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ある日のきゅー助 1 きゅー助の尾


河童国騒動も何とか収まり、それぞれの国に戻ってからのお話。何があるやら、どんなことがあるのやら。


はじまり、はじまり



つまんないぃーツ、つまんなーい!おいらだけ、ぼっちにされてさぁ・・・」

「又、そのように大きなお声で、、、ヒコめがそばに居ますでしゅ」

「ヒコが居ても五月蝿いだけだもの」

「うッ、五月蝿い?このヒコめはでしゅよ・・・うっほん、爺や兼ご教育係でもありましゅので」


もぅうーーッ


きゅー助はつまらなかった。

オロはまま子から地下水路を自由に行き来出来る術を授けられたので、この頃は一人サッサと出掛けてしまう。
もっとも自分以外、収容出来るような大きな水球は作れないので仕方ないのだが。

きゅー助とて、狸兵衛から尾を大きくして飛べる術を授けてもらっている。つまらなそうにして中庭に出ると、スタスタ歩き出す。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
aruhinoQsuke.jpg

ヒコが「きゅー助様ぁあー!」と追いかけて来たので急いで尾を前にやりパタパタする。程よい大きさになると『ふわり!』宙に浮く。

「ヒコのお説教は後でね~」

飛んで行ってしまった。

「ヒコも連れて行って下しゃーい!」

ふらふら、ゆらゆら飛んでいるのは面白い。きゅー助の尾は元々狸の尾より平べったいので、直ぐに大きく広がる。

だが妖力が弱いので、狸兵衛の様にどんなに大きく広げてもピン!としている訳ではなく、余り大きくするとだらり下がってしまってカッコ悪いのだ。

程々の大きさがきゅー助には大事なのだ。木の葉の様にふらふらしていると思い出す。

「そう言えば、そろそろ耳子さんは赤ちゃん産んだかなあ~?花と駒にも会いたいから、お見舞いがてら行こうかな~」

田平はヒコと同じ様に爺やとして普段は屋敷に居るのだが、とっくに産休を取って耳子の元に居る。別に田平がお産の手伝いをする訳ではないのだが産まれそうと聞くとさっさと帰ってしまった。

「田平はあれから何にも言って来ないし、でもいいよね」

きゅー助は刺抜(とげぬ)き村に尾を向けた。

ゆらゆら飛びながら耳子の雑貨屋の前に降り立ち、尾っぽを元の大きさに戻す。この前はその事を忘れ、ズルズル平べったい尾で歩いて、ヒコに「屋敷が泥だらけになりましゅ!」とえらく怒られたので気をつけているのだ。

きゅー助の姿を見て、耳子の亭主の戸平が駆け寄ってくる。

「これはこれはきゅー助様!ご連絡が遅れて申し分けない事です」

「気にしないでよ~、で、耳子さんもう産んだの?」

「はい、無事に・・・安産でしたが、、、」

喜ばしい事なのになぜか戸平の顔が浮かない。

「どうしたのよ?何か変だよ。耳子さんの体の調子がいけないの?」


とんでもない!


「そうなの?そしたら赤ちゃんの具合が悪いの?」

「いえいえ、至って健康です」

え~!わかんないよーッ、どうしたのよ?嬉しくないの?」

「いえ、、、嬉しいんですけど...」

「もう、いいよ。おいらが会うから」

二人が外で話していたのを駒と花の姉妹が見つけた。

あーーッ!きゅー助兄ちゃーん!」

あぁ~~!キュウキュウッ!」

わらわらと駈けって来てきゅー助に抱きついてくる。

「ありゃ!見つかっちゃったぁ~!内緒なのにキュッ」

「もう見つけたもーん」

「あたい達は鋭いのょ~」

「こらこら、お前達!きゅー助様にお行儀の悪い」

「へへ、いいんだよ。あっ、今日はお土産忘れちゃった!」

「ぶぅー、なんだあ~」

「つまんなーい」

「ごめんね、今度は絶対に持ってくるからね!」

「うん、あたいこの前みたいな簪(かんざし)がいい!」

「あたいも~」

「こらッ!もうどうしてこうなんだろう。きゅー助様、申し訳ありません」

「戸平、そんな事気にしないで。駒と花はおいらにとったら身内同然だもの」

「きゅー助様~!もったいないことでございますッ」

どうやら戸平はヒコと変わらぬような感激屋のようだ。きゅー助は駒と花に両手を握られ家に連れて行かれる。

「前もこうして連れて来られたものね」

「うん!あたいが兄ちゃんだったよ」

「お駒は、桃吉兄ちゃん!」

「懐かしいね~」

きゅー助はあの頃を『ふっ』と思い出す、とても昔のような気もする。(本編十章参照)

あっ!?きゅー助様ッ!」

囲炉裏端でお茶を啜(すす)っていた田平は急ぎ、きゅー助に座布団を用意する。

「田平、来ちゃったよ~」

「すみませぬ、連絡もしませんで」

「いいよ。屋敷に居てもつまんないから遊びに来ただけだよ。それよか耳子さんは?」

きゅー助はどう言う訳か、耳子の事だけはさん付けのままである。「どうか耳子と呼んで下さい」と耳子に再三言われても出来ないのだ。

「はい、奥で乳を上げてます」

「具合はどうなの?」

「御陰さまで安産でしたから、母子ともに元気ですよ」

戸襖(とぶすま)の奥から声がする。

「どなたかいらしたの?」

「耳子さん、きゅー助だよ~」

「あら、大変!

がさごそと急いで耳子は赤子を抱えてきゅー助の前に出る。

「きゅー助様、お久しぶりです」

「そんな堅苦しい事言うのいやだよ~」

「でも、、、」

「それよか、赤ちゃん見せて~」

「はい、どうぞ見てやって下さい」



つづく





おーーなんか久しぶりのアップでドキドキするぅ~
ニャンニャンの日なので火曜日にアップしましたぁ~
次回からは今まで通り日、水としますです。
これからも宜しくニャン。
ランキングはもう少し慣れたら復活したいと思います。
その時は宜しくお願いします。

のくにぴゆう

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ある日のきゅー助 2 耳子の赤子

前回


きゅー助は耳子の赤子を見舞いに行く、するとどうだろう、何やら浮かぬ顔の面々。耳子もキリキリしているのは何故なのだろう?


はじまり、はじまり


きゅー助は産まれて二、三日の可愛い子狸を耳子からそーっと受け取り、抱っこした。狸兵衛から妊娠の祝いに贈られた絹のお包みに包まれている。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
mimikonoakago.jpg

うゎぁああーッ、可愛ぃいーッ!寝てるよぉ~」

「ふふ、お乳を沢山飲んで満足のようです」

「あたいも抱かせてー!」

「あたいにもぉ~」

「駒と花にはまだ早いわよ。もう少しお姉ちゃんになったらね」

「つまんない~」

「さっ、外で遊んで来なさい」

「はぁーい!兄ちゃんッ、黙って帰っちゃ駄目だょ!」

「わかってるよー」

「キュウキュウ、後でね~」

「はいよ、じぁね」

姉妹は楽しそうに駈けて行く、入れ替わる様に戸平が来た。

「きゅー助様、実はご相談が、、、」

戸平が、か細い声で言うと耳子が『キッ!』っとなり、

あんた!勝手な事を言わないでよッ、あたいは聞かない!
絶対聞かないからねッ!

耳子は突然すごい剣幕で戸平に言うと、きゅー助から赤子を取り上げ隣の部屋に駈けって行ってしまう。


え゛!゛?゛


きゅー助は余りの事に言葉も出ずに唖然としていると田平が申し分けなさそうに言う。

「きゅー助様・・・申し訳ありません。あたしもどうしていいのか途方に暮れてます、、、」

「きゅー助様ぁ、、、お助けをッ...」

戸平も泣きそうだ。襖の向こうでは耳子が『わあーんわあーん』泣いている。

「いったい、どうしたのッ!?おいら、拙(まず)いとこに来たの??」

「いいえ、違うんです。どうせ隠し立て出来る事ではないのです」

「父さん、そうですよね?耳子にも言うのですが、、、」

「取り敢えず、話してみてよ。この家族はおいらの身内だもの」

うぅッ・・・

きゅー助様ぁあー!

二人して泣き出す、耳子も相変わらず泣いている。きゅー助は仕方ないので泣き止むのを待っていた。

「もう、大丈夫ぅ?」

「失礼しました。なんかもう、きゅー助様のお顔を見ていたら、、、」

「辛かったんだね。おいらに話せば、少しは気持ちが楽になるかも知れないよ」

「戸平、きゅー助様に包み隠さずね」

「はい。実は、、、」

すると『ガラリッ!』と勢いよく戸襖が開き、凄い顔の耳子が


あんたぁあああーーーッ!


耳子は戸平に殴り掛かった!きゅー助も田平も慌てて耳子を押さえつける。

「耳子さん!どうしたのよッ?いつもの耳子さんと違い過ぎるよ!」

「だって!だって!あたいの赤ちゃんをーーーッ!この碌(ろく)でなしッ」

「耳子!そんな事を言うものじゃないよ」

田平も困っている。

「わかってるよ、もう捨てようとしたりしないよ」

「どうだかッ、あんなこと二度としようとしたらあんたとは此れっきりだよッ!」

どうやら夫婦の危機でもあるようだが、きゅー助は『子供を捨てようとした』という戸平の話に驚いた。

「戸平!今、何て言ったのッ!?『子供を捨てようとした』って聞こえたけど?」

「はい、捨てようとして家を出た処を耳子に見つかりました」

何だってぇええッ?この碌でなしーーッ!そんな奴はおいらだって許さないもーんッ!!」

言うが早くきゅー助はノン吉直伝の猫パンチならぬ獺(かわうそ)パンチを戸平にくれた。


バッチぃーーーん!


「うぅぅ~~む...」戸平、一辺に気絶した。それを見ていた田平も耳子も驚いた!二人して戸平を抱え上げる。

「きゅー助様ぁぁ・・・・」

「あんたぁ、、、」

「戸平が気絶しちゃった」

「きゅー助様、これから話します事はこの夫婦の危機であるだけでは御在ません。あたしにはどういうことかもさっぱりわかりません」

「でも、戸平って、子供が産まれるのをすごく楽しみにしてたんじゃないの?」

「はい、それはもう。『今度こそ、男かも知れない~』って、この碌でなしも言ってました」

「なのに、どうしてよ?」

「最初は皆すごく喜んでくれたんです。男だったし・・・・」

「良かったじゃん」

「ええ、でも産湯で体を洗っていたらお産婆のシャケさんが突然変な声をあげたと思ったら、この子をサッサとあたしに渡すと逃げる様に帰ってしまったんです、、、」

「ふんふん、それで?」

「で、あたし酷いわねと思いながらこの子を拭いていたら、尾の先に一本だけ有り得ないものを見つけたんです」

「何?なによ?」

「銀色の毛です」

え゛っ!?銀色の毛って、、、あの狸七の??」

「ええ、忘れもしない銀色の毛です。あたしも戸平も父ちゃんも必死になって何度も見たんですが、やっぱり銀色なんです」

「ふんふん」

「でも今ならば、産婆のシャケ婆さんに口止めをして、この子の尾っぽの毛は『抜いてしまえ!』と、、、」

「赤子に可哀相に、、、で、やったの?」

「はい。処がです、引っ張っても、引っ張ってもびくともしないんです!その毛を引っ張ると尾まで付いてくるという有様。この子は泣くし・・・

それで仕様がないので、根元から鋏(はさみ)で切ろうとしました。一本の毛ですよ?『雑作ない』と試したら我が家の鋏と言う鋏は全て刃こぼれをしました。

とてもじゃないですけど、全く切れませんでした。
触っても柔らかい赤子の毛なのに、その銀色の毛一本だけ、信じられない程強いのです。それで途方に暮れていたら、この碌でなしはあの子を捨てようとしたんですッ!」

「そうだったの?戸平には悪い事したね」

「いいんです!あたいだってこうしたかったんですから、きゅー助様の御陰ですーっとしました。ふふ」

「きゅー助様、このような訳でご連絡をしようにも・・・」




つづく

ある日のきゅー助 3 狸兵衛と赤子 

前回

田平に打ち明けられた赤子の秘密。戸惑うばかりの家族にきゅー助はどこまでも明るい。いい知恵でもあるのだろうか?


はじまり、はじまり


「いいよ、そんな事気にしないでよ。それよかおいらにこの子を良く見せてよ、それに名前は?」

「はい、出来るならば、きゅー助様にお願いしようと前から決めていました」

「おいらが?・・・・それは荷が重過ぎるよ~、この子の名前は兄様にお願いしよう!」

「そんなー、もったいない事です」

「ううん、普通の狸ならおいらでもいいかも知れない、だけど、何か狸七(りしち)に関係がある子なら話しは別だと思う」

え゛っ?いまだに皆から憎がられている狸七と?!やっぱり・・・どうしよう、、、」

「皆も気付いていたんでしょ?だからそんな事をしていたんでしょ?でもきっと深い意味あっての事だと思うよ。

それにあの子は何も知らない可愛い赤ちゃんなんだよ。
親や田平がそんなにピリピリしてたら、勘の強い神経質な子になっちゃうよ」

「その通りです」

「だから安心してね。おいらが兄様を連れてくるから待っててよ」

きゅー助は赤ちゃんの尾を確認すると、狸兵衛(りへい)の屋敷へと向かう。狸兵衛がきゅー助とやって来たのは翌日だった。

きゅー助はそんなに速く飛べない。だから、来る時はしっかり狸兵衛の尾に乗って来た。狸兵衛に甘えん坊と言われても知らんぷりである。

二人が家に入ると大人狸は緊張して平伏し項垂(うなだ)れる。

対照的に元気よくきゅー助に怒ったのは、駒と花だ。

「あ~ッ!兄ちゃん!昨日黙って帰ってバカぁー!」

「キュウキュウの馬鹿ぁ」

そう言って二人は外に駈けって行ってしまった。

「あっ、いっけなーい!そうだったよぉ~」

「ふふ。きゅー助、後でしっかり謝らないとな」

「本当だね。あっ!簪(かんざし)も忘れたぁ~あ」

「小さくともおなごよ、これをやるがいいぞ」

狸兵衛はポケットから赤い珊瑚玉(さんごだま)を出すと手の平に乗せ『ふっ!』と吹く。あぁ~~ら不思議!あっという間に二本の簪になった。

ひゃぁー!便利だなあ~」

「ふふ。きゅー助も頑張って術を覚えればいいのよ」

「こんなに巧くいくかなあ~?」

「さてな」

狸兵衛が田平に言う。

「田平、耳子、戸平、顔を上げなさい。わしに赤子を見せてくれぬか?」

「はっ、はい!こちらで御在ます。こんなむさ苦しい所に態々御出で頂きまして、田平、恐縮の至りでございますッ!」

「田平、よいのよ、気にするでないわ」

流石に狸兵衛である。威風堂々としたその姿には、民の頭を自然と下げさせるだけの威厳がある。その子はすやすやと寝ていた、耳子が急いで狸兵衛のそばに連れてくる。

「ふふ、可愛い子よ。男狸と聞いたが?」

「はい」

「さて、尾を見せてもらおうかの?

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
riheiakago.jpg

おー、よちよち。おじいちゃんに可愛い尾っぽちゃんをちょっとだけ見ちぇてねえ~
べろべろばぁ~~♪

その場に居た者はあまりの狸兵衛の変わり様に唖然とし言葉も出なかったが、威厳もへったくれもないその姿に皆、嬉しく、心楽しくなる。

ぴりぴりしていた耳子は、狸兵衛の愛情深い姿に胸が一杯になった。

「ほほぉー、これでちゅねぇ~?たちかに銀色でちゅねー」

「あぅあぅ」

子狸は尾っぽを触られていて気持ちよくなったのか、勢いよく狸兵衛におしっこを掛けた。


ありゃーーッ!?


皆して驚く。

まあッ大変ッ!申し訳ございませんッ!」

耳子は急いで子供を抱くと、勢いよく発射されているお股にタオルを充てる。田平と戸平は真っ青になって慌てた。
きゅー助は笑いながらポケットから狸兵衛にタオルを差し出す。

「ぷぷ~、はい兄様」

「ふふ、楽しいの~」

顔を拭きながらも嬉しそう。

「兄様って、子供が好きなんだね」

「無論よ、国の宝よ」

「それで、どうすればいいの?」

「うむ、この事を他に知っている者は?」

「はい、産婆のシャケ婆です」

「ふーん、そうではないな、、、村の者は全て知っているだろう」

「えっ?あれだけ口止めしたのに!あの婆...」

「田平、それは無理な事よ。その証拠に店に客があまり来てないようだの」

「そういや、おいら店番していても誰も来ませんでした」

「ふふ、それ程に狸七は憎がられているのよ」

「だけど、この子は・・・」

「さて、この子は【一平】と名を付けよう、『一回目』だからの」

「なあに?一回目って、、、」

きゅー助不思議そう。

「後で、わかることよ。どうかなこの名は?」

「はっ、はい!ありがとう御在ます。何と誉れな事でしょうか」

「では、一平を村の者に紹介をしよう。皆を呼んで参れ」

よぉーし!おいらが呼んでくるから待っててよ~」


つづく

ある日のきゅー助 4 狸兵衛の話 

前回

やはり狸七の生まれ変わりだと狸兵衛は言う。そして一回目だから一平にしようと名が決まる。どういう意味なのだろう。


はじまり、はじまり



きゅー助は急ぎ駆けて行く。途中、駒と花に簪(かんざし)を渡すと二人の機嫌は一変で直る。女性の機嫌を直すにはプレゼントが一番であーる。

狸国の弟王きゅー助に呼ばれたものだから、皆、わらわらと集まり、あっという間に雑貨屋の前は大騒ぎになった。

皆、静かにしてー、これから兄様が話しをするからよく聞いてねー!」


へーい!

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
riheinohanashi.jpg

狸兵衛が赤ちゃん狸を大事そうに抱え出てきた。


狸兵衛様だ!


ははぁーー


皆一斉に平伏す、「(アレガ噂の子狸ダヨ)」「(噂ハ本当ナノカ?)」そんな小声が聞こえて来る。

ちょっとおー、皆静かにしてよー!」

きゅー助、俄然、張り切る。

「久しいの~、皆に会うのはいいものじゃ」


ははぁーーーッ!


「さてさて。皆、顔を上げてくれ。わしはこれから皆に頼み事がある」

「え?・・・・」

「聞いていると思うが、わしが抱いている一平は多分、狸七の生まれ変わりと思う」

「やっぱりッ!?」

うわーッ


イヤだよー!!


一同は騒然とする。

「皆が憎むのは痛い程わかる。本当に苦労を掛けたからな、、、」

「狸兵様には関係ないですッ!それに今はきゅー助様もオロ様もいらしゃるもの」

「ありがとう、、、わしがこの一平の話をきゅー助から聞いた時、初めは何故なのか解らなかった、、、だが道々考えながら漸(ようや)くわかった。

どうして一平は尾に一本だけ銀色の毛を生やし産まれて来たのか...

