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ある日のきゅー助 1 きゅー助の尾


河童国騒動も何とか収まり、それぞれの国に戻ってからのお話。何があるやら、どんなことがあるのやら。


はじまり、はじまり



つまんないぃーツ、つまんなーい!おいらだけ、ぼっちにされてさぁ・・・」

「又、そのように大きなお声で、、、ヒコめがそばに居ますでしゅ」

「ヒコが居ても五月蝿いだけだもの」

「うッ、五月蝿い?このヒコめはでしゅよ・・・うっほん、爺や兼ご教育係でもありましゅので」


もぅうーーッ


きゅー助はつまらなかった。

オロはまま子から地下水路を自由に行き来出来る術を授けられたので、この頃は一人サッサと出掛けてしまう。
もっとも自分以外、収容出来るような大きな水球は作れないので仕方ないのだが。

きゅー助とて、狸兵衛から尾を大きくして飛べる術を授けてもらっている。つまらなそうにして中庭に出ると、スタスタ歩き出す。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
aruhinoQsuke.jpg

ヒコが「きゅー助様ぁあー!」と追いかけて来たので急いで尾を前にやりパタパタする。程よい大きさになると『ふわり!』宙に浮く。

「ヒコのお説教は後でね~」

飛んで行ってしまった。

「ヒコも連れて行って下しゃーい!」

ふらふら、ゆらゆら飛んでいるのは面白い。きゅー助の尾は元々狸の尾より平べったいので、直ぐに大きく広がる。

だが妖力が弱いので、狸兵衛の様にどんなに大きく広げてもピン!としている訳ではなく、余り大きくするとだらり下がってしまってカッコ悪いのだ。

程々の大きさがきゅー助には大事なのだ。木の葉の様にふらふらしていると思い出す。

「そう言えば、そろそろ耳子さんは赤ちゃん産んだかなあ~?花と駒にも会いたいから、お見舞いがてら行こうかな~」

田平はヒコと同じ様に爺やとして普段は屋敷に居るのだが、とっくに産休を取って耳子の元に居る。別に田平がお産の手伝いをする訳ではないのだが産まれそうと聞くとさっさと帰ってしまった。

「田平はあれから何にも言って来ないし、でもいいよね」

きゅー助は刺抜(とげぬ)き村に尾を向けた。

ゆらゆら飛びながら耳子の雑貨屋の前に降り立ち、尾っぽを元の大きさに戻す。この前はその事を忘れ、ズルズル平べったい尾で歩いて、ヒコに「屋敷が泥だらけになりましゅ!」とえらく怒られたので気をつけているのだ。

きゅー助の姿を見て、耳子の亭主の戸平が駆け寄ってくる。

「これはこれはきゅー助様!ご連絡が遅れて申し分けない事です」

「気にしないでよ~、で、耳子さんもう産んだの?」

「はい、無事に・・・安産でしたが、、、」

喜ばしい事なのになぜか戸平の顔が浮かない。

「どうしたのよ?何か変だよ。耳子さんの体の調子がいけないの?」


とんでもない!


「そうなの?そしたら赤ちゃんの具合が悪いの?」

「いえいえ、至って健康です」

え~!わかんないよーッ、どうしたのよ?嬉しくないの?」

「いえ、、、嬉しいんですけど...」

「もう、いいよ。おいらが会うから」

二人が外で話していたのを駒と花の姉妹が見つけた。

あーーッ!きゅー助兄ちゃーん!」

あぁ~~!キュウキュウッ!」

わらわらと駈けって来てきゅー助に抱きついてくる。

「ありゃ!見つかっちゃったぁ~!内緒なのにキュッ」

「もう見つけたもーん」

「あたい達は鋭いのょ~」

「こらこら、お前達!きゅー助様にお行儀の悪い」

「へへ、いいんだよ。あっ、今日はお土産忘れちゃった!」

「ぶぅー、なんだあ~」

「つまんなーい」

「ごめんね、今度は絶対に持ってくるからね!」

「うん、あたいこの前みたいな簪(かんざし)がいい!」

「あたいも~」

「こらッ!もうどうしてこうなんだろう。きゅー助様、申し訳ありません」

「戸平、そんな事気にしないで。駒と花はおいらにとったら身内同然だもの」

「きゅー助様~!もったいないことでございますッ」

どうやら戸平はヒコと変わらぬような感激屋のようだ。きゅー助は駒と花に両手を握られ家に連れて行かれる。

「前もこうして連れて来られたものね」

「うん!あたいが兄ちゃんだったよ」

「お駒は、桃吉兄ちゃん!」

「懐かしいね~」

きゅー助はあの頃を『ふっ』と思い出す、とても昔のような気もする。(本編十章参照)

