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第九章 親子 里帰り1


前回

お蜜は沢山の思い出を抱え、故郷の狐国に帰った。


はじまり、はじまり


「お疲れでしたね、兄さま」

「意外に面白かったよ、あっちゃん」

「屋敷に寄ってもらって良かったです、お蜜は以前より数倍も輝いていたように見えましたね」

「本当だよ。前は確かにお風に圧倒されていたのに、今じゃ全く引けを取らない。いや、凌駕(りょうが)しているかもね。女って云う生き物はああも変われるもんかねー?」

「グズグズ過去を引きずって生きてる私ら男とは違う生き物ですよ」

「お蜜の奴サッパリしたもんだよ、ありゃ凄いね」

「何か又、悪さしたんですね?」

「あっちゃんは鋭くていけないね~。
いやね、お蜜があんまり奇麗なお狐に戻ったものだから、ちょいとね...ふふ。

そしたら、『あたしゃ、後ろはきっぱり振り返らねえのよッ、男は金輪際要らないねッ!おととい来やがれ!』って、舌出してんのー」

「すぐにそうだから、、、良い事やっても半分になっちまうんですよ」

「そうかい?」

「そうですよ」

二人はニヤニヤしながら笑ってる。

「だけどさ、狐達の歓迎ぶりは半端じゃなかったよ。

《☆御蜜様☆御帰還式会場》なんて横断幕が掛かってるし、花火は上がるわでさ。国境で待たせていた家臣達が凄い準備をしていたんだね。

中々戻らない俺達を待ちぬいていたから、帰ったら国中が欣喜雀躍(きんきじゃくやく)の狂乱状態でよ。あれにはお風でさえ驚いていたね。喜ぶ狐達にお蜜は泣いてたよ。

『こんなあたしを待っていてくれた』って、空に上がると大きく九本の尾を広げて、

『今戻ったよ~、随分と待たせたねー』って、空中でクルクル弧(こ)を描いてさ。それを見た狐達が『お蜜様ぁーーーッ!!』と、大騒ぎさ~。ありゃ屋敷に戻っても続いてると思うぜ」

「えっ?兄さまは屋敷までご一緒しなかったんですか?」

「これで良いと思ったのよ、、、後はあの二人に任せれば良い事さ。あいつらの国なんだし」

「ふふ。これで狐国は万々歳ですね」

「俺も少しはお節介しなくて済むよ」

「お陰で少しも屋敷に居てくれませんからね」

「いい加減、しばらくは何も無いだろう」

「ならいいんですけどね」

「そう言えば、三吉はどうしているだろう、、、早すぎはしなかったのかい?」

「あの茂吉が付いているのですから、大丈夫ですよ」

「あれも考えれば騒ぎだったね」

「本当ですね。でも、わたしは御陰で家族の大切さを改めて知らされました。父ちゃんや父様と呼ばれる楽しさを味わう事を思い出しました。

これからは昔通りに【兄さま】とこの部屋の外でも呼びます」

「へー、どうしたんだろ?」

話はお蜜が五黄に姿を変えられた頃に戻る。

挿絵参照↓↓↓ 絵をクリックすると大きくなります
mokichisatogaeri.jpg

「父様、父様すみませぬが、起きて下さいませぬか?」

「ふへぇ?...ぐぅ~ぐぅ~...」


藤平父様!茂吉ですったら!


藤平はいつも通りに八時には床に入った。

五黄は帰って来ないし、ノン吉は黙って旅立ってしまうし、、、藤平は二人に腹を立てていた。そう云う時は独りで【天狗の壷(つぼ)酒】を飲む。

ノン吉は好物の此の酒を必ず土産にして持って来てくれる。友達のうーてんが大きな樹のうろで造っている。

どこにも売っていない酒で、いつもノン吉が壷に並々と入れて持って来てくれる【天狗の壷酒】と呼んでいる。そう呼ぶのは藤平だけである。

ノン吉は可愛いのである。

何杯か手酌をしている内にすっかり眠くなって、ヨロヨロしながら床に入ると直ぐに高鼾(たかいびき)を始める藤平であった。何回か茂吉に揺り起こされてやっと目が開く。

「おんや?茂吉がいるよ。わたしが茂吉に会いたくて仕様がなかったから、とうとう夢に出たよ...」

「父様。夢じゃありませんよ、本当ですよ」


「えっ?あれ!あれまあ、茂吉だよッ、正真正銘に茂吉だよー!


藤平は茂吉だとわかると抱きついて喜ぶ。藤平は幼い頃から茂吉を嘗めるようにして可愛がっていた。

ノン吉と違い、大人しい茂吉は藤平に逆らったことも無い。だが自分ばかりをえこ贔屓(ひいき)をすると、『いけまちぇん!』と、幼いのに毅然(きぜん)として藤平を怒る。

藤平は茂吉の利発なところも可愛かったが、間違いを正す心根の真っ直ぐな処も愛した。ノン吉の逞(たくま)しく優しい処も五黄のようで嬉しく、何よりも幼い 二人と暮らした頃が藤平にとっては一番楽しかった。

あれから何百年振りだろうか、、、手紙の遣り取りはあっても会う事はなかった。

茂吉は【御係所】【身魂抜きの宮】【魂納めの宮】の三役所の統括責任者としての仕事に加え【恵み子の学校】の校長も兼任すると云う殺猫的なスケジュールをこなしていて、帰る事は今まで一度もなかった。

藤平にしても屋敷の仕事から手を離せずにいるものだから、ふらふらしている五黄がたまに茂吉に会ったと聞くと腹が立ったが、屋敷の仕事をさぼって会いに行く訳もいかず我慢していた。

その茂吉が来てくれたのである!喜ばぬ訳が無かった。






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第九章 親子 里帰り2

前回

屋敷の居間で五黄と藤平は、久しぶりの会話を楽しんでいる。お蜜が帰還を大歓迎されていたことを聞いた藤平はホッとした。これで狐国は何もかもうまくいくだろう。

そして藤平は藤平で茂吉が九百年振りに里帰りしたことをニコニコしながら話しだす。



はじまり、はじまり



「どうしたのかい?茂吉が来てくれるなんて夢みたいだよ」

「父様ったら、大袈裟(おおげさ)ですよ」

「だってしょうがないよ。お前はとても忙しいし、もう一人のフラフラ父ーちゃんと違って私は屋敷から離れる訳もいかないからね」

「ふふ、父様は相変わらずですね」

「当たり前だよ~、一番会いたい私がお前に会えなくて、何時だって兄さまばかりなんだから腹が立つよ」

藤平は気付いていないが、茂吉の前では平気で五黄を兄さまと呼んでしまう。やはりその方が自然なのだろうし、藤平と茂吉は昔から気が合うからその所為かも知れない。

「ふふ、だからこそ会いに来ました。長い間の希望がやっと叶いました」

「だけど、お前なんでこんな夜中にお出でかい?」

「誰にも知られたくなくて、、、」

「どうしたのかい?何かいけない事でも或るのかい?」

「いいえ、仕事はとても巧くいってますよ。この頃は今までの苦労の甲斐もあって色々任せられる程になりました。だからこうして来れたのですよ」

「それならいいけど。私はお前が一人で苦労しているのかと思うと不憫(ふびん)で不憫でしようがなかったよ、、、たまに空に向かって悪たれもついてたよ。

『茂吉ばかりに苦労をさせてあんまり酷い!神々様のろくでなしー』って」

「父様ったら、、、陽の神様も月の女神様も良くご存知でしたよ。

『藤平に怒られたよ、どうしよう』って」

「あれ!そうなのかい?まずかったね」

「ふふ、いいんですよ。あたしもたまには嫌になる事もあり、逃げ出したくなった事だって、、、」

「何だ、いつでも帰ってくればいいものを、、、わたしゃ、茂吉を待ち抜いて首が長くなり過ぎて、あんまり延びたから一度切って繋(つな)げた程だよ!」

アッハハハハ

「父様ったらー!」

ワッハハハハ


二人は久しぶりに笑った。茂吉は藤平の変わらぬ愛情に触れると、幼い日々に戻ったように感じた。忙しさにかまけて会いに来なかった事を反省した。

二人は寝室を出てリビングに入ると、藤平はさっそく茂吉に自慢のコーヒーを飲ませる。コーヒーを味わうと茂吉は家に帰って来た事を実感した。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
mokichicoffee.jpg

「やっぱり父様のコーヒーは美味しいですね~。あたしも真似して作りますが、どうもこの味にはなりません」

「ふふ。そりゃそうだよ、年期が違うもの」

「そうですね。美味しいコーヒーを飲みたくなったら、此処に来ようかな?」

「そりゃいいね。私はいつでも待ってるよ」

「父様とこうするのは久しぶりなのに、会った途端にあたしは子供になっちまう」

「当たり前さ~。だって、お前とノン吉は永遠に私と兄さまの子だよ。お前達の歌を作ってくれた子供達も、もうこの世に居ないものね」

「そうですね、、、でも、あの子達は立派に生涯を全うして魂納めの宮に参りましたよ」

「だけど寂しいよ...」

「あたしもこれからは再々、ここに帰ってきますよ」

「そうしておくれ。あれ、すっかり忘れていたよ!茂吉がこっそりと帰って来た訳をね」

「ふふ、父様はやはり違いますね」

「三吉のことだろ?」

「はい、その通りです」

「お前が来た事を知れば村どころか近在まで大騒ぎになる。そうなると動き難いものね」

「はい。なるべく早く親に会って話をしたいと思います」

「茂吉自らが親に会うのかい?」

「はい。親御はこれから寂しい思いをずっとすることになります。【恵み子】が親に会えるのは親御さんが死んで【魂納めの宮】で再会するのが関の山です。

それも再会を喜ぶ事も出来ない、、、考えれば辛い運命です...」

「そうだったね...」

「最初の【恵み子】は立ち直れなくなるほどのショックを受けました。その子はあたしに泣きながら言いました。

先生!僕は親に何も言わずに出てきました。どれほどに寂しく悲しい思いをさせたか...それなのに、それなのに、やっと会えても相手は既(すで)に死者。抱きつく事すらできない!』ってね、、、

あたしは思いました。こんな事になるのだったら、せめて少しでも親と大切な時間を過ごし、お互いが覚悟を決めて別れていれば、これほどまでに悲しむ事はなかったのではなかろうかと、、、。

自分の親に寿命がないから、あたしは他の者の違いに考えが至らなかったのです。愚かでした...。【恵み子】の親とはいえ、普通の民である事に気が付かなかったのです。

お恥ずかしい話です。それからは【恵み子】にもその親にも納得してもらい、そして親子で大切な時間を過ごし、お互いが覚悟を決めてからこちらに来てもらうようにしたのです」

「それでなのかい、お前が来たのは?」

「いいえ、特別ですよ。普段は他の者がしています。今回はあたしが自分の親に会いたいからです」

ペロッ

舌を出している。

「嬉しいね~、三吉様々だね」

「本当ですね」

二人の楽しい会話が途切れる事は無かった。




今回のアップが今年最後になりました。
長いようであっという間の一年だった気がします。
往来記もようやく九章まで来ました。それも皆々様の温かい励ましあってのこと。
まだ先が見えない猫国ではございますが、末永く見守って頂けたらと思います。
来年もよろしくお願いします。

のくにぴゆう





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第九章 親子 里帰り3


前回

突然、帰宅した茂吉に戸惑うのもつかの間、藤平は嬉しくてならなかった。
九百年振りの再会なのに何一つ変わらない二人。
昔通りに藤平の珈琲を味わう茂吉。幸せな時間が流れる。


はじまり、はじまり


朝食は草助に食事を運ばせた。茂吉の帰宅は草助と家のおもだった者にだけ伝えた。茂吉を初めて見た者の中には平伏(ひれふ)して固まっている者も居た。

《ノン吉》と《茂吉》の【天授子(てんじゅし)兄弟】は、対照的な顔立ちをしている。ノン吉は短毛の漆黒(しっこく)に野性味が加わって男らしく精悍(せいかん)だ。

一方の茂吉は藤色の体毛で、毛足は長くフワフワしている。いつもにこやかに笑みを絶やさない、深い紫の目の輝きからは知性と愛があふれている。

ノン吉がしなやかな体躯ならば、茂吉はぼってりとしていて大きな毛玉のようだ。藤平は茂吉を見ている内に幼い二人の様子を思いだす。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
nontomokichi.jpg

「やい、毛玉~!」

兄ちゃんッ、おいらは毛玉じゃないよッ!そう言う兄ちゃんこそ川の棒杭(ぼうくい)みたいだよ~ッ」


「ニャッ!ニにぉーッ!!」

「ニャンだょッー!」



口喧嘩してるかと思えば、くっついて仲良く丸くなって寝ていたり。二人共、可愛くて仕方なかった。こんなに子供とは可愛いものかと...

