思い切り窓を開ける。

「ふぅーー寒ぅッ、だけどいいや、この方がすっきりするわ」

桟(さん)に腰掛けていると勢いよく障子が開く。

「ちょいとッ!また、おやりかい!この阿呆ツバメ!幾ら言ったらわかるんだよッ」

ふん!

「全く、どうしようもないアバズレだよ」

「お陰さまで、ねんねの頃からの郭(くるわ)育ち、仕方ないやね」

「もうッ!さっさと店にお立ちよ!はこれからなんだよッ」

「ふんッ、そうそう身が保つかってんだ」

悪たれをついた後、何気なしに空を見上げた、薄ら寒い宵闇にぽっかり月が顔を出している。

東に目を向けると小さな点が動いている、じっと見つめているとどんどん大きくなっていき、姿が分かる程になった。

「あれ、鳥かね?それにしても変な鳥。夜なのに鳥が飛んでるよ」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
yorunotori.jpg


それから一年が経った。

「あらまあ~、どうしたのよ!?」

「本に、珍しいこと」

ノン吉はお風の屋敷にいた、先ほどから浴びるように酒を呑んでいる。

「ノン吉ってば、いい加減にしなさいよぉ~!」

「いいじゃねえか!酒がねえ訳じゃねえだろッ」

「無くなるわけないでしょ。そんな事を言ってるんじゃないわよ」

「そうですわ、おささはその辺にしておきなさい」

「お風まで言いやんの、、、そうですか?そんじゃ帰りますよッ!ぉっ、とッ・とッとッ、、、」

ちょっとーッ、泊まりなさいよ!」

「そうですわよ、お部屋は用意してありますわ」

「何言ってんニョ?帰るんですぅ、、、帰るぅううーーーッ!

「そんなで飛んだら、産海(うみ)まで流されるわよ」

「そうですわよ。ノン吉、泊まりなさいよ」

「ニャ~~~ぁっと、行くどーーーッ!っと」

ノン吉は二人が止めるのも聞かずに飛んで行ってしまった。

「馬鹿だねー!耳なしだよ」

「大丈夫かしら?心配ですわ。お蜜、連れ戻さなくて良いのかしら?」

「姉様、泥酔したとは云え、『天翔け猫の』うすらトン吉!。ほら!もうあんな遠くよー」

「まぁ!さすがですわ~とてもわたくし達では追付けませんわ」

「本当よね。んン・・・にしても何か怪しいわ、、、去年だってあんなに呑んだ?」

「いいえ、少しですわ。『もっとお呑みなさい』ってこちらが勧めた程でしたわ」

「姉様、今日何日だっけ?」

「(お)の九九十年、紅葉の十日よ」

「て、云うことは.....むむ・む・む」

「どうしたの?お蜜」

「ねえ、あたしが猫の頃の話しなんだけどね、、、」

「ええ、それで?」

「五黄から聞いた話なんだけど、、、」

「だからなあに?」

「何でもね、『ごしょごしょ』で、『ごしょごしょ』らしいのよ。それが決まって二十年毎の紅葉の十日」

あらーーッ!それでなの?」

「あーぁ、いいわねえ~ぇ。そう思わない?」

「そうね、いいわね」

「あらその程度なの?」

「だって、あたくしには良くわかりませんわ」

ひゃーーーッ『わかりませんわ』だってぇ!
この蒲鉾(かまぼこ)干物

「何ですって?何ですの?その蒲鉾干物って」

「だって、姉様のカマトト振りは蒲鉾ごと干物になっているくらい、年季が入っていると云う事よ」

「お蜜ったら、なんて事を言いますの?あたくし気分を害しましたわ」

「はいはい。害して下さいよ、幾らでもね」

まぁー!あたくしだって、変化いたしますわよ」

「あらぁ~ん、怖い事。変化するよりその干物振りを治したらどうなの?」

「まぁーッ!ひどいですわッ

「姉様だけが他の世界の者じゃなしって言いたいの」

「何が言いたいのですッ?」

「唐変木の藤平の事よ」

「まぁッ(ポッ)......な、何を言うのかと思えば、、、あたくし部屋に下がりますわ」

「そうね、唐変木ちゃんのお写真に『チュー』でもして寝なさいよ」

「(?゛)、どうして知っているの...」

「あら図星?」

「えっ?」

「やっぱりねえ~これだから姉様は可愛いのよ」

「お蜜・・・いやですゎ.....」

「何言ってるのよ、唐変木はこのまま『ずーーーっ』と知らないわよ」

「あたくし、そんな...この侭(まま)で良いのです」

「毛がねぇ〜じゃないや、健気~っと褒めたいとこだけど、いい加減にしたら?(い)の字で始まって、もう(お)年の九九十年。後、十年で千年祭があるのよ。姉様の片思いは萬年しても足りないの?」

「あたくしの片思いはまだ二万七千と九百と九十年ですわよ」

「お馬鹿じゃないのッ?自慢にもなりゃしない。もういいから、今日は狐らしくコンコンと教えてやるわ。

お熊ーぁ!

おささをもっとじゃんじゃん持って来てーー!





つづく



付記

この世界の年号は、千年単位でいろはの数え歌になっています。
今はおの字で二万七千年と九九十年。

数え歌は普通、47で終わりですが、
五黄が大好きな陽の神様が次にごおうと入れたので、
48が(ご)49が(お)50(う)で五万年まで数えられます。
それを越えればまた、いの字から始まります。

そして月の暦は一月 松
       二月 梅
       三月 桃
       四月 桜
       五月 菖蒲
       六月 紫陽花
       七月 百合
       八月 向日葵
       九月 菊
       十月 すすき
       十一月 紅葉
       十二月 椿

こんな感じでございます。
へへ(^^ゞ
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夜矢 2 あやしい

前回

紅葉の十日はやるせない、縁があるやらないのやら
夜空は今日も美しい、冷たい風が頬を撫でて

会いたくねぇと口が言い、会いたいんだと心が言う。
切ないノン吉、飛んでいく。


はじまり、はじまり


ノン吉は『風に流され産海(うみ)に出るのもいいやあ』と思いながら飛んでいた。

夜矢は溜め息をつきながら、空を眺めていた。

「はぁ~ぁ~あの鳥、、、もう一度見たいなぁ」

ノン吉は夜矢を見かけると迷いなく近づく。


おーーい!