これぞまさに天の神々様のお計らいと謂(い)える。お前達が知っての通り、狸七は普通の狸に成り果て、愚かにも九市と刺し違えて死んだ。

奴の魂魄(こんぱく)は当然のように【魂納(たまおさ)めの宮】に行き、その時に初めて己の愚かさを後悔したのであろうよ。

宮で『次は何に生まれたいか?それとも生まれたくないか?』と訊かれ『また狸に生まれたい』と答えたのであろう。

何故、狸と言ったのか、、、

『狸として生き直したい!他の種族ではなく、狸でいたい!』とな、、、そう考えたとわしは思うのよ」

ざわざわとしていたのがシーンと静まり返る。

「そして天の神々様は狸七の魂に試練を与えた。多分、一度目の生涯だから尾の毛が一本だけ銀色なのだろう」

「その試練って尾っぽが全部銀色になるまでなの?」

「そう言う事だろう」

「それじゃ、何千年?何万年!?どの位かかるのよー、そんなに試練を与えなくたって、、、」

「きゅー助、狸七はそれだけ罪深き事をしたのよ。生涯を終え、生まれ変わる度に狸になれば銀色の毛は二本、三本と増えていくのであろう、、、だが違う種族になれば元のままであろうな」

そんなぁあー、厳し過ぎるよーッ」

「だが、それがこの一平の魂に科せられた試練よ」

「こんなに可愛い赤ちゃんなのにぃ・・・」

「この子に罪はない、なれど魂には、、、辛いのお...」

「そりゃ、あんまりにも辛過ぎますよーッ


あっしらには耐えられねえッ!


今は人足をやめ、漁師や百姓になっている狸族の覚一や獺(かわうそ)族の六助が堪りかねて言う。

「そうよな。それを天の神々様も不憫に思い、せめてもの情けで戸平耳子夫婦の子として産まれさせたのであろう。

他であれば、とうにこの子は殺されるか捨てられるかしていたはず、、、尾に銀の毛があるからな」

皆の目が一平にいった。何も知らずにすやすや寝ている可愛い子狸の寝顔に涙が溢れて来る。皆、泣いた。

「皆のもの、泣くでない。一平は耳子の子であったればこそ、きゅー助は見舞いに訪れた」

「そだよ、だって気になったもの~」

「そしてわしの耳に届いたのよ、これを天の計らいと謂わずして何と言う」


なるほど!!


覚一が言う。

「皆、わかるな?どうか、頼む。この子を、この一平をどうか温かく見守ってやってくれ。

これから何万何千度と生涯を重ねるか知れぬ試練ゆえに、せめて『また狸になりたい!』と願えるようなそんな生涯を全うさせてやりたいのじゃ。

それくらいしかわしには頼めぬ、、、どうか、きいてはくれまいか」

「うッ...」

「狸兵衛様ッ、、、」

「最初シャケ婆から聞いたとき、馬鹿なイモ頭のあっしらは『生まれ変わって来てまで俺達を酷い目に合わせようというのかッ!』って、

そんな事くらいしか考えませんでした。だから腹が立って腹が立って、、、皆、いつもなら祝いをするのに祝いどころか、店にも家にも寄り付かないで、、、

田平さんの処に不義理をしてやした。情けねえ話しですッ、申し訳けねえですッ!
てめえ達も謝るんだよッ!

覚一は村の者に促(うなが)す。


すみませんでしたッ


許しておくれよー


「お恥ずかしい事ですッ!田平さん、戸平さん、耳子さん、本当に申し訳なかった、、、」

六助も言う。

「いいんですよ、そんな事気にしてませんよ」

夫婦はそう言って頷(うなづ)く。

「狸兵衛様、きゅー助様、どうかご勘弁下さいッ!あっしらの子々孫々まで一平を大事に思うように致しやすッ!!」

「ずっと、一平じゃないと思うよ(キュッ)」

きゅー助余計を言う。

おお!そうかそうか、頼むぞ。この子がよい生涯を送り又生まれ変わり、何処(どこ)ぞで尾の銀毛が二本ある子が産まれたらまた会いに来よう」

「うん!そうしょぉー、兄様の長生きの楽しみが増えたね(キュッ)」

「そうよな」

こうして騒動は終息した。

田平も落ち着いたら屋敷に戻ってくるだろう。一平の今後が楽しみである。大きく成長した後、産まれた時に騒動があった事をいつか聞かされるのであろうか、、、

屋敷に戻った狸兵衛ときゅー助は釣りに行ったり楽しく過ごしていた。ヒコはきゅー助にへばり付いて離れない。
オロがお土産を沢山持って帰って来た。

たッだいまー!ありゃ?兄様!何だあ~、ここに居たのー?」

「どうしたのよ」

「だって、屋敷に行ったら『きゅー助様と何処かに行ったきりです』って喜平が困ってたよ」

「おおッ!言うて来るのを忘れてたわ」


あはははは


「俺さあ、地下水路って今一つ、理解出来なくてさあ~」

「また、変なとこに出ちゃったの?」

「そうなのよ。鈴音川に出るつもりが五斗吉の【産海(うみ)瓶】に出ちゃってさあー」
(九章 親子 世の吉一家1)

「あひゃーッ、酷いねぇー!」

「五斗吉ったら、たまげて腰抜かしてたよ」


あはははー、ワハハハー


大笑いである。狸兵衛達はあれから何度も菰傘(こもかさ)村に行っているので顔見知りも多い。

「ついでだから、干物を沢山買って来たよ」

「わぁーい!五斗の干物、大好きだよ~」

「わーい!ヒコも大好きですぅ~」

いつの間にかヒコが居た。

え?居たの?


ぶはははははー!


オロも加わり、今夜の夕飯は楽しい事だろう。話さなくてはならぬ事も沢山あるのだから...



終わり






お付き合いを頂いてありがとうございます。
今回で一応終了となりますが、近いうちに一平のその後と題し、一ページの短編をお目にかけたいと思っています。
猫国には厳しさもありますが、やり直すことには寛大な一面もあります。
一平は重い業を背負って生まれてきましたが、独りではない。
狸七の頃は己一人で生きてきたかのように考えていた。
誰に頼らず、誰の頼りにもならず、我儘を通すことだけ、権力を振るうばかりでありました。
故に、今生からは助けあう気持ち、頼り頼られる関係を築いてくことの大切さを知ることになりましょう。
どうか、耳子親子を見守って頂けますように・・・

のくにぴゆう拝

大山詣り(猫国バージョン) 世の吉ご一行

え~~、こんちご機嫌麗しく、老ニャくニャン女の皆みな様にこれから御披露いたしまするのがご存知、菰傘(こもかさ)のアホウ男猫達が、日頃の疲れを取ろうと大山詣りならぬ温泉三昧が顛末(てんまつ)記。

事の起こりは世の吉と義兄弟の貞吉。念願かなって狐国に赴任(ふにん)をするという(猫国相関図、参照)
大層めでたいので歓送会をやるから何が何でも来いとの誘い文。

喜んだ世の吉、誰かれ構わず手紙を見せびらかす。
「どうせ行くなら、一足伸ばしてガス病院にある名高い五黄様温泉につかるつもりよ~ん」

ナぁ~ンテ言うものだから俺も!俺も!と騒ぎ出す。

連れていかなきゃ金輪際、付き合わねえとすごまれたり、泣き落とされたり。到頭、【世の吉ご一行】が出来たというわけ。

日頃から気心知れた者同士。おまけに陽気もいいときたから、あっちでハメを外し、こっちでハメを外し、、、と賑やかなことこの上ない【世の吉ご一行】貞吉と涙の別れを惜しんだのも遠い昔のよう。

ガス病院で体の調子を診てもらったりの嬉しい歓迎にマタマタご一行は大はしゃぎ。そんな楽しい旅も後一日。明日は菰傘村だと旅の土産話に話が咲いたそんな夜更けの出来事。


堪忍ならねえッ


「全くだ!」

「この威張りん坊、どーぅにも腹が立つよッ」

「何かにつけて『オレ様のお陰』と言いやがる!」

「『連れて行け』なんて言わなきゃ良かったッ」

「こいつの酒癖の悪さは並じゃないよーッ」

大酒呑んでくだを巻きに巻いて、寝穢(いぎたな)く寝ている世の吉を囲んで皆がボヤいている。どうも世の吉、道中の間、散々威張っていたようだ。

何をしても『オレ様のおかげ様よ』の一言がある。最初は『そうだ~そうだ~』と頷(うなづ)く連中も度重なると煩(うるさ)くなる。

煩くなっても一向に止めない世の吉。当然のように皆の怒りを買ってしまった。

「ふはぁああ~~~ぁ」

大きな欠伸(あくび)をしてモソモソと世の吉が起きた。

「なんだよ、こんな所で寝ちまったよ~。ゥゥっ、寒いや~」

布団もかけずに寝ていた。

「何だよ皆~、冷てえぜッ、布団ぐらいかけてくれれ、、、れれぇッ??」

誰もいない。

おぉーーい!どこに行ったんだよ~、そろそろ朝飯じゃねえのかぁー?」

世の吉が部屋で騒いでいると

「もし、お客さん!」

「おっ、開けなよ」

「失礼します、、、?゛ぶっハッハッハぁーーッ

「何だ何だ?!顔を見るなり笑うとは何事だい!この世の吉様はいい男猫だと惚れてヨダレを垂らしたメス猫数あれど(そんな猫がいたら見てみたいもんだ)笑われたことなぞ金輪際ありゃあしねぇッ!」


でっもっ、ひっ、ひっ、あはっははははーーッ!


腹を抱えて笑い出す。ギャーギャー騒いでいるもんだから、宿の女将まで顔を出す。

「何を騒いでいるんだい!お客様にしつっ・・・
ギャハハハーーーッ

なんと女将まで笑い出す始末。世の吉は顔を真赤かにして怒っている。いつの間にか、主人も奉公人も混じって大笑いである。

ようやく収まったのは泣きながら主人が『鏡を見ろ』と、どうにか言えてからだ。世の吉は腹を立てながら覆(おお)いがかけてあった鏡を見た。


フんギャーーーーーッ!!


驚いて口を大きく開けたまま。

それもその筈、頭がすっかりツルピカツルリのピッカリンコ
一本の毛もない、毛なし猫になっている。

お見事である。

驚いた世の吉は宿の者を問いただす。どうも朝早く、『よく切れる剃刀(かみそり)はないか?』『早立ちをするから急いでくれ』との注文。

間もなく、一行はさっさと旅立った。

「1ニャン、眠りこけているが疲れが溜まっているから可哀想なので起きるまで寝かしといてくれ」

そう言われ、起きるまで待っていたそうだ。世の吉は合点がいく。

へっクションッ!こんちきしょうめ、このままじゃ寒くていけねえ、手ぬぐいの新しいの持ってきてくれ。

それと籠を頼むぜ!後は握り飯をちゃっちゃっと用意してくんな!」

あれだけ大笑いをしてきまりが悪い宿の者達は、急いで支度をして世の吉を送り出したことは言うまでもない。

その頃、一行はあと半日で村に着こうというのんびりモード。旅の余韻(よいん)を楽しむように茶屋で一服をしていた。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
kagokaki.jpg

「全く、あの野郎がいないだけで清々するよ~」

「梅爺さんの言うとおりだよ」

「こんなだったらもっと早いうちにお灸をすえとけば良かったよね」

「全くだ!」


ニャハハハ


大笑いをしている一行の眼前を酒手を弾みに弾んだ籠屋が矢のように走り抜けていった。



つづく






ポールの落語話に触発されまして、できたのがこの顛末記でございます。
古典落語に詳しい御方から文句もあろうかなと・・
まっ楽しければいいかなくらいの軽いお気持ちでお願いします。
コメントは次回に、やはり最後の落ちを読んでから頂こうかなと。
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大山詣り(猫国バージョン) してやったり

前回

堪忍袋の緒が切れたご一行に、頭の毛を剃られた世の吉、凹むかと思えばどうもそうでもない。何を考えているのか?籠を急ぎしたてて菰傘村に走らせる。


はじまり、はじまり


おぅ!今けえったぜ」

『ぬっ』と顔を出した世の吉。

「おやまぁ~随分とお早いお帰りだこと!半月の上も音沙汰なしで、よくもまぁぬけぬけといい加減にしておくれでないかいッ

うるせぇ!御託(ごたく)は後にしやがれのこんこんちきだ!」

「何だってぇ!何だよ、帰って早々、何の剣幕だよッ!

「いいから、つべこべ言わずに女房たちを連れて来やがれっ!つーの

「何でよ?」

「四の五の言ってねえでチャッチャッと呼んでこい」

いつもだったら顔を赤くして怒り出すのに、妙にドスが効いているもんだから、お陽も軽口をやめた。

「誰を呼ぶんだよ」

「お紺たちだよ。ほれ、俺と旅した奴らの連れ合いだよ」

そう言うとそのまま座敷に上がり胡座(あぐら)をかいてだんまり。様子がおかしい。

「変なの・・・」

お陽は言われるままに女房連中を連れてくる。

「兄さん、失礼します」

「おおよ」

「世のさん、何だえ?あたい達は忙しいんだよ~」

「すまねぇ。まっ、皆上がってくんねぇ」

「あら?そう言えば宿(やど)は?」

「あらそうよね」

「そうよ、うちの宿はどこよ?」

口々に亭主が一緒じゃないことを不信がる女房たち。目の据(す)わった世の吉が『ギロリ!』と睨(にら)んで皆を見回す。

不気味である。

皆、『ゾッ』として黙りこんだその時だ!!世の吉『ガバッ』っと土下座をし、


すッ!、すまねぇーーーッ!
堪忍してくれぇえええーーーッ!!



「どっ、どうしたんだよッ!お前さん!」

世の吉は体を震わせ泣いているようだ。

「すまねぇぇ...ウッ...すまね゛ぇ゛、、、」

「どーしたのよッ!?『すまねえすまねえ』ばかりじゃわかんないよ!
はっきりお言いよッ!

世の吉が顔を上げると滂沱(ぼうだ)の涙。





え゛!何?何?女房たちが驚く。


「あれは、、、今から十日も前だと思ってくんな。陽気がいいってんで『川太郎池に漕ぎ出そう!』ってね。陽気はいい、頬を撫でる風は凪(な)いでいる、そりゃー皆、いい心持ちでいたと思いねえ。

ところがだよ、それが一転俄(にわか)にかき曇り、恐ろしいような風が吹いてきた!
ザッパぁあああーーーんッ!!と、

波頭が山のようにそそり立って、船はまるで木の葉だよ。波に
ドォーンッ!』と叩きつけられ船はきりもみしながら池の底ッ!

河童漁師に助けられたのが俺、一ニャンだった・・・」


ええーーーッ!?


「嘘だよ!いやだねぇッ!」

「そうだよぉッ!そんなてんごは止しとくれッ!」

世の吉は下げた頭のまま、深くかぶっていた手ぬぐいを外す。

「詑びにもならねえが気が済まねえから...これこの通り、、、」

世の吉の坊主頭が『キラリ!』と光る。


フンギャぁぁあああーーーーーッ!!!


大騒ぎである。


お前さぁあーーーん!


あんたぁああーッ!


あっちでもこっちでも大泣きである。お紺が泣きながら言う。

「まさか二度目の亭主にまで先ただれるとは、、、この身は呪われているに違いないーッ、尾の毛を剃って一生弔って過ごすわぁあウワァーン

「あたいも!」

「あたいもだよ!『来世もお前と』って誓い合ったんだ!」

「うんうん。それがいい、それがいいよ」

世の吉は笑いを堪えるのに一苦労、いや大苦労。

「さっ、お陽。ああ言ってんだ、さっさと皆の尾の毛をね」

「皆、、、いいのかえ?」

「早いとこやっておくれ!」

そうして皆の尾の毛がすっかり『ツルリんこ』と剃り上がった。ツルツルの尾っぽを抱いて皆、泣いている。

挿絵参照↓↓↓ 絵をクリックすると大きくなります
oonaki.jpg


こんち只今~~!お陽さんに言わなきゃっ、ん?」

村に着いた一行は、置いてきた世の吉のことをお陽に言わなきゃならねえと雁首(がんくび)揃えて顔を出した。目と目が合う女房達。


フンギャぁああッーーー!


お前さぁあーんッ!


あんたぁーーあッ!!


首っ玉にかじりついて喜んでいる。世の吉旦那が後ろも見ないで逃げ出したのは言うまでもない。事情を知った旦那連中が怒りまくって大騒ぎになった。

そこに通りかかった藤平。事情を聞くと一言。
 

「皆の者が無事のお帰り、おめでたい。まこと、

 
 尾毛がなくておめでたい
                    
                     
 お怪我なくておめでたい
 


チャン♪チャン♪




蛇足


馬鹿馬鹿しくて阿呆らしいがその後を書いとこう。一時は腹を立てた男連中、よくよく考えれば女房がこれほどまでに好いていてくれたと気がついて、冷たいすきま風が吹いていた夫婦仲もピッタリおさまる。

尾に毛が無いのも妙に色っぽく見えてくる。ニャ~ンてことで皆夫々に仲良く帰る。収まらないのがお陽。とんだ猿芝居の片棒を担がされ面目丸つぶれ。

その後世の吉の顔が、ぶんぶくれになったことだけは報告をしておこう。

この元は落語の大山詣りでございます。

最後の決めセリフ「お怪我なくておめでたい」が私にはどうも尾の毛と聞こえる。ならばとこんなのはどうかしら?と、猫国バージョンで書いてみました。

これから大山詣りを聞く機会がございましたら、猫国バージョンを思い出してくださいね。

ぷぷ




megane5:18
マスク&雑貨♪気ままにステッチ日記のむらななちゃんの作品です。
妹とお揃いなんですよ。
注文以上の可愛らしいメガネケースなのでござる。
バッグの中でもかさばらなくて最高です。
素敵な作品をぜひ見に行って下さいねぇ~


llama5:18
aunt llama's photoのllama姉さんに頂きましたァ~
妹にも頂きましたの。ありがとにゃーー
マッシュポテトは大好きなので楽しみでござーーる。
llama姉さんのブログは季節の花や珍しいお花で一杯です。
そして愛らしい伽羅姫のお姿をぜひ見に行って下さい。

ご挨拶&桜の木の話

皆様〜〜


お久しぶりぶりブロッコリー
もう笑っちゃうくらい、ご無沙汰をしまして・・
申し訳ございません。
あーしてこうなってそーなってと書き始めると長くなり、結局来週に本格的にアップしようかなどと・・・
言い出しそうな。
なので、挨拶もそこそこに皆様を猫国にお連れしたほうが良いかなと。
へへ
久しぶりに始まります。
これからもしょうもないぴゆうですが、ご贔屓の程を宜しくお願い申し上げます。


桜の木の話


はじまり、はじまり

ある日のこと、いつものようにうーてんは桜の木と話をしていた。
うーてんが何とは無し、他の木が桜の木のように話さないのは何故なのだろうとポツリと言った。

挿絵をクリックすると大きくなります
sakuranoki.jpg

「わしは皆と出自(しゅつじ)が違うでのぉ」

「そうなの?」

「人であったのよ」

ぇ゛え゛え~~!?