あれが【神のお心】とも知らず捨てた親に感謝した。ボーっと、物思いに耽(ふけ)っている藤平に茂吉は優しく肩に手を掛ける。

「父様」

「あっ?おっ、ふふ。お前を見ていたら、つい昔を思い出してしまってね...」

「あたしも...ここに居ると昔を思い出します。兄ちゃんと遊ぶのが楽しくて、楽しくて、、、」

「あれから噂を聞いた者が子供を門前に捨てるようになって、お前達の兄弟が沢山増えて楽しかったのぉ~」

「はい、本当に。いつの間にか兄ちゃんと呼ばれるようになって、可愛い弟や妹が沢山出来て、毎日楽しくて仕方なかったです」

「今じゃお加奈一人で寂しいよ...そのお加奈も手離さないといけないから、、、」

「手紙に書いてありましたね。いわばあたしの歳の離れた妹ですから、幸せになって欲しいものです」

「三吉と約束したから、お紺の元へ弥吉を使いに出したけど、未だに連絡もないし、、、」

「どうせ『ついでの仕事くらいでいいよ』なんて言ったのでしょう?」

「あれ?やっぱりお前にはわかっちまうね~ふふ」

「父様は本当に子供好きですもの。お加奈を離したくないってお顔に書いてありますよ」

「あれッ。三吉に怒られちまうね!」

「ちっとも平気そうですよ」

「だけど余りグズグズしていてもいけないし、、、お紺は行商の根なし草だから、何処にいるのか行方がわからないんだよ」

「そしたらどうでしょう、【うーてん】さんにお頼みするのは?」

「ああ。そうだね」

「あのお方なら子分の小天狗が沢山いますし、何より世界中を飛び回ってますから、お紺さん一人探すのも訳はないかと、、、」

「おおー、そうだね!そうしようよ!」

「それに住まいも確か竜巻平原の大桜の木です。それほどの遠方でなし...そうだ!あたしがお頼みをしに行きましょう」

「茂吉が態々(わざわざ)行ってくれるのかい?」

「はい。だって、そのことで三吉が臍(へそ)を曲げては厄介(やっかい)ですよ」

「そうだね、あの子は聡(さと)いからね。『お加奈の母ちゃん一人探せないおじちゃんには、がっかりした!』ってきっと怒るよ」

「それじゃ、今から行って参ります」

「私も付いて行きたいよ」

「そうだ!父様も一緒に行きましょう。どうせ二、三日の事です」

「えっ!良いのかい?」

「ええ、たまに村の外に出るのも良いものですよ」

「そうだよね~!それじゃ、草助に私が居なくても大丈夫なように指図してくるよ」

結局、藤平が用事を済ますのに夕方まで掛かってしまった。何しろ藤平が留守にするなんて事は、今までに無かったくらいに稀(まれ)なので、草助もオタオタして、指示を飲み込むのに時間が掛かってしまったのだ。

「ようやく草助に任せられるよ。心配も残るけど、、、お前だったら直ぐに理解できる事も他の者には無理な話だね」

「きっと草助にも良い経験になりますよ。あたしだってここに来るまでは大変でしたよ。でもあの子達は良くやっていてくれると信じています」

「そうだね、いい機会かも知れないね。私も少しは息抜きできるかね~?」

「ええ、出来ますよ。あたしでさえこうして息抜きしてるんですから」

「ふふ。それじゃ、訪ねるのなら、手ぶらと云うのも何だね」

「そうですね。うーてんさんのお好きな品でもお土産にしませんか?」

「何が喜ぶかな?私はいつもノン吉にうーてんが作っている壷(つぼ)酒を貰ってるよ」

「ああ、あたしも兄さんから頂いた事が有ります。あれだけの美味な酒をお造りになる方ですから間違いなく通ですよ。では、おつまみになる物は如何でしょうか?」

「それがいいね。五斗の店の干物と、、、あすこは塩辛も美味しいから塩辛と、それに自家製のチーズがある」

「それはいいですね!あのチーズは美味しかったなあ~。あたしも自分の土産に持って行くのを忘れないようにしないと」

「幾らでも持って行けば良いよ。それじゃ、すぐに用意させるよ」

すっかり支度が出来るのに夜になってしまった。





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第九章 親子 里帰り4

前回

茂吉の提案で藤平も一緒に出かける事になる。始めてのお出かけに心躍る藤平であった。


はじまり、はじまり


あれもこれもと藤平は大きな木箱に詰め込むので大変な量になってしまった。

「茂吉~、すごい量になってしまったよ」

「いいではないですか、全て父様のお気持ちのお品ばかりなんですから」

「お前は私を煽(おだ)てるのが上手くていけないよ」

「ふふ、さっ行きましょう!」

茂吉は木箱をさっとお腹のポケットに収納してしまう。

「一段と容量が増えたね」

「此のくらい、屁の猫(屁のカッパ)です」

「ふふ。それじゃ、連れて行ってもらおうかね」

「はい、父様。参りましょう」

二人は洋館から中庭に出る。茂吉は満開の星空を見上げると、天に向け呪文を唱える。するとどこからか薄くて白い雲が集まって来る。その白い雲が茂吉の前に降りて来て、あっという間に階段の形になった。

「父様、行きましょう」

「あれ!便利だねえ~」

茂吉が手を差し伸べると藤平はにこやかにその手を掴み、雲で出来た階段を上りだす。二人が上り始めると雲の先がどんどん延びて行く。

もう先がどこまで続いているのかわからないほどになっている。二人の足は殆ど動いていないのに雲を上っていく。まるでエスカレーターに乗っているようだ。

「父様、夜空の散歩もいいですね」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります(いつも通り大きくなるように直しました)
hoshi.jpg

「本当だね。あれ?天の川があんなにキラキラして、手で掬(すく)えるようだよ」

「父様、星を掬ってみましょうよ」

「出来るのかい?」

「ふふ、ほら」

流れる天の川に両手を入れ、その手いっぱいに星を掬う。両手の中には無数の星がキラめいている。

「あれ~、なんと美しいのだろう!」

「父様もなさったら?」

「そうかい?それじゃ、、、」

藤平は両手をいれると溢(あふ)れるように星を掬う。

ああ~、なんて美しいのだろう!」

うっとりして見つめている。

「父様、星をそろそろ返しましょう」

差し出す手の中から星がキラキラ滑り落ちて行く。藤平は残念そうな顔をしながらも、茂吉の言う通りにする。

「あ~ぁ、私の手から星が溢れてるよ」

「お気に召しましたか?」

「なんか夢のようだよ」

「さっ、それでは行きましょうか?」

雲がスルスル動き出す。

『あそこが本街道ですよ』とか『あそこが惚(とぼ)けの森です』と、巧みに案内をしてくれる。藤平は空から眺(なが)めた事などなかったし、ここ何百年、村から殆(ほとん)ど出た事もないので新鮮な驚きに満ちた経験だった。藤平は楽しくて仕方ない。

茂吉は身を乗り出す藤平を押さえなくてはならない程だった。子供のようにはしゃぐ父親を見て、別れる日がこのまま来なければいいと思った。

藤平は他の者から見ると口煩(うるさ)く厳しいと云われているが、藤平の本質は全く違う事を茂吉は知っている。

五黄が大きな絵図を書いて指針を示すと、藤平はそれに則(のっと)って緻密(ちみつ)に仕上げていく。実際に形にしていく作業の大変さは並の苦労ではない。

藤平は菰傘村を大きな食料輸出の拠点にし、全国に街道や宿場町を造り交通網を整備し、他国への支援にも迅速に行動出来るようにした。

狐国が災害に因って困窮(こんきゅう)した時も素早く援助が行われ た。だが、感謝され脚光を浴びるのは五黄ばかり。藤平への感謝の言葉が聞かれる事は皆無と言っても過言ではない。

五黄の黒子に徹する藤平にとってそんなことはどうでもよい事で眼中にもないようだ。
茂吉はこの父の生き方を美しいと思う。

茂吉は【御係所(おかかりじょ)】を始めた頃、簡単な仕事と高を括(くく)っていた。嘗(な)めていた結果のツケは直ぐに茂吉を苦しめるようになった。

御係所には実に様々な係争が持ち込まれた。理(ことわり)に全く反する様な事は簡単だったが、微妙な係争もあった。寧(むし)ろその方が多かった。

その内に面倒になり、理由も言わずに双方を痛み分けにする。当然のように民は納得出来る理由を聞いてくる。答えないと余計に食い下がる。

『自分の判断は絶対に正しく間違いはない』と、大上段に告げる。しかし、回を重ねる毎に疑問符がでてきた。

何を面倒に思うのか?民は覚悟をして、ここに来ている。一つ、一つが重要な問題なのだ。良い悪いの判断が出来ない赤子が来ているのではない。

御係所に判断を仰ごうと、態々来ているのだ。一旦、自分の判決に疑問が生じると、今度は自分自身まで否定する。

真面目なだけに、どんどんと己を追い詰めて最後には到頭、何も出来なくなってしまった。御係所には長い列が出来てしまい困り果てた、、、。

そんな時、ふと藤平の顔を思い出した。途端に会いたくて会いたくて堪(たま)らなくなった。
一目姿が見たくなり、こっそりと【この世鏡】を覗(のぞ)いた。





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第九章 親子 里帰り5


前回

茂吉は藤平が子猫のように喜ぶ姿を見ながら、胸が一杯になってしまう。そう、あの頃、自分の仕事に迷いが生じ何も手につかなくなり思い悩んだ。そして、すがるように見たこの世鏡。


はじまり、はじまり


挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
gatukaritoubei.jpg

そこにうつる藤平は、朝もまだ暗いうちに門前に立ち、捨て子を探している。捨て子が居ないとがっくり肩を落としている。

寂しそうに屋敷に戻る後姿を泪で霞(かす)んで見れなくなる。父様はああして、あたしも拾ってくれたのであろうか、、、

毎日毎日、朝も暗いうちに一人で起きては、親に捨てられた哀れな子を救っている。誰に褒(ほ)められるでもなく、ああして毎日欠かさずに・・・

茂吉はそんな父の姿を見ていて、自分の幼い頃を思い出した。
そう、、、父様は私たちを頭ごなしに叱るという事はしなかった。

喧嘩(けんか)しても泣き止むまであたし達を根気よく待っていてくれてた。喧嘩した原因を怒らずに聞き、最後に『お父さんはこう思うけどお前達はどうかな?』

子供自身の口から答えを導き出させた。考える機会を与えてくれた。決して『子供なんだから、こうしなさい』と、強引に意見を押し付けたりはしなかった。

忙しいのに面倒くさがりもせずに、、、思い起こせば二人の父親はいつもそうだった。茂吉は心が打たれた。自分が余りにもちっぽけな奴に思えた。

あたしがしていたのは理不尽(りふじん)に怒る親の様なものだった、、、『何でもいいから、従ってろ。』話も適当に聞いていた。同じ様な問題だと尚更だった。

いつの間にか、話を聴く耳がなくなって、相手を黙らせる事を優先していた。茂吉は藤平の姿を見て己の心得違いを恥じた。

自分が答えを出すのではなく、あくまでも民に提案をするのだ。相手に考える機会を与えることが大事な事なのではないか?、、、

相談者が納得出来る答えなど本当はありはしない。だが、自分が考えて導き出した答えならどうだろう?