「えッ?・・・」

「お前だよ~お前に言ってんの」

「あたいかい?」

「他に誰がいるってんだよ」

「あんた、鳥かい?どう見ても猫にしか見えないけど、、、」

「猫に決まってるだろ」

「ふーん、そうかい。飛ぶ猫なのか、、、それで、何よ?」

「ここはどこだ?風に流されちまって、狐国は一年ぶりでよ、何だかさっぱりわからねぇ」

「ここは外れ(はずれ)宿だよ。二、三年前に出来た町らしいよ」

「ふーん、どうりで知らねえ筈だ」

「だけど前も飛んでいたろ?」

「そうだっけ?」

「しらばっくれてるよッ!先(せん)の宿であたいは確かに見たよ」

「物覚えは良いなー、そっか、、、で、この店は何て言うのさ」

「ここは『海流楼かいるろう』って言うのさ」

「ふーん、違う意味で流れ着いたのかな?」

「何言ってるの?」

「こっちのことさ」

「それはいいけど、飛んでいるのも疲れるだろ?少し休んだらよ。お茶くらい出してやるよ」

「お、悪いな~そんじゃ少し休んで行くか」

夜矢は飛んでいる猫に興味をそそられたのだろうか、した事のない親切をする。

「お茶、持って来るから待ってて」

「すまねえなあ~姐さんは部屋持ちかい?」

「まあね。客はいないから、寛いでてよ」

「そんじゃ遠慮なく横にさせてもらうぜ」

「そうしなよ」

ノン吉は横になると寝てしまった。

いつもなら有り得ない事だが、何故か心地好く寝てしまう。起きると布団が掛けてある。
そばに疲れた顏をした夜矢が寝ている、魘(うな)されているようだ。

「うッ...うぅん・・・ぃゃぁ、

イヤぁだあーーッ、、、

おいッ、しっかりしろ!大丈夫か!」

「えっ?、、、あらいやだ!あたい寝てたの?男の前で寝たことなんてないのに、、、」

「まっいいじゃんか。姐さんのお陰で楽になったぜ、ありがとよ」

「いいよ、別に何もしてないしさ」

「そうはいくかよ。商売の邪魔したろ、これで足りるか?」

「何がよ?」

「銭だよ、泊まりの相場は幾らだ?」

「・・・・」

「ほら、これ位で良いかな?俺、ここんとこさっぱり知らねえからよ」

「いいよ、いらないよ、何もしてないんだもの」

「まっ、添い寝代だよ。じゃあな、おーっといけねえや、名前はよ?」

「あたいはツバメだよ」

「違うよ、本当の名前」

「夜矢」

「ふーーん、じゃあな~!」

「ちょ、ちょいとッ、ちょいとったらぁー!

ノン吉は夜矢が止める間もなく、窓を開け夜空に飛んで行ってしまった。手元には沢山の団栗餞(どんぐりせん)
夜矢自身、少し不思議に感じる、客に本名を言うなんて一度もなかった。

「あたい、熱に魘されたのかしら、、、」

ノン吉は酔いが冷めていたとはいえ、やはり残っていたのだろう。フラフラして帰って桃吉を心配させた。

「兄貴、兄貴ってばッ!

ふわぁ~~あ!よく寝たあー」

「寝たなんてもんじゃないですよ、夜中にふらふらして帰って来たら
バタンキューですもん。

俺が声かけてもグースカピースカで心配しましたよ!
それでお二方はお元気でしたか?」

「ああ、元気だったぜ。相変わらずよ」

「ふぅーん、、、何か疚(やま)しいことあるでしょ

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります

ayashi.jpg

「何でよ?」

「だって、体中からいい匂いがしてる。

あーーーッ!

お蜜様とホニャラララしたんでしょ?
だからあーんなに遅くなったんだ、

違いない!

『ねえ、ノン吉。ちょいとぉ〜もっとお寄りよ~』

『そうかい、お蜜』

とか何とか言っちゃって、

キャーーッ、不謹慎!エロ猫!

許せないッ!チキショーーっ




馬鹿


桃吉は思いっ切りの猫パンチをくらった。


バッ、チーーーン!


「馬鹿たれ、そんな事をしたら五黄の父ちゃんに勘当されるわ」

「ふぅーん、本当かな?・・・」

「全くよ、他はいたってボケ茄子の癖にそっちだけは聡いよ」


フンだ!


「しょうがねえなあ」

ノン吉は昨夜のことを話そうとしたが止めた。どうせ内緒にした処で知れること、桃吉をやきもきさせるのも一興かなと考える、今にこいつと恋話の一つもできるのかなナンテ思ったり。

「ありゃ?忘れちまった!歳かなあ~」

「歳には違いないです」

「又、猫パンチ貰いたいの?」


ニ゛ャだぁーっ!


相変わらずの二人だった。
ノン吉と桃吉はこの頃、別行動が多い。それは五黄の発案で、王達が頻繁に交流をすることにしたからだ。

王族達はそうそう自国から離れる訳はいかない、五黄は別だが充てにはならない。
そこで羽のある二人にお鉢が廻って来た。

二人は其れぞれの担当を決めて廻っているのだが、桃吉が何カ所も廻るのは到底無理なので今の処は狸国だけになっている。後は全てノン吉だけなのだから大変である。

そして中日(なかび)に猫国に戻り、五黄と藤平に報告をする。屋敷の中庭に相変わらずテントを張ってあるので、其処に帰って来ている。

ノン吉は『ボーっ』としている。
桃吉は何かあると言い、付きまとって離れない。五月蝿い目を逃れ、鈴音川の辺(ほと)りにいた。



つづく

夜矢 3 海流楼(かいるろう)