あっ!?きゅー助様ッ!」

囲炉裏端でお茶を啜(すす)っていた田平は急ぎ、きゅー助に座布団を用意する。

「田平、来ちゃったよ~」

「すみませぬ、連絡もしませんで」

「いいよ。屋敷に居てもつまんないから遊びに来ただけだよ。それよか耳子さんは?」

きゅー助はどう言う訳か、耳子の事だけはさん付けのままである。「どうか耳子と呼んで下さい」と耳子に再三言われても出来ないのだ。

「はい、奥で乳を上げてます」

「具合はどうなの?」

「御陰さまで安産でしたから、母子ともに元気ですよ」

戸襖(とぶすま)の奥から声がする。

「どなたかいらしたの?」

「耳子さん、きゅー助だよ~」

「あら、大変!

がさごそと急いで耳子は赤子を抱えてきゅー助の前に出る。

「きゅー助様、お久しぶりです」

「そんな堅苦しい事言うのいやだよ~」

「でも、、、」

「それよか、赤ちゃん見せて~」

「はい、どうぞ見てやって下さい」



つづく





おーーなんか久しぶりのアップでドキドキするぅ~
ニャンニャンの日なので火曜日にアップしましたぁ~
次回からは今まで通り日、水としますです。
これからも宜しくニャン。
ランキングはもう少し慣れたら復活したいと思います。
その時は宜しくお願いします。

のくにぴゆう

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ある日のきゅー助 2 耳子の赤子

前回


きゅー助は耳子の赤子を見舞いに行く、するとどうだろう、何やら浮かぬ顔の面々。耳子もキリキリしているのは何故なのだろう?


はじまり、はじまり


きゅー助は産まれて二、三日の可愛い子狸を耳子からそーっと受け取り、抱っこした。狸兵衛から妊娠の祝いに贈られた絹のお包みに包まれている。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
mimikonoakago.jpg

うゎぁああーッ、可愛ぃいーッ!寝てるよぉ~」

「ふふ、お乳を沢山飲んで満足のようです」

「あたいも抱かせてー!」

「あたいにもぉ~」

「駒と花にはまだ早いわよ。もう少しお姉ちゃんになったらね」

「つまんない~」

「さっ、外で遊んで来なさい」

「はぁーい!兄ちゃんッ、黙って帰っちゃ駄目だょ!」

「わかってるよー」

「キュウキュウ、後でね~」

「はいよ、じぁね」

姉妹は楽しそうに駈けて行く、入れ替わる様に戸平が来た。

「きゅー助様、実はご相談が、、、」

戸平が、か細い声で言うと耳子が『キッ!』っとなり、

あんた!勝手な事を言わないでよッ、あたいは聞かない!
絶対聞かないからねッ!

耳子は突然すごい剣幕で戸平に言うと、きゅー助から赤子を取り上げ隣の部屋に駈けって行ってしまう。


え゛!゛?゛


きゅー助は余りの事に言葉も出ずに唖然としていると田平が申し分けなさそうに言う。

「きゅー助様・・・申し訳ありません。あたしもどうしていいのか途方に暮れてます、、、」

「きゅー助様ぁ、、、お助けをッ...」

戸平も泣きそうだ。襖の向こうでは耳子が『わあーんわあーん』泣いている。

「いったい、どうしたのッ!?おいら、拙(まず)いとこに来たの??」

「いいえ、違うんです。どうせ隠し立て出来る事ではないのです」

「父さん、そうですよね?耳子にも言うのですが、、、」

「取り敢えず、話してみてよ。この家族はおいらの身内だもの」

うぅッ・・・

きゅー助様ぁあー!

二人して泣き出す、耳子も相変わらず泣いている。きゅー助は仕方ないので泣き止むのを待っていた。

「もう、大丈夫ぅ?」

「失礼しました。なんかもう、きゅー助様のお顔を見ていたら、、、」

「辛かったんだね。おいらに話せば、少しは気持ちが楽になるかも知れないよ」

「戸平、きゅー助様に包み隠さずね」

「はい。実は、、、」

すると『ガラリッ!』と勢いよく戸襖が開き、凄い顔の耳子が


あんたぁあああーーーッ!