【御係所(おかかりじょ)】がその助けをする場所なら、それこそが、民に真に理(ことわり)を知らしめる事になるのではなかろうか?それならば出来る。

迷いが吹っ切れると次から次へと係争を解決していく。その後には【魂納(たまおさ)めの宮】【身魂抜(みたまぬ)きの宮】【恵み子の学校】の設立等、寝る間もなく働いた。

あっという間の一千年近く。今では恵み子達も成長し、殆どを任せられるようになっていた。苦しくなかったと云えば嘘になる。だが遣(や)り甲斐があった。

そんな茂吉も少しはのんびりしたくなった。頃良く《三吉》が【恵み子】と思われると云う手紙を貰った。それで好い幸いに何百年振りの里帰りを果たしたのだった。

茂吉は父の喜ぶ姿を見ていてそんな昔を思い出し、急に胸が熱くなる。

「父様、父様!」

「あれあれなんだい?茂吉が子供に返ってしまったよ」

驚く藤平をきつく抱きしめながら、茂吉は藤平に長年心にあった思いを言ってしまう。

「父様の偉大さを分かってない奴らは嫌いです。五黄の父様ばかりが光を浴びてる。あたしは悔しい、、、」

「あれれ、どうしたんだい?茂吉ともあろう者が、、、」

茂吉はもっと言いたかったが言えば言う程、なぜか父を卑(いや)しめる気がしてきた。

「あたしは・・・」

「ふふ、お前だけでもそんな風に思っていてくれる。それ以上言わなくてもわかっているよ。私はね、いつも自分が情けなくなると・・・」

「父様でもそんなことが、あるのですか?」

「もちろんだよ。例えば兄様だけが茂吉に会っていたりするとね。ふふ。それは冗談として、誰でも神様ではないのだもの。生身の体に煩悩(ぼんのう)がない訳ないだろう?」

「は、はい」

「それは少しもおかしな事ではないよ、当たり前の話さね。だけど私には自分を誤魔化(ごまか)すだけの知恵があったのさ」

「どういう意味ですか?」

「茂吉や。ご覧よ、この満天の星空を」

「はい、とても美しいです」

「なんであんなに星は輝いて見えるのかね?」

「えっ?それは・・・」

「周りが夜空で真っ暗だからじゃないのかな?」

「そうですね。確かに言われてみれば、星は昼間もあるのに輝いて見えませんものね」

「私はこう考えたのさ。自分は夜空なんだって、、、夜空があるからこそ星は輝いて見える。兄様のように大きな星は益々輝きを増して見える」

「なるほど」

「そして茂吉やノン吉、他の子供達も満天の星になって輝いている。これ、全て私の御陰(おかげ)ってね」

「ふふ、父様ったら~でも、その通りですね」

「茂吉や。何でも堅苦しく考えてはいけないよ、もっと楽しみなさい。私はああだこうだと言ってる自分も好きだし、兄様に悪たれを言っているのも凄(すご)く楽しい。

兄様は私のつまらない愚痴(ぐち)を楽しそうに聞いてくれる。わたしはね、そんな欠点だらけの自分が大好きなんだよ。だからお前にも自分自身を大好きになって欲しいよ」





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第九章 親子 ノン吉の憂鬱1


前回

藤平の姿に癒され、己を恥じた昔を思う茂吉。つい言ってしまった長年の思い、藤平は微笑みながら己のあり方を話す。

はじまり、はじまり


「あたしは父様は耐えているのかと・・・だからあたしも耐えねばと、、、」

「直ぐに茂吉は堅苦しく考えるよ。私はね、そんなに立派な猫ではないよ。だって好きなのだもの。何もかも。兄様の大雑把(おおざっぱ)には出来ない事を私は楽しくしているのだよ。楽しい事をさせてもらっているのに何を文句があるのだい?」

「でも、毎朝捨て子を見つけて・・・」

「好きだからできるのだよ。私は子供が大好きなんだもの。門前に居るのだとしたら一刻も早く会いたいじゃないか。実はね、お前が居た頃だけど、いつも兄様が先に子供を拾って来るので不思議だったんだよ。

それで注意してたら、なんとあの寝坊助(ねぼすけ)が早起きして、こそこそ門前に行っていたんだよ。後を付いていったら熊の子を抱いてニコニコして戻ってきて・・・

あの子は《熊の甚五郎(じんごろう)》だったなぁ、、、立派な大工になったものね。懐かしいねえ、、、あの子の造った家の欄間(らんま)は家宝だね」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
ranma.jpg

「小さい時から、手先の器用な弟でしたよ。今では伝説の名大工になってますものね」

「とにかくだよ、それで私は悔しくて明日は絶対に、いの一番に行ってやる!って」

「二人で競争してたんですか?」

「ふふ。そうだねえ~、お陰で暗いうちから見に行く羽目になったんだよ」

「父様達ったら・・・」

「まっ、早くに連れて来れるから、子供の体に障(さわ)らぬ内に温かくしてやれるので結局は良かったんだけどね」

「父様達は楽しいお方達ですよ」

「ふふ、そうかい?」

「そうですよ。あたしは父様達の子供で良かったです!」

「こちらこそだよ」

「あたしも父様のように自分を大好きになって楽しく仕事をします」

「そうだよ。行き詰まったら私の元で息抜きすればいいんだから」

「そうですね。息抜きしに帰ってきます」

「ふふ。私は何でも良いから茂吉がそばに居てくれるだけで嬉しいよ」

いつの間にか竜巻平原に近づいていた。

「父様、あそこが《うーてん》さんのお住まいがある竜巻平原ですよ」

雲の先が地面に着いている。そろそろ動く雲は静かで美しい。二人は地面に着くと周りを見る。

「父様、あそこに桜の木が、、、」

大きく二股に分かれた桜の大木が小高い丘の上に立っているのが見えた。

「立派な桜の木だね~」

「本当ですね、あたしも初めてこちらに伺いましたが、やはり間近で見ると迫力がありますねー!」

「それにしても、お前は何でも良く知っているね。感心するよ」

「職業病ですよ。頭の中には世界地図が全て入っていますから」

「全部かい?」

「はい。この世界の道・川・山脈・洞窟(どうくつ)・村・人数・名前、全てが頭に入ってます」

「へー!さすがに茂吉だねえぇ」

「わからないと仕事になりませんから」

「恐れ入ったよ」

「ふふ。御褒(おほ)め頂き光栄です」

「あれ、あれは?」

桜の大木から少し離れた所に丸屋根の立派なテントが建っている。

「ノン吉兄さんのテントですよ」

「あれ。こんな近場にいて、、、それなら屋敷に帰ってくれば良いのに」

「どうしたことですかね?」

「全く、、、ノンは私が煙(けむ)たいらしいよ」

「ふふ。父様も兄さんには厳しいから」

「いいんですよ、あれくらいで調度良いんです」

「兄さんはあたしのとこに来ると、『父ちゃん、俺に会うとお小言ばかり言うんだよ。怖いよ~』って、もじもじして言うんですよ」

「仕方ないね、子供みたいに、、、」

「ふふ。あたしも兄さんもいつまでもお小言頂戴したいんですから、いいんですよ」

「そんな事を言うのは怒られないお前くらいだよ」

「そうですか?」

「当たり前だよ。ノンは私に怒られる事の方が多いのだから、可哀相かもね」

「おわかりなら、止せばいいのに」

「ふふ、だって可愛いんだもの。いつまで経ってもね、、、」

「お答えになってませんよ」

「いいのさ。もう一人のふらふら父ーちゃんは怒らないから調度良いのさ」

「そうなんですか?」

「そうなの」

まず先にノン吉のテントに訪問する事に決めた。

「兄さん、ノン吉兄さん!」

ノン吉は、うーてんから貰った雲布団の上に寝ている。

「ふへぇ、、、?へっ!誰よ?」

寝ぼけ眼で二人を見る。(え"?)もう一度目を擦(こす)って見る。(じぃーッ)
そこには茂吉と藤平の顔!!びっくりして雲布団から転げ落ちる。


ドテン!







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第九章 親子 ノン吉の憂鬱2

前回

二人はつかの間の空の旅を楽しむ。目の前には桜の大木、寄り添うようにノン吉のテントがあった。二人はテントを先に訪問する、案の定ノン吉が寝ている。


はじまり、はじまり


「と、父ちゃん!?どッ、どうして・・・??」

「ノン、おはよう」

「だって、、、あの・・・その、、、」

「ちょいと早いけど遊びに来たよ」

「へっ?」

「父様、兄さんをからかっちゃいけませんよ」

「ふふ。だって、ノンが驚いて面白いよ」

ノン吉は二人が来てる事はわかったが、事態がよく飲み込めないでいる。

???

ボーとした顔をしているノン吉に茂吉が改めて説明をする。慌(あわ)てて、藤平に雲布団を千切ってクッションにすると、座るように勧める。

「か、顔を洗ってきますからッ」

茂吉を引っ張ってテントの外に連れ出す。

「茂吉~、父ちゃんと来るなら先に言っとけよーッ!」

「へっ?だって、兄さんがここに居るなんて、あたしは知りませんでしたもの」

「んなこと言ったて、、、俺だってそれなりの準備をしてだねぇー、例えば・・・」

「例えば?」

「例えばぁ~、心の準備とか・・・」

「ふっ(笑)」

「うっほん!だぁ~かぁ~らぁ~父ちゃんが喜ぶような物を用意しとくとかだよ、、、わかるだろが~!」

「気にしなくて好いんじゃないんですか?」

「そーゎいくかよッ、父ちゃん怖いんだぞ!」

「ふふ、兄さん大丈夫ですよ」


どうしたんだーい


藤平がテントの中から怒鳴ってる。

「ほらぁぁ怒ってるよぉぉ」

「違いますよ。さっ、入りましょうよ」

「もう怒ってる・・・怒ってる・・・」

ショボーン...

「兄さんってば!」

茂吉は厭(いや)がるノン吉を引っ張ってテントの中に入って行く。

「どうしたんだよ?つまらないだろが、二人していなくなっちゃ」

「すみません、兄さんは寝惚(ねぼ)けてたようです。ねっ、兄さん!」


はっ、はいッ!