前回

酔いに任せて飛んだとて風は夜矢の元へと運んでいく、いつもと様子の違うノン吉を怪しむ桃吉。

理由を言いたいが言ってしまうと消えそうな、そんな気がするノン吉は鈴音川の辺りにいた。


はじまり、はじまり


「ノン」

「ぅぅ...」

「ノぉン」

「あっ?父ちゃん!ごめんよ、気付かなかった」

「桃吉が心配しているぞ」

「だって、あいつのそばにいると勘ぐって
五月蝿くて五月蝿くてよ~困った野郎だよー」

「ふふ、まっ遠からずではないように思うがな、お前のこんな様子は久しぶりだ」

「うん・・・金輪際と思っていたのによ、、、俺は駄目な猫だわ」

「今年で二十年目か、、、それに昨日は紅葉の十日だったもんな、それで又会っちまったんだな」

「ああ、そうなんだよ、でも今回はお蜜のとこで酒をたらふく呑んで、
ヘベレケぇ~』の
フラフラぁ~』になってさ、運任せ風任せにしてみたんだけどさ・・・」

「変えられねえよ」

「どうもそうみたいだ」

「お前が何をしても会うようになっている」

「俺・・・またか」

「それが宿命というものかな」

「俺はもうイヤだよっ、少しも慣れねえ」

「あの娘は慣れてほしいとは思ってないさ。だから、こうして会えるよう願い 【魂納め】をするのだものな」

なッ・・・何だって言うんだ!
ちきしょーッ!

「名前はよ」

「今度は『夜矢』だって」

「粋な名前だな、にしても何度目だ?」

「五度目にはなるなぁ、、、、、」

「これ以上、後引く女もいねえな」

「あいつ以外は考えられねえもん」

「そんで、どこにいるのよ?」

「また中(なか)にいるんだ」

「また?全く何の因果かねえ、、、仕様がねえ、俺が引いて来てやるか」

「父ちゃん、すまない・・・」

「ふふ、祝言挙げてやんな」

「うん!俺もそのつもりさ」

「よし、待ってな!」

五黄はさっそく外れ宿に来た、猫宿の賑わいにはほど遠いがそこそこ賑わっている。

五黄は『夜矢』のいる【海流楼】に向かった。いつもならあっちに『フラフラぁ~、こっちにフラフラぁ~』としたい処だが今回はそうはいかない、ノン吉の気持ちを知っているだけに急いだ。

「邪魔するよ」

あんらーーッ、大っきい旦那ッ!!」

「見た事ないわーぁ」

女達の喧(かまびす)しい声につられ婆狐が顔を出す。

「お出でなんし、ありゃ?まぁああーっ、五黄様でありんすよ~!
あれあれこんな薄汚い所へ」

「うん、その声は?、、、ああ鴬(うぐいす)のお鈴だ、何だよ、どうした?」

「鴬も婆になっちまって、恥ずかしいでありんすよ・・・」

「なぁに、昔の侭(まま)さ。だけど宿替えしたの?」

「まさかぁ~もうそんな歳じゃござせんよ。ここ、わっちの店なんで」

「へーー出世したねえ」

「それもこれも、五黄様がご贔屓下されたお陰でありんす、たんまり木の皮銭を頂戴しやしたもの」

「それで買ったのかい?」

「はい、わっちは郭以外は知りやしませんし、商いのいろはを今更覚えられないし。でも、郭なら何とかわかるでありんす」

「そうかい、知ってたらもっと早くに来たのによ」

「知らせはしたでありんす、梨の礫(つぶて)で.....」

「そうだったのか、俺もいろいろ野暮用が、、、」

「もういいでありんすよ、許すざますよ。それより、さっ、上がって、上がって」

お鈴がさっそく熱燗を用意する。

「旦那はお熱いのがお好き」

「ふふ、覚えていてくれたか」

「当たり前で、指を差し上げたいと心底想ったお方でありんす、受け取って欲しかった」

「ばか、そんなことできるかよ、ゾッコンなのはわかっていたよ」

「もぉう~旦那には手練手管は通じない、駆け引きなしのわっちの間夫(まぶ)でありんす・・・」

「お鈴は可愛い女さ」

「あぁ、まるであの頃のようで幸せでありんす、今日は帰っちゃ嫌ざます」

「ああ、そのつもりさ」

「嬉しい!お相手は一番の娘にしたいのだけど、ちょいと無理でおすから、二番のメジロにするざます」

「ばか、何を言ってるんだよ」

立とうとしたお鈴の袖を持つ。

「だって...わっちはもう婆でおすもの」

「お鈴、お前が望むなら若く戻そうよ」

「旦那ぁ、、、嬉しい...でも、いいざます」

「何故さ」

「わっちはいろんなものを見て来ました。そしてどうやら【魂納め】も望める歳に・・・これで終いにしとおす」

「寂しいなあ」

「いいえ、旦那、わっちは果報者、余生に郭の女将にもなれた、心底惚れた間夫にも会えた。これ以上女に求めるものはないざます」

「お前は昔から欲のない女だった」

「いいえ~欲深です、旦那を一時(いっとき)でも独り占めしたでありんす」

「ふふ、今日はゆるりと話そうぜ」

「ああ嬉しい!なら今日は貸し切りにするざます」

「そうしな、娘達も休ませておやり」

「はい、ありがとうございます」

広間に通されると着飾った娘達?が出迎える。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります

kairyurou.jpg

「何だよ~おしろいなんか塗ってよ、今日は休めってお鈴に言ったよ」

「でもぉ~あたい達、おささのお相手位はしたくてねぇ」

「ねえ~」

「お鈴、いいよ、二人で過ごそうよ」

「まあ!女将さん、いいなあ~」

「すごいだろ」

羨ましいわあー!


「あたい、妬けちゃうッ


あちきも!


「旦那、おささは飲んでやって下さいな、娘達が喜びますから」

「そうか、そんじゃ頂くよ」

五黄と楽しく過ごした時間は生涯忘られぬ思い出となったであろう。
手伝いの娘が血相を変えてやって来た。



つづく


付記

え〜〜郭の女達が着物を着ているので不思議に感じておられる思いますが、脱がせることがいいらしいです。

郭ならではでございます、粋な別世界と云えます。



夜矢 4 理由

前回

五黄はノン吉の気持ちを察し、夜矢を身請けしようと海流楼に向かった。
店の女将は昔馴染みの鶯のお鈴、話が弾み昔に戻ったよう。
そこに慌てた娘が入ってくる。


はじまり、はじまり

挿絵参照↓↓↓ 絵をクリックすると大きくなります
wake.jpg


女将さんッ!女将さんっ!