耳子は戸平に殴り掛かった!きゅー助も田平も慌てて耳子を押さえつける。

「耳子さん!どうしたのよッ?いつもの耳子さんと違い過ぎるよ!」

「だって!だって!あたいの赤ちゃんをーーーッ!この碌(ろく)でなしッ」

「耳子!そんな事を言うものじゃないよ」

田平も困っている。

「わかってるよ、もう捨てようとしたりしないよ」

「どうだかッ、あんなこと二度としようとしたらあんたとは此れっきりだよッ!」

どうやら夫婦の危機でもあるようだが、きゅー助は『子供を捨てようとした』という戸平の話に驚いた。

「戸平!今、何て言ったのッ!?『子供を捨てようとした』って聞こえたけど?」

「はい、捨てようとして家を出た処を耳子に見つかりました」

何だってぇええッ?この碌でなしーーッ!そんな奴はおいらだって許さないもーんッ!!」

言うが早くきゅー助はノン吉直伝の猫パンチならぬ獺(かわうそ)パンチを戸平にくれた。


バッチぃーーーん!


「うぅぅ~~む...」戸平、一辺に気絶した。それを見ていた田平も耳子も驚いた!二人して戸平を抱え上げる。

「きゅー助様ぁぁ・・・・」

「あんたぁ、、、」

「戸平が気絶しちゃった」

「きゅー助様、これから話します事はこの夫婦の危機であるだけでは御在ません。あたしにはどういうことかもさっぱりわかりません」

「でも、戸平って、子供が産まれるのをすごく楽しみにしてたんじゃないの?」

「はい、それはもう。『今度こそ、男かも知れない~』って、この碌でなしも言ってました」

「なのに、どうしてよ?」

「最初は皆すごく喜んでくれたんです。男だったし・・・・」

「良かったじゃん」

「ええ、でも産湯で体を洗っていたらお産婆のシャケさんが突然変な声をあげたと思ったら、この子をサッサとあたしに渡すと逃げる様に帰ってしまったんです、、、」

「ふんふん、それで?」

「で、あたし酷いわねと思いながらこの子を拭いていたら、尾の先に一本だけ有り得ないものを見つけたんです」

「何?なによ?」

「銀色の毛です」

え゛っ!?銀色の毛って、、、あの狸七の??」

「ええ、忘れもしない銀色の毛です。あたしも戸平も父ちゃんも必死になって何度も見たんですが、やっぱり銀色なんです」

「ふんふん」

「でも今ならば、産婆のシャケ婆さんに口止めをして、この子の尾っぽの毛は『抜いてしまえ!』と、、、」

「赤子に可哀相に、、、で、やったの?」

「はい。処がです、引っ張っても、引っ張ってもびくともしないんです!その毛を引っ張ると尾まで付いてくるという有様。この子は泣くし・・・

それで仕様がないので、根元から鋏(はさみ)で切ろうとしました。一本の毛ですよ?『雑作ない』と試したら我が家の鋏と言う鋏は全て刃こぼれをしました。

とてもじゃないですけど、全く切れませんでした。
触っても柔らかい赤子の毛なのに、その銀色の毛一本だけ、信じられない程強いのです。それで途方に暮れていたら、この碌でなしはあの子を捨てようとしたんですッ!」

「そうだったの?戸平には悪い事したね」

「いいんです!あたいだってこうしたかったんですから、きゅー助様の御陰ですーっとしました。ふふ」

「きゅー助様、このような訳でご連絡をしようにも・・・」




つづく

ある日のきゅー助 3 狸兵衛と赤子 

前回

田平に打ち明けられた赤子の秘密。戸惑うばかりの家族にきゅー助はどこまでも明るい。いい知恵でもあるのだろうか?