「そう驚くでないわ」

「だってッ!・・・」

「余りに昔なんで忘れる所じゃった、良い機会なので話とこうかの」

「ぷぷ、話してよ」

「わしは足軽であったのよ。戦でも中々の働きで、その内に殿様の覚えもあり足軽頭に取り立てられた。
あの日の戦も手柄を立てようと意気軒昂(いきけんこう)出て行った。

だが、わしの命運もその日までだったのだろう、、、
わしは槍の一突きで倒れ、誠に呆気なく雑兵に首を取られ、腰にぶら下げられた」

うぇ〜〜いやだこと」

「仕方ない、討ち取った首を持ち帰り、働きを証明していたからな。
そやつは中々の働きで戦う度に、腰に首がぶら下がっていく。
そして到頭、兜首まで討ち取った。見事であったよ」

「見てたの?普通、首を取られたら死んじゃうと思うけど・・・」

「不思議じゃが、何故かぼーっとしながらも生きておったのかのぉ~、見えるし聞こえてたのよ。
その内にそ奴は憎いことを言い出した。

あぁ~~重いッ!兜首一つは雑兵十個分だよ、こんなに重くちゃ何もできん!いらねえから捨ててこ」

吐き捨てるように言うとわしの首をそこらに放り投げた。

「全くやたらと重たい首だわ、せいせいした」

『ドサッ』と投げた出されてのぉ」

「ぷぷ、酷いねぇ~」

「酷いじゃろ?腹を立てたかったが肝心(かんじん)の腹がない」

キャハハハ

うーてんは笑い転げている。

「これこれ、笑い事ではない、先を進めるぞ。
えッホン、そして夜となり朝となり・・・その内、何日経ったかもわからず、ウトウトしていたら『ガサゴソ』と音がする。

何せ耳が地べたに近いものだからよく聞こえる。あまりに五月蝿いので目を開けたら、若者が側にいる。
久しぶりに見た人であったので、興が乗ったのか声をかけた。

「おいおい」

「なっ、なんとッ!首が話しているッ!?』

「何か不都合でもあるか?驚いたのか?」

「驚いたといえば驚いたな」

「若いくせにふてぶてしい奴じゃ」

「ふん、首と話している暇はない!」

「まあまあ、そう言わずに水をくれ」

「何故?」

「『末期の水』というではないか、くれ!」

「とっくに末期は過ぎていると思うが、、、まあいいだろう」

そ奴は腹から水筒を出すと、たっぷりと飲ませてくれた。飲んでも飲んでも枯れぬ不思議な水筒でな。

「すまぬなぁ」

「またな」

そう言うと去っていた。
それから、どれ程の刻が経ったのであろう。

「おい!まだ生きておるか?」

「なんじゃ?お前か」

水をくれた若者だ。

「すっかり忘れていたが思い出したので来たのよ。しかし面白いものを生やしているなぁ〜」

「わっはは、そうじゃろ?最初は怖がっていた小鳥たちが次第に遊びに来るようになり、それも良いなどと思うていたら糞(ふん)をしよった。

けしからん奴らじゃが、その中に種があったのだろう」

頭から木の若芽が出ている。

「中々風流じゃろ?」

「見たことないわ。さて、水はいらぬか?」

「わしはいらぬが、この若芽にたっぷりとかけてやってくれ」

水をたんと注いで若者は去った。
それから、幾星霜。またあの若者が声をかけてきた。

「おい、起きろ!」

「なんじゃ?いい心持ちで寝ているというに」

「なんと驚いたなぁ~桜の大木になっているぞ」

「そうじゃ、見事であろうが」

「最初は気が付かなかったよ」

わしは木に吸収されたのか、わからぬが立派な桜の大木になっていた。

「さもあろう、しかしお前は老けてないのぉ~何故じゃ?」

「まあな!それにしても他の魂とは違うらしい」

「わしもそう思うていたよ。何時まで経っても息が絶えぬ」

「どうだ、わしの国に参らぬか?」

「参るも参らぬもわしのような木をどうするというのじゃ?切り倒されては堪らん!せっかく桜の木に成れたというに」

「切るわけがない、来るのか?」

「そんなすぐに言われて『ハイ、行きます』と言うほど素直でなし」

『・・・』

そんな言い合いを何日もしていた。久しぶりに話すのが楽しかったのであろうな、若者も何故か付きおうてくれた。長くなってしもうたが、そういうことでここにおる」

「おるってぇ肝心要の最後がわかんないよぅ~それに若者って誰なのよう~」

「薄々分っておるくせに、五黄様じゃよ。五黄様が人国を放浪しておった時に偶々(たまたま)会うたということじゃな。これも縁というものか・・・若者になるのはおなごにモテルためだそうだ」

「やっぱり、分かり易い」

「ここにしたのは見晴らしも良いし、うーてんが良い住まいを探しているのを知っていたからじゃ」

「やっぱりね、五黄が『良い住まいになる木があるから行ってごらん』って」

「早々にうーてんが越してきた時は驚きもあったが、話す相手が出来て幸せじゃ」

「うーてんもそう。意外に気が利くのよね、あのデカ猫」

わっははは、いいデカ猫様じゃー!

きっと今頃、五黄はくしゃみの一つでもしていることだろう。






え〜これからは週一でアップしようと思うております。慣れるまでのリハビリみたいな・・・
へへ
こんなこともありました(まだあったりして・・・)
我が家にルリビタキちゃんが飛び込んで参りました(iiama姉さんが教えてくれました)
ガラスに向かってバタバタしています。
このままでは、我が家のニャン共に見つかってしまう!
イチかバチかで捕まえようと、そっと両手で抑えました。
なんと!捕まえられたのです。
こりゃ、撮らにゃあかん!
「ごめんねぇ〜記念写真だけ撮らしてねぇ」
小さな心臓がトクトクと早鐘を打っていたのが、愛らしくいじらしく・・・
怖かったよなぁ〜
この後、元気よく飛び立って行きました。
ooruri.jpg
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ぴゆう

ある日の桃吉 1 必死


河童国の騒動以来、王族達は皆と連絡をし合う事に決めた。しかし、王族達がいつも国を留守にするわけにもいかず(五黄は別らしい)
ノン吉が連絡定期便の係となった。そして、オマケに桃吉も仰せつかった。
あれ以来、飛ぶことが少しは上達したのだろうか?
そんなある日の桃吉であった。


はじまり、はじまり



この頃の桃吉は空を飛ぶのが楽しくなってきている。
ノン吉の無駄のない飛行の美しさと比べるもないが、自分なりに満足をしている。
狸国への定期便も、ノン吉に言われなくても『サッサ』と出掛ける。

今日もバタバタと走りながら勢いをつけ空に駆け上がる。
どうもノン吉のようには出来ないので、一工夫も二工夫もした結果、駈けながら勢いをつけて飛び上がる。
すると羽が風を捉(とら)えやすく、巧くいく事に気付いたからだ。

ノン吉は桃吉が飛ぶ事を楽しむようになっているので、何も言わずに好きにさせてくれる。
その日もいい天気に誘われるように空を飛んでいた。

頬の毛を撫でる風に、『うっとり』しながら縁(よすが)の森上空に差し掛かる。
この森は【煤煙坊すすけむぼう】と【墨姫すみひめ】のデートコースになっているらしい。
桃吉は二人に会った頃を懐かしく思い出す。
(大相撲 34 小天狗カップル参照)

「いつまでもあのままっつーのもイカンよ、うん。二人の行く末を考えてやらニャーいかんニャ、うんうん。」

にゃんて生意気なことを考えたりもしている。
昼間見る針葉樹のとんがりは、どこまでも青々と美しい。

「あれ?何だ?白いぞ・・・」

挿絵参照 絵をクリックすると大きくなります
hitushi.jpg


針葉樹の天辺に白いモコモコが見える。
雲布団でも、落ちているのかと思った。

「煤煙坊が置き忘れたのかな?」

二人は、デートを木の天辺ですることもあって、座布団替わりに雲布団を使う。
置き忘れて【うーてん】や【さーてん】に気づかれたら大変!
回収してやろうと近づいたら驚いた!!

白い子猫が必死になってしがみついている。
声も出ないのだろう、震えている。
桃吉は怯えている子猫の気持がわかるので殊更明るい声で声を掛けた。

おぉーい!何してんの~?」

「・・・・・」

「まぁ、いいや~、そんじゃねえーーー!」


わぁッ、怖いのぉ-ッ、
た、たしけてぇええーー!



「声が出るじゃない」


「た、たしけてぇええーッ!!


「助けて上げるから、俺が掴みやすいようにできるかな?」

「・・・・」

「出来ないと無理だよ、そんじゃね~」


「ゎわあッ、イヤだぁ-!
行かないでぇぇえーーーッ!



「行かないから、言うこと聞いて」

「ゎっ、わかったぁあ

「いいかい?背中から掴むから、怖がんなよ。バタバタすると手を離しちゃうよ」

「ぅ、うん。絶対に離しちゃイヤだよッ」

桃吉はホバリングをしながら子猫を抱え、ゆっくり降りていく。


わあッわあーーーッ!


「大丈夫だよ。ほら、地面はすぐそこだよ」

「うん」

着地して子猫を降ろすと、その子は腰を抜かしてしまったのか立つ事が出来ない。

「そのまま座んなよ。無理して立とうとしなくても、その内に治るよ」

「そ、そうなのッ?おいらこんなの初めてだから、びっくりしちゃって」

「俺だって、あんな高い木の上にいる子猫を見るのは初めてでびっくりだよ」

「・・・・・・・・」

「お前、名前は?」

「おいら和吉って言うの」

「ふーん、幾つなの?」

「おいら八つ」

「八つなの?もっと大きいかと思ったよ」

「おいらそんな事言われたの初めて、、、兄ちゃん助けてくれてありがとう!」

「いいさ、俺は桃吉って言うんだ」

「桃吉兄ちゃん、羽があるの?」

「うん、便利なんだ」

「あまかけ猫のノン吉みたい」

「俺はその弟分なのさ」

「へぇ~いいなあ~、空を飛ぶのってどんななの?」

「そうねえ、この頃やっと楽しくなって来たけど、最初はもう大変だったよ」

「そうなの?」

「兄貴みたいな体力も筋力も無い俺はさあ、羽ばたくだけで疲れてたわけ。あんまり上達しないから、うーてん達にも見捨てられたのよ」

「厳しいね」

「冷たいったらないのよ。だけど兄貴だけは根気よく教えてくれたよ」

「ふーん」

「でね、あるきっかけでうーてんが相撲を教えてくれるようになったのよ。
それがさあ~、
四股(しこ)だの鉄砲だのばっかり!だけどその御陰で体力も筋力もついたの。
気がついたら、飛べるように成っていた訳なのさ~」

「へえ~わかんないもんだね」

「だろ?関係ない様に思えても実はそうじゃないのよ、何れ我が身の為なのよ。うんうん」

「ふーーん」

「そういや、和吉は何であんな高い木に昇ったのさ、まさか飛びたかったの?」

「違ぅ、、、、、見たかったの、、、そうじゃない・・・・・
そうじゃなくて......」

「言葉に出来ない事ってあるよね?最初の目的がどうであってもさ」

「・・・」

桃吉は小さな子猫が何かを抱えているのが堪(たま)らなく思った。
子猫が助けを欲しているように思えた。

桃吉は忘れていた昔を思い出すように話し始める。
それが何かの役に立てるとも思えなかったが、木の天辺で泣いて震えている姿が昔の自分に重なる。


つづく

ある日の桃吉 2 過去

前回

桃吉は縁(よすが)の森上空を気持よく飛んでいた、ふと見ると白いモコモコが見える。小天狗たちが残した雲布団かと近づく、ところが白い子猫が必死に掴まっている。このままでは危険なので、優しく声をかけ、降ろしてやる。


はじまり、はじまり


挿絵参照 絵をクリックすると大きくなります
momwakichi.jpg


「俺も下手で木にもよく引っ掛かって、どうにも出来ないで震えていたなあ~」

「そうなの?おいらみたい」

「和吉を見ていて思い出しちゃった。俺の昔話しを聞いてくれる?」

「うん」

「俺なんか、、、俺って昔は人だったんだ」

「人?人って飛ばされた悪い国のこと?」

「そうなのよ。何でも俺は【残り猫】って云うボケ茄子らしいけどね」

「桃吉兄ちゃん面白いね!」

「俺はね、人でいる頃とても孤独だったんだよ」

「家族はいたんでしょ?」

「いたさあ~。だけどね、俺の弟がもの凄く優秀でさ、俺なんか親にしてみたら、どうでもいい存在だったらしいよ」

「そんな...」

「そうなのよ、例えば学校から帰るじゃん?すると家族が誰もいないのよ。
すると置き手紙があってね『旅行に行きますから、留守番をするように。ご飯は適当に買って食べなさい』って」


ひどーい!


「そして三日もするとニコニコ顏の弟と両親が帰って来るわけさ」

「そんなぁ.....」

「俺は思ったよ。『ああ、この人たちは俺が居なくても家族として成り立っているんだな。じゃあ俺って何?』ってね、、、」

「かわいそぅ...」

「高校を卒業すると家を出たよ。大学も親には頼らなかった。それからずっと一人で生きていた」

「寂しいね...」

「それが寂しいなんて思う事も無かったのよ。慣れちゃっていたんだな。
愛されない事や、孤独にもね.....

そんなだから、人と関わりあうなんて金輪際、無理だった。
食べていかなきゃいけないから、働いていたけど友達もいなかった、、、」

「え?そうなの?今の桃吉兄ちゃんと違うね」

「ゾっとするよ、『よく耐えていたなあ~』って褒めてあげたいよ、不憫(ふびん)な桃吉ちゃんをね。
今思うと俺は暗くてつまんない奴だったし、捻(ひね)くれていたんだと思う。

だけどそんな奴でもきっかけさえあれば変わることが出来るんだ。
と云うより頑(かたくな)になっていたコチコチの殻(から)を壊せるんだ」

「それってなあに?」

「意外と気が付いてないけど、『自分はこうだ!自分は出来ない!』って、知らず知らずに固い殻を作っていたりするんだよ」

「そうなの?」

「俺はそうだった。そんな人付き合いも間々ならない俺がよ、五黄様に出会って、世の吉兄貴にここに連れられて来てから、俺のそばにはいつも誰かがいてくれた。

かまってくれるなんて云うもんじゃない、お節介の塊(かたまり)みたいなんだ。

少しでも一人でいると、『どうした?腹が減っているのか?何か悲しいのか?』って、、、
ボーッとしても居られないくらいなのさ。

へへ、お陰で俺は皆と話す事も怖くなくなったし、自分の気持を伝える事も出来るようになっていた。
今じゃ、数え切れないくらい友達が出来た。

ノン吉兄貴だって、オロ、きゅー助、うーてん、さーてん、ぐーてん、小天狗達に尊敬する王族の方達とは、家族のようなんだ。
だから今は幸せなんだよ、
ものすごぉーーくね!

「いいね、桃吉兄ちゃんは」

「今の俺は罰当たりな程幸せ者だよ。だって羽まであるんだもの」

「本当だね!」

「和吉は、何か悩みがあったんだろ?」

「ぅ、うん。本当はそうなの.....」

「ちびの時は家族や、友達、村の中だけが世界なんだよ」

「うん」

「だけどね、違うんだ、わかるよね?」

「うん」

「いろんな事があるんだよ、これからの和吉にはさ」

「おいら、和吉なんて呼んでもらえないの。『弱吉』って、、、すぐ泣くし・・・」

「どうしてさ?弱虫にあんな高いとこ昇れやしないよ」

「だって、と吉がおいらみたいな『泣き虫毛虫の弱虫はいない』って。おいらが『違う!!』って言ったらそんなに言うなら、やってみろって」

「何をさ?」

「一番高い木の天辺から、と吉の家の庭に置いてある旗の色を見て、当てろって」

「それで昇ったのかよ?」

「うん。でも、昇れたけど、顏も上げれなかったし、降りれなかったもの。
それに・・・どうでもよくなって来たから、このまま手を『離しちゃえぃ!』って・・・
だけどそれも怖くて出来ないの」

「出来なくてよかったよ!そうだったら俺と会えなかったじゃん」

「そっか!」

「出来なくて良かったじゃん」

「うん!桃吉兄ちゃんに会えたもんね」

「和吉は頑張って木に昇ったから、新しい友達が出来た」

「おいらの友達になってくれるの?」

「もちろんさ~。和吉がよかったらね」


おいら嬉しいッ!



つづく




ニャハハハ
明日、アップ予定だったのに今日になっちゃった!
予約投稿を間違えてしもた。
ホッホホホホ
きらたるちゃん、さっそくありがとう〜
へへ

ある日の桃吉 3 これから

前回

桃吉は和吉の姿に昔の自分を見た、励ますつもりで過去を話したのに
その事が心の奥底にあった蟠(わだかま)りを拭い去ったようだった。

善行は他者のためではない、自分の為でもある。
にこやかに笑う猫国の面々の顔が心に浮かぶ。


はじまり、はじまり



よし!そしたら意地悪と吉を【ニャフン(ぎゃふん)】と言わせないとね!」

「どうするの?」

「俺と一緒に空を飛んで、どんな色の旗か見てみようよ」

「駄目だょッ怖いもの」

「さっきはちゃんと掴まってたろ?暴れなかったし、大丈夫だったろ?」

「ぅん、、、」

「試してみない?どうせならさ~」

桃吉はワザぁ~と何気な~く言う。

うん!おいら出来るかもしれない!」

「出来るさー、天辺(てっぺん)に昇るまで目を開けているのも楽しいぞ!やってみよう」


うん!


桃吉は和吉を後から抱えると走り出す。

和吉ぃーーッ!行っくどーぉおおーーッ!

わぁーーーい

バサッバサッ』と音を立てながら、体が浮いていく。
和吉は大はしゃぎだ。

ほぉ~ら、行っくどぉおーーッ!


うゎぁああーーー!


羽が羽撃く(はばた)く度に『スぅーー』っと上空に昇っていく、和吉の目はまん丸になっている。
上空でホバリングをする。

挿絵参照 絵をクリックすると大きくなります
sorakara.jpg

「見てご覧、どこがと吉の家だい?」

「桃吉兄ちゃん、あれーッ

「あれかあ~?あんなに小ちゃい緑の旗なんて天辺からだって見える分けねえよ。ったく、意地が悪いねえ」

「本当だよ、と吉ってとっても意地悪だよ」

「おっ?あれご覧よ、あの布団のシミ」

あっ!きっと、と吉のおねしょだ!」

「違いない。いいもん見ちゃったねえ~」

「うん、よぉーし言ってやるッ!」

「よしその意気だ!俺に後で教えてくれよ」

「うん、絶対に教えるよ」

桃吉は、元気になった和吉を地面に降ろす。和吉は今にも駈けって行きそう。

「和吉、一つだけ教えてやる」

「なあに?」

「と吉を子分にしたいかい?」

したい!

「だったら皆の前で緑の旗の事は言ってもいいけど、おねしょの事はと吉にだけ言うんだ」

「何でよ?皆の前で言ってやりたいよー、ニャフンとさせたいもの」

「だけどそんな事したら、意地悪な奴って言うのは懲りないで恨むんだよ。そしたらまた意地悪されて損だろ?」

「あっ、そっかぁ、、、」

「だからね、『俺は知ってるけど誰にも言わないよ』って、耳元で言うのさ。そしたら和吉に感謝すると思うよ。うん間違いない。
そう云う奴は威張っているから、変にプライドだけは高いんだ。
凹ませるより、貸しを作る方がいいのさ」

「プライドって何?」

「大生意気な奴の事さ」

「ふぅーん。それなら、おいらやってみる!」

「そうしな。だけど威張ったり、意地悪になるなよ。そんなことする和吉になったら俺は友達止めるよ」

「いやだょ~、おいらの友達でいて」

「よし。それなら今の優しくて、強い和吉でいてくれよな!また会おうぜ~」

「会いに来てくれるの?」

「もちろんさ!お前の村はわかっているしな」

「おいら家は手拭屋なの、絶対に遊びに来てね!」

「ああ、そしたら行くよ」

あッ、桃吉兄ちゃん待ってー、これ持っていって!」

「何さ?」

「これおいらに母ちゃんが名前入れて染めてくれたの。ほら、【和吉】って染めてあるでしょ?」

和吉が差し出した手拭には、甕覗(かめのぞき)色に和吉の字が大きく染めてある。

「これ桃吉兄ちゃんに上げる」

「いいのかよ?大切な物だろ」

「いいの、家にまだあるもの。それに桃吉兄ちゃんに持っていて欲しいの」

くぅーーッ、きゃわいい奴だね~、こりゃどうも!そんじゃ遠慮なく貰っていくよ。ありがとうな」

桃吉は手拭を首に巻くとニコッとして和吉に微笑む。

「似合う~?」

「似合うよ!おいらもこれからはそうする」

「そうしな。友達の証だな!」

「うん、おいら嬉しい!」

「そしたら又な」

「兄ちゃん、きっと会いに来てね」

「ああ、きっとさ。そんじゃな~~~」

ありがとう!兄ちゃーーーん!