「やだね、ノンは変な子だよ」

「父ちゃん!でなくて、、、父さん、コーヒーでも煎(い)れ・・・おッ、お、お煎れしますッ!」

「茂吉~これなんだから、、、何か言っておやりよ」

「兄さん、普通でいいんですよ」

「え"?だってその・・・と、と、父さんは俺の口の聞き方がいけないって・・・」

「ふふ、良いんですよ。父様は兄さんをからかっているんです」


「え"ぇーーーッ!?えーーッ!!そうだったのッ??

ひどいよぉーーッ、ひど過ぎるよーッ!

俺はどんなに悩んだかッ、、、」


「ふふ、いい薬だったこと」

二人は笑っている。

「そんなあーーぁッ」

「ノンみたいな暴れん坊には怖い父ちゃんが必要なんです」

「必要じゃないーぃ、優しい父ちゃんが良いよーぉ。」

「ははは」藤平は可笑しくて仕方ない。

「兄さんってば」

三人はいつしか大笑いしていた。三人が集(つど)うのは何百年振りだろうか。藤平は愛する自慢の息子に囲まれ嬉しくて仕方ない。

「父ちゃんは嬉しくて死にそーだよ」

「父ちゃーん」

「父様~」

三人の話は尽きない。小さい頃の話だけでも終わりがなかった。ノン吉はここの処、桃吉の事で心が鬱々(うつうつ)して晴れなかったので、余計に訪問を喜んだ。

三人の猫がニャーニャー五月蝿くしていたのだから、隣家の【うーてん】が気が付かぬはずもなく、呼びに行かなくてもさっさと仲間に加わった。

茂吉はポケットから大きな木箱を出す。すると出てくる、出てくる数々の酒肴(しゅこう)に驚喜する。

「わぁーーーッ、凄いよ!凄いよーー!」

「うーてん、失神しちゃうよ」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
shoenkai.jpg

朝から宴会が始まってしまった。うーてんは新酒を持ってくる。ノン吉は太鼓や笛をポケットから取り出し、笛を茂吉に吹かせ、自分は太鼓を叩いて大騒ぎである。

うーてん家の米八や弥八、軽八(かるはち)いつもそばに居る小天狗の煤煙坊(すすけむぼう)まで加わると収拾(しゅうしゅう)がつかないほど大騒ぎになった。

藤平まではしゃぎ通しである。茂吉も経験のしたことのない楽しさに浮かれ騒いでる。昼過ぎになると呑ん平達も騒ぎ疲れ、寝穢(いぎたな)く寝てしまう。

あっちでゴロゴロ、こっちでゴロゴロ寝ている。茂吉は魘(うな)される声に目を覚ます。ノン吉が『桃っ桃っ!』と繰り返し呼んでいる。

「兄さん、兄さん!どうしたんです?」


桃ーーっ!


ノン吉は茂吉に揺り起こされた。

「(ハッ!)茂吉かあ・・・」

「茂吉かあ、、、じゃありませんよ。どうされたんです?大変魘されてましたよ」

「桃吉の夢を見ていて、、、」

「そう言えば、兄さんが言ってらした猫ですか?」

「そうなんだよ。探しても探しても見つからないし、、、もしかして、一人寂しく【魂納めの宮(たまおさめのみや)】に行ったかとお前にも調べてもらったんだよ・・・でっ、どうなのッ!!」

「安心なさって下さい。お尋ねの桃吉は来てませんよ」

「あぁーーぁ、良かったよぉッーー!頼んだのはいいけど、今度は結果を聞くのが怖くて、聞きにいけなかったんだよ、、、」

「兄さんたら、仕様がないですね」

「じゃ、どうしたのだろうか?」

「詳しい話をあたしに聞かせて下さい」

「うん」

ノン吉は洗いざらい全てを茂吉に話した。




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第九章 親子 ノン吉の憂鬱3

前回

久しぶりの宴会を楽しんだノン吉はうたた寝をする、今日も哀しそうな桃吉が助けを求める夢に魘(うな)された。茂吉はノン吉の悪夢の原因が行方不明の桃吉だと知り、詳しく話すように言う。


はじまり、はじまり


「そうすると【皿流し川】の岩に、桃吉の毛と爪痕(つめあと)があったのですね?」

「そうなんだよ、、、だけどそこに居ないから流されたと思って、下流から川の終点の【まま子池】まで隈無(くまな)く探したんだ」

「まま子池まで!?それは大変でしたね、、、」

「ああ、、、。三天狗は、そりゃもう必死に探してくれたよ。小天狗達も総動員してくれてさ」

「そうでしたか、、、お疲れでしたね」

「うん、、、見つからなかったから本当にくたびれたよ。桃吉を竜巻遊びに誘わなければこんな事にならなかったよ、、、」

「兄さん大丈夫ですよ、桃吉はきっと無事ですよ!」

「そんな慰(なぐさ)めを言ってくれるなよ、、、空(むな)しいよ、、、」

「いいえ、そうではありませんよ。魂納めの宮に来ていなければ生きているのです!そうでしょう?」

「(あッ)そりゃ、そうだね!そーだね!!」

「と、言うことはですね、、、『助けられた』という事も考えられますね?」

「ふんふん」

「だとしたら猫に成り立てとはいえ、いい加減に戻って来てもよい筈ですね?」

「うん!」

「だのに助けた者からの『連絡もない』桃吉も『戻って来ない』、、、」

「うんうん」

「皿流し川と竜巻平原はそんなに離れてはいません」

「どうして皿流し川で助かったって言えるのよ?」

「だってあの急流を生きて下れる者等いませんよ。河童でさえ溺(おぼ)れるんですから」

「確かに」

「だけどあそこで桃吉は助けられたのですよ。間違いなく」

「だったら、なんで何も言ってこないんだ?俺達がこんなに心配してるのにッ」

「それは出来ない理由があるのではないですか?」

「何で?」

「だってそうでしょう?考えても下さいよ。五黄の父様に猫にされて間がない、つまりは人間から猫に激変したのですよ。

それだけでも桃吉の体は相当に参っています。その上竜巻の中に入って激流に揉(も)まれたのです。ピンニャン元気でいれる筈はありません。

大怪我を免れたとしても体はめちゃめちゃに疲れている筈です。だとしたら、一月や二月寝込んでいてもおかしくはないと思います。

だとしたら戻るどころか、連絡すら出来る訳ないと思いませんか?」


あーぁ、なるほどー!そうかーーーッ!!


ノン吉が余りに大きな声を出したので、周りに寝ていた者がびっくりして目を覚ます。

ニ"ャ!?ふへ?

急いで皆を叩き起こす。


聞いてくれーーッ!

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
soudan.jpg

ノン吉は茂吉にもう一度話して欲しいと催促(さいそく)をする。皆が茂吉の話を聞くと其れぞれが大いに感心する。

「さすがに茂吉!考え方がノン吉とはひと味も二味も違うよ」

うーてんがしたり顔をして言う。

「ほっとけ!」

「茂吉に最初から聞けば良かったのお」

「父ちゃんまで・・・」

「ふふ。それでその桃吉はどうしていると茂吉は思うのかな?」

「多分、桃吉は記憶をなくしている気がします」


え"ぇ"ーーーッ!?


「あたしも見た事はないのですが、【河童のガス先生】が講義に来られた時に、そういう症状があるとおしゃってました」

「どうして桃吉がそうなると思うのよ?」

「ガス先生曰(いわ)く『肉体に酷いショックがあると、暫(しば)しそのような不思議がある』とおしゃってました。多分、体の防衛本能が原因ではないかと、、、」

「何だかさっぱりわからねえよッ」

「もう、ノン吉は黙っててよ!それで?茂吉!先を言ってよ」

「はい。桃吉は全部忘れているのか一部なのかは、分かり兼ねますが、記憶の喪失(そうしつ)があるから、連絡を取る事もないのだと思われます」

「なんと、、、不憫(ふびん)じゃのおぉ」


桃ぉーーーッ!


ノン吉は天を仰いで叫んでる。

「五月蝿いですよ。それよりも兄さん、うーてんさん、皆さん、よく聞いて下さい!」

「はっ、はい!」皆が素直に茂吉に返事をする。

「桃吉に何か先々の事とか、楽しみな事など何か言った事がありますか?」

「うぅーん・・・」

「そう言えば【猫宿(ねこじゅく)】の話をしたような、、、」

「ガス先生は記憶は断片で残っている事があるとおしゃってました。それも嫌な記憶より、楽しかった事とか楽しみにしてる事等の方がより残り易いとおしゃってました。

そして記憶が喪失した者は、残る記憶の欠片(かけら)を頼りにして探すと、、、」

「それなら・・・あッ、思い出したよ!俺、猫宿で落語を聞こうって言ったよ。桃の奴、嬉しそうに『絶対に行きたい!』って言ってた!」

「うん、言ってた~、うーてんも覚えてる!」

「ならば、皿流し川から猫宿までを探すといいですよ。それに賭けてみましょうよ!」

「ああ、そうだ!そうしよう!!」

ノン吉はてきぱき指図をした。すぐにも外に出ようとするのを茂吉が止める。



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第九章 親子 ノン吉の憂鬱4


前回

桃吉が記憶喪失の疑いがあることを聞いたノン吉達は、何が何でも桃吉を探す決意を新たにした。急いで出かけようとしたノン吉を止める茂吉。



はじまり、はじまり



「兄さん、ちよっと待って下さい!」

「ニャんだよッ」

「いいですか?まずは空から探すのではなく、近在の村から尋ねるのですよ」

「なんでよッ?」

もう~いいですか!桃吉が一人で行くにしても、何も食べずに遠い猫宿に行けるわけないのです。必ず旅費を稼ぎながらになります。畑仕事を手伝ったりしてね。

又は誰か一緒かもしれません。それならいいのですが、、、まずは、『桃色の猫を見かけなかったか?』『その猫が何か言っていなかったか?』を尋ね歩くのです!」

「よし、わかったぁぁーッ!

「まだです!」


ニャんだよーッ、ちゃっちゃっと言いなよーッ!


「一日探したら、夜には皆、ここに集まって報告をするのです。そして地図に探した場所に印をつけていくのです。無駄に探しても意味はありませんからね。あたしは【皿流し川】から【猫宿】までの詳細な地図を書いて待っています。」

皆は茂吉にひどく感心をしながら、ノン吉と相談をして近在の村へと急いで飛び立った。半日も経つと手懸(てが)かり無く肩を落としてノン吉が戻って来る、すでにうーてんは帰っていた。

雲クッションにぺたり座り込んでいる。茂吉はうーてんが行った場所に丸を書いている。

「兄さん!お疲れさまでした。どうでしたか?」

「さっぱりだよ・・・」

「そうですか、、、支那傘(しながさ)村はダメでしたか、、、」

藤平は皆に温かいコーヒーを飲ませている。

「やっぱ父ちゃんが煎(い)れるコーヒーは味が全然違うよ!俺が煎れるのと何でこうも違うのかなぁ、、、」

「ふふ、ノンも嬉しいことを言うね」

茂吉が、明日から探す場所を選定しているその時だった。


御注進!御注進!