はじまり、はじまり


「いいよ、そんな事気にしないでよ。それよかおいらにこの子を良く見せてよ、それに名前は?」

「はい、出来るならば、きゅー助様にお願いしようと前から決めていました」

「おいらが?・・・・それは荷が重過ぎるよ~、この子の名前は兄様にお願いしよう!」

「そんなー、もったいない事です」

「ううん、普通の狸ならおいらでもいいかも知れない、だけど、何か狸七(りしち)に関係がある子なら話しは別だと思う」

え゛っ?いまだに皆から憎がられている狸七と?!やっぱり・・・どうしよう、、、」

「皆も気付いていたんでしょ?だからそんな事をしていたんでしょ?でもきっと深い意味あっての事だと思うよ。

それにあの子は何も知らない可愛い赤ちゃんなんだよ。
親や田平がそんなにピリピリしてたら、勘の強い神経質な子になっちゃうよ」

「その通りです」

「だから安心してね。おいらが兄様を連れてくるから待っててよ」

きゅー助は赤ちゃんの尾を確認すると、狸兵衛(りへい)の屋敷へと向かう。狸兵衛がきゅー助とやって来たのは翌日だった。

きゅー助はそんなに速く飛べない。だから、来る時はしっかり狸兵衛の尾に乗って来た。狸兵衛に甘えん坊と言われても知らんぷりである。

二人が家に入ると大人狸は緊張して平伏し項垂(うなだ)れる。

対照的に元気よくきゅー助に怒ったのは、駒と花だ。

「あ~ッ!兄ちゃん!昨日黙って帰ってバカぁー!」

「キュウキュウの馬鹿ぁ」

そう言って二人は外に駈けって行ってしまった。

「あっ、いっけなーい!そうだったよぉ~」

「ふふ。きゅー助、後でしっかり謝らないとな」

「本当だね。あっ!簪(かんざし)も忘れたぁ~あ」

「小さくともおなごよ、これをやるがいいぞ」

狸兵衛はポケットから赤い珊瑚玉(さんごだま)を出すと手の平に乗せ『ふっ!』と吹く。あぁ~~ら不思議!あっという間に二本の簪になった。

ひゃぁー!便利だなあ~」

「ふふ。きゅー助も頑張って術を覚えればいいのよ」

「こんなに巧くいくかなあ~?」

「さてな」

狸兵衛が田平に言う。

「田平、耳子、戸平、顔を上げなさい。わしに赤子を見せてくれぬか?」

「はっ、はい!こちらで御在ます。こんなむさ苦しい所に態々御出で頂きまして、田平、恐縮の至りでございますッ!」

「田平、よいのよ、気にするでないわ」

流石に狸兵衛である。威風堂々としたその姿には、民の頭を自然と下げさせるだけの威厳がある。その子はすやすやと寝ていた、耳子が急いで狸兵衛のそばに連れてくる。

「ふふ、可愛い子よ。男狸と聞いたが?」

「はい」

「さて、尾を見せてもらおうかの?

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
riheiakago.jpg

おー、よちよち。おじいちゃんに可愛い尾っぽちゃんをちょっとだけ見ちぇてねえ~
べろべろばぁ~~♪

その場に居た者はあまりの狸兵衛の変わり様に唖然とし言葉も出なかったが、威厳もへったくれもないその姿に皆、嬉しく、心楽しくなる。

ぴりぴりしていた耳子は、狸兵衛の愛情深い姿に胸が一杯になった。

「ほほぉー、これでちゅねぇ~?たちかに銀色でちゅねー」

「あぅあぅ」

子狸は尾っぽを触られていて気持ちよくなったのか、勢いよく狸兵衛におしっこを掛けた。


ありゃーーッ!?


皆して驚く。

まあッ大変ッ!申し訳ございませんッ!」

耳子は急いで子供を抱くと、勢いよく発射されているお股にタオルを充てる。田平と戸平は真っ青になって慌てた。
きゅー助は笑いながらポケットから狸兵衛にタオルを差し出す。