和吉は桃吉の姿が、遠く空の彼方に行くまで手を振って見送った。
見えなくなると、村に向かって一目散に駆け出して行く。

和吉はこの日の出会いを一生忘れないだろう。
桃吉も又ノン吉に今日の楽しい出来事を身振り手振りを交えて話すのだろう。

そんなある日の桃吉だった。


おわり

夜矢 1 出会い




はじまり、はじまり


「ねえ旦那、もう止しにしておくれよ~しつこいねえッ」

「なんだよ、つれねえなーこれからじゃねえか」

ふんッ!銭分のお務めは終わってるよ!」

なんだとーッ!このあま、ふざけた言い方するじゃねえッ!」

ふん!いいからサッサと帰っておくれ。くさくさするよ」


ちきしょーっ!覚えてやがれッ!


襖を蹴破るように客が出て行く、夜矢は男臭い部屋の匂いを消そうと思い切り窓を開ける。

「ふぅーー寒ぅッ、だけどいいや、この方がすっきりするわ」

桟(さん)に腰掛けていると勢いよく障子が開く。

「ちょいとッ!また、おやりかい!この阿呆ツバメ!幾ら言ったらわかるんだよッ」

ふん!

「全く、どうしようもないアバズレだよ」

「お陰さまで、ねんねの頃からの郭(くるわ)育ち、仕方ないやね」

「もうッ!さっさと店にお立ちよ!はこれからなんだよッ」

「ふんッ、そうそう身が保つかってんだ」

悪たれをついた後、何気なしに空を見上げた、薄ら寒い宵闇にぽっかり月が顔を出している。

東に目を向けると小さな点が動いている、じっと見つめているとどんどん大きくなっていき、姿が分かる程になった。

「あれ、鳥かね?それにしても変な鳥。夜なのに鳥が飛んでるよ」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
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それから一年が経った。

「あらまあ~、どうしたのよ!?」

「本に、珍しいこと」

ノン吉はお風の屋敷にいた、先ほどから浴びるように酒を呑んでいる。

「ノン吉ってば、いい加減にしなさいよぉ~!」

「いいじゃねえか!酒がねえ訳じゃねえだろッ」

「無くなるわけないでしょ。そんな事を言ってるんじゃないわよ」

「そうですわ、おささはその辺にしておきなさい」

「お風まで言いやんの、、、そうですか?そんじゃ帰りますよッ!ぉっ、とッ・とッとッ、、、」

ちょっとーッ、泊まりなさいよ!」

「そうですわよ、お部屋は用意してありますわ」

「何言ってんニョ?帰るんですぅ、、、帰るぅううーーーッ!

「そんなで飛んだら、産海(うみ)まで流されるわよ」

「そうですわよ。ノン吉、泊まりなさいよ」

「ニャ~~~ぁっと、行くどーーーッ!っと」

ノン吉は二人が止めるのも聞かずに飛んで行ってしまった。

「馬鹿だねー!耳なしだよ」

「大丈夫かしら?心配ですわ。お蜜、連れ戻さなくて良いのかしら?」

「姉様、泥酔したとは云え、『天翔け猫の』うすらトン吉!。ほら!もうあんな遠くよー」

「まぁ!さすがですわ~とてもわたくし達では追付けませんわ」

「本当よね。んン・・・にしても何か怪しいわ、、、去年だってあんなに呑んだ?」

「いいえ、少しですわ。『もっとお呑みなさい』ってこちらが勧めた程でしたわ」

「姉様、今日何日だっけ?」

「(お)の九九十年、紅葉の十日よ」

「て、云うことは.....むむ・む・む」

「どうしたの?お蜜」

「ねえ、あたしが猫の頃の話しなんだけどね、、、」

「ええ、それで?」

「五黄から聞いた話なんだけど、、、」

「だからなあに?」

「何でもね、『ごしょごしょ』で、『ごしょごしょ』らしいのよ。それが決まって二十年毎の紅葉の十日」

あらーーッ!それでなの?」

「あーぁ、いいわねえ~ぇ。そう思わない?」

「そうね、いいわね」

「あらその程度なの?」

「だって、あたくしには良くわかりませんわ」

ひゃーーーッ『わかりませんわ』だってぇ!
この蒲鉾(かまぼこ)干物

「何ですって?何ですの?その蒲鉾干物って」

「だって、姉様のカマトト振りは蒲鉾ごと干物になっているくらい、年季が入っていると云う事よ」

「お蜜ったら、なんて事を言いますの?あたくし気分を害しましたわ」

「はいはい。害して下さいよ、幾らでもね」

まぁー!あたくしだって、変化いたしますわよ」

「あらぁ~ん、怖い事。変化するよりその干物振りを治したらどうなの?」

「まぁーッ!ひどいですわッ

「姉様だけが他の世界の者じゃなしって言いたいの」

「何が言いたいのですッ?」

「唐変木の藤平の事よ」

「まぁッ(ポッ)......な、何を言うのかと思えば、、、あたくし部屋に下がりますわ」

「そうね、唐変木ちゃんのお写真に『チュー』でもして寝なさいよ」

「(?゛)、どうして知っているの...」

「あら図星?」

「えっ?」

「やっぱりねえ~これだから姉様は可愛いのよ」

「お蜜・・・いやですゎ.....」

「何言ってるのよ、唐変木はこのまま『ずーーーっ』と知らないわよ」

「あたくし、そんな...この侭(まま)で良いのです」

「毛がねぇ〜じゃないや、健気~っと褒めたいとこだけど、いい加減にしたら?(い)の字で始まって、もう(お)年の九九十年。後、十年で千年祭があるのよ。姉様の片思いは萬年しても足りないの?」

「あたくしの片思いはまだ二万七千と九百と九十年ですわよ」

「お馬鹿じゃないのッ?自慢にもなりゃしない。もういいから、今日は狐らしくコンコンと教えてやるわ。

お熊ーぁ!

おささをもっとじゃんじゃん持って来てーー!





つづく



付記

この世界の年号は、千年単位でいろはの数え歌になっています。
今はおの字で二万七千年と九九十年。

数え歌は普通、47で終わりですが、
五黄が大好きな陽の神様が次にごおうと入れたので、
48が(ご)49が(お)50(う)で五万年まで数えられます。
それを越えればまた、いの字から始まります。

そして月の暦は一月 松
       二月 梅
       三月 桃
       四月 桜
       五月 菖蒲
       六月 紫陽花
       七月 百合
       八月 向日葵
       九月 菊
       十月 すすき
       十一月 紅葉
       十二月 椿

こんな感じでございます。
へへ(^^ゞ

夜矢 2 あやしい

前回

紅葉の十日はやるせない、縁があるやらないのやら
夜空は今日も美しい、冷たい風が頬を撫でて

会いたくねぇと口が言い、会いたいんだと心が言う。
切ないノン吉、飛んでいく。


はじまり、はじまり


ノン吉は『風に流され産海(うみ)に出るのもいいやあ』と思いながら飛んでいた。

夜矢は溜め息をつきながら、空を眺めていた。

「はぁ~ぁ~あの鳥、、、もう一度見たいなぁ」

ノン吉は夜矢を見かけると迷いなく近づく。


おーーい!


「えッ?・・・」

「お前だよ~お前に言ってんの」

「あたいかい?」

「他に誰がいるってんだよ」

「あんた、鳥かい?どう見ても猫にしか見えないけど、、、」

「猫に決まってるだろ」

「ふーん、そうかい。飛ぶ猫なのか、、、それで、何よ?」

「ここはどこだ?風に流されちまって、狐国は一年ぶりでよ、何だかさっぱりわからねぇ」

「ここは外れ(はずれ)宿だよ。二、三年前に出来た町らしいよ」

「ふーん、どうりで知らねえ筈だ」

「だけど前も飛んでいたろ?」

「そうだっけ?」

「しらばっくれてるよッ!先(せん)の宿であたいは確かに見たよ」

「物覚えは良いなー、そっか、、、で、この店は何て言うのさ」

「ここは『海流楼かいるろう』って言うのさ」

「ふーん、違う意味で流れ着いたのかな?」

「何言ってるの?」

「こっちのことさ」

「それはいいけど、飛んでいるのも疲れるだろ?少し休んだらよ。お茶くらい出してやるよ」

「お、悪いな~そんじゃ少し休んで行くか」

夜矢は飛んでいる猫に興味をそそられたのだろうか、した事のない親切をする。

「お茶、持って来るから待ってて」

「すまねえなあ~姐さんは部屋持ちかい?」

「まあね。客はいないから、寛いでてよ」

「そんじゃ遠慮なく横にさせてもらうぜ」

「そうしなよ」

ノン吉は横になると寝てしまった。

いつもなら有り得ない事だが、何故か心地好く寝てしまう。起きると布団が掛けてある。
そばに疲れた顏をした夜矢が寝ている、魘(うな)されているようだ。

「うッ...うぅん・・・ぃゃぁ、

イヤぁだあーーッ、、、

おいッ、しっかりしろ!大丈夫か!」

「えっ?、、、あらいやだ!あたい寝てたの?男の前で寝たことなんてないのに、、、」

「まっいいじゃんか。姐さんのお陰で楽になったぜ、ありがとよ」

「いいよ、別に何もしてないしさ」

「そうはいくかよ。商売の邪魔したろ、これで足りるか?」

「何がよ?」

「銭だよ、泊まりの相場は幾らだ?」

「・・・・」

「ほら、これ位で良いかな?俺、ここんとこさっぱり知らねえからよ」

「いいよ、いらないよ、何もしてないんだもの」

「まっ、添い寝代だよ。じゃあな、おーっといけねえや、名前はよ?」

「あたいはツバメだよ」

「違うよ、本当の名前」

「夜矢」

「ふーーん、じゃあな~!」

「ちょ、ちょいとッ、ちょいとったらぁー!

ノン吉は夜矢が止める間もなく、窓を開け夜空に飛んで行ってしまった。手元には沢山の団栗餞(どんぐりせん)
夜矢自身、少し不思議に感じる、客に本名を言うなんて一度もなかった。

「あたい、熱に魘されたのかしら、、、」

ノン吉は酔いが冷めていたとはいえ、やはり残っていたのだろう。フラフラして帰って桃吉を心配させた。

「兄貴、兄貴ってばッ!

ふわぁ~~あ!よく寝たあー」

「寝たなんてもんじゃないですよ、夜中にふらふらして帰って来たら
バタンキューですもん。

俺が声かけてもグースカピースカで心配しましたよ!
それでお二方はお元気でしたか?」

「ああ、元気だったぜ。相変わらずよ」

「ふぅーん、、、何か疚(やま)しいことあるでしょ

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「何でよ?」

「だって、体中からいい匂いがしてる。

あーーーッ!

お蜜様とホニャラララしたんでしょ?
だからあーんなに遅くなったんだ、

違いない!

『ねえ、ノン吉。ちょいとぉ〜もっとお寄りよ~』

『そうかい、お蜜』

とか何とか言っちゃって、

キャーーッ、不謹慎!エロ猫!

許せないッ!チキショーーっ




馬鹿


桃吉は思いっ切りの猫パンチをくらった。


バッ、チーーーン!


「馬鹿たれ、そんな事をしたら五黄の父ちゃんに勘当されるわ」

「ふぅーん、本当かな?・・・」

「全くよ、他はいたってボケ茄子の癖にそっちだけは聡いよ」


フンだ!


「しょうがねえなあ」

ノン吉は昨夜のことを話そうとしたが止めた。どうせ内緒にした処で知れること、桃吉をやきもきさせるのも一興かなと考える、今にこいつと恋話の一つもできるのかなナンテ思ったり。

「ありゃ?忘れちまった!歳かなあ~」

「歳には違いないです」

「又、猫パンチ貰いたいの?」


ニ゛ャだぁーっ!


相変わらずの二人だった。
ノン吉と桃吉はこの頃、別行動が多い。それは五黄の発案で、王達が頻繁に交流をすることにしたからだ。

王族達はそうそう自国から離れる訳はいかない、五黄は別だが充てにはならない。
そこで羽のある二人にお鉢が廻って来た。

二人は其れぞれの担当を決めて廻っているのだが、桃吉が何カ所も廻るのは到底無理なので今の処は狸国だけになっている。後は全てノン吉だけなのだから大変である。

そして中日(なかび)に猫国に戻り、五黄と藤平に報告をする。屋敷の中庭に相変わらずテントを張ってあるので、其処に帰って来ている。

ノン吉は『ボーっ』としている。
桃吉は何かあると言い、付きまとって離れない。五月蝿い目を逃れ、鈴音川の辺(ほと)りにいた。



つづく

夜矢 3 海流楼(かいるろう)

前回

酔いに任せて飛んだとて風は夜矢の元へと運んでいく、いつもと様子の違うノン吉を怪しむ桃吉。

理由を言いたいが言ってしまうと消えそうな、そんな気がするノン吉は鈴音川の辺りにいた。


はじまり、はじまり


「ノン」

「ぅぅ...」

「ノぉン」

「あっ?父ちゃん!ごめんよ、気付かなかった」

「桃吉が心配しているぞ」

「だって、あいつのそばにいると勘ぐって
五月蝿くて五月蝿くてよ~困った野郎だよー」

「ふふ、まっ遠からずではないように思うがな、お前のこんな様子は久しぶりだ」

「うん・・・金輪際と思っていたのによ、、、俺は駄目な猫だわ」

「今年で二十年目か、、、それに昨日は紅葉の十日だったもんな、それで又会っちまったんだな」

「ああ、そうなんだよ、でも今回はお蜜のとこで酒をたらふく呑んで、
ヘベレケぇ~』の
フラフラぁ~』になってさ、運任せ風任せにしてみたんだけどさ・・・」

「変えられねえよ」

「どうもそうみたいだ」

「お前が何をしても会うようになっている」

「俺・・・またか」

「それが宿命というものかな」

「俺はもうイヤだよっ、少しも慣れねえ」

「あの娘は慣れてほしいとは思ってないさ。だから、こうして会えるよう願い 【魂納め】をするのだものな」

なッ・・・何だって言うんだ!
ちきしょーッ!

「名前はよ」

「今度は『夜矢』だって」

「粋な名前だな、にしても何度目だ?」

「五度目にはなるなぁ、、、、、」

「これ以上、後引く女もいねえな」

「あいつ以外は考えられねえもん」

「そんで、どこにいるのよ?」

「また中(なか)にいるんだ」

「また?全く何の因果かねえ、、、仕様がねえ、俺が引いて来てやるか」

「父ちゃん、すまない・・・」

「ふふ、祝言挙げてやんな」

「うん!俺もそのつもりさ」

「よし、待ってな!」

五黄はさっそく外れ宿に来た、猫宿の賑わいにはほど遠いがそこそこ賑わっている。

五黄は『夜矢』のいる【海流楼】に向かった。いつもならあっちに『フラフラぁ~、こっちにフラフラぁ~』としたい処だが今回はそうはいかない、ノン吉の気持ちを知っているだけに急いだ。

「邪魔するよ」

あんらーーッ、大っきい旦那ッ!!」

「見た事ないわーぁ」

女達の喧(かまびす)しい声につられ婆狐が顔を出す。

「お出でなんし、ありゃ?まぁああーっ、五黄様でありんすよ~!
あれあれこんな薄汚い所へ」

「うん、その声は?、、、ああ鴬(うぐいす)のお鈴だ、何だよ、どうした?」

「鴬も婆になっちまって、恥ずかしいでありんすよ・・・」

「なぁに、昔の侭(まま)さ。だけど宿替えしたの?」

「まさかぁ~もうそんな歳じゃござせんよ。ここ、わっちの店なんで」

「へーー出世したねえ」

「それもこれも、五黄様がご贔屓下されたお陰でありんす、たんまり木の皮銭を頂戴しやしたもの」

「それで買ったのかい?」

「はい、わっちは郭以外は知りやしませんし、商いのいろはを今更覚えられないし。でも、郭なら何とかわかるでありんす」

「そうかい、知ってたらもっと早くに来たのによ」

「知らせはしたでありんす、梨の礫(つぶて)で.....」

「そうだったのか、俺もいろいろ野暮用が、、、」

「もういいでありんすよ、許すざますよ。それより、さっ、上がって、上がって」

お鈴がさっそく熱燗を用意する。

「旦那はお熱いのがお好き」

「ふふ、覚えていてくれたか」

「当たり前で、指を差し上げたいと心底想ったお方でありんす、受け取って欲しかった」

「ばか、そんなことできるかよ、ゾッコンなのはわかっていたよ」

「もぉう~旦那には手練手管は通じない、駆け引きなしのわっちの間夫(まぶ)でありんす・・・」

「お鈴は可愛い女さ」

「あぁ、まるであの頃のようで幸せでありんす、今日は帰っちゃ嫌ざます」

「ああ、そのつもりさ」

「嬉しい!お相手は一番の娘にしたいのだけど、ちょいと無理でおすから、二番のメジロにするざます」

「ばか、何を言ってるんだよ」

立とうとしたお鈴の袖を持つ。

「だって...わっちはもう婆でおすもの」

「お鈴、お前が望むなら若く戻そうよ」

「旦那ぁ、、、嬉しい...でも、いいざます」

「何故さ」

「わっちはいろんなものを見て来ました。そしてどうやら【魂納め】も望める歳に・・・これで終いにしとおす」

「寂しいなあ」

「いいえ、旦那、わっちは果報者、余生に郭の女将にもなれた、心底惚れた間夫にも会えた。これ以上女に求めるものはないざます」

「お前は昔から欲のない女だった」

「いいえ~欲深です、旦那を一時(いっとき)でも独り占めしたでありんす」

「ふふ、今日はゆるりと話そうぜ」

「ああ嬉しい!なら今日は貸し切りにするざます」

「そうしな、娘達も休ませておやり」

「はい、ありがとうございます」

広間に通されると着飾った娘達?が出迎える。

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「何だよ~おしろいなんか塗ってよ、今日は休めってお鈴に言ったよ」

「でもぉ~あたい達、おささのお相手位はしたくてねぇ」

「ねえ~」

「お鈴、いいよ、二人で過ごそうよ」

「まあ!女将さん、いいなあ~」

「すごいだろ」

羨ましいわあー!


「あたい、妬けちゃうッ


あちきも!


「旦那、おささは飲んでやって下さいな、娘達が喜びますから」

「そうか、そんじゃ頂くよ」

五黄と楽しく過ごした時間は生涯忘られぬ思い出となったであろう。
手伝いの娘が血相を変えてやって来た。



つづく


付記

え〜〜郭の女達が着物を着ているので不思議に感じておられる思いますが、脱がせることがいいらしいです。

郭ならではでございます、粋な別世界と云えます。



夜矢 4 理由

前回

五黄はノン吉の気持ちを察し、夜矢を身請けしようと海流楼に向かった。
店の女将は昔馴染みの鶯のお鈴、話が弾み昔に戻ったよう。
そこに慌てた娘が入ってくる。


はじまり、はじまり

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女将さんッ!女将さんっ!