「あれ、何ですよ!旦那の前でッ」

「すみませんッ、でも、でもッ、、、」

「旦那ッ、申し訳ありません、ちょいと、、、」

「ああ、行ってお出で」

賑やかだった娘達が一応に暗くなる。何か知っているのだろうか・・・

「お鈴は何処に行ったの?」

「ツバメのとこだと思う」

「ツバメって、もしかして夜矢のことかい?」

「あら、旦那は何で知っているの?」

「本当は夜矢に会いに来たんだよ、通りで居ない筈だ」

「先(せん)からの馴染みなの?」

「まあ、そんなとこかな」

「旦那、ここの名前知ってる?」

「海流(かいる)楼だろ」

「そんな名前で誰も呼んじゃいないよ。ここは櫛(くし)の毛楼よ」

「何だよ、それ」

「ほら、櫛に付いている毛って捨てるしかないでしょ?」

「あたい達は値打ちのない、病い持ちの女郎だから.....」

「・・・・」

「女将さんはあちき達のような捨てられた病い持ちを引き取ってくれてるの」

「だけど商売もしているんだろ?」

「ふふ、『籠(こも)っていると病いも治らないよ!化粧して気合いを入れて店にお立ち』って。あたい達の客は先の馴染みか、もの好きな奴だけで閑古鳥(かんこどり)も宿替えしたくらいだよ」

「そうだったのか」

「夜矢は先の店で酷い扱いを受けて、ここに来たのもちょいと前だけど、もういけなかったよ、、、」

「そんなに悪いのか?」

「悪いも何も!あんなになるまで医者にも診せずに、こき使っておきながら、終いには『死んだら浦川に簀(す)巻きにして捨てよう』って、、、

女将さんがそれを知って急いで引き取りに行ったんです。見舞い銭を渡す処か、しっかり銭を取られたってッ」

「何だとッ!ムム、、、だから俺は中を潰したいんだ」

「旦那は面白いお方ですね」

「お前達みたいに悲しい思いを、、、」

「イヤですよ、ねえ~みんな~」

「本当に~」

「中が無くなったら、男共が狂いますよ」

「違いないな、そう云う俺もご同類だ」

「いくら王様でもそんなヤボは言いっこなしですよ」

「知っているのかい?」

「旦那と女将さんの仲を知らぬ者なし、知らなきゃもぐりですよ」

「お前達には敵わねえな~あいつにも言ったんだが病いを治してやろうか?」

「またまた~ヤボな旦那」

「あたい達は理由あってここに来たんだ。病いも理由あっての事、ちっとも苦じゃないよ。だって、もう少しで魂納めに行けるのだもの」

「どんなに苦しくてもあたいら我慢したもの」

「それでいいのか?」

「あたいは今度、苦労なしの狐がいいな~」

「あたいは威勢のいい狸!」

「あちきはもういいわ~」

「お前はあの世に行くのかい?」

「あちきはそれがいいなあ~」

「ふふ、お前達はお鈴に似て欲なしだよ」

「これだもの、女将さんが惚れる訳だねえー」

「あたいも惚れた!」

「あちきも~」

「ふふ、ありがとよ。それじゃ夜矢の願いも聞かないとな」

「夜矢はここに来てから、どんなに具合悪くても夜になると化粧をして二階の窓を開けるの」

「『誰か待っているの?』って、訊いたわ」

「そしたら?」

「『鳥を待っているの』って。『あたいは飛べないツバメだけど、鳥は違うの』って」

「鳥ねえ...その鳥の願いを聞いてここに来たのさ」

「そうなの?何て鳥?」

「ノン吉って云う風来坊さ」

えっ?ノン吉?

ノン吉様ッ!?

「夜矢が待っている筈だわッ」

「あんな男嫌いも居ないって云うツバメちゃんだって、ノン吉様ならわかるわあ」

「そんなに嫌いなのかよ?」

「嫌いも何も、【剣呑(けんのん)ツバメ】のあだ名持ち、客あしらいなんてもんじゃないもの。だから余計に先で苛められて、こき使われて、、、」

「器量良しも嬉しかないよ」

「それでも店一の売れっ子でさ~だから朋輩にまで嫌われて、痣(あざ)だらけだったねぇ...」

「・・・・」

「それが昨日は嬉しそうにしてたわ~」

「そうか!まっ、こうしちゃいられねえな、連れてくるわ」

お鈴が青ざめた顔を出す。

「旦那」

「あっ、女将さん!」

「ツバメは?」

「旦那、申し訳ありません。あちき、ツバメのそばに居てやらなきゃ・・・」

「いいさ、俺は行くよ。話しは娘達に聞いてな」

「旦那ぁ、、、あいすみませんッすみませんッ・・・」

「すぐ戻るさ」

その場から掻き消えた。

「あれッ!?」

「女将さんッ!だッ、旦那さんがッ!

「本当に王様なんだーッ!?

「どうだい?並じゃないだろ」

「たッ、・・・・確かに」

「さっ、ツバメの容態がいけないんだ!お前達もそばに居てお上げ」

「女将さん、旦那様の話を、、、」

「聞きながらにするよ、さっ、行こう!」

「はい!」

五黄はさっそくノン吉に会いに行く。

「今帰ったよ」

「父ちゃん」

「ノン、直ぐにも行こう!」

えっ?どうしたの?夜矢になんかあったの?ねえ、教えてよ」

「俺は会っちゃいねえ、とにかく行こう!」

「うん」

「ちょっとちょっとぉー!兄貴~夜矢って何よ?
なに?
ナニ?
ねえ~

なぁ~~にぃい~??