「ぷぷ~、はい兄様」

「ふふ、楽しいの~」

顔を拭きながらも嬉しそう。

「兄様って、子供が好きなんだね」

「無論よ、国の宝よ」

「それで、どうすればいいの?」

「うむ、この事を他に知っている者は?」

「はい、産婆のシャケ婆です」

「ふーん、そうではないな、、、村の者は全て知っているだろう」

「えっ?あれだけ口止めしたのに!あの婆...」

「田平、それは無理な事よ。その証拠に店に客があまり来てないようだの」

「そういや、おいら店番していても誰も来ませんでした」

「ふふ、それ程に狸七は憎がられているのよ」

「だけど、この子は・・・」

「さて、この子は【一平】と名を付けよう、『一回目』だからの」

「なあに?一回目って、、、」

きゅー助不思議そう。

「後で、わかることよ。どうかなこの名は?」

「はっ、はい!ありがとう御在ます。何と誉れな事でしょうか」

「では、一平を村の者に紹介をしよう。皆を呼んで参れ」

よぉーし!おいらが呼んでくるから待っててよ~」


つづく

ある日のきゅー助 4 狸兵衛の話 

前回

やはり狸七の生まれ変わりだと狸兵衛は言う。そして一回目だから一平にしようと名が決まる。どういう意味なのだろう。


はじまり、はじまり



きゅー助は急ぎ駆けて行く。途中、駒と花に簪(かんざし)を渡すと二人の機嫌は一変で直る。女性の機嫌を直すにはプレゼントが一番であーる。

狸国の弟王きゅー助に呼ばれたものだから、皆、わらわらと集まり、あっという間に雑貨屋の前は大騒ぎになった。

皆、静かにしてー、これから兄様が話しをするからよく聞いてねー!」


へーい!

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
riheinohanashi.jpg

狸兵衛が赤ちゃん狸を大事そうに抱え出てきた。


狸兵衛様だ!


ははぁーー


皆一斉に平伏す、「(アレガ噂の子狸ダヨ)」「(噂ハ本当ナノカ?)」そんな小声が聞こえて来る。

ちょっとおー、皆静かにしてよー!」

きゅー助、俄然、張り切る。

「久しいの~、皆に会うのはいいものじゃ」


ははぁーーーッ!


「さてさて。皆、顔を上げてくれ。わしはこれから皆に頼み事がある」

「え?・・・・」

「聞いていると思うが、わしが抱いている一平は多分、狸七の生まれ変わりと思う」

「やっぱりッ!?」

うわーッ


イヤだよー!!


一同は騒然とする。

「皆が憎むのは痛い程わかる。本当に苦労を掛けたからな、、、」

「狸兵様には関係ないですッ!それに今はきゅー助様もオロ様もいらしゃるもの」

「ありがとう、、、わしがこの一平の話をきゅー助から聞いた時、初めは何故なのか解らなかった、、、だが道々考えながら漸(ようや)くわかった。

どうして一平は尾に一本だけ銀色の毛を生やし産まれて来たのか...

これぞまさに天の神々様のお計らいと謂(い)える。お前達が知っての通り、狸七は普通の狸に成り果て、愚かにも九市と刺し違えて死んだ。

奴の魂魄(こんぱく)は当然のように【魂納(たまおさ)めの宮】に行き、その時に初めて己の愚かさを後悔したのであろうよ。

宮で『次は何に生まれたいか?それとも生まれたくないか?』と訊かれ『また狸に生まれたい』と答えたのであろう。

何故、狸と言ったのか、、、

『狸として生き直したい!他の種族ではなく、狸でいたい!』とな、、、そう考えたとわしは思うのよ」

ざわざわとしていたのがシーンと静まり返る。

「そして天の神々様は狸七の魂に試練を与えた。多分、一度目の生涯だから尾の毛が一本だけ銀色なのだろう」

「その試練って尾っぽが全部銀色になるまでなの?」

「そう言う事だろう」

「それじゃ、何千年?何万年!?どの位かかるのよー、そんなに試練を与えなくたって、、、」

「きゅー助、狸七はそれだけ罪深き事をしたのよ。生涯を終え、生まれ変わる度に狸になれば銀色の毛は二本、三本と増えていくのであろう、、、だが違う種族になれば元のままであろうな」

そんなぁあー、厳し過ぎるよーッ」

「だが、それがこの一平の魂に科せられた試練よ」

「こんなに可愛い赤ちゃんなのにぃ・・・」

「この子に罪はない、なれど魂には、、、辛いのお...」

「そりゃ、あんまりにも辛過ぎますよーッ


あっしらには耐えられねえッ!


今は人足をやめ、漁師や百姓になっている狸族の覚一や獺(かわうそ)族の六助が堪りかねて言う。

「そうよな。それを天の神々様も不憫に思い、せめてもの情けで戸平耳子夫婦の子として産まれさせたのであろう。

他であれば、とうにこの子は殺されるか捨てられるかしていたはず、、、尾に銀の毛があるからな」

皆の目が一平にいった。何も知らずにすやすや寝ている可愛い子狸の寝顔に涙が溢れて来る。皆、泣いた。

「皆のもの、泣くでない。一平は耳子の子であったればこそ、きゅー助は見舞いに訪れた」

「そだよ、だって気になったもの~」

「そしてわしの耳に届いたのよ、これを天の計らいと謂わずして何と言う」


なるほど!!