「どうした!?煤煙(すすけむ)ッ!!」ノン吉が、いの一番に聞く。

「へいッ、渋傘(しぶがさ)村で耳寄りな情報を得やした!」


なんだってぇーッ


「早く先を言いなさいッ!!」

うーてんも飛び上がって煤煙坊を掴(つか)んで揺する。煤煙坊は身の丈が三十センチ程しかないので、うーてんに揺すられ頭がぐらぐらしてる。(グラグラ~グラグラ~)

「はにょ、ほにょ、おッ、おにゃぶん、しゃべれませんにょぉぉぉ・・・」

「止しなよッ、そんなことしたら煤煙がおかしくなっちまうよ!」

ノン吉に止められ、掴んでいた煤煙坊をうーてんは仕方なく離す。

「ふはぁ~、死ぬかと思った・・・」

「死ぬ訳ないだろが馬鹿ちん!早く皆に先を話しなさいッ!」

「へいッ!渋傘村に【詩狼(しろう)】という寺子屋の教師が居ます」

「それでッ?」

「へいッ、そいつのとこにはたまに川魚の薫製(くんせい)を売りに来る河童と獺(かわうそ)の二人組がいたそうです。とても仲良しで河童は【オロ】、獺は【きゅー助】と言うそうです。

それが、それが、驚くじゃぁ~あ~りませんかぁ~」

「なんだよ~ッ?」

「早く言わないと今度は首締めるよ・・・(ジロッ)」

うーてん怖いのである。

「あわわ・・・ゎ。それがその二人組は【皿流し川】に住んでるそうです」

ニャンだってぇー!?」

これには皆が驚いた。煤煙坊は何だか楽しくなっている。(ウヒャウヒャ)

「なんでも猫を助けたと・・・名前は、、、、、、桃吉」


「ふんニャーーッ!」

「くわーッ、くわーッ!」


挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
gochushin.jpg

ノン吉とうーてんは抱き合って喜んでる。

「煤煙坊さん、それで?」茂吉が静かに先を促す。

「最初は桃吉の容態が悪くて心配したそうですが、この頃は少しは歩けるようになってきて安心したそうです。

それでオロときゅー助が言うには、桃吉は【天翔猫(あまがけねこ)】のノン吉様の名前をよく言うのだけど、自分達もよく知らないので、今度連れて来るので何か知っていたら教えてあげて欲しいと言ってたそうです」

「ニャんとぉッ!俺、これから行ってくるわッ!!」

「兄さん、まだ話は終わってませんよ」

「へいッ、そして三日程すると二人は桃吉を連れてやって来たそうです。【詩狼】が知っている事は常識的なことばかりで、大して役にも立たなかったそうで、、、

桃吉の方がよっぽど知っているようで不思議な気がしたそうです」

「そりゃ、知ってる筈だよ~(エヘン)」

「そーだよ~ぉ」

「へいッ、桃吉はノン吉兄貴の羽は『七色でキラキラして奇麗だ』と言うんですけど、どこで見たのかと聞くと、『わからない』と答えたそうです」


「ニ"ャ"ーー!」

「うーてん、泣けちゃうよぉぉ」


「煤煙坊、二人は置いといて先を話しなさい」

「そいじゃ、話します。詩狼は三人を見ていて仲がとても良さそうで、微笑ましかったと言いました。少しでも桃吉がふらふらすると二人で支えて、、、

桃吉もそれが嬉しそうだったと言ってました。それからは三人で仲良く来るようになったそうで。そんなある日、三 人は詩狼に『しばらく来れない』と言ったそうです。

団栗餞(どんぐりせん)も少しは貯まったので、三人で【猫宿】に行くと楽しそうに言ってたらしいです」






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第九章 親子 茂吉の教え1

前回


桃吉の行方が知れて大喜びをする二人、茂吉はそんな二人を見ながら考えている風・・・



はじまり、はじまり


「それじゃ、もう居ねえのかよーッ?」

「旅立った後なのっ?」

「へいッ、五・六日前だそうで」

「おい茂吉!あいつらの足じゃそんなに先には行ってねえだろ?病み上がりの桃吉も一緒だし、、、地図見て、どの辺にいるか予想してくれよッ!」

「うーてんも一緒に行くよーッ!」

今にも飛び立ちそうな二人を鎮(しず)めるように、茂吉は話し出す。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
mokichinoOshie.jpg


「兄さん。お二人の逸(はや)る気持ちはよくわかります」

「なんだよッ、急いでるんだから、勿体(もったい)ぶってねえでさっさと言えよッ

「どうしたのよッ?茂吉!」

「わかりますが、ここは思案のしどころです」

「何ださっぱりわからねぇよ!わかるようにちゃっちゃっと言わねえとブっ叩くぞッ!

ノン吉は茂吉に止められているようで、段々中腹になっていく。うーてんも同じに口を尖らせている。

プン!

藤平は逸る二人を手で押さえ、厳然と言い放つ。

「二人共、桃吉の行方が知れたは、茂吉のお陰ではなかったかの?茂吉の話をちゃんと聞いてからでも遅くはなかろう。お前達の苦労を知って尚(なお)言うのだ。余程の事となぜわからぬッ」

「父様ありがとうございます。兄さん、、、兄さんは桃吉に会ってどうなさるのですか?」

「どうなさるって、、、勿論(もちろん)ここに連れてくんのよ!」

「それから、どうなさるのです?」

「えッ?暫(しばら)くはここに居てから、一緒に旅に出るのさ」

「やはり、その程度のお考えでしたか」

にゃッ、ニャンだとーッ!?桃吉を連れて帰って何が悪いんだ!」


そうだよ、茂吉は変な事言うよ!


「あたしは良いとは思いません」

「だから、何でいけねえんだよッ?」

「兄さんはこの世で唯一の【空、飛ぶ猫】うーてんさんは【夏の門】を開ける天狗」


なんだよッ!それがどーしたって言うんですかッ!ってんだ!!


焼けくそになってる。

「本来ならお目にも掛かれない方々なんですよ、お二人は。いいですか?普通の者からすると、あなた方は神にも近いのです。

桃吉は、猫国の王である【五黄】父様に猫にされました。そしてノン吉兄さんに気に入られ、弟分として可愛がられて又、うーてんさんを始めとする天狗様達とも知己(ちき)を得たのです。

普通なら考えられない方々と知り合ったのです。【竜巻遊び】なんて、あなた方だからこそ出来る遊びです。

桃吉は普通でない経験はしていても、逆に普通の経験をしていないのです。普通の猫がするべき生活をね、、、皆無(かいむ)と言っていい程です。

兄さんもうーてんさんも、とても桃吉を可愛がってらっしゃる。まるで赤子のように、、、

それは桃吉にとって良いことですか?

兄さんに『右を向け、左を向け』と言われれば、何も分からない桃吉はきっと従うでしょう。最初はいいですよ。だけど、その内に自立心の欠片(かけら)もない猫になりませんか?

この世界で凄い力を持つお二方に、おもねる猫にならないと言い切れますか?

あたしなら楽だからそうなりますよ。おべんちゃらだって何だって言って、二人の機嫌を損なわないよう、ひたすら卑屈(ひくつ)になります。

だって放られでもしたら、この世界で生きていく事に自信もなければ経験もない。桃吉がそうならないと言えますか?」

う"そんな事、、、考えもしなかったし・・・」

「うーてんもだぁ・・・」

二人共しんみりしている。

「長くなりましたが、あたしが言いたいのは三人で苦労しながらも楽しく旅をさせろと言っているのです。何の妖術もなく、空も飛べない普通の猫と河童と獺(かわうそ)の旅。

お腹が空けば川で魚を獲り、眠くなれば草原で寝る。団栗餞(どんぐりせん)が無くなれば働くかもしれません。お互いが思い遣って足らない処を補い合う、、、

気に入らなければ喧嘩(けんか)もするでしょう。だけどそんな経験が大事なことなのです。それが桃吉の為。引いては兄さんの為にもなるのです。

だってそうでしょう?桃吉がこの世界で初めて良い友達を得て、その友達と旅をする。良い事も悪い事もあるでしょうが、全て桃吉には良い経験となります。

その経験は必ずや己の血肉になる筈です。かたや、イエスニャン(イエスマン)の桃吉では、今にきっと兄さんの重荷になるでしょう。

処がですよ、艱難辛苦(かんなんしんく)を経験し、少しでも逞(たくま)しくなってる桃吉だったらどうですか?生意気も言うようになるでしょう。

でも、この世界で友達もいて生きていく自信もついている自立心ある猫ならば、何(いず)れ兄さんの助けも出来るようになりはしませんか?

右腕とまではいかなくても、きっと心の支えくらいにはなるかも知れないですよ。どうですか、そう思いませんか?

このまま迎えに行って木偶(でく)の坊を造るのか?それともここはグっと堪(こら)え、支えになるような弟分を猫宿で大人しく待つか?と言っているのです」

「俺はそんなふうに桃の事を考えてなかったよ、、、」

ショボーン

「うーてんも・・・」

「兄さんが初めて連れて歩こうと思った猫です。良い猫に決まっています」






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第九章 親子 茂吉の教え2



前回


茂吉に説得をされたノン吉とうーてんは、自分達の考えが足りなかったことを知る。


はじまり、はじまり


「そうだな、、、ボーっとしてるけど可愛い奴だもの」

「ふふ、それでどうなさるのですか?」

よし!俺も【天翔(あまがけ)猫】のノン吉だッ、猫宿で待ってるよ!心配だけど仕方ねぇよ、きっと一人前の猫になってくれるだろうさ!」

「うーてんもその方が良いと思うよ」

「だけどそうなると気が抜けちまうなあ~、何も考えつかねぇよ」

「ノン吉はその桃吉とやらを大分気に入っているようじゃの?」

「なんか、【コタ】に似てるんだ」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
nonchildren.jpg
第二章 旅立ち 昔語り5 参照

「【コタ】・・・あぁ、あの子は狐の子だったが、、、」

「あの桃色と雰囲気が似てるんだよ」

「兄さんが可愛がっていた【コタ】ですか?そう、、、あの子は綺麗な桃色でしたね...」

「あの子は流行病(はやりやまい)であっけなかったのお...手を尽くしたんだが、、、」

「いい子でしたものね。太い尾っぽをクルクル回して・・・」

「あぁーぁ。なんかしんみりしちまった、、、することもねえし、旅に出るかな?」

「うーてん、つまんないよーぉ

「だって当分はあいつら猫宿には来ねぇだろ?ここに居ても、あそこでずっと待っていても芸なしだしよ」

「あっ!そうでした父様、あたし達がここに来た用事をすっかり忘れてましたよ」

「おお、そうだったよ~。で、何だっけ?」

「ふふ、惚(とぼ)けてらっしゃる」

「何よ?」

「いえね、三吉からの宿題がどうにも出来ないので、うーてんさんにお頼みしようと来たのですよ。そしたら兄さんもいらしゃるし、、、」

「そうだ、ノン吉にも頼もうかの?」

「何よ?」

「【お加奈】という子がいるのですが、その子の母親を探して欲しいのです。名前は【お紺】歳の頃なら三十前後。服の行商をしているので宿を泊まり歩いてると思います」

「そいつは、確か桃吉が三吉に頼まれた母親探しかぁ?ふふ、これも何かの縁だな。そんで柄の特徴はよ?」

「耳と足先だけが黒く、後は真っ白です」

「そんなの探すの簡単さ。それでいつまでに?」

「早ければ、早い程」

「見つけたらどうするの?」

「屋敷に連れて来て欲しいのです」

「そうか、それじゃ今から行って来るか?」

「うん、そうしよ。子分達に総動員かけるよ」

「すまぬな。うーてんには世話ばかり掛けるのお」

「やあね~、藤平も茂吉もうーてんの大事な友達。気にしないでね!」

二人はテントから出ると、ノン吉は七色の翼を出して西に飛び立って行った。うーてんは上空に飛び立つと口笛を吹く。

ワラワラそこら中から小天狗達が集まってくる。うーてんが命令すると小天狗達は四方八方に散って行く。うーてんは、眺めている二人に手を振り北に向かって行った。

「さっ、父様。帰って待ちましょう」

「そうだね、けっこう面白かったね」

「そうですね。出掛けるのは楽しいですね」

藤平達が屋敷に戻って三日程経っていた。その日は朝から雨が降っていた。茂吉が目覚めると、雨だれがシトシト窓のガラスを叩いてる。

「ここは暑いから、少しは涼しくなるといいけど、、、うん?あれ?あれは兄さん!」

茂吉が窓を何気なく見ると、灰色の雨天の空に小さな点が見えた。その点は見る見る大きくなっていく。遠目でも分かる【七色】に輝く美しい羽。

雨粒をものともしないで優雅に飛んでくる。大きな篭(かご)をぶら下げている。茂吉は急いで洋館から中庭に出る。


兄さぁーん!こちらですよーぉ!