「桃は留守番してな」


ブーーーー


二人はテントから消えた。



つづく

夜矢 5  望むままに

前回

五黄はふと見る、お鈴や娘達のキラキラした魂が誇らしげだ。嬉しい酒は益々、旨くなる。
夜矢の火急を知り、ノン吉を連れて行く。長男坊が子猫のように慌て焦る姿に、胸が熱くなる。


はじまり、はじまり


急いで夜矢の部屋に向かう。
襖を開けると、女郎達が夜矢の寝ている布団を取り囲み、枕元ではお鈴が泣いている。

「お鈴」

「だ、旦那様、、、」

「夜矢...」

ノン吉が呟(つぶや)く。

「女将さん、俺ノン吉です。お世話になりました」

「旦那、、、ノン吉様がどうして?・・・」

「お鈴、お前達もこっちにお出で」

「夜矢、俺だよ」

夜矢は一夜でここまでと云う程、やつれていた。ノン吉の声で薄目を開けた。

「どうして来たの?」

「来たら駄目かい?」

「もう会えないと思っていたから・・・」

「お前と所帯を持ちたくてよッ、迎えに来たんだよ!」

「ふふ、笑えるよ...死ぬ前にこんな可笑しい話しを聞けるなんて思わなかったよ...」

夜矢は薄く笑いながら咳き込んだ。

ごほんッ、ごほんッ

本気だよ!いつだって本気さ」

「昨日会った間なしなのにかい、、、」

「いいじゃないか、惚れちまったんだ!」

「ふふ、こんな安女郎をかえ、、ゴホッゴホッ・・・」

夜矢は目も開けていられないのだろう、苦しそうにしている。


父ちゃん!頼むよッ!


五黄は直ぐにそばに来た。

「どうしたい?」

「こいつを死なせねえでくれッ、俺はイヤだッ!


よしッ!


夜矢はその声を聞き、目をはっきりと開けた。

「旦那、、、止しにして下さい」

「何故さ?」

「あたいはもういいの、もういいの、、、会えたもの・・・こうして会えたもの...」

「こいつと暮らしたくないのか?」

「あたい、、、あたいはずっと待っていた・・・いつも、い..つも.....」

意識が無くなりそうになる。


父ちゃん!やってくれよッ!


「わかった!」

「駄目...だめ...」

「ノン、、、救っても夜矢に生きる気力がなきゃ無理だよ」

「そんなあ・・・」

「わかっているだろ?」

「夜矢、俺と暮らそう!俺のそばにいてくれッ!

「旦那、、、」

「何だい?何でも言ってみなッ」

「あたい、、、【常世花(とこよばな)】の花畑に行ってみたい・・・」

「ノン、夜矢の望みの侭にしてやろう」

「父ちゃん、せめてこいつが朝まで保つようにしてくれ」

「ああ、いいともさ」

「夜矢、行こう」

「あんた・・・」

ノン吉は布団ごと抱え夜空に飛んで行く。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
michiyuki.jpg


五黄は深い溜め息をつき、ノン吉を見送った。隣の部屋に行き、様子を伺っていたお鈴達の前に座る。

「行ったよ」

「死んだのッ?」

「いや違う【常世花】の花畑に行った」

「・・・・」

「夜矢の望みだ」

「旦那様、あちきに話しておくんなさい。ノン吉様と夜矢は何かござんすの?」

「んン、、、古い話しさ。今の名は『夜矢』...その前は荒夜、泪夜、流夜、待夜だった・・・」

「なんかどれも悲しい名前...」

「先の店だけじゃなかったの?」

「今生の名前じゃないさ」


えっ?


「あいつはな、何度も生まれ変わっているんだ。今度で五度目さ」

「そんなに!?」

「ノンとの出会いがどんなだったかは忘れたが、ノンは初手から惹かれたんだろ」

「夜矢は美人だもの」

「そん時は『おさん』と言ったよ。小さな一膳飯屋の娘だった」

「郭じゃなかったの?」

「おぼこさ。そんなあいつらは相惚れになると所帯を持った。おさんが十七、ノンが九百歳頃だったかな」

「はあ~ッ?」

「あいつもまだまだ若かった」

「へぇえーー?」

「ひゃーーーッ」

「それで若いんですか?」

「うっほん、まあな」

「それで?それからどうしたんです?」

「あいつは仕事も忙しかった、茂吉と二人、何とか三役所をものにしようと必死だった。世界中を駆け巡っては地図を作製し、国民の数を調べ、人国にも行き、稀覯(きこう)本の果てまで収集してくる。

茂吉は離れるわけにもいかなかったからな。あそこの資料は全てノンが収集したり、調べてこさえたものさ」

「あたい、馴染みに聞いた事ある!恵み子様の学校にはもの凄い図書館があって何千万、何十億冊って云うご本があるって」

「それをノン吉様がお一人でーッ?」

「そうだよ。だからわかるだろ?どれだけ忙しかったか」

「はい」

「だが、理解できない者がいた」

「夜矢ですか?」

「ああ。あいつが少しは世間を知っていれば、ノンの仕事を理解できていれば違っただろう」

「十七でしょ?、、、若いもの、、、」

「確かにそうだな。寂しさから、ノンが帰って来ないのは郭の女に夢中なんだと邪推した」

「そんなあ、、、」

「誰か吹き込んだのかもな」


何てまあッ


「罪作りな奴は何処にでもいるもんだ!」

「それで、それで?」

「おさんは一人【身魂抜きの宮(みたまぬきのみや)】に向かった」

え゛・・・・

「ノンが久しぶりに帰って来ると恋女房が居ない。おさんを探して世界中を探したらしい。まさか身魂抜きをしているとは思いも寄らなかったのよ。

茂吉がいつものように身魂抜きの宮からの帳面を見せられ、おさんの名を見て驚いた。慌て騒ごうが既に身魂抜きをした後だった。

茂吉から連絡を受けたノンは急いだが結局、【魂納め(たまおさめ)】をするおさんに会う事すら出来なかった」

「・・・・」

「早まった事をッ」

「後で茂吉から聞かされた。役人に『願いは?』と訊かれると『唯一つ、女郎になって亭主と会いたい』と言ったそうだよ。不思議な願いに戸惑ったそうだ。

普通は銭持ちになりたい!苦労はしたくない!と願うのにな、、、【この世鏡】にノン吉との関係も映る、女房というのもわかる。

それなのにどうして?と思ったそうだが、何も言わずに身魂抜きをするのが掟、だからそのまま実行されたのよ」




つづく

夜矢 6  常世花

前回

夜空に遠く消えていく、哀しい二人を見送る五黄だった。


はじまり、はじまり


なんとまあッ

「あいつの嘆きは深かった・・・そこまで恋女房を追い詰めたとね、、、」

「でも、夜矢の誤解なのに?」

「少しは本当だったらしい。何せ相手は十七だ、最初は可愛いが、、、まっ、それだけってな」


酷いノン吉様ッ!