「あれ、何ですよ!旦那の前でッ」

「すみませんッ、でも、でもッ、、、」

「旦那ッ、申し訳ありません、ちょいと、、、」

「ああ、行ってお出で」

賑やかだった娘達が一応に暗くなる。何か知っているのだろうか・・・

「お鈴は何処に行ったの?」

「ツバメのとこだと思う」

「ツバメって、もしかして夜矢のことかい?」

「あら、旦那は何で知っているの?」

「本当は夜矢に会いに来たんだよ、通りで居ない筈だ」

「先(せん)からの馴染みなの?」

「まあ、そんなとこかな」

「旦那、ここの名前知ってる?」

「海流(かいる)楼だろ」

「そんな名前で誰も呼んじゃいないよ。ここは櫛(くし)の毛楼よ」

「何だよ、それ」

「ほら、櫛に付いている毛って捨てるしかないでしょ?」

「あたい達は値打ちのない、病い持ちの女郎だから.....」

「・・・・」

「女将さんはあちき達のような捨てられた病い持ちを引き取ってくれてるの」

「だけど商売もしているんだろ?」

「ふふ、『籠(こも)っていると病いも治らないよ!化粧して気合いを入れて店にお立ち』って。あたい達の客は先の馴染みか、もの好きな奴だけで閑古鳥(かんこどり)も宿替えしたくらいだよ」

「そうだったのか」

「夜矢は先の店で酷い扱いを受けて、ここに来たのもちょいと前だけど、もういけなかったよ、、、」

「そんなに悪いのか?」

「悪いも何も!あんなになるまで医者にも診せずに、こき使っておきながら、終いには『死んだら浦川に簀(す)巻きにして捨てよう』って、、、

女将さんがそれを知って急いで引き取りに行ったんです。見舞い銭を渡す処か、しっかり銭を取られたってッ」

「何だとッ!ムム、、、だから俺は中を潰したいんだ」

「旦那は面白いお方ですね」

「お前達みたいに悲しい思いを、、、」

「イヤですよ、ねえ~みんな~」

「本当に~」

「中が無くなったら、男共が狂いますよ」

「違いないな、そう云う俺もご同類だ」

「いくら王様でもそんなヤボは言いっこなしですよ」

「知っているのかい?」

「旦那と女将さんの仲を知らぬ者なし、知らなきゃもぐりですよ」

「お前達には敵わねえな~あいつにも言ったんだが病いを治してやろうか?」

「またまた~ヤボな旦那」

「あたい達は理由あってここに来たんだ。病いも理由あっての事、ちっとも苦じゃないよ。だって、もう少しで魂納めに行けるのだもの」

「どんなに苦しくてもあたいら我慢したもの」

「それでいいのか?」

「あたいは今度、苦労なしの狐がいいな~」

「あたいは威勢のいい狸!」

「あちきはもういいわ~」

「お前はあの世に行くのかい?」

「あちきはそれがいいなあ~」

「ふふ、お前達はお鈴に似て欲なしだよ」

「これだもの、女将さんが惚れる訳だねえー」

「あたいも惚れた!」

「あちきも~」

「ふふ、ありがとよ。それじゃ夜矢の願いも聞かないとな」

「夜矢はここに来てから、どんなに具合悪くても夜になると化粧をして二階の窓を開けるの」

「『誰か待っているの?』って、訊いたわ」

「そしたら?」

「『鳥を待っているの』って。『あたいは飛べないツバメだけど、鳥は違うの』って」

「鳥ねえ...その鳥の願いを聞いてここに来たのさ」

「そうなの?何て鳥?」

「ノン吉って云う風来坊さ」

えっ?ノン吉?

ノン吉様ッ!?

「夜矢が待っている筈だわッ」

「あんな男嫌いも居ないって云うツバメちゃんだって、ノン吉様ならわかるわあ」

「そんなに嫌いなのかよ?」

「嫌いも何も、【剣呑(けんのん)ツバメ】のあだ名持ち、客あしらいなんてもんじゃないもの。だから余計に先で苛められて、こき使われて、、、」

「器量良しも嬉しかないよ」

「それでも店一の売れっ子でさ~だから朋輩にまで嫌われて、痣(あざ)だらけだったねぇ...」

「・・・・」

「それが昨日は嬉しそうにしてたわ~」

「そうか!まっ、こうしちゃいられねえな、連れてくるわ」

お鈴が青ざめた顔を出す。

「旦那」

「あっ、女将さん!」

「ツバメは?」

「旦那、申し訳ありません。あちき、ツバメのそばに居てやらなきゃ・・・」

「いいさ、俺は行くよ。話しは娘達に聞いてな」

「旦那ぁ、、、あいすみませんッすみませんッ・・・」

「すぐ戻るさ」

その場から掻き消えた。

「あれッ!?」

「女将さんッ!だッ、旦那さんがッ!

「本当に王様なんだーッ!?

「どうだい?並じゃないだろ」

「たッ、・・・・確かに」

「さっ、ツバメの容態がいけないんだ!お前達もそばに居てお上げ」

「女将さん、旦那様の話を、、、」

「聞きながらにするよ、さっ、行こう!」

「はい!」

五黄はさっそくノン吉に会いに行く。

「今帰ったよ」

「父ちゃん」

「ノン、直ぐにも行こう!」

えっ?どうしたの?夜矢になんかあったの?ねえ、教えてよ」

「俺は会っちゃいねえ、とにかく行こう!」

「うん」

「ちょっとちょっとぉー!兄貴~夜矢って何よ?
なに?
ナニ?
ねえ~

なぁ~~にぃい~??

「桃は留守番してな」


ブーーーー


二人はテントから消えた。



つづく

夜矢 5  望むままに

前回

五黄はふと見る、お鈴や娘達のキラキラした魂が誇らしげだ。嬉しい酒は益々、旨くなる。
夜矢の火急を知り、ノン吉を連れて行く。長男坊が子猫のように慌て焦る姿に、胸が熱くなる。


はじまり、はじまり


急いで夜矢の部屋に向かう。
襖を開けると、女郎達が夜矢の寝ている布団を取り囲み、枕元ではお鈴が泣いている。

「お鈴」

「だ、旦那様、、、」

「夜矢...」

ノン吉が呟(つぶや)く。

「女将さん、俺ノン吉です。お世話になりました」

「旦那、、、ノン吉様がどうして?・・・」

「お鈴、お前達もこっちにお出で」

「夜矢、俺だよ」

夜矢は一夜でここまでと云う程、やつれていた。ノン吉の声で薄目を開けた。

「どうして来たの?」

「来たら駄目かい?」

「もう会えないと思っていたから・・・」

「お前と所帯を持ちたくてよッ、迎えに来たんだよ!」

「ふふ、笑えるよ...死ぬ前にこんな可笑しい話しを聞けるなんて思わなかったよ...」

夜矢は薄く笑いながら咳き込んだ。

ごほんッ、ごほんッ

本気だよ!いつだって本気さ」

「昨日会った間なしなのにかい、、、」

「いいじゃないか、惚れちまったんだ!」

「ふふ、こんな安女郎をかえ、、ゴホッゴホッ・・・」

夜矢は目も開けていられないのだろう、苦しそうにしている。


父ちゃん!頼むよッ!


五黄は直ぐにそばに来た。

「どうしたい?」

「こいつを死なせねえでくれッ、俺はイヤだッ!


よしッ!


夜矢はその声を聞き、目をはっきりと開けた。

「旦那、、、止しにして下さい」

「何故さ?」

「あたいはもういいの、もういいの、、、会えたもの・・・こうして会えたもの...」

「こいつと暮らしたくないのか?」

「あたい、、、あたいはずっと待っていた・・・いつも、い..つも.....」

意識が無くなりそうになる。


父ちゃん!やってくれよッ!


「わかった!」

「駄目...だめ...」

「ノン、、、救っても夜矢に生きる気力がなきゃ無理だよ」

「そんなあ・・・」

「わかっているだろ?」

「夜矢、俺と暮らそう!俺のそばにいてくれッ!

「旦那、、、」

「何だい?何でも言ってみなッ」

「あたい、、、【常世花(とこよばな)】の花畑に行ってみたい・・・」

「ノン、夜矢の望みの侭にしてやろう」

「父ちゃん、せめてこいつが朝まで保つようにしてくれ」

「ああ、いいともさ」

「夜矢、行こう」

「あんた・・・」

ノン吉は布団ごと抱え夜空に飛んで行く。

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五黄は深い溜め息をつき、ノン吉を見送った。隣の部屋に行き、様子を伺っていたお鈴達の前に座る。

「行ったよ」

「死んだのッ?」

「いや違う【常世花】の花畑に行った」

「・・・・」

「夜矢の望みだ」

「旦那様、あちきに話しておくんなさい。ノン吉様と夜矢は何かござんすの?」

「んン、、、古い話しさ。今の名は『夜矢』...その前は荒夜、泪夜、流夜、待夜だった・・・」

「なんかどれも悲しい名前...」

「先の店だけじゃなかったの?」

「今生の名前じゃないさ」


えっ?


「あいつはな、何度も生まれ変わっているんだ。今度で五度目さ」

「そんなに!?」

「ノンとの出会いがどんなだったかは忘れたが、ノンは初手から惹かれたんだろ」

「夜矢は美人だもの」

「そん時は『おさん』と言ったよ。小さな一膳飯屋の娘だった」

「郭じゃなかったの?」

「おぼこさ。そんなあいつらは相惚れになると所帯を持った。おさんが十七、ノンが九百歳頃だったかな」

「はあ~ッ?」

「あいつもまだまだ若かった」

「へぇえーー?」

「ひゃーーーッ」

「それで若いんですか?」

「うっほん、まあな」

「それで?それからどうしたんです?」

「あいつは仕事も忙しかった、茂吉と二人、何とか三役所をものにしようと必死だった。世界中を駆け巡っては地図を作製し、国民の数を調べ、人国にも行き、稀覯(きこう)本の果てまで収集してくる。

茂吉は離れるわけにもいかなかったからな。あそこの資料は全てノンが収集したり、調べてこさえたものさ」

「あたい、馴染みに聞いた事ある!恵み子様の学校にはもの凄い図書館があって何千万、何十億冊って云うご本があるって」

「それをノン吉様がお一人でーッ?」

「そうだよ。だからわかるだろ?どれだけ忙しかったか」

「はい」

「だが、理解できない者がいた」

「夜矢ですか?」

「ああ。あいつが少しは世間を知っていれば、ノンの仕事を理解できていれば違っただろう」

「十七でしょ?、、、若いもの、、、」

「確かにそうだな。寂しさから、ノンが帰って来ないのは郭の女に夢中なんだと邪推した」

「そんなあ、、、」

「誰か吹き込んだのかもな」


何てまあッ


「罪作りな奴は何処にでもいるもんだ!」

「それで、それで?」

「おさんは一人【身魂抜きの宮(みたまぬきのみや)】に向かった」

え゛・・・・

「ノンが久しぶりに帰って来ると恋女房が居ない。おさんを探して世界中を探したらしい。まさか身魂抜きをしているとは思いも寄らなかったのよ。

茂吉がいつものように身魂抜きの宮からの帳面を見せられ、おさんの名を見て驚いた。慌て騒ごうが既に身魂抜きをした後だった。

茂吉から連絡を受けたノンは急いだが結局、【魂納め(たまおさめ)】をするおさんに会う事すら出来なかった」

「・・・・」

「早まった事をッ」

「後で茂吉から聞かされた。役人に『願いは?』と訊かれると『唯一つ、女郎になって亭主と会いたい』と言ったそうだよ。不思議な願いに戸惑ったそうだ。

普通は銭持ちになりたい!苦労はしたくない!と願うのにな、、、【この世鏡】にノン吉との関係も映る、女房というのもわかる。

それなのにどうして?と思ったそうだが、何も言わずに身魂抜きをするのが掟、だからそのまま実行されたのよ」




つづく

夜矢 6  常世花

前回

夜空に遠く消えていく、哀しい二人を見送る五黄だった。


はじまり、はじまり


なんとまあッ

「あいつの嘆きは深かった・・・そこまで恋女房を追い詰めたとね、、、」

「でも、夜矢の誤解なのに?」

「少しは本当だったらしい。何せ相手は十七だ、最初は可愛いが、、、まっ、それだけってな」


酷いノン吉様ッ!


「それが男よ、わかっていても中に通っちまう、、、」

「ノン吉様を責められないよ。だってあたいら、それでおまんま食べているんだもの」

「・・・」

「それから、ずっとこんな事を繰り返している」

「夜矢の一念にそら恐ろしさを感じるわ」

「あたいは、わかる気もするなぁ」

「あちきも少し・・・そんなに惚れてみたいわ」

「男と女の仲は八幡の藪知らずだな」

「そうなんだねえ」

「今の夜矢は幸せなんだ」

「そう言うこった」

五黄は酒を呑み唄う。


「常世花、相惚れ二人、待ち合わせ

♪生まれぇ〜変わってぇも〜何度でぇ〜も♪


挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
tokoyobana.jpg


「夜矢、ほら常世花だよ」

「ゎぁ~綺麗ぃ・・・」

ノン吉は常世花の薫りに想う『何度こいつをここに連れて来ればいいのか...』小高い丘の上に降りると花畑が見渡せる。

「夜矢、少し起き上がれるか?ほら見てごらん」

ノン吉が後から支え、夜矢は何とか起き上がる。

「ねぇ、綺麗ねぇ...」

「ああ、たまんなくな」

「この薫り、、、ぁぁ...何度かいでも良い薫り・・・」

「思い出したのかよ?」

「ふふ、この匂いを嗅ぐとね...ゴホ、ゴホゴホッ」

「もう寝るか?」

「うぅん、、、このまま逝ったっていいもの」

「っッ、そんな事言うなよッ!今からでも遅くないから、父ちゃんに何とかしてもらおう!」

「イヤだよ」

「もう苦しませないでくれよ・・・なあ、頼むよッ俺だって苦しいんだ、、、もう、もう五度目だぜ」

「まだそんなもんかえ?」

「夜矢・・・」

「あぁ~、良ーぃ薫り。風がそよぐと尚更香るわぁ~ゴホンッゴホンッ」

「馬鹿!そんな口開けてよッ、咽(む)せるだろが」

「いいじゃない、好きな男とこうして常世花を見ていられるんだもの。楽しまなきゃ」

「いい気なもんだぜ」

「ねえ、、、そんなにイヤなの?」

「当たり前だろ、いい訳ないや」

「めぃゎく?」

「そんなんじゃねえよ、わかってるくせによ!終いまで言わせたいんですかっての」

「ふふ、言わせたいねぇ」

バカヤローッ!俺は行くぞッ」

「ふふ、いいともさ。あたいはこの花の中で死ねて本望だよ」

「全く、口の減らねえ女だよッ!わかったよ、、、」

「初手から素直になんなよ」

「けっ!生まれ変わる度に性悪になりやがるッ」

「お生憎様ぁ」

「だから俺は、堪んないんだよ。おめえはいつだって女郎になってやがる。おまけに因(よ)りにも因ってだッ、俺がお前と会う時は決まって死ぬ前さ。

それまで他の野郎共に散々に抱かれてよ、亭主の俺はお預けのまんまこれだ!あんまりだってぇのッ」

「ふん、情けないねぇ、そんな事を思っていたのかえ?あーぁがっかりした。こんな馬鹿野郎だったなんて!あーーッ、情けない」

「なんだよ」

「それが天翔猫のノン吉様の言うことかね?呆れてものが言えないよ。あたいはそうなるように望んで魂納めしているんだ。

あんたがちったぁ、あたいの苦しみを知るようにね!あたいがおさんの時は邪険にしてたのにッ」

「そんなことないだろう?あん時は忙しかったし・・・」

「忙しい合間をぬって郭に通ってたものねッ?今もお変わりないようでッ」

「そんな事ねえよッ!行ってねぇよッ」

「まだ言うの?」

「んッ、いや、、、全然じゃない・・・けど、そうしないとお前を探せないし、、、」

「ゴホンッゴホンッ・・・ゴホゴホ」

「おいッ!もう横になれよ、なっ、頼むから!」

「ゴホッ・・・ゴホゴホ」

「夜矢、俺...お前に苦労かけたよ。すまない、、、許してくれッ!」

「あんたって...あたいは...あたいは、、、」

「何だよ?何か言いかけで止めんなよッ」

「ふふ。なんか、、、なんか、やーっとわかったわ」

「わかったって、何がよ?何よッ?」

「内緒...」

「わかったよ、いいですよッ、どーせ俺には内緒でしょーよ」

「変なの、いつもか?ふふ」

「お前・・・」

「ぅぅうーッそんなに睨(にら)まれると息が、息が、、、」

「おいッ、おい!しっかりしろッ!

夜矢ぁあーッ

死ぬな、死なないでくれーーーッ!!


「まだ生きてるよ」

「このアマぁあーッ!騙しやがったな!金輪際許さねえッ、
ちきしょーッッ!

「ふふ、バーカ。あ~あ、あたいもあんたと少しは対等になれたわ」

「腕は上がったよ」

「ふふ、いい気分だわ~もう心晴れ晴れ-!」

「全くよ、俺もお前とこんな風に話せるなんて思わなかったよ」

「そぅ?」

「ああ。所帯持ったばかりの時は、、、悪いけどお前は子供過ぎて...」

「あんたも新しいおもちゃを欲しかっただけだったのよ」

「そうなのかな?」

「そうよ。まっ、お互い若かったのかもねッ」

「そうなのかな?だけど俺、、、あん時九百歳にはなってたぜ」

「数は今だっていってるわよ」

「違いない」

「そろそろ夜が明けるわ」

「本当だ」

地平線から太陽が昇り、花畑を橙色に染めていく。

「夜矢、お前まで染まってるよ」

「・・・・」

「夜矢、もう止しにしようよ。笑えないよ」

「うふふ、またね・・・・・」

「おいッ『またね』って?おいッ起きろよッ!起きろって言ってんだよッ!」

「・・・・・・・・・・」

「おぃッ・・・逝っちまうのか?なぁ、、夜矢、、、なあ...ッ
なぁああーーーーーッ!!


夜矢の目は二度と開かなかった。
ノン吉はいつまでも、いつまでも夜矢を抱いていた。


つづく

夜矢 7  理想の女

前回


こいつこんな女だったけ?会う度に心をガッチリ掴まれるノン吉。余計に別れが辛くなり、きつく抱きしめる。

抱きしめられるほど、夜矢はこれだからやめられないと思う、そして満足をしながら逝く。二人の物語はいつまで続くのやら?



はじまり、はじまり



太陽が沈む頃ノン吉は顏を上げた。
夜矢を布団に寝かせ、櫛で毛並みを整える。常世花の赤花を揉み、その汁を口に塗ってやる。

「紅くらい差して逝きな...」

ノン吉は外れ宿に戻った、五黄はお鈴達と寝穢(いぎたな)く眠り呆けている。

「ったくどうだろねー長男が女房と今生の別れをしているっつぅーに、まあこの幸せそうな顏!