大きな声で叫ぶ。ノン吉も気が付いたのか、急降下する。あっという間に地面に着地した。

「いやーぁ、酷ぇ目に合ったよぉ~。雨なんか降るんだもの」

「兄さんお疲れさま」

「いいってことよ~。【お紺】さん!もういいよ、地面に着いたよ」

ガサゴソ大きな篭の蓋(ふた)が開く。中から両耳だけ黒い真っ白の美しい女猫が顔を出す。

「あのぉ、、、出ても宜しいのですか?」

「さぞやお疲れでしょう。さっ、あたしの手を取って下さい」

茂吉はお紺に手を差し出す。お紺は遠慮しながら茂吉の手を借りて篭から出る。

「すみません、有り難う御在ます。あのぅ、、、あたし、お紺と言います」

「お紺さんよ、こいつは茂吉だよ!俺の弟さ」


えっ!?あの茂吉様???


お紺は驚いて固まってしまった。それはそうだろう。この世界の柱とも云うべき有名な兄弟に会っているのだから、お紺が固まってしまうのも無理からぬ事だった。

「お紺さん、初めまして。あたしは茂吉と言います、宜しく」

はっ、はい!あたしこそ宜しくお願いします!!」

汚れるのも構わずに地面に平伏(ひれふ)す。






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第九章 親子 茂吉の教え3


前回

茂吉に諭され、気持ちを切り替えたノン吉はお紺探しを手もなくやってのける。

名高い茂吉を前にしたお紺は、見えない威厳に圧倒されたようにひれ伏してしまう。



はじまり、はじまり



「お紺さん、止しなよ。茂吉も喜ばないよ」

ノン吉はお紺を抱えるようにして立たせる。
okon.jpg


挿絵参照↑↑↑  絵をクリックすると大きくなります

「すみません、でも・・・」

「さっ、とにかく家に入りましょう」

「あのよ、俺はこのまま行くからよ」

「どうしてです?お茶くらい飲んでいったらどうですか。雨だって降っているのに、、、」

「だってよ、さっき【香蘭坊(こうらんぼう)】がさ、(さーてんの子分の小天狗)飛んでる俺に泣きつくのよー。」

「どうしたんです?」

「【さーてん】と【ぐーてん】が、大喧嘩(おおげんか)してるってのよ~。『風呂に入れ!』『入らない!』が原因らしいけどね。

【うーてん】も止めてるけど聞かないらしいのよ、あの天狗様達はさ。それで俺に泣きついて来たのよ」

「【さーてん】さんは【ぐーてん】さんに五月蝿いですから、さすがの【ぐーてん】さんも意地が焼けたのですかね?」

「さあね~、どうせ行けば行ったで仲良くしてたりするから阿呆くさいけど。行かないと皆して拗(す)ねるのよ~、質(たち)が悪いんだ」

「ふふ、わかりました。それじゃお気をつけて」

「じゃあな、お紺さん!またなッ」

「あっ、有り難う御座いました。ノン吉様もお気をつけて、、、」

「はいよ!それから茂吉、父ちゃんに宜しく言っといてな!」

「はい、伝えます」

ノン吉は、西に向けて勢いよく飛んで行った。

「では行きましょうか?」

「あのぉ...茂吉様、あたしに何の御用でしょうか?」

「それは後にしましょう。それより中に入りましょう」

茂吉はお紺を洋館の応接間に通すと急いで藤平を呼びに行った。お紺は噂でしか知らなかった藤平の洋館に案内されひどく緊張した。

部屋の設(しつら)えの立派さはお紺にも良く分かった。絹張りの長椅子は美しい《菫(すみれ)のモチーフ》
テーブルには象眼(ぞうがん)で《露草の模様》窓の枠にも《百合の模様》が彫り込んである。

『花の部屋かしら...?』と思った。待っている時間は少しも辛くなかった。お紺もやはり女、美しいものに囲まれているのはとても楽しい。

まして趣味のいい調度品のそばに居るだけで心が和み、つい昔が思い出される。これ程立派な物ではなかったが、夫婦で選んだ趣味のよい品があった。

昔は立派な大店の奥様だっが、夫の病死から全てが狂ってしまった。全てを夫任せにしていたから、突然の出来事に右往左往するだけで、悪い方に転がっている事にさえ気が付かなかった。

頼る実家も兄弟も無かったが、自分にはお銭があると高を括(くく)っていた。すでに団栗餞(どんぐりせん)の年限がま近に迫っていた事にも気が付かず、金庫の扉を開けた時は既に遅く、あれだけあった団栗銭は全て粒銭になっていた。

途方に暮れていた時に限って、矢のような支払いの催促。少しは待ってもらえたが、誰が言ったか店が潰(つぶ)れると云う噂が広まり、今度は借金の返済も全部一辺に返せと!強面(こわおもて)の無理難題。店も思い出の品も全て売り払うしかなかった。

今ならば違う選択肢も選べた。亭主と一緒に店を経営していれば良かった。『奥様』等と言われ、いい気になって『芝居』だ『旅行』だと、遊んでばかりいた。

亭主の体の異変にも気が付かない愚かな女房だった。『後悔先に立たず』とはあたしの為の言葉よね...と、自虐的になっても、お紺にはたった一つだけ、残った宝があった。

可愛い【お加奈】・・・絶対に引けない踏ん張り所だった。『立派に育てて見せる!あたしは頑張るんだ!』と、店に少しだけ残った反物を背負って行商を始めたのはいいが、最初の勢いはどこへやら。

情けないかな、今までのんべんだらりと奥様をしてきたツケが廻って、仕事に疲れ・・・育児に疲れ・・・、到頭、乳飲み児にさえ飲ませる乳が出なくなった。

結局あたしは【お加奈】まで手離してしまった、、、何をやっているんだろう.....心のより所を人様に預けてしまい、今では晴れ着を買う銭を貯めるくらいが唯一の楽しみになっている。本当あたしって何してんのかしら.....

深い考えに捉(とら)われていた時にドアが開いた。入ってきたのは藤平と茂吉。二人ともニコニコしている。お紺もさすがに藤平まで出て来ると尋常の事でないと緊張する。

「お紺、久しぶりだね。やっとお前に会えたよ」

「あの...もしやして、お加奈に何かあったのですか!?ノン吉様があのように速く空を飛んでお連れ下さいましたのには、急がなくてはならない理由があるのではと、、、

それならば一目だけでも【お加奈】、、、」

「お紺さん、そう矢継ぎ早に言うものではありません。」

茂吉に嗜(たしな)められてお紺は、恥ずかし気に下を向いてしまう。






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第九章 親子 茂吉の教え4


前回


突然、ノン吉に連れてこられたお紺。部屋の雰囲気にホッとしているのもつかの間、二人の登場に心は千々に乱れるのであった。


はじまり、はじまり



「お紺、今まで大分頑張ったようだね。悪い知らせがあってお前を呼んだ訳じゃないから安心なさい」

「はい。あたし勘違いしまして、、、お恥ずかしいです」

「私はね、お前さんには強さが必要と思っていました。あれからのお前さんは苦労が身となり、血肉になって立派な商売人になりました。

生半(なまなか)の者に出来る事ではありません、さぞや辛かったでしょう」

「そんな、、、とんでもない事です。こちら様でお加奈を預かって頂けたので、あたしは何も気にせずに働く事が出来ました。それがどれ程に有り難い事か、感謝しても仕切れぬ恩を頂いたのです」

二人の話を聞いていた茂吉が徐(おもむろ)に訊く。

「お紺さん、あなたはもう充分にお一人で生活できるようになりましたね?

そこで如何(いかが)でしょうか、、、あなたもまだまだお若いのだし、再婚とかお考えになりませんでしたか?もしもそうで在るならば遠慮は無用ですよ。

藤平様もお加奈が嫁に行くまでこのまま預かっていたいと仰有(おっしゃ)っております。如何でしょう?」

藤平は妙な事を言い出す茂吉を不信気に見る、目で頷(うなず)く。(何やら考えがありそうだな・・・)藤平は合点した。

「あの、、、茂吉様。あたしは全くの半人前で御座います。

お加奈をこちら様に預けてから、少し経つとあれだけ出なかった乳が出るようになったのです。あんなに飲ませたかった子にはあげれなかったのに、、、泣く泣く川に自分の乳を捨てました!

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
nakunaku.jpg

とても辛かった、、、辛くて、辛くて・・・それであたし乳の出ない母親が居ないか旅先で尋ね回って、乳の出ない母親が居ると聞けば恥を承知でそちらに伺って、そのお子に飲ませた事もありました。

可愛い手であたしの乳を押す手の愛らしさ・無心に飲む子の愛しさに、心は千々に乱れました。なぜ我が子にやれぬ乳を他の子にって.....でもお乳が張ると又、その苦しみを忘れて探します。

そんな事を暫(しばら)く繰り返していくうちに乳も出なくなりました。そしてあたしは、自分が悪いのに自暴自棄(じぼうじき)になってお酒も沢山飲みました。

男とも沢山遊びました。そうして襤褸襤褸(ぼろぼろ)になって行く自分に、心の中でいつも【ザマアミロ!】と言っていました。『自分の産んだ子を捨てた女が辿(たど)る道は、今、お前が歩いてる道だよ!無様な姿だよ!醜い女だ!』って、、、ぅっ(涙)」

「苦しんだのですね?」

「いいえ、少しも苦しんでなんかいません!苦しみ足りないんです!親ならばお加奈が成長して行く様子を見ながら己も成長出来たのです。

それを少しばかり苦しいからって子を捨てて、自分だけ一人で立つようにしたんです!そんなの、一人立ってはいても一生半人前なんですッ!

「お紺、お前がそんな苦しみを...」

「お紺さん。でも、今のあなたを見る限りでは普通の暮らしをされているように見受けられますが?」

「はい、、、あたし又懲(こ)りずに死のうと思いました。とことん弱虫だったんです。【身魂抜きの宮】に行く気力も無く、目の前にあった川に入ってどんどん行くと、その内に足が着かない深みに行きました。

息が出来なくなってきた時、あたし・・・自分に無性に腹が立ってきて

お前はそれでいいのか!?何でも中途半端にして、お加奈の事も抛(ほう)り放したままでいいのか!