「それが男よ、わかっていても中に通っちまう、、、」

「ノン吉様を責められないよ。だってあたいら、それでおまんま食べているんだもの」

「・・・」

「それから、ずっとこんな事を繰り返している」

「夜矢の一念にそら恐ろしさを感じるわ」

「あたいは、わかる気もするなぁ」

「あちきも少し・・・そんなに惚れてみたいわ」

「男と女の仲は八幡の藪知らずだな」

「そうなんだねえ」

「今の夜矢は幸せなんだ」

「そう言うこった」

五黄は酒を呑み唄う。


「常世花、相惚れ二人、待ち合わせ

♪生まれぇ〜変わってぇも〜何度でぇ〜も♪


挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
tokoyobana.jpg


「夜矢、ほら常世花だよ」

「ゎぁ~綺麗ぃ・・・」

ノン吉は常世花の薫りに想う『何度こいつをここに連れて来ればいいのか...』小高い丘の上に降りると花畑が見渡せる。

「夜矢、少し起き上がれるか?ほら見てごらん」

ノン吉が後から支え、夜矢は何とか起き上がる。

「ねぇ、綺麗ねぇ...」

「ああ、たまんなくな」

「この薫り、、、ぁぁ...何度かいでも良い薫り・・・」

「思い出したのかよ?」

「ふふ、この匂いを嗅ぐとね...ゴホ、ゴホゴホッ」

「もう寝るか?」

「うぅん、、、このまま逝ったっていいもの」

「っッ、そんな事言うなよッ!今からでも遅くないから、父ちゃんに何とかしてもらおう!」

「イヤだよ」

「もう苦しませないでくれよ・・・なあ、頼むよッ俺だって苦しいんだ、、、もう、もう五度目だぜ」

「まだそんなもんかえ?」

「夜矢・・・」

「あぁ~、良ーぃ薫り。風がそよぐと尚更香るわぁ~ゴホンッゴホンッ」

「馬鹿!そんな口開けてよッ、咽(む)せるだろが」

「いいじゃない、好きな男とこうして常世花を見ていられるんだもの。楽しまなきゃ」

「いい気なもんだぜ」

「ねえ、、、そんなにイヤなの?」

「当たり前だろ、いい訳ないや」

「めぃゎく?」

「そんなんじゃねえよ、わかってるくせによ!終いまで言わせたいんですかっての」

「ふふ、言わせたいねぇ」

バカヤローッ!俺は行くぞッ」

「ふふ、いいともさ。あたいはこの花の中で死ねて本望だよ」

「全く、口の減らねえ女だよッ!わかったよ、、、」

「初手から素直になんなよ」

「けっ!生まれ変わる度に性悪になりやがるッ」

「お生憎様ぁ」

「だから俺は、堪んないんだよ。おめえはいつだって女郎になってやがる。おまけに因(よ)りにも因ってだッ、俺がお前と会う時は決まって死ぬ前さ。

それまで他の野郎共に散々に抱かれてよ、亭主の俺はお預けのまんまこれだ!あんまりだってぇのッ」

「ふん、情けないねぇ、そんな事を思っていたのかえ?あーぁがっかりした。こんな馬鹿野郎だったなんて!あーーッ、情けない」

「なんだよ」

「それが天翔猫のノン吉様の言うことかね?呆れてものが言えないよ。あたいはそうなるように望んで魂納めしているんだ。

あんたがちったぁ、あたいの苦しみを知るようにね!あたいがおさんの時は邪険にしてたのにッ」

「そんなことないだろう?あん時は忙しかったし・・・」

「忙しい合間をぬって郭に通ってたものねッ?今もお変わりないようでッ」

「そんな事ねえよッ!行ってねぇよッ」

「まだ言うの?」

「んッ、いや、、、全然じゃない・・・けど、そうしないとお前を探せないし、、、」

「ゴホンッゴホンッ・・・ゴホゴホ」

「おいッ!もう横になれよ、なっ、頼むから!」

「ゴホッ・・・ゴホゴホ」

「夜矢、俺...お前に苦労かけたよ。すまない、、、許してくれッ!」

「あんたって...あたいは...あたいは、、、」

「何だよ?何か言いかけで止めんなよッ」

「ふふ。なんか、、、なんか、やーっとわかったわ」

「わかったって、何がよ?何よッ?」

「内緒...」

「わかったよ、いいですよッ、どーせ俺には内緒でしょーよ」

「変なの、いつもか?ふふ」

「お前・・・」

「ぅぅうーッそんなに睨(にら)まれると息が、息が、、、」

「おいッ、おい!しっかりしろッ!

夜矢ぁあーッ

死ぬな、死なないでくれーーーッ!!


「まだ生きてるよ」

「このアマぁあーッ!騙しやがったな!金輪際許さねえッ、
ちきしょーッッ!

「ふふ、バーカ。あ~あ、あたいもあんたと少しは対等になれたわ」

「腕は上がったよ」

「ふふ、いい気分だわ~もう心晴れ晴れ-!」

「全くよ、俺もお前とこんな風に話せるなんて思わなかったよ」

「そぅ?」

「ああ。所帯持ったばかりの時は、、、悪いけどお前は子供過ぎて...」

「あんたも新しいおもちゃを欲しかっただけだったのよ」

「そうなのかな?」

「そうよ。まっ、お互い若かったのかもねッ」

「そうなのかな?だけど俺、、、あん時九百歳にはなってたぜ」

「数は今だっていってるわよ」

「違いない」

「そろそろ夜が明けるわ」

「本当だ」

地平線から太陽が昇り、花畑を橙色に染めていく。

「夜矢、お前まで染まってるよ」

「・・・・」

「夜矢、もう止しにしようよ。笑えないよ」

「うふふ、またね・・・・・」

「おいッ『またね』って?おいッ起きろよッ!起きろって言ってんだよッ!」

「・・・・・・・・・・」

「おぃッ・・・逝っちまうのか?なぁ、、夜矢、、、なあ...ッ
なぁああーーーーーッ!!