ノン吉は銚子の中に残っていた燗冷ましをちびちびと呑みだす。

「ふぁあ~~~あッ、寝ちまったあー!あれ?ノン、帰ったのかよ」

「はいはい、とっくにね。父ちゃんが気持ちよさそ~に寝ている処、
お邪魔様!」

「あれ怒ってるの?」

「別に~、唯なんか阿呆らしくて」

「ふふ、いいじゃないの。ノンもこうして成長して、、、父ちゃん真に嬉しいわ」

「・・・・」

「帰ろうよ」

「ああ、そうだな」

五黄は屋敷に直接戻らず、鈴音川の辺りに現れた。気恥ずかしさもあるのか、二人は黙って歩く。

「なあ、父ちゃん」

「なんだよ」

「俺も沁みじみ因果に生まれついたよ」

「何を言うかと思えば、、、どうしてよ?」

「だってよ、終いにしたくても出来ねえもの」

「そればっかは俺に言われてもな~」

「あいつは笑ってたよ『またね』って」

「またか?懲りねえみたいだなぁ」

「懲りる処か『楽しい』とよ」

「ふふ。さすがのお前も夜矢には敵わねえな」

「この頃、ますます性悪になってるよ」

「生まれ変わる度にお前の理想になっていくものな」

「へへ、イヤな女だよ」

「業の深さは男の比じゃないな」

「茂吉も『兄さんが哀れだ』って。あいつの事、魂沈めしてくれればいいのによー」

「ふふ、今度あったら言付けようかな」

「父ちゃん・・・しないよね?」

「どうかな?」

「父ちゃんのいけず!」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります

suzunegawa.jpg


兄貴ぃいーーーッ!ひぃはッ、ひぃはッ、はぁはぁ」


「そんなに駈けて来なくていいのによ」

「だッ、だってぇッ~、藤平様が夜矢さんとの祝言の日取りを決めたいってッ」

あ゛っ、言いっ放しだった!」

ノン吉は五黄が出掛けている間に、藤平に祝言をしたいと言っていたのだ。桃吉は藤平から聞いて、すっかり知っているようだ。

「あいつのことだ、高砂の練習してるぞ」

「あぁ、あれですか?酷い声ですねぇー藤平様は。だけど何も言わずに出掛ける兄貴よりはずっといい」


フン!


「やっぱり・・・・」

「あーぁぁ・・・」


             ♢


この話しには後日談がある、茂吉のいる校長室に夜(よ)し吉が訪ねた。

「父様先生、お呼びですか?」

「夜し吉、明日に今生名【夜矢】が参りますので、あたしが致します」

「はい、父様先生」

「ふふ、どんな顏で来てくれることでしょうね」

「楽しみですね」

翌日に魂納めの宮に夜矢が来た。


今生名、夜矢ぁあー入れーーー


「はい」

黒檀の大きなドアが静かに開き、夜矢は慣れた様子で部屋の真ん中まで進むと椅子に座る。

「初めまして、茂吉です」

「あのぉ...あの人の?・・・」

「はい、弟の茂吉です。本来ならあなたはあたしの姉様になりますね」

「とんでもないですッ、畏れ多いことです」

「掛け違ってお会いする事もなく残念でした、、、お詫び致します」

「そんな、もったいない!」

「ふふ、あたしがあなたに会う事をどれ程楽しみにしていたか」

「えっ?あたいに?」

「ええ、そうですよ。祝言の日に『どうしてあたしはこんなに忙しくて、行けないのだろう』とそれはそれは残念に思っていました」

「そうだったのですか?ありがたい事です」

「それから三年あまり、あたしはあなたが身魂抜きをした事を知りました。それもあたしには不思議な事でした。あたしが居ながら、なぜ気が付かなかったのか...

我ながら有り得ないと驚き慌てました。兄さんに酷く怒られ殴られ、桐熊(きりくま)達にも殴られて、、、回復をするのに一月もかかる程でしたよ」

まぁッ!!なんて申し訳ありませんッ、あたいの身の不徳から皆様に大変なご迷惑をッ、、、申し訳ありません!」

「ふふ、昔の話しです。あたしが何故こんな話しをするのか、今のあなたなら理解できますね?」

「はい。やっと今生を終え、わかりました」

「あたしもそのキラキラしたあなたの魂を見て、まだまだ修業が足らぬと戒(いまし)めになりました」

「あたいは愚かでした。



つづく








なんか、近頃のFC2はどうしたのですかね?管理画面に入るのも戻るのにも一々、パスワードが必要になっている。訪問して戻るのにも大変、時間がかかる。終いにはサーバーが開かないと来る。
これって意地悪にしか思えない。

コメントもたくさん書いたのに消されたり・・・コピーをし損なうと悲惨な目に遭う。
どうすればいいのか?泣きたくなります。
訪問したいのに訪問先のサーバが開かない、自分のブログもそうなったり・・・・

ストレスがバリバリにかかります。
皆様の所へ訪問が出来ない!どうにかして欲しい。
つい愚痴りました。

ぴゆう

夜矢 8  魂納めの宮

前回

夜矢は魂納めの宮で初めて茂吉に会う。それがどういうことなのか、茂吉が教えてくれるだろう。



はじまり、はじまり



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あたいは本当は茂吉様も恨んでました。兄様の祝言なのに仕事が忙しいを理由にして、態と来てくれないんだと捻くれた気持ちでいました。

今思えば、茂吉様は尊いお方...だからこそ、会う事が許されなかったのだったと思います。姉弟の契りを結ぶには相応しくなかったんだと思います」

「どうしてです?」

「はい、あたいは歳だけでなく何もかも若かった。頑是無い童のようでした・・・ノン吉様と一緒になれた時、世界中の女の憧れであるあの人があたいを嫁にしてくれた。

その事だけでも夢のようで、あたいにも羽があるように感じたものです。だけど、あの人がどれ程大変な仕事をしているかを全く理解していませんでした。

『一緒に芝居を見に行ってくれない!』『そばにも居てくれない!』と、不満ばかりでした。たまに帰って来てもあたいは愚痴ばかり、、、居ずらい家にしたのはあたいなんです」

「餅も焼き過ぎは炭になりますものね」

「ええ、あたいは勝手に身を焦がし、炭になって滅ぼしたのです。悋気(りんき)で狂いながら、お役人様に『女郎になって亭主に会いたい!』と望みました」

「・・・」

「あたいは直ぐに生まれ変わり、十七で女郎になってました」

「茂吉父様、どうしてこの者は同じ飯屋の娘にならなかったのですか?定法では有り得ません」

夜し吉が不思議そうに尋ねる。

「それはね、夜矢が望んだからですよ」

「でも普通、身魂(みたま)抜きをした者は、生まれ変わっても何もかも同じと決まっています。己で気が付かぬ限りは繰り返すもの」

「そうですね、その通りです。ですが例外もあるようです」

「例外??」

「それは兄様の連れ合いになったからです」

「どういう事です?」

「兄様は【天授子てんじゅし】その妻になると云う事はとても大変な事なのでしょう。夜矢は所帯を持ってから、己の事ばかりに頭がいって他を顧みる事がなかった。

そのような者は兄様の妻には相応しくなかったのです。魂も童のまま、磨かれもせずにツルリとしている。兄様はそんな赤子のような魂のあなたを愛したのでしょう、、、それもわかる事です。

ですが、兄様がたまに会う程度の恋人なら良かったのでしょうが、妻とした。妻となれば、そんな魂では許されなかったのですよ。あなたは女郎という立場の苦しさ、辛さも知らずにいた。

事もあろうに女郎になって兄様に復讐したいと願った。身魂抜きの定法通りにならなかったのは、そう云う事です。『そんなにしたければしてみるがいい』とね」

「あたいは一度目の時『あたいはこんなとこに来る女じゃない!』と、記憶もないのにいつも苛々して、誰彼かまわず八つ当たりをしていました。二十歳の声を聞くと病いになり、最後の日にあの人に会う、、、

あの人が泣いて謝っても『ざまあみろ』と言って死にました。それを懲りずに何度も、何度も...この度で五度目になりました。死に際に常世花の薫りで、何もかもが合点致しました。

あの人が許してくれと泣く声に『はッ』としました。あたいこそ、謝るべきだ!って、、、あたいを選んでくれたばっかりに、魂磨(たまみが)きに付き合わせている・・・・」

「わかってくれたようですね、おめでとう。お陰でピカピカしてますよ。あなたは丁度今年で百年になります」

「はい」

「ですがこの百年は五百年生きたに相応しい。今のあなたにあるのは、全ての者に対しての【感謝】【寛容】【慈愛】です。やっとものに出来たのですね」

「いいえ茂吉様、意地悪い処はそのままですよ。あの人には『またね』って言っときました」

「ふふ、兄様にも良い薬ですよ。良薬は口に苦しです」

「うふふふ」

「あのぅ・・・申し訳ありませんが、良く理解できません。夜矢は又蘇るのですか?」

「さあ、それは夜矢次第ですよ」

「あたいは、、、あの人に相応しい女になりたいです!でも、それにはまだまだです。何百年懸かってもあの人に相応しい女になりたいだけです。ただ、もうお女郎さんは卒業したい。今度は男になって、生涯を全うしてここに参ります」

「ふふ、三吉の魂もそうして何度も何度も魂納めして、望みを遂げました。あなたもきっといつかそうなります。あたしも楽しみにしています。そして今度こそは弟として契りを結ばさせて頂きます」

「ありがとうございますッ、きっとなってみせます!!

こうして夜矢は、魂納めをしてこの世を去った。今度は何に生まれ変わって来るのだろう?
それは知るのは茂吉と夜し吉だけである。




おわり




これにてノン吉と夜矢の物語は終わります。
いつになるかわかりませんが、
夜矢がノン吉に相応しい連れ合いになれるよう応援をしてやって下さい。
ありがとうございました。

次回はクリスタルの断章のポールからお預かりしたナミとエリカを幸せにするべく考えました物語が始まります。
元は[紅蓮の街]という長編の主人公達です。
きっぱりして、ドロドロして・・うぅ〜とにかくすごい作品です!!
最後が悲しかったので、猫国で幸せにしたいと勝手なことを言いましたら、
快く二人を預けてくれました。
ナミはお波、エリカはお襟として登場をさせる予定です。
・・・幸せになればいいよねぇ〜
始まる前から言い訳をしたりして・・・

引き続き、絶不調でござる。
訪問ができたのに拍手が入らない、
コメが消える!
何故でござるか!
出来てない方々には申し訳ないです・・・
スミマセン。


ぴゆう

時雨のお波 1 おトト


「なぁあ、五斗よぉ~」

「何ですか?」

「お前さ、この頃付き合いがとんと悪いんじゃないの?」

「だって新婚ですよ」

「ニャにが新婚だよ!こぶ付きの上に古年増、その上にもう二年だよ。大概にしなよッ、毛っ!」

「兄ぃー、それ以上言ったら猫パンチをお見舞いしますよ」

「やだねえ~、そんな怖い顔して。俺はお前のことを思うからこその親切心で言ってるのにさぁ〜」

「大きなお世話です!」

「そんな事で好いのかね?あんまり釣った魚に餌を上げていると、母屋を取られる処か、寝首まで掻かれるよ」

「何言ってるんですよッ、そう云う兄ぃはお陽さんのとこに転がり込んだから、元から母屋は無いじゃないですか!それでも、畳のヘリくらいは自分の物になったんですか

「ニャに~?バカ言ってんじゃないよ、あれはお陽が店付きの娘だったし、畳表はつい最近換えたよ」

「ゲッ、相も変わらず兄ぃには皮肉も通じないんだから、、、其れであっしに何が言いたいんですか?」

「だからね、餌なんかやらなくても、気が付きゃ太ってんのよ」

「誰が?」

「嫁だよ、お陽だよ。凄いぞーぉ、餌一つなくてもあれだけデカくなるんだから、ある意味大したもんだよ」

「それで?」

「だからね~、飛び切りのおトトがね~、居・る・の・よウシシ」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
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毛が生えているんですか?


しっ、しぃーーーッ!デカい声出すんじゃないよ、もぉう~野暮天だよ」

「すいません」

「ほほ、素直でないの~、端からこういかなきゃいけませんてぇの」

「はいはい、そんで?」

「だからね、村外れに空き店があったろ?」

「ああ、この前往生した栗吉爺さんの店」

「その娘ってのがね、ひよっこり帰って来たわけよ」

「へぇえーー、爺さんに娘なんて居たんですか?」

「処が居たのよ、とんでもないのが」

「栗吉爺さんって、猫とは思えぬ不細工でしたよ、その娘って言ったら???不憫ですね、、、」

「バカだねえー『鳶(とんび)がカワセミ』産んだのよ」

「鷹(たか)でなくてカワセミ?」

「一々訂正しなくていいの、全く嫌みな男だよ」

「はいはい、どうせ嫌みですよ、それで」

「とにかく滅多にいないよぉ~あれだけのおトトは」

「今、カワセミだって」

「いいの、雰囲気がわかればいいんだから」

「わかりませんけど」

ぶー!まっ、いいや。俺が唐変木の五斗ちゃんを誘おうとしている処は、べっぴん処よ」

「まんまですけど、何かそそられますねえー」

「だろ?だろ?もうそそられちゃってよー、五斗ちゃ~ん」

「なんか良い匂いしていそう」

「してるよ、してるの、もう止めてーって

うひゃーーー、行く行く行きますッ、

連れてってーッ!


「持ちの論でしょ~、今晩俺が板戸に石投げるから、こそっとお出でよ」

「へいへい、もう楽しみ~。それじゃちょいと、お陽さんに髭結(ひげゆ)いをしてもらおうかな~」

「馬鹿だねえ、お前みたいに祝言以外にすかした事のねえ奴がやってご覧よ?鋭いお陽が勘付くに決まってるわ。全く、俺まで足止め喰うわ」

「そしたら、風呂に入りますよ!」

「当然でしょー、そうそう干物臭いの連れてけないよ」

ぶーーわかりましたよ、そんじゃ待ってますよ~」

「あいよ、そんじゃな」

五斗吉は二年前、猛烈なアタックの末にお紺と結婚した(菰傘便り11)五黄も藤平も喜び、今ではお紺お加奈と仲良く三人で暮らしている。
世の吉はいそいそと家に帰る。

「おっ、客は居ねえな?」

「今、やっと終いになったとこだよー、けど昼からも予約で一杯だよ。何だろねぇ、この頃」

「そんじゃ悪いが俺もやってくれよ」

「何でよ?この前、髭やったばかりだろよ、どうしてよ?」

「やだねえー、耳毛はまだでしょうよ」

「何で耳毛まですんのよ」

「わからねえ奴だねえ、まったくどうも」

「どうせわかりませんよ、怪しいったらないよ!」

「これだからイヤだよ、女の浅知恵はさ」

「はいはい、あたいは浅くて底だらけ。そんで底なしの世の吉兄さんはよ?」

「もう、わかってるね~お陽は」

「バッカじゃなかろうか」

「致し方あるまいねえ、いいか?俺がよ、この色男の世の吉がよ」

「はいはい、そんで」

「見窄(すぼ)らしかったらどうよ?」

「どうって事ないでしょ」

「これだから底だらけはイヤだよ」

「そんで」

「お前ねえ~、云わば俺はここの歩く広告塔なのよ。ね?そんでもって俺が歩けばよ

『あら、世の吉さんっていつも綺麗な色だわ~、一体何処でなさったの?』

『お陽の髭結い床だよ』

『おっ、そこの粋な兄さん!洒落てるねえー、どこで染めなすった?』

『お陽の髭結い床よ』

と、まあ~こうなる訳よ。どうだ参ったか?」

「・・・・菰傘であんたが家のスットコドッコイだって知らない者は居ないけどねえ」

「旅のお方もいるだろが」

「そりゃまぁそうだけど・・・」

「いいから、チャッチャッとやってくれよ」

「わかったわよ、そんでどうしたいのよ」

「この耳毛をね、赤く染めて欲しいなあ~って」

「これを?」

「そうだよ、俺の橙(だいだい)色と合うと思わない?」

「なんか、今一じゃないの?」

「どーしてよ」

「あたいだったら、薄緑にするわ。品があって、綺麗だもの」

「もぉう~~~!さすがにお陽ちゃん!
いやーー、言葉も無いわ。いよっ、お見事!」

「あんたねえ、、、」

「恋女房ならではだね!もう其処いくと俺なんか、ヤボの骨頂だよ」

「ふふ、そんなに煽(おだ)てて・・・増々怪しいわ」

「またあ~、いいから愚図愚図してると昼飯抜きになるぞ、チャッチャッとやってくれ」

「あんたをしなきゃ、休めるのにさ」

「いいの、仕事は大切にね~」

「ふんだ」

世の吉はまんまとお陽を騙(だま)し、耳毛を綺麗に染めてもらった。
お陽が店で忙しいのをいいことにサッサと出掛けてしまう。


つづく

時雨のお波 2 べ一

前回

世の吉から耳寄り情報を聞いた五斗吉はノリノリになる。世の吉はと言うとお陽を騙し耳毛を染めてもらい準備万端だ、菰傘の阿呆コンビは何処に行くのやら?


はじまり、はじまり



「お種~父ちゃんはよ?」

「いないょ、あたい達に飯は喰っとけってさ」

「なんて男だろッ、こんなちびを放っといてさ!」

「居ない方が清々するも~ん」

「お種ったら」

「だってー、いれば五月蝿いだけでしょ?あたいは、よ吉とひらがなのお勉強してる方が好いもの」

(よ吉は三吉が旅立った後に生まれた次男坊である。まだ赤ちゃん猫)

「まったく!呆れたスットコドッコイだよッ」

「母ちゃん、あたい味噌汁温めてくるよ」

「亭主より役に立つよ」

「父ちゃん、いらないね」

「本当だ」

「にゃははは」

「ははは」

「ニャ~ニャ~」

世の吉は浮き浮きしながら静かな通りを歩く。五斗の店の前に着くと、小粒の石を投げる。

ゴゾゴソ・・・

「兄ぃ・・・」

「早く来いよ」

「へい」

二人は疚(やま)しさもあるのか、何故か駆け出す。

兄いってばー何で駈けるんですよー!」

「あっ、そうか!汗かいたら臭くなっちまう、
お~いけねえいけねえ、汗臭いなんて近頃流行らねえ」

「こんな先でしたっけ?」

「いいから付いて来な」

「あれ?兄い、なんか耳毛が綺麗ですよ」

「ふふーん、わかる?」

「わかりますよ」

「お陽にね、やってもらったの」


汚ねえーッ、

そりゃあんまり汚ねえよ!



「何でよ?」

「あっしには『行くな』って言ってたのに、自分だけ、、、
狡(ずる)過ぎる」

ジロッ


ギョッ



「お、お陽がさ『練習したい』って言うから無理矢理されちゃったよ~云わば実験台だよ?ったく参ったよー」

「そうなんですか?」

「当たり前だの引っ込んでろだよ、俺が可愛い五斗ちゃんを裏切る訳ないでしょ?」

「そうですかね?」

もう~何言ってんの?只でさえ、男振りが好い俺がよ、そこまでやっちゃいけないだろ」

「・・・」

「だってそれじゃあ五斗があんまり可哀相だよ、だろ?」

「へぃ・・・」

「なら行こう!」

五斗吉は納得いかなかったが、舌を出す世の吉はサッサと行ってしまう。店が近づくにつれ、段々賑やかな太鼓の音が聞こえて来る。

「あれ?あれは佐吉の太鼓じゃねえか?あの野郎ー、油断がならねえッ」

お囃子(はやし)も混じっている。

ちっきしょー!一吉の野郎もいやがるッ、
おう、五斗!こうしちゃいられねえ、行くぞ!