?晴れ着の一枚買ってやる事もしないまま死ねるのか!?


ってそんな事を考えたら、無我夢中で泳いでいました。それからは自分でも褒めてやりたいくらいに頑張りました。

お加奈に、年に一度しか買えなかった晴れ着も、この頃は二度も買えるようになりました。晴れ着をあげるという名目を勝手にこさえて、こちらのお屋敷に伺って藤平様にお渡しする。

直接渡す事は出来ずとも、行き道帰り道にお加奈の姿を見れる嬉しさ・楽しさが今のあたしの生き甲斐でございます!」

「そうだったのですか。あたしはあなたを試すつもりで再婚の話をいたしましたが、とんでもない間違いでした。お紺さんは善い母親ですよ、感心しました」

「本当にのぉ、、、猫としても立派に成長しとる。お紺よ、私も至らなかったのよ。お前の苦しみも然(さ)り乍(なが)ら、私は一番大事なことを忘れておったよ、、、」

「何でしょうか?」

「私もすっかり気が付かないでいた愚か者よ。教えてくれたのが三吉よ」

「えっ、三ちゃんが?」

「そうよ。あの子が、『お加奈に母親が居ないのはいけない』と教えてくれたのよ。お加奈が熱を出し、広い部屋に独ぼっちで寝ているのを見ると『絶対におかしい!』

『なんでお加奈には付き添ってくれる母ちゃんが居ないんだ!?』と、泣いて訴えるのよ、、、私は【はッ】っとしたよ。






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第九章 親子 茂吉の教え5


前回


お紺の過去は辛く壮絶なものであった、そんな苦労を乗り越えた今のお紺には強い自信が溢(あふ)れている。満足そうに見ていた藤平はきっかけとなった三吉の言葉を話し出す。


はじまり、はじまり


お加奈の寂しさを何故今まで失念出来たのだろう?お紺の猫としての成長も大事だったが、お前が言っていたように『母子一緒に成長するのが一番だ』 と、三吉に言われて気が付いたのよ」

「本当ですね、親子でいるのが一番ですものね」

「.....そんな図々しい事をあたしはお願いなんて出来ません、、、」

「お紺。これはね、お前の為だけじゃないよ、お加奈の為なんだよ。これからのお加奈には益々母親が必要なのだよ。

今のお前は生きる術(すべ)も教えられる。猫としても、商売人としても立派にやっている。私からもお願いするよ、一緒に暮らしなさい!」

「うウッ.....」

お紺は泣いている。お加奈と暮らす事をどれ程に夢見ていただろうか、、、いざ現実になると『お加奈に許してもらえるのだろうか?』と、喜びと不安に心が乱れる。

「お紺さん、お加奈はあなたの血を分けた子です。きっとあなたを受け入れてくれますよ」

「そうでしょうか?」

「いいではないですか。これから少しづつ、一歩づつ親子を始めればいいのです。そんな親子があってもいいでしょう。どうせ藤平様の事ですから、菰傘村に店を用意する算段ですよ」

「ふふ、その通り。私も全然姿が見えないのは耐えられないからのぉ~、いいかな?お紺」

「そんな、、、そこまで甘えては、、、」

「それこそ藤平様の我が儘(まま)なんですよ。だけどお紺さん、きっと聞いて上げて下さいね」

お紺は泣き崩れて平伏(ひれふ)すと顔も上げずに泣いている。

「(涙)、、、何から何まで・・・有り難う御座います・・・アリガトウゴザイマス...」

「さっ、そんなことは止しにしましょう!」

茂吉はお紺を長椅子(ながいす)に座らせ、藤平に言った。

「美味しいコーヒーをご馳走して頂けませんか?」

「ふふ、勿論(もちろん)だよ」

藤平は部屋毎にコーヒーセットを置いてある。興奮して泣いているお紺も久しぶりに漂って来る芳醇(ほうじゅん)なコーヒーの薫(かお)りにいつしか心も安らぐ。

「さっ、お紺。飲みなさい」

藤平は出来立ての熱いコーヒーをお紺に差し出す。

「いい薫りですねぇ」

「お紺に振る舞うのはあれ以来じゃな」

「はい。あたしには悲しい思い出の薫りでした・・・でも、今日からは嬉しい思い出の薫りになります!」

「良かった事」

「父様、(あ゛ッ)藤平様、、、あたしにも下さい」

「ふふ、ちょっと待ちなさいよ」

藤平と茂吉もコーヒーを飲むと、とてもホっとした。お紺がお加奈の母親に相応しい猫に成長していた事が嬉しかった。

「これで三吉に怒られなくて済むよ」

「よう御在ました」

お紺が落ち着くと、二人はさり気なく、今からお加奈に会いに行くように促(うなが)す。お紺も頷(うなづ)くと三人で部屋を出て行った。その日は雨だったので子猫達は、五黄屋敷の子供部屋で遊んでいた。

渡り廊下を歩いていると襖越(ふすまご)しに元気な声が聞こえてくる。三吉が誰かに本を読んでいるようだ。藤平がそろそろ襖を開ける。三吉がすかさず藤平を見つける。

「あっ、おじちゃん!」

「三吉、ようやくお前の宿題ができたよ」

「えッ?なァにィ~?おいら、そんなの知らないよぉ~!」

「ほら」

二人の陰に隠れていたお紺を前に出す。

「あっ!おばちゃん・・・」

お紺は藤平と茂吉に黙礼をしながら三吉のそばに行く。

「三ちゃん、ありがとね!本当にありがとうね!」

「へへ、おいらよりお加奈のとこに行ってやって」

「ありがとう」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
hahatoshite.jpg

お加奈はお種とままごと遊びをしている。お加奈の黒くて可愛い耳がぴくぴくと動いてる。何かを真剣にやっているのだろう。そばに行って二人の前にお紺が座る。

「お種ちゃん、少しお加奈ちゃんを貸してもらえる?」

「あ、おばちゃぁん」

「お種、こっちにお出で!」

三吉がお種を呼ぶと、お種は何も分からずに三吉のそばに行く。お加奈は夢中でお箸(はし)の向きを整えている。

「おっ、お加奈ちゃん・・」

お加奈は突然目の前にお紺が居るので驚いてる。

「あニャ?にゃぁ~」

お紺は次の言葉が出てこない、出てくるのは泪(なみだ)だけである。いつもと様子が違うお紺を見て、お加奈は不思議そうにしている。泪をぽろぽろ零(こぼ)してるお紺の顔に手をやり泪を拭いてやる。

「にゃぁニャ~ニャァ」

お紺は振り絞るようにして声を出す。

「お加奈ちゃん、、、おばちゃん、お加奈ちゃんのお母さんになってもいい?」

「ニャァ?にゃァ~~~ッ」

お加奈はいきなりお紺に抱きついた!

小さい手でお紺を確りと掴(つか)んでいた。お加奈も前から少しは感じていた。自分とお紺の柄が似ている事、お紺に会うことがあるといつも藤平父ちゃんから綺麗なおベベが貰えた。

じかに貰えなくてもきっとお紺がくれた品だとお加奈は小さいながらも知っていた。


お加奈ーーっ!!


ちぁちぁ~ん


母子は抱き合っていた。それ以上の言葉はいらなかった。




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第九章 親子 三吉の長~い一日1

前回


お紺とお加奈親子は苦労した分だけ幸せになるだろう。なにしろ藤平と云う強ーーい味方がいるのだから。


はじまり、はじまり


「父様、あんなに似ていたのですね」

「本当に瓜二つじゃ、紛(まご)う事無く親子じゃ」

「おじちゃん、ありがとう!」

「三吉、礼を言うのは私の方だよ。

お前に言われなければ、とんでもない『猫でなし』になっていた処だったよ」

「気にすんニャよぉ」

「(?")・・・」

「ふふ、あたしを三吉に紹介して下さい」

三吉も藤平のそばにいる藤色のふかふかした長い毛の猫が気になっていた。ニコニコして見ている。とても優しい目で見るので何だか擽(くすぐ)ったい三吉だった。

「おお~、そうであったわ。三吉、これなるは【理(ことわり)知る茂吉】で、
あぁ~るぅぅぞぉ~

藤平、芝居掛かる。


えぇーーーっ!あの理知る茂吉ぃーーーッ!?


「こらッ、呼び捨て等とんでもないッ!」

「ごめんなさぃ...」

「ふふ、いいんですよ。三吉、あたしは茂吉です。宜しくね」

「こっ、こちらこそ、、、あっ、あのぉ・・・サイン下さい!」

「へっ?」


おぉーーい!【理知る茂吉】が居るぞぉーッ、

サイン貰えるぞーぉー!!



これには藤平も茂吉も、泣いて抱き合っていたお紺も驚き呆れた。大人猫も三吉には敵(かな)わないのである。茂吉は『ニャーッ!』と言い乍(なが)ら寄って来る子猫達の頭を撫でながら、其れぞれがポケットから出した小さな手帳にサインをしてやる。

子猫達は大満足である。騒ぎが静まるとお紺に世話を任せ、二人は三吉を連れ洋館にやってきた。部屋に入ると三吉は少し緊張をする。藤平の顔を見、茂吉の顔を見て何事が起きるのだろうかと不安そうな顔をする。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
mensetu.jpg
絨毯の画像は写真を使いました。

「そんなに緊張してるのは三吉らしくないですよ」

「だけど、、、おいら・・・無理だょぉ」

「どうしてでしょう?」

「だって、おいらだけなんてさ・・・おいら、こまっしゃくれてるからさぁ~」

「ふふ、自分でそんなこと言うものではありませんよ」

「そうなの?藤平おじちゃんも茂吉おじちゃんもおいらみたいな子供の話をちゃんと聞いてくれるけど、おいらの父ちゃんなんて酷いんだょ」

「どうしてです?」

「だって、おいらが何か言うと『ガキは黙ってろ!』って。おいらだって子供なりに考えて言ってんのに、父ちゃんなんて丸きり考えないで『こまっしゃくれたガキだよ』って、、、もう頭に来るよ~ぉ」

「ふふ、大変ですこと」

「母ちゃんだって、何考えてるかわかんないよ。だってね、仲が良いとおいら達が居ても平気でチュッチュッしてんの」

「ははは、世の吉夫婦らしいの~」

「だけどね、直ぐに喧嘩もするんだょ」

「困りましたね」

「うん。たいがいね、父ちゃんが釣りに行くとね、母ちゃん必ず角を出すんだょ」

「どうしてですか?」

「『ふん!毛の生えた魚(おとと)を釣りに行ってるよッ!』って」


あっはははっあははは~


二人は可笑しくて仕方ない。三吉の観察眼に脱帽するばかりである。

「お勉強は進んでいるのですか?」

「え~なぁにぃ~?お勉強って言うのか分かんないけど、ご本はたくさん読んでるょ。

藤平のおじちゃんがこの頃は貸してくれるから凄く嬉しいけど、ちょっと難しいんだよねぇ~。おいらの知らない字が結構あってさ」

「それは大変だこと」

「うん、そうなの」

「父様、この子にどんな本をお貸しなんですか?」

「そうだねえ、、、【ブレンド考】【珈琲通に捧げる本】【商売人の嗜(たしな)み】【こうして売りさばけ】とかだね」

「と、父様.......」

「まずかったかね?」

「ええ、、、六歳の子猫には早過ぎるかと・・・」

「ふふ、いけなかったね」

「今度はあたしがご本を貸しましょう。そして、あたしがここに居る間は一緒にお勉強をいたしましょう。どうですか?」

「本当!?おいら夢みたいだぁ~、そしたら今日から教えて頂戴!」

「すばらしい向学心ですね。とても良い事ですよ。それではその前に尋ねたい事があります」

「なぁに?」

「【恵み子】と云う言葉を知っていますか?」

「うん、知ってるょ!おいらは【恵み子】だって藤平おじちゃん言ってたもの!」

「そうですか。ではその【恵み子】が将来どんなことをするようになるかも知っていますか?」

「知ってるょ。【御係所(おかかりじょ)】と【魂納(たまおさ)めの宮】と【身魂抜(みたまぬ)きの宮】の役人になって務めるの。すごくおつむが良くないと出来ないんだって。おいらにぴったりだょ!」