夜矢の目は二度と開かなかった。
ノン吉はいつまでも、いつまでも夜矢を抱いていた。


つづく

夜矢 7  理想の女

前回


こいつこんな女だったけ?会う度に心をガッチリ掴まれるノン吉。余計に別れが辛くなり、きつく抱きしめる。

抱きしめられるほど、夜矢はこれだからやめられないと思う、そして満足をしながら逝く。二人の物語はいつまで続くのやら?



はじまり、はじまり



太陽が沈む頃ノン吉は顏を上げた。
夜矢を布団に寝かせ、櫛で毛並みを整える。常世花の赤花を揉み、その汁を口に塗ってやる。

「紅くらい差して逝きな...」

ノン吉は外れ宿に戻った、五黄はお鈴達と寝穢(いぎたな)く眠り呆けている。

「ったくどうだろねー長男が女房と今生の別れをしているっつぅーに、まあこの幸せそうな顏!

ノン吉は銚子の中に残っていた燗冷ましをちびちびと呑みだす。

「ふぁあ~~~あッ、寝ちまったあー!あれ?ノン、帰ったのかよ」

「はいはい、とっくにね。父ちゃんが気持ちよさそ~に寝ている処、
お邪魔様!」

「あれ怒ってるの?」

「別に~、唯なんか阿呆らしくて」

「ふふ、いいじゃないの。ノンもこうして成長して、、、父ちゃん真に嬉しいわ」

「・・・・」

「帰ろうよ」

「ああ、そうだな」

五黄は屋敷に直接戻らず、鈴音川の辺りに現れた。気恥ずかしさもあるのか、二人は黙って歩く。

「なあ、父ちゃん」

「なんだよ」

「俺も沁みじみ因果に生まれついたよ」

「何を言うかと思えば、、、どうしてよ?」

「だってよ、終いにしたくても出来ねえもの」

「そればっかは俺に言われてもな~」

「あいつは笑ってたよ『またね』って」

「またか?懲りねえみたいだなぁ」

「懲りる処か『楽しい』とよ」

「ふふ。さすがのお前も夜矢には敵わねえな」

「この頃、ますます性悪になってるよ」

「生まれ変わる度にお前の理想になっていくものな」

「へへ、イヤな女だよ」

「業の深さは男の比じゃないな」

「茂吉も『兄さんが哀れだ』って。あいつの事、魂沈めしてくれればいいのによー」

「ふふ、今度あったら言付けようかな」

「父ちゃん・・・しないよね?」

「どうかな?」

「父ちゃんのいけず!」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります

suzunegawa.jpg


兄貴ぃいーーーッ!ひぃはッ、ひぃはッ、はぁはぁ」


「そんなに駈けて来なくていいのによ」

「だッ、だってぇッ~、藤平様が夜矢さんとの祝言の日取りを決めたいってッ」

あ゛っ、言いっ放しだった!」

ノン吉は五黄が出掛けている間に、藤平に祝言をしたいと言っていたのだ。桃吉は藤平から聞いて、すっかり知っているようだ。

「あいつのことだ、高砂の練習してるぞ」

「あぁ、あれですか?酷い声ですねぇー藤平様は。だけど何も言わずに出掛ける兄貴よりはずっといい」


フン!


「やっぱり・・・・」

「あーぁぁ・・・」


             ♢


この話しには後日談がある、茂吉のいる校長室に夜(よ)し吉が訪ねた。

「父様先生、お呼びですか?」

「夜し吉、明日に今生名【夜矢】が参りますので、あたしが致します」

「はい、父様先生」

「ふふ、どんな顏で来てくれることでしょうね」

「楽しみですね」

翌日に魂納めの宮に夜矢が来た。


今生名、夜矢ぁあー入れーーー


「はい」

黒檀の大きなドアが静かに開き、夜矢は慣れた様子で部屋の真ん中まで進むと椅子に座る。

「初めまして、茂吉です」

「あのぉ...あの人の?・・・」

「はい、弟の茂吉です。本来ならあなたはあたしの姉様になりますね」

「とんでもないですッ、畏れ多いことです」

「掛け違ってお会いする事もなく残念でした、、、お詫び致します」

「そんな、もったいない!」

「ふふ、あたしがあなたに会う事をどれ程楽しみにしていたか」

「えっ?あたいに?」

「ええ、そうですよ。祝言の日に『どうしてあたしはこんなに忙しくて、行けないのだろう』とそれはそれは残念に思っていました」

「そうだったのですか?ありがたい事です」

「それから三年あまり、あたしはあなたが身魂抜きをした事を知りました。それもあたしには不思議な事でした。あたしが居ながら、なぜ気が付かなかったのか...

我ながら有り得ないと驚き慌てました。兄さんに酷く怒られ殴られ、桐熊(きりくま)達にも殴られて、、、回復をするのに一月もかかる程でしたよ」

まぁッ!!なんて申し訳ありませんッ、あたいの身の不徳から皆様に大変なご迷惑をッ、、、申し訳ありません!」

「ふふ、昔の話しです。あたしが何故こんな話しをするのか、今のあなたなら理解できますね?」

「はい。やっと今生を終え、わかりました」

「あたしもそのキラキラしたあなたの魂を見て、まだまだ修業が足らぬと戒(いまし)めになりました」

「あたいは愚かでした。



つづく








なんか、近頃のFC2はどうしたのですかね?管理画面に入るのも戻るのにも一々、パスワードが必要になっている。訪問して戻るのにも大変、時間がかかる。終いにはサーバーが開かないと来る。
これって意地悪にしか思えない。

コメントもたくさん書いたのに消されたり・・・コピーをし損なうと悲惨な目に遭う。
どうすればいいのか?泣きたくなります。
訪問したいのに訪問先のサーバが開かない、自分のブログもそうなったり・・・・