「へっ?へいッ!」

騒々しい音が洩れている。赤提灯に【べ一】と書いてある、どうやらこれで『ベッピン』と読むらしい。

「お波ちゃ~ん、来たよ~」

後から暖簾(のれん)を掻き分けた五斗吉は驚いた、村中の男達が居るようだ。

「あら、世のさんいらしゃい。あら素敵なお方、お連れさんなの?」

「そんな代物じゃないよ、五斗って云う干物臭いの」


兄いッ


「うそ、うそ、五斗さんてこんな素敵な方だったの~?あたいお波です、宜しくご贔屓に」

「でへへ、そんな素敵なんてえ、、、」

「お波、こんなの放っといてさ、俺との約束どうなってるのよ~」

「もう知りませんよ」

「座敷は空いてねえのかよ」

「あいすいません、一杯なの」

「しょうがねえや、適当に座るわ」

「すみません、それじゃお銚子をお持ちしますね」

お波ちゃ~ん、こっち充てがないよ、なんか見繕ってよー」

「はぁーい!梅さん、ちょんの間、お待ちを」

「おい、ここに座んなよ」

「へい」

どうにも狭い店内に膝付き合わせて男達が呑んでいる。世の吉と五斗吉が座ると、押された端の亀爺が落っこちた。

ドタッ


いてえッ、何すんだ!


「爺、威勢が良いな」

何をッ?世の吉ッ、表に出ろぃッ!

中からお波が急いでやって来る。

「もう亀さんたら~怒っちゃイヤですよ、それより呑んで下さいよ」

「だってお波ちゃーん、世の吉が、、、」

「ごめんなさいね、こんな手狭で。あたい皆さんに申し分けなくて、、、」

「いいんだよ、なっ?爺も我慢して座れるから」

「そうだよ、お波ちゃん、ほら、こうしてこうして」

亀爺さんが無理矢理、長椅子に座ると今度は端の五斗吉が飛ばされる。

あひゃー何すんだよー」

「五月蝿いね、五斗は黙ってなってぇの」

「あらあら、五斗さんにまで、、、あたい・・・」

「いいって、いいって、あっしは兄いの上に座りますから」

「ぶーー」

「さあ、兄い達も賑やかにやろうぜ!」

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一吉のお囃子、佐吉の太鼓が『デンデン』『ピーヒャララ』と騒がしい。


♪寄せてぇ返すはぁ波の常ぇえ~~♪

押してぇ引くのがぁ~恋の常ぇええ~~♪


酔っぱらい共が大合唱をしている、閉まっていた障子が開き、大きな白猫が顔を出す。

「お波、こっちにも酒を」

見ていた世の吉と五斗吉が驚いた。


つづく

時雨のお波 3 白猫の白ちゃん

前回

菰傘村のデレ助全員集合の[べ一]は大繁盛をしているようだ。


はじまり、はじまり


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ごッ、ご、ごぉおう、、、



五黄は気が付くと口に手をやって黙ってろと合図する。

「あら、もう呑んじまったんですか~、白さんは樽ごと持って来た方が好いみたいね」

「一人呑む酒は味気ない、お波がそばにいれば、もっと呑めるのにさ。そうだ、おい!世の、五斗こっちに来い、相手しな」

「へっ?へいッ!

「もう・・・」

二人は渋々座敷に入って行く。

「座んなよ」

「ごッ、ごぉ..」

「・・・」

「おい、世のよ~、オメエは冷たい奴だねえー!

「何ですよ~、薮から棒に」

「だってそうだろう?大したことじゃねえ時は、いそいそ来るくせにどうよ?
こういう時にいの一番に来る処かパッタリだ。
酷いと思わねえか?五斗」

へいっ!

「なに言ってるんですよー、あっしは本当にいい店だったらお連れしようと、、、なあ五斗」

「へっ?へいぃ...」

「どっちなんだよ」

へいッ

「まっいいさ。いいか?俺はここじゃ、『白吉』っつーう大工だからな」

「どうしてですよ?」

「わかんない奴だよ、俺と知って相手する女なんてつまんないだろよ」

「そりゃ~確かに、緊張しますしねー」

「そうだろう?まして小ちゃい時に里子に出されて苦労したと云うお波の事だ」

「そこまで、ご存知で?」

「ふふーん、聞いたのよ」

「ったく、油断もならねえッ

「何言ってんだ、そう言いたいのはこっちだよ」

お波が沢山銚子を運んで来た。

「あら白さん、世のさんとお知り合いなの?」

「ああ、こいつとは小さな時分からの幼なじみよ」

「あらまあ!そうなの?いいわねぇ~、幼なじみって」

「幼なって・・」

「・・・・・」


お波ちゃーーん、こっちもおくれぇーーえ


はあーい!白さん、すいませんねぇ」

「いいって事よ、行きなよ」

「あいすいません」

「そんでそんで?どう呼べばいいんですよ~、幼なじみを!

「ふふ、白吉だよ」

「そんなーッ!幾ら何でも、せめて兄いくらいにしときますよ」

「悪いね」

「もぉイヤだね~背中が見えないようにってんで、
仕込みに法被(はっぴ)なんか着ちまってー!
もおーッ、いやらしいったらないよ~!
五斗、呑んで呑んで呑みまくろうぜッ」


へい!


「ふふ、そう怒ると洒落た耳毛が台無しだよ」

大きなお世話です!大体兄いなんて『おんニャ』の心が見えるんだからつまんないでしょうよッ」

「何言ってんだよ、この野暮天。見ようとしないと見えないの」

「へいへい、そーなんですかって!」

「手練手管もお代のうち、楽しんでナンボよ」

毛っ!アホらしぃッ!五斗、飲みまくるぜ!!」


へーい!


こうして、お波の【べ一】は大繁盛をしていた。
ひと月も経った頃、五斗吉は一人、べ一にやって来た。

「こんばんわ、あれ早過ぎたかな?」

「あら、いらっしゃい!」

「まだなの?」

「そうじゃないの」

「だってガラガラなんてさ」

「仕方ないのよ、もう一月の上だもの」

「どうしてさ」

「そろそろ女将さん達が亭主を出さなくなる頃よ」

「そっか、なるほどね~」

「五斗さんは平気なの?」

「あっしは根は真面目だし、それにここには酒呑みに来るだけだし」

「あらそれだけだったの?少しがっかりしたわ、、、」

「えっ・・・」

「だって、五斗さん、いいえ五斗吉さん、あたい・・・・」

「どっ、どうしんだよ?途中で止めたりして」

「いや~ぁ、終いまで言わせるの?」

お波がしなだれかかる。

へっ?

「そんな、そんニャぁあ(ほげー)」

「今日はゆっくりしていってね」

ニャーーーい!うんうんうん、そうさせてもらうよ~」

でれーーーっとした五斗吉の鼻毛や髭はすっかり伸びてしまった。翌日、五斗吉はこそこそ、べ一に行くとそっとお波に何かを渡す。

「あらこんなに?女将さんにバレやしないの?」

「へへ、あっしのヘソクリだから気にしないでよ。それよりも楽しみにしているよ~」

「これならお大尽だわ。あたいこそ・・・ふふ」

五斗吉は旅行に誘われた。内緒事なので宿や鹿車の手配はお波がすることになっている。其のほうが万事都合が良いので、五斗吉は銭を渡すだけらしい。

カッコのいいとこを見せよう とヘソクリを洗いざらい持ち出して来た事は云うまでもない。

「『ふふ』って、もぉうーーーッ♡ そんじゃ行くわ」

「忘れちゃイヤよ、明日の朝早くよ」

「もちのろーーんだよ!じゃあね~」

でれでれ五斗吉は急いで帰ると何気ない顔で店を開ける。

「ふんふんふぅーん♪
寄せてぇ返すはぁ波のぉ常ぇえーーーっとくらよ」

「まあ!朝からご機嫌ですこと」

「へへ。あっそうそう、お紺、ついうっかり忘れていたけどよ」

「何ですよ」

「いやね、明日ね、遠出をしようと思ってるのさ。多分泊まりになるかなあ~なんて」

「あらどこに?」

「いやね、ほら干物もこの頃は決まりきった物ばかりだろ?」

「だって干物ですもの」

「だよねー、でもねそれじゃいけないって、、、ね?うんうん思うわけよ」

「へぇ~、お前さんは勉強家なんですね」

「まあね。それでね、何でも渋傘でさ」

「渋傘で?」

「中々評判の干物屋があるらしいのよ」

「そこのお品を食べてみようと云うことなんですか?」

「そうなのよ、好い案だと思わない?」

「ええ、それは好い事ですわよ。でも渋傘にそんな店があったかしら、、、」

へっほん、つい最近出来た店らしいよ」

「そうなんですか?そりゃそうですよね、あたいが商いを止めてもう三年経ちますもの」

「だろ?あっしと連れ添って二年だし」

「もおーー今日は何だか変ですよ」

「えっ?そんなことないよ~」

「それよりも早くお店出さないと」

「はいはい、はーい!っとくら」


つづく

時雨のお波 5 思案の為所

前回


五斗の秘め事は穴だらけのだだ漏れであった。
お加奈探偵には知恵者のお種がいる、唯ですむわけがにゃい。


はじまり、はじまり


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「どうしてよッ?」

「いい?ここは考えないといけないわよッ」

「どうすんの?」

「三吉兄ちゃん譲りのおつむを働かせてよ」

「任してよッ」

「あんた達は父ちゃんや爺ちゃん達にバレないように母ちゃんや婆ちゃんを基地に連れて来て」

「どうすんの?」

「いいから、絶対にバレないようにすんのよッ」

「よお~し、皆行っくぞーー!

お種は置き手紙をポケットに仕舞い、自分も駆け出す。お陽に幾ら言っても『忙しい!』と云って取り合ってくれない。事実、てんてこ舞いの忙しさである。

理由は云わずと知れた事、お種は仕方ないので基地に行く。
基地で待っていると豆腐屋のお三が島吉と一緒にやって来た。

「なんだよお、もうッそんなに引っ張ってーお放しな、島吉っ!

「母ちゃん、いいから、一大事なんだから早く早くーッ!

「何かあったのかい?」

「これからあんだよ」

「?」

お種はお三が一番なので安心した。お三は村ではお喋りで有名なので他の親達を説得してもらうのに助かったと思った。

「おばちゃーん」

「あら、お種ちゃんどうしたの?」

「ごめんね、おばちゃん、あたいが呼んだの」

「あらどうしたのさ?何かあったのかえ?」


お姉ちゃーーん!


「あっ、お加奈も来た!お紺おばちゃんも一緒だ」

「あれ?何事か始まるの?」


「ぉぉおーーい


こうして子供達に連れて来られた母と祖母達。普段は怒られる方が多いいのだが、今回は違う。

お種とお加奈は大いに張り切って、事情を説明する。最初は半信半疑だったが段々と頷(うなづ)いてくる。最後にお波の置き手紙を見せると女達の怒りは頂点に達す。

こんちきしょーッツツ!あの宿六ッ!
只じゃおかニャいっ!!



悔しぃーーいッ、勘弁ならないッ!


デレ助の髭、みんな毟ってやるッ


キィーーー!


開きにしてやるーーーッ!


お紺までいきり立ってる。

「姉ちゃん、母ちゃん怖いよ、、、」

「お紺おばちゃんとも思えないね、あたいがもうイッチョ頑張るか」

「やってやって」

「えっへん!おばちゃん達~、御静粛に!

「なんだよッ?子供は引っ込んどきなッ」

「まあまあ、おばちゃん達今の勢いで行って、父ちゃんや爺ちゃん達を怒るだけだったら、父ちゃん達は絶対に反省しないと思うよ。間違いない、、、」

「あらどうしてさ」

「あたい達は島吉と小吉で苦労したもの。ねえ?お加奈」

「そうだよ『ニャふん!』と言わせないと男って駄目なのよねえ~」

「わかってるわ」

「凄いねえー、さすがに恵み子様の妹だよ」

「へへ、それでは皆さん...」

ごしょごしょ

鳩首凝議(きゅうしゅぎょうぎ)して、一同納得すると其れぞれが胸に一物抱え、帰って行く。翌朝は珍しく濃い霧だった。目の良い猫達も戸惑う程の霧だったが、浮かれている男達にとっては眼中に無い。

「ねえ、お前さん、今日はこんなだから日延べしたら?」

えっ!?とっ、とんでもねえ、男がこうと決めたら行かなきゃなるめいよ!」

「まっ、そんな大仰な言い方して、ねえ~お加奈!」

「そうだよ、父ちゃん!川に嵌(は)まったらどうすんのよ?」

「泳げばいいさ!お加奈、父ちゃんはこう見えても元は漁師、泳ぎは達者なんだー。」

「へぇー達者なの?」

「ふふーん、まっ、いいって事よ!さてとそろそろ行くかな?」

「あらもう行くの?だって朝飯は?」

「いいってさ、途中の屋台で何か買うからよ」

「そんな急がなくても」

「べっ、別に急いでいるわけじゃないよ、おっほん

「まあ、そいなら握り飯は?」

「そっ、それも途中でね」

「あらそうなの?それじゃ気をつけていってらしゃい」

「父ちゃん、お土産忘れないでよ」

「はいはい、はいとくら!そんじゃ行ってくるよーーー

五斗吉はこれ以上何か言われるとばれそうなので逃げるように出て行く。お波に誰にも見られないよう、用心して来るように言われていたので笠をかぶり、コソコソ待ち合わせの店に向かう。

霧が深いので着いた時には笠も体毛もぐっしょりと濡れていた。五斗吉は周りの様子を伺いつつ店の戸を叩く。

「お波ちゃん、俺だよ、五斗ちゃんだよ」

「今、支度中なの」

「あれ?何か声が違うなあ~」

ごほん、ごほん

「ちょいと風邪気味なの、、、それより水車小屋で待っていて直ぐに行くから」

「うひひひ、そいじゃ待ってるよ~」

五斗吉は阿呆面をして水車小屋に向かう。暫(しばら)くすると又一人、コソコソと誰かが戸を叩く。

「お波ちゃん、お・待・た・せ~、一吉ちゃんだよ~開けてよ~」

一吉も水車小屋に向かった。
こうして村の鼻毛伸ばしが全て揃った。いいや、黄色いのが登場していない。
もう少し待っていよう、、、


つづく

時雨のお波 6 お仕置きタイム

前回

山神様達には隙はない、子猫軍がついている。さてどうなることやら?


はじまり、はじまり


「はぁはあッ、大変だあーッ!ちきしょーお陽の奴、俺が旅に出るって云うのに起こしもしねえ処か居もしねえよッ全くよ~、オトトが怒って逃げちまうよー」

世の吉は自分でも驚く程の足の速さで快調に跳ばした。

「へへ、韋駄天世の吉だね!『可愛い世のちゃんをお届けに参りましたぁ~』なーんてね!いひひひ」

店のそばに行くと用心して辺りを見回し、同じようにコソコソと戸を叩く。

「お波ちゃまぁ~!世のちゃんよぉお~~ヒラヒラと行きま蝶~よん、なんちってーうひひひ」

世の吉も水車小屋に向かう。

「うひひひ、霧が世間を憚(はばか)る俺達にはぴったりの小道具だよ、粋だね~。ひひ、お陰さまで誰にも会わねえ、もう堪んないね、お波はどんな顔をして来るのかね?

旅先じゃ、当然部屋は一緒!と、なるとやっぱり夫婦だわな~。『おい、お波』『なあに?お前さん』なんちってぇ~にゃーーッ、照れちまう」

・・・・付ける薬なし

鈴音川の川沿いを行くと水車小屋が見える。
世の吉は鼻歌を歌いながら戸を開けようと手を掛けたその時、霧を切り裂くように棒切れが唸る。

ビュン!

後から棒切れでしたたかに殴られた。


ガッ、ッツーーーん!!



う゛ッ!!


まさに目から火花が散ったことだろう...暫(しばら)くして目を覚ます。

痛ぁーーーいッ


「起きたかね?」

「な、ニャオーー!?誰だこの野郎!あったたた、
痛ぇえーーーッ!

「痛いとよ」

「感覚が無くなっちゃいなかったね」

「もっと叩けばいいのに」

「本当だよ!もう一回やれば減らず口も無くなるかしら?」

「なッ・・・・・」

段々、目の焦点が合ってくると漸(ようや)くこの場の事態に気付く。


「ぅわぁああーーーーッ


「やっと気が付いた?父ちゃん」

「あ゛っひゃ、ひゃッ、おひゃね、、、、、」

「母ちゃーん!父ちゃんあたいの事『おひゃね』だってぇー!」

「じゃ、あたいは『おひょう』だね?にゃははは~」


あはははは


大爆笑である。その声で周りのイヤ~な視線に気付く。

「あ゛っ......」

「世のさん、あんたもねえ~やっぱり」

「お金婆さん、こッ、これにはじッ、事情がッ、、、、、」

「無駄だよ、世の吉」

「あっ?梅爺!爺さんまで?」

「爺だけじゃないよ」

「世の兄ぃ・・・」

「へへ」

「てめえー、伝も?あっ!一の野郎・・・うへぇーーー」

みんな!おネンネしているデレ助達も起こしてやんな」

「ふふ、今日のお水は冷たいよ~~」


そぉれッと!!


気絶から覚めない連中は子供達が川から運んで来た冷たい水を山神様達に掛けられた。


ひゃやーーーッ


ぅうわぁあーーー!


あッぷうーーッ


目かしこんでいた男達は惨めな濡れ猫になった、この姿にまたまた大爆笑になる。

「さあ、これで揃ったね」

やいッ、お陽!何をしやがるッ!俺にまで水を掛けるこたあねえだろッ!それにこの縄を取りやがれッ」

バッ、チーーーン


ふんぎゃやあーーッ


「五月蝿いよッ、このデレ吉ッ!もう一辺そんな口聞いたら、只じゃ済まないよ。そんなに濡れたきゃ川に沈めてやるよ」

「ひぃーーーッ」

「さっ、ここじゃ狭いよ、霧も晴れたようだしお天道様に見てもらおうよ」

「わあ、そんな引っ張らないでえ~」

「いたいよーぉッ」

「五月蝿いよ、このエロ豆腐」

「お三...」

「ふん!」

其れぞれが亭主を引っ立てて、村の広場に連れて行く。その頃には嘘のように霧も晴れ、大層な行列は否が応でも目立ってしまう。

興味津々に知らない者まで付いてくる。子供達が先触れをして村中を周ったものだから、あっという間に集まって来た。

二十人程の濡れ猫達は見るも哀れ...お陽達はニヤニヤしている。


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あれーーッ!みんなどうしたんだい?へへへ」

「あら弥吉ちゃん、どうもこうもないよ。

このデレ助共はね、お波とか云うメス猫と二人旅を洒落込もうとしたヘッポコなんだよ」

「え?兄い達、皆ですか?あっ!爺ちゃん達・・・ひゃー馬鹿だなあ~」

「てめえッ、うるせえぞッ!黙りやがれ!」

「あんたこそ、黙んなさいよ」


ばっちーん


「お紺・・・」

「開きにするよ」

「ぅ゛・・・・」

「五斗の兄ぃもざまあないねえ~。だけど、、、じゃ皆のせられて?ははーん、俺は引っ掛からないで良かったあ~」

「なんだってッ?弥吉ちゃんにも?」

「へい、あの女、俺の塒(ねぐら)に来て『旅に行こう』って」

何をーーッ、弥吉の塒に行っただとーッ?俺んちには来てくんなかったッ」

「黙ってないと金棒で殴るよ」

「お道ちゃん、怒んないで~」

「ふん!こいつはテメエが鍛えた金棒だもの、一辺は味わっとくかえ?」


ひぃッーーー


其れぞれの女房達の怖いこと、怖いこと、この上ない。

「じゃあ弥吉ちゃんは誘いに乗らなかったんだ?」

「そりゃそうだよ、そんな事をしたらお米ちゃんに申し分けないし」

「えらいっ!偉いよ!なんて身持ちの固い好い男だろ!羨ましいねえ~、お米ちゃんがさ~」

「へへ」

「其れに比べて、どうだろねえ、このデレ助共は!あんたら揃いも揃って、昨日からあたいらに一芝居打たれてるのも気が付きゃしないッ、これじゃ手も無く泥棒猫に騙されるわけよねえ」

「何言ってやがるッ、お波を何処に隠した!」

「まだそんな事言ってるよ!お種、泥棒猫の置き手紙を読んでやんな」

「はーい」

大声でお種が読んだ内容に驚いた男共はへそくりをすっかりお波に渡していたから、悔しがって泣きだす始末である。それを見てまたまた大爆笑になった。



つづく


時雨のお波 7 菰傘村の菰笠猫

前回

市中引き回しの晒し者だけってのもねぇ〜


はじまり、はじまり


さあ皆!この鼻毛伸ばしのデレ助共をこの侭ってのもねぇ」


勘弁してえーーッ!二度としないからぁあッ!