覚一が言う。

「皆、わかるな?どうか、頼む。この子を、この一平をどうか温かく見守ってやってくれ。

これから何万何千度と生涯を重ねるか知れぬ試練ゆえに、せめて『また狸になりたい!』と願えるようなそんな生涯を全うさせてやりたいのじゃ。

それくらいしかわしには頼めぬ、、、どうか、きいてはくれまいか」

「うッ...」

「狸兵衛様ッ、、、」

「最初シャケ婆から聞いたとき、馬鹿なイモ頭のあっしらは『生まれ変わって来てまで俺達を酷い目に合わせようというのかッ!』って、

そんな事くらいしか考えませんでした。だから腹が立って腹が立って、、、皆、いつもなら祝いをするのに祝いどころか、店にも家にも寄り付かないで、、、

田平さんの処に不義理をしてやした。情けねえ話しですッ、申し訳けねえですッ!
てめえ達も謝るんだよッ!

覚一は村の者に促(うなが)す。


すみませんでしたッ


許しておくれよー


「お恥ずかしい事ですッ!田平さん、戸平さん、耳子さん、本当に申し訳なかった、、、」

六助も言う。

「いいんですよ、そんな事気にしてませんよ」

夫婦はそう言って頷(うなづ)く。

「狸兵衛様、きゅー助様、どうかご勘弁下さいッ!あっしらの子々孫々まで一平を大事に思うように致しやすッ!!」

「ずっと、一平じゃないと思うよ(キュッ)」

きゅー助余計を言う。

おお!そうかそうか、頼むぞ。この子がよい生涯を送り又生まれ変わり、何処(どこ)ぞで尾の銀毛が二本ある子が産まれたらまた会いに来よう」

「うん!そうしょぉー、兄様の長生きの楽しみが増えたね(キュッ)」

「そうよな」

こうして騒動は終息した。

田平も落ち着いたら屋敷に戻ってくるだろう。一平の今後が楽しみである。大きく成長した後、産まれた時に騒動があった事をいつか聞かされるのであろうか、、、

屋敷に戻った狸兵衛ときゅー助は釣りに行ったり楽しく過ごしていた。ヒコはきゅー助にへばり付いて離れない。
オロがお土産を沢山持って帰って来た。

たッだいまー!ありゃ?兄様!何だあ~、ここに居たのー?」

「どうしたのよ」

「だって、屋敷に行ったら『きゅー助様と何処かに行ったきりです』って喜平が困ってたよ」

「おおッ!言うて来るのを忘れてたわ」


あはははは


「俺さあ、地下水路って今一つ、理解出来なくてさあ~」

「また、変なとこに出ちゃったの?」

「そうなのよ。鈴音川に出るつもりが五斗吉の【産海(うみ)瓶】に出ちゃってさあー」
(九章 親子 世の吉一家1)

「あひゃーッ、酷いねぇー!」

「五斗吉ったら、たまげて腰抜かしてたよ」


あはははー、ワハハハー


大笑いである。狸兵衛達はあれから何度も菰傘(こもかさ)村に行っているので顔見知りも多い。

「ついでだから、干物を沢山買って来たよ」

「わぁーい!五斗の干物、大好きだよ~」

「わーい!ヒコも大好きですぅ~」

いつの間にかヒコが居た。

え?居たの?


ぶはははははー!


オロも加わり、今夜の夕飯は楽しい事だろう。話さなくてはならぬ事も沢山あるのだから...



終わり






お付き合いを頂いてありがとうございます。
今回で一応終了となりますが、近いうちに一平のその後と題し、一ページの短編をお目にかけたいと思っています。
猫国には厳しさもありますが、やり直すことには寛大な一面もあります。
一平は重い業を背負って生まれてきましたが、独りではない。
狸七の頃は己一人で生きてきたかのように考えていた。
誰に頼らず、誰の頼りにもならず、我儘を通すことだけ、権力を振るうばかりでありました。
故に、今生からは助けあう気持ち、頼り頼られる関係を築いてくことの大切さを知ることになりましょう。
どうか、耳子親子を見守って頂けますように・・・

のくにぴゆう拝
プロフィール

 のくにぴゆう

Author: のくにぴゆう
猫国の住民達の物語を書いています。
作者はコメを食べて生きてます。
コメくださ~~い!
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