ストレスがバリバリにかかります。
皆様の所へ訪問が出来ない!どうにかして欲しい。
つい愚痴りました。

ぴゆう

夜矢 8  魂納めの宮

前回

夜矢は魂納めの宮で初めて茂吉に会う。それがどういうことなのか、茂吉が教えてくれるだろう。



はじまり、はじまり



挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
tamaosamenomiya.jpg


あたいは本当は茂吉様も恨んでました。兄様の祝言なのに仕事が忙しいを理由にして、態と来てくれないんだと捻くれた気持ちでいました。

今思えば、茂吉様は尊いお方...だからこそ、会う事が許されなかったのだったと思います。姉弟の契りを結ぶには相応しくなかったんだと思います」

「どうしてです?」

「はい、あたいは歳だけでなく何もかも若かった。頑是無い童のようでした・・・ノン吉様と一緒になれた時、世界中の女の憧れであるあの人があたいを嫁にしてくれた。

その事だけでも夢のようで、あたいにも羽があるように感じたものです。だけど、あの人がどれ程大変な仕事をしているかを全く理解していませんでした。

『一緒に芝居を見に行ってくれない!』『そばにも居てくれない!』と、不満ばかりでした。たまに帰って来てもあたいは愚痴ばかり、、、居ずらい家にしたのはあたいなんです」

「餅も焼き過ぎは炭になりますものね」

「ええ、あたいは勝手に身を焦がし、炭になって滅ぼしたのです。悋気(りんき)で狂いながら、お役人様に『女郎になって亭主に会いたい!』と望みました」

「・・・」

「あたいは直ぐに生まれ変わり、十七で女郎になってました」

「茂吉父様、どうしてこの者は同じ飯屋の娘にならなかったのですか?定法では有り得ません」

夜し吉が不思議そうに尋ねる。

「それはね、夜矢が望んだからですよ」

「でも普通、身魂(みたま)抜きをした者は、生まれ変わっても何もかも同じと決まっています。己で気が付かぬ限りは繰り返すもの」

「そうですね、その通りです。ですが例外もあるようです」

「例外??」

「それは兄様の連れ合いになったからです」

「どういう事です?」

「兄様は【天授子てんじゅし】その妻になると云う事はとても大変な事なのでしょう。夜矢は所帯を持ってから、己の事ばかりに頭がいって他を顧みる事がなかった。

そのような者は兄様の妻には相応しくなかったのです。魂も童のまま、磨かれもせずにツルリとしている。兄様はそんな赤子のような魂のあなたを愛したのでしょう、、、それもわかる事です。

ですが、兄様がたまに会う程度の恋人なら良かったのでしょうが、妻とした。妻となれば、そんな魂では許されなかったのですよ。あなたは女郎という立場の苦しさ、辛さも知らずにいた。

事もあろうに女郎になって兄様に復讐したいと願った。身魂抜きの定法通りにならなかったのは、そう云う事です。『そんなにしたければしてみるがいい』とね」

「あたいは一度目の時『あたいはこんなとこに来る女じゃない!』と、記憶もないのにいつも苛々して、誰彼かまわず八つ当たりをしていました。二十歳の声を聞くと病いになり、最後の日にあの人に会う、、、

あの人が泣いて謝っても『ざまあみろ』と言って死にました。それを懲りずに何度も、何度も...この度で五度目になりました。死に際に常世花の薫りで、何もかもが合点致しました。

あの人が許してくれと泣く声に『はッ』としました。あたいこそ、謝るべきだ!って、、、あたいを選んでくれたばっかりに、魂磨(たまみが)きに付き合わせている・・・・」

「わかってくれたようですね、おめでとう。お陰でピカピカしてますよ。あなたは丁度今年で百年になります」

「はい」

「ですがこの百年は五百年生きたに相応しい。今のあなたにあるのは、全ての者に対しての【感謝】【寛容】【慈愛】です。やっとものに出来たのですね」

「いいえ茂吉様、意地悪い処はそのままですよ。あの人には『またね』って言っときました」

「ふふ、兄様にも良い薬ですよ。良薬は口に苦しです」

「うふふふ」

「あのぅ・・・申し訳ありませんが、良く理解できません。夜矢は又蘇るのですか?」

「さあ、それは夜矢次第ですよ」

「あたいは、、、あの人に相応しい女になりたいです!でも、それにはまだまだです。何百年懸かってもあの人に相応しい女になりたいだけです。ただ、もうお女郎さんは卒業したい。今度は男になって、生涯を全うしてここに参ります」

「ふふ、三吉の魂もそうして何度も何度も魂納めして、望みを遂げました。あなたもきっといつかそうなります。あたしも楽しみにしています。そして今度こそは弟として契りを結ばさせて頂きます」

「ありがとうございますッ、きっとなってみせます!!

こうして夜矢は、魂納めをしてこの世を去った。今度は何に生まれ変わって来るのだろう?
それは知るのは茂吉と夜し吉だけである。




おわり




これにてノン吉と夜矢の物語は終わります。
いつになるかわかりませんが、
夜矢がノン吉に相応しい連れ合いになれるよう応援をしてやって下さい。
ありがとうございました。

次回はクリスタルの断章のポールからお預かりしたナミとエリカを幸せにするべく考えました物語が始まります。
元は[紅蓮の街]という長編の主人公達です。
きっぱりして、ドロドロして・・うぅ〜とにかくすごい作品です!!
最後が悲しかったので、猫国で幸せにしたいと勝手なことを言いましたら、
快く二人を預けてくれました。
ナミはお波、エリカはお襟として登場をさせる予定です。
・・・幸せになればいいよねぇ〜
始まる前から言い訳をしたりして・・・

引き続き、絶不調でござる。
訪問ができたのに拍手が入らない、
コメが消える!
何故でござるか!
出来てない方々には申し訳ないです・・・
スミマセン。


ぴゆう
プロフィール

 のくにぴゆう

Author: のくにぴゆう
猫国の住民達の物語を書いています。
作者はコメを食べて生きてます。
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