金輪際いたしませぇーーんッ


「わしが悪かった、歳に免じてくれぇーッ


年寄りは勘弁してくれよぉぉッ


汚ねえぞッ、三馬鹿爺ぃッ!


うるニャイわいッ!わしらは可愛いぷりちぃ爺ちゃん達だ!これからは縁側で大人しく昼寝だけしてるから勘弁してくれ~~」

「婆ちゃん達、どうするの?」

「どうもこうもないよ、こんな皺垂れ爺『色に歳無し』って言ってたのは何処のどいつですかってんだ!ねえお銀ちゃん」

「今更、縁側で昼寝が聞いて呆れるわッ!お陽ちゃん、年寄りだからって遠慮は無用だよ」

「それじゃ、どうしようかねえ~」

「開きにしてやる!」お紺。


ひゃややあーーーーッ


「それよりドロドロに煮て、豆腐にするのはどうだい?」お三。


いゃややあ---ー―ッ


「いいや、焼(く)べて鋳型に嵌(は)めてやろうよ」お道。


ひや゛ぁ゛あ゛あ゛ーーーーッッ


「ねぇ、母ちゃん」

「何だい?お種」

「この前、父ちゃんがツルツルになって面白かったけど、あれにすれば?」


ニャンだとぉおおーーー!?やっと伸びてきたんだぞおーーッ!この糞ガキーッ」


「父ちゃんが糞ガキだって」

何だってッ!あたいの可愛い娘に向かって糞ガキだとぉッ?ふ-ん、、、あんたは今日只今(こんにちただいま)から宿なしだよ」

ひゃーーーッ!ご勘弁を~ッ!お種ちゃ~ん、父ちゃんが悪かったァ~」

フン!!

世の吉は観念をしたようだが、他のにゃ郎共は声を限りと泣き叫ぶ。


ごめんニャさーい、ごめんニャさーい


「それだけはご勘弁をーーーッ

「頼むから、そのような非道だけは」

「外を歩けねえ」


五月蝿いよ!スケベ猫!


「そしたら、【開き】か【ドロドロ】か【鋳型】か【ツルツル】、どれがいいかねえ~」

「選ばせたらよ」

「そりゃいいねぇ、さすがお道。亭主を鋳型に嵌めたいかえ~?」

「勿論よぉ、鋳型にギュウギュウ嵌めてチロチロじっくり焼いてやる」


お道ぃーーい!止めてくれよーーッ!


「ならどれがいいのよ?」


え゛


「.....っ・・」


ツルツルだってえーー


「ちよっとまっ、待ってくれーッ、俺は『つ』って言っただけだあー(泣)」

「さっ、さっぱりとやっておくれ」

「はいよ、これぞ腕の見世処だよ、お種カミソリ持っといで」

「はーい」


ひゃーー、勘弁してぇえーーッ!


「耳の一つや二つ無くなったって構わないよ」


ぎゃや--―!!


「じっとしないとそうなるよ」

お陽の腕は冴え渡り、あっという間にぞりぞりと鍛冶屋の健吉を坊主猫にしてしまう、お後も抵抗空しく全て坊主猫になった。それからのにゃ郎達は毛が生えるまで菰笠(こもかさ)を被っていたそうだ。まさに菰傘村である。

これには当然のように後がある。

何故ならば『大工の白ちゃん』こと五黄が出て来ない。白ちゃんも世の吉達と同じように鼻毛を抜かれきっていた。白ちゃんはその日、お波を驚かせようと店の裏から入ろうとした。

処が自分より先に店に入る者の姿が見えた、その者らは何故か頬かむりをしている。そして子連れでもある。
白ちゃんは二人が店に入るのをじっと見ていた。幸いにも深い霧が白ちゃんの真っ白な姿を隠す、気付かれないよう用心して近づきそっと障子越しに中の様子を伺う。

「む・・・・」

店の中にはお陽とお種がいて顏を見合わせニヤニヤしている。

トントン

「お波ちゃ~ん、俺だよ五斗ちゃんだよ~」

お波に成り代わって受け答えするお陽に五黄白ちゃんはたまげた。五黄白ちゃんは「ニャっ!!」と一言洩らし掻き消えた。
           
           
           ?

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翌日の五黄屋敷では藤平が昨日の騒ぎを草助から聞いていた。

「ふふ。そうか、そしたら見物だったねえ」

「そりゃあんな面白い物は二度と見れないですね」

「なんだ私も呼んでくれりゃ良かったのに」

「ああ本当に」

「ふふ、暫(しばら)くは大人しくするしかないだろうよ」

「あれ、五黄父さんは?」

「草助、お前も猫が悪いよ。白ちゃんは尻に帆掛けて、とっくに狸国に逃げたよ」

「やっぱり?父さんは大工の白ちゃんですからねー」

「何が白ちゃんだよねえ。お陽に白ちゃんまで坊主にされたら、猫国は他国の笑い者だよ」

「本当ですよ」


あはははは


にゃははは、でもあの女をこのままにしておくんですか?お手配をなさらないのですか?」

「何故かな」

「だって、とんでもないメス猫です」

「私は偉い先生と思うよ」

「どうしてです?」

「ふふ、だってそうだろう?『おニャごに騙されるでない』と幾ら私が教えていたとしても、誰も身に沁みはしない。だが今回の件で世の吉達にしても白ちゃんにしても少しは懲りるであろう。

それは教えてくれたお波先生の腕が良かったと云うもの。へそくり位、授業料と思えば安いではないか?ふふ」

「なるほどそう云うものですか」

「浮世とはあの様な者がいるから、味わいがある」




つづく




どうしよう・・
先週、あるブログで私に楽しみにしてとわざわざ書いてくださったリン友さんがいらしたのですよ。
今週になって訪問をしたのですが、わからないのです。
もう焦りまくって訪問をしまくったのですが、わかりません。
せっかく書いて頂いた記事にコメントをしてないという不手際。
なんと情けない奴。
週一で顔を出すものですから、ブログ名自体も失念しているという有様。
どうか馬鹿なぴゆうをお許し頂き、鍵でお知らせ頂けないでしょうか。
本当に申し訳なくて泣きそうです。
教えてください。
m(_ _;)m

時雨のお波 8 その後

前回

菰傘村ではどうやら騒ぎも収まった、さて原因を作ったお波はどうしているのだろう?


はじまり、はじまり


彼女は機嫌よう旅をしていた。
商売用の厚化粧をせず、すっぴんでいると生まれ変わったように感じる。懐は温かいから豪気な旅で、浮かれ気分に足も伸びる。

辿り着いた先は卍宿(まんじじゅく)
一度でも稼いだ宿や村には行けない。
行ける場所と云えば故郷の粒傘村かここくらいなのもの。
宿をとると街に出る、中々賑わいもある。

『ここならまた一稼ぎも面白い』なんて考えたところでバッタリ出会う。
忘れもしない幼馴染のお襟(えり)だ。


あらッ!


あらッ!


二人が出会うのはどのくらいだろうか、、、
家出をして以来、会うこともなかった。

絵に描いたような転落猫生、今では一端のお姐さん。

方や、お襟(えり)は何をしていたのだろう?
薬種問屋のお嬢様に生まれたが、彼女は婿を取るだけのお嬢様生活を由とはしなかった。年頃になると降るような縁談を蹴り、泣く親を説得して卍宿にある薬の学校に通う。

お襟は薬種問屋の娘ではあったが、薬が高価なことが許せなかった。
高ければ効くとわかっていても貧乏人には手がでない。薬屋も商売、赤字を出してまで売るはずもない。薬草もそんなには採れない。

どうしたらいいのか?

そう、病気にならなければいいのだ。簡単なことだがそれが一番難しい。『どうすればいいのか?』『どうしたら病にならないのか?』まずは【医学】を、そして【薬】を、そして【料理】の勉強と考えた。

お襟が考えたのは《医食同源》だ。
食べる事で病気の予防をする。美味しくて体に良い料理の店を開くことにした。その夢の第一歩を叶えた矢先だった。

そんな熱い夢を語るお襟。お波は聞くとはなしに聞いていた。

「きっと笑顔になるわ!そんな皆の顔が見たいの!」

「ふぅ~ん・・・・」

お波は何も騙さなくても小料理屋をやれるだけの才覚はあった。料理の腕は中々のもので、何より包丁さばきが旨い(前世に関係があるのかないのかは定かではない)

お襟と別れた後、お波は考える。
そろそろ考えていい時期だったのかもしれない。
騙して騙して、、、、、この先に一体何があるのか...?年老いていくだけでいいのだろうか、、、旅烏(からす)もいい加減、疲れたし・・・

思い立ったがナントヤラ。
お波はお襟を追いかけ、食事をしようと誘う。そして、自分の今迄を包み隠さず打ち明けた。

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お襟は最初戸惑い呆れたが、自分の夢を叶えられるパートナーにこれほど相応しい友はいないと思った。何より商売に長けているのだ。そうなると二人の話は止まらない。


その後・・・


粒傘村には流行りの料理屋がある。

体にいいものを食べさせる医食同源の店だ。味も抜群に美味いらしい。名前は【紅蓮屋
相変わらず男猫客が多いのは言うまでもない。



おわり





これにて【時雨のお波】は終わりとなります。
最初、お預かりした二人のおにゃごをどうしようかと悩みましたが、
幸せにすることがまず一番、お後は菰傘村のにゃ郎共の登場させればいいかなと
猫国ならではの幸せに二人はなってくれたかと思っています。
生みの親のポールに気に入ってもらえたらいいな。。

お種愛し 1 イライラ



この話は菰傘村の騒動がある前のこと、お種の小さな物語。


はじまり、はじまり


お種は近頃、面白くない。
三吉が旅立って(本編、第九章)すぐに【よ吉】が産まれ、世の吉一家はそれなりに忙しかった。

よ吉が産まれたのは嬉しい。嬉しいけど何か面白くない...可愛い弟が出来たのだから、しっかりしないといけない。

太吉達にも負けるわけもいかない。小さいなりに頑張ってきた...でも、布団に入ると以前なら隣に寝ていた三吉が居ないことが堪らなくなる。

世の吉夫婦はよ吉と寝ている。お種は『お姉ちゃんなんだから』と言われ違う部屋で寝ているのもつまらないし、寂しい...でも、それは何とか我慢出来た。

我慢がならないのが【よ吉】のことしか言わない両親だ。三吉のさの字も言わない。『どうしているのだろぅ?』とか話したくても「さ」と言っただけでお陽は『忙しい!』と言い、世の吉はプイと出かけてしまう。

取り尽くしまがない。
藤平に勇気を出して訊きに行くと『【恵み子】というとんでもなく偉い御役人様になった』とか『【魂納めの宮】でしか会えない』とか、色々と話してくれた。

何となくわかる気もするが、それでも両親の態度が冷たいと感じていた。その日は朝から快晴だった。

お陽はすっかり姉らしくなったお種に当然のようにお守りを頼む。

「よ吉を頼んだよ、今日は朝から予約で一杯なんだからねー」

「うん、あたいに任せて」

「ふふ、どうして大したものだねぇ~ありがとう。頼むよ」

よ吉はおっぱいも飲んで機嫌よう寝ている。お種は直ぐにおぶることもなく、顔を眺めた。
毛の色も何もかも兄にそっくりだ、じっと見ていると涙が出てくる。

「兄ぃちゃん..........」

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それは突然だった!お種は慌てて家を飛び出す。三吉に呼ばれているように感じた。
とにかく行くのだ!走った、走った。

どこまで走っても道は続いている。見知っている顔に声をかけられても、構わずに走った。
だが、その足取りが段々とおかしくなる。

お種は走り通しなのだ。フラフラしだして、とうとう道の真ん中で倒れてしまった。
驚いたのが行き交う旅人達だ。

幼子が突然倒れたのだから、周りを囲んで大騒ぎになる。そこを通りかかった者が居た。

「どうすたんだ?」

「ああ、木平さんじゃないの」

「何でも、水も飲まないで走り通しだったんだと」

「あんれまぁ!そっだら無茶なごとを」

お種は旅人から水をもらい、何とか話せるようになった。

「無茶だよぉー、こんなおチビがさー」

「おばちゃん、ありがとう。もう大丈夫」

「大丈夫って?親御さんはどこなの?」

「ん、、、あたい、あたい行かなくちゃ!」

無理やり立とうとしてもフラフラしている。

「いげねえッ、いげねぇよー」

木平が倒れそうなお種を支える。

「このわらす(童子)は何処から来たんだべか?」

「どうも菰傘村みたいだよ。見たことがあると思っ、、、あ!こりゃ髭結床のお種ちゃんじゃないか!?」

「ああ、お陽さんとこの?」

お種は黙っている。

「へば、この童子が・・・三吉様の御妹様?」

お種は三吉という名に瞬時に反応した。

おじちゃん!兄ちゃんのことを知っているの?」

「すってるも何も三吉様からお手紙を預かって来たんだすよ」

えっ!?あたい、兄ちゃんに会いに行こうと思って・・・」

「あんれまあ!んだら、ここで会えたのも縁だすなぁ~」




つづく

お種愛し 2 大切な妹

前回

兄恋しさでお種は走りだす。最初は良かったが途中で倒れてしまう、周りにいた旅人の中に木平がいた。


はじまり、はじまり


木平は卍宿に寄った。
茂吉と逢うことは自分が正しく生きている証のような気がして『気にしなくていい』と言われても止めることが出来ない(本編、第八章)

その日も楽しくお茶をごちそうになっていた。

「そうそう、新入りがいるので紹介をしましょう」

紫郎に連れて来られた三吉は、挨拶も堂に入っている。

「恵み子の道を歩み始めたばかりの三吉です。宜しくお願いします」

「おんやまぁ!たまげだぁ~、挨拶も並の童子どは違うっすなぁーわすはすがない薬売りの木平だす。こちらこそ恵み子様に挨拶してもらうなんて畏(おそ)れ多いいだす」

「へへ」

「三吉や、木平は薬をできるだけ安く売り困った者には身銭を切り助ける、と云う素晴らしい篤志(とくし)の狸ですよ」

「そっだらごど言われだら、わす・・・恥ずかしいだす」

三吉はこの狸良さそうな木平に好感を持つ。世界中を旅している木平の話は多岐に富んでいて面白く、滞在中にとても仲良くなった。

「あのぅ、、、木平おじさん、頼みがあるんだけど」

「なんだすか?三吉様の頼みなら何でもきくだすよ」

「やだなぁ~三吉様なんて言わないでよ、三吉でいいよー」

「じゃあ、三吉坊でいいだすか?」

「へへ」

「何だす?」

「手紙をね、菰傘村のお種に届けて貰いたいんだ」

「お妹様だすか?」

「うん。ここに来るのにあいつにはよく説明もしなかったし、よ吉も産まれたって聞いたから、お種の我慢もそろそろ限界かな?って、、、」

「お安いご用だあ、任せて下さい」

こうして木平は菰傘村へ手紙を届けにいく途中だった。木平から差し出された手紙【お種へ】見覚えのある字に涙が出てくる。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります

aninokimochi.jpg


元気か、お種
おいらはとても元気に暮らしている。
友達もいるんだよ【くるみ】って言う生意気だけどとても頭のいい子狐なんだ。
おいらもタジタジになるほどさ。
ここにいると教えてもらうことばかりで、知ることがとても楽しいんだ。
村に居た時はお種や皆の世話でそんな暇もなかった。
責任があったからなんだ。
勝手かもしれないがおいらの責任をお種に引き継いで貰いたいんだ。
お種は妹だから甘えん坊だし、泣き虫だけど今はよ吉がいるから姉ちゃんだ。
お加奈にとっても姉ちゃんだ。
お前に頼めるかな?
おいらはお種なら出来るって信じているんだ。
おいらも頑張るからお種も皆の姉ちゃんとして頑張ってくれ

三吉


お種は黙ったままだ。

「大丈夫だすか?」

「兄ちゃんにお友達がいるの?」

「くるみ様だすなぁ~三吉様と難しい字を教え合ったり、いつも楽しそうにすてますなあ」

「あたい、兄ちゃんはおじちゃん達に囲まれて一人ぼっちかと心配していたんだ」

「そうだったんだすか?」

「兄ちゃんはあたいだけでなく皆の兄ちゃんだったから・・・考えたら兄ちゃんに友達っていなかった、、、あたい達の世話ばかり焼いていた。

「・・・・」

お種はじっと考えた...そして突然、立ち上がる。

「あたい、、、あたい頑張る!兄ちゃんに任されたんだもの、メソメソしていたらガッカリするもの」

「その意気だすよ!」

あっ!よ吉をそのままにしていた、いっけなーい!おじちゃん、又ね!兄ちゃんに『あたい頑張る!』って言っといて!よそのおじちゃん、おばちゃん達ありがとぉ~」

お種は手紙を急いでポケットにしまうと一目散に走り出して行く。

木平は呆気にとられたが、元気よく走っていくお種の後ろ姿を見て安心した。三吉は手紙を見せながら木平に言っていた。

「会いたいだろうとか、寂しいだろうとかそんな事を書いたらダメなんだ。あいつは一層悲しくなる。それよりも、よ吉達の姉ちゃんとしての責任を持たせることが大事なんだ」

「凄いことを言うだすなぁ」

「だっておいらの大切な妹なんだよ、立派になってほしいじゃないか」

木平はキッパリと前を向いて言う三吉を思い出す。

お種はもう三吉に会いに行こうとはしないだろう。それよりも託された責任を全うしようと努力するに違いない。


追記

お種はその夜、疲れすぎた所為なのか目が覚めてしまった。襖越しに両親の声が聞こえる。

「三吉はどうしているのかねぇ」

「頑張ってるに違いないだろうが」

「わかっているよ、でもさぁ.....」

「お種に聞こえたらどうすんだよッ、あいつだって猫一倍どころか何十倍も我慢しているんだぞ、俺達が三吉のことを話したら切なくなって会いに行くかもしんねえだろ」

「やだよ、そんな事になったらどうすりゃいいんだよー、お種まで手放すなんてあたいは死んでも嫌だよー!」

「縁起でもねえこと言うな、もう寝ろよ」

「うん、そうするよ」

お種は冷たい訳じゃなかった両親に安堵した。寧ろ自分に気を遣っていた事を知ると心の底から嬉しかった。

「兄ちゃん・・・あたい頑張るねッ」





おわり




これにて中短編の段は一応の区切りと致します。
一週、お休みを頂いて7月3日から長編の【くるみ】をスタートさせたいと思っています。
この物語は本編、第九章で卍宿に旅立った三吉の其の後から始まります。
猫国はマダマダ続きます、どうぞ末永くご贔屓下されますようお願い申し上げます。

ぴゆう

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