「・・・」

「だけど、どうやったらお役人になれるか判んないんだぁ」

「困りましたね」



 
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第九章 親子 三吉の長~い一日2


前回


三吉の子供ならではの無邪気さ、明るさにタジタジの二人であった。



はじまり、はじまり



「うん。それでね、父ちゃんに訊いたの。そしたらね『あそこに行けるのは、そこいらのこましゃくれたガキには関係のない話なんだ。

【恵み子】様だけ!の話であって、お前みたいな小生意気なくそガキには関係ないのー』って。おいら頭に来たから、『おいらは【恵み子】なんだっ!』って言ってやったら、

父ちゃんは『お前が【恵み子】様なら腹で茶を沸かして、次いでに村を逆立ちで一周してやるよーッ。ふん、ばぁーか』だって」


ははははは


挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
oyako.jpg

「そんでね、おいらがホラばかり吹いているから、『頭から《ホラ蕗(ふき)》が生えている』って」


はははは~


「だから、おいら言ってやったんだょ『父ちゃんこそ、《ロクデ梨》が生えている~!』って」

親子ならではの会話に、他人では真似の出来ない情愛が感じられ、茂吉はこの親子を引き離す事に辛さを覚えた。三吉は一見、父を貶(けな)してるようにも非難してるようにも聞こえる。

だが、三吉が父を大好きで仕方ないのは見え見えである。答えがわかりきっている事を敢(あ)えて父に尋ねる。三吉の愛らしさを果たして世の吉が理解しているのか逆に不安にもなるが、この親子はそれでいいのだろう。

「三吉がもしも【恵み子】だとしたら、これから大変ですよ」

「どうしてよぉ?」

「【恵み子】だと学校に入る事になります」

「おいら、学校に行きたぁーい!」

「お勉強が大変ですよ」

「望むところだぁ」

「・・・」

「ふふ。三吉は普通じゃ、へこたれないようだよ」

「そのようですね。でもその学校は、とてもここから遠いいのですよ」

「ふぅ~ん。通えないのぉ?」

「そうです。それにもっと大変な事があるのですよ」

「なあにぃ?」

「【恵み子】の学校に入ると、もう二度とお家に帰れません。三吉の大事な家族とも会えなくなります」

「どうしてなのぉ?」

「厳しいお仕事に就く事になるからですよ」

「お役人の仕事ってそんなに大変なの?」

「地縁・血縁を断ち、清廉潔白(せいれんけっぱく)で理(ことわり)を成す」

「なぁに~?とても難しいょ~」

「茂吉、三吉には難し過ぎるよ」

「ふふ、つい、、、。

そうですね、では例えば三吉が学校に通って卒業してお役人になりました。最初は【身魂抜(みたまぬ)きの宮】に勤めました。そこに何と、三吉の知っているお紺おばさんがやってきました。そしたら三吉はどうします?」

「どうして死のうとするのか訊くし、止めなよって言うよ」

「それはいけないのです」

「どうしてよぉぉ」

「【身魂抜きの宮】では役人は必ず黙って魂を切り抜くのです」

「どうしてなの?」

「そのように決まっています。なぜならば【身魂抜きの宮】そのものが大変な場所に建っています。《中有山(ちゅううさん)》という山の麓(ふもと)にあります。その山は辿(たど)り着くだけでも命懸けの山です。

装備もしなくてはなりません。そこに行く者は行き道だけの装備だけで精一杯なのです。それだけの覚悟をして身魂抜きをしてもらいに来ます。本人が止めたいと言わない限りは黙って身魂抜きをします」

「そんなぁーぁ」

「色んな経験を積んで成長をする魂もあれば、試練に負けて挫折する魂もあります。魂の寿命を立派に終えて【魂納(たまおさ)めの宮】に行く者あれば、【身魂抜きの宮】で魂を切り取られて行く者もいるのです。

切り取られた魂は本人の希望通りに生まれ 変わります。そして、繰り返すのです。同じ事を何度もね、、、魂が気が付くまで続けられます」


うゎーぁッ!


「同じ試練に遭(あ)わされます。挫折(ざせつ)の原因となった同じ苦しみを何度も味わうのです。結局は魂に挫折は許されないのです。どんなに時間が掛かっても必ずや克服させるのです。魂とはそのように出来ているのかもしれません」

「じゃぁ、おいらが止めたりしたら、おばちゃんの魂の成長を止めちゃう事になるの?」

「その通りですよ。神々様は一見、魂に厳しい試練をお与えの様ですが、実はそうではないのです。『もう一度、もう一度、、、』と何度も機会を与えて下さいます。

そして漸(ようや)く気が付いた魂は二度と挫折に負けず、天寿を全うして【魂納めの宮】に参るのです」

「そうなのぉ.....」

「三吉にできますか?」

「うーん、わかんないよ。今すぐにお返事しないとだめなの?」

「いいえ、そんなことはありませんよ。ゆっくり一生懸命に考えればいいのですよ。時間は沢山ありますからね」

「うん、いっぱい考えてみるよ!だけどさぁ~、茂吉おじちゃん!おいら、わかんないんだけどさぁ、どうして親に会えなくなるの?」

「そうですね、【恵み子】の学校のお勉強が大変なのですよ。百回生までお勉強しなくては卒業出来ないのですよ」

えーぇッ!そんなにお勉強してたら死んじゃうよぉ」

「【恵み子】に寿命はありません」





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第九章 親子 三吉の長~い一日3

前回

三吉は茂吉から恵み子の仕事の一端を聞かされる、それは辛く厳しいものであった。


はじまり、はじまり



嘘ぉーーッ!


「ふふ、あたしも千年近く生きてますよ」

うわぁー、うわぁー、嘘だぁいッ!」

「ふふ、本当ですよ。だから百年くらいお勉強したって、どうって事ないのですよ」

「ニャぁーッ!?すっごいなぁー!」

「三吉、【恵み子】の進む道は普通の仕事と違い、殊(こと)に辛く悲しいものなのです。親に会う事が出来るのは【魂納(たまおさ)めの宮】だけになり、そして相手は既に死者なのです。生きている時のようには参りません。

【恵み子】はその苦しみに耐えて、耐え抜いて行かなくてはいけないのです。その苦しみを分かち合えるのも同じ【恵み子】だけになります。

まだお互いに顔も知らないのですけどね、、、ですがその子達は皆、三吉の兄・弟とも姉・妹とも云え、新しい兄弟のようになりますよ。皆とても仲良く優しいですよ」

「ふぅーん。なんか、おいらが考えていたのと違うけどぉ~。でも、そんなに大変なお仕事をする【恵み子】が居ないと困るんでしょ?」

「はい、その通りですよ。今はこの三役所があるので諍(いさか)いも大分減りました。何よりも皆々の《理(ことわり)》への理解が深まりましたね」

「それなら、おいらが【恵み子】ならばやってみたいッ!」

「家族に会えなくなるのですよ」

「だけど【魂納めの宮】でいつかは会えるんでしょ?」

「それはそうですけど、、、寂しくても帰れないのですよ、我慢出来ますか?」

「うん!おいら男だから我慢するッ」

「でも三吉は幼いし、、、もう少し大きくなってからでも良いのですよ」

「やだよ~、おいら早くお勉強したいもの。そしてお役人様になるんだ!」

「そうですか、、、」

「三吉は【恵み子】なのだよ。そのように宿命づけられているのだよ。お前がこの子の魂を見ればわかること。ご覧よ、きっぱりとしてるじゃないか」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
tamashi.jpg

茂吉はその曇(くもり)なき眼で三吉の魂を見る。確かに微塵(みじん)の迷いも無く晴れ晴れしている。二人は魂の姿を見ることが出来る。だから嘘をついたり、誤魔化しても無駄なのである。

茂吉は魂に告げた。


「お前は紛れもなく【恵み子】なり。我と我が同胞(はらから)と《理の道》を歩や、如何(いか)に!」


ビシッと直立不動になった三吉の魂が応えた。


「我、【恵み子】となるを大願とし幾生涯を重ね、魂納めしたる者。これにて我が大願も成就(じょうじゅ)す」


「良かったのお」

「はい、三吉を連れて帰れます」

「(アニャ?)茂吉のおじちゃん、おいら今、何か言った?」

「ふふ、言いましたよ」

「えぇーぇ?おいら、おじちゃんが難しい言葉を言うから『何て答えればいいのかな~』って考えていたら、そのままで・・・なんか寝てたみたいなの。こんなことないのにぃ、、、不思議なの」

「ふふ、三吉の魂が答えてくれましたよ」

「おいらの魂??」

「ええ、そうですよ。何でも三吉の魂は【恵み子】になりたかったらしいですよ」

「そうなの?」

「『願いが叶った』と言ってましたよ」

「やっぱね~。おいら腹の底から【恵み子】って気がするもの」

「ははは、そうですね」

「おいら、父ちゃん達にきちんと話して来るよ。父ちゃんと母ちゃんを説得するのは大変だけど、其のくらい出来ないと【恵み子】とは言えないものね!」

「無理をしなくていいのですよ。あたしが言いましょう」

「ううん、おいらやってみる!どうしても駄目だったら頼むね」

「茂吉、三吉に任せてみよう」

「ええ、そうします。だけど三吉、呉々もそんなに急がなくていいのですよ」

「おじちゃん、おいらが早く行きたいの!」

「はいはい、わかりました」

三吉はペコリと可愛くお辞儀をするとサッサと部屋を出て行ってしまった。

「父様、これで良かったのでしょうか?」

「無論だよ。だって三吉の魂にしてみればだよ、何回も寿命を全うしては【魂納めの宮】に行き、その度に天国に行くよりも【恵み子】になりたいと願ったのだろう。

だけど一度や二度では聞き入れてもらえずにいたのだ。なのに、負けじと何度も生涯を全うしたのだもの、執念があるよ」

「本当ですね」

「まあ、並の【恵み子】じゃない事だけは確かだね」

「そうですね。お陽の腹に宿った時に知らせが来た程ですから、尋常(じんじょう)ではないです」

「お前の後継者になるかもね」

「ふふ、そうだといいですね」

「そしたらお前もこれからちょくちょく来れるようになるね」

「父様ったら。三吉はこれから学校に行かなくてはならないし、卒業すれば、今度は役所で経験を積まなくてはなりません。又、千年は待って頂かないと」

「いいよ。お前がこうして来るのを千年待ったのだもの、いくらでも待つよ」

「はい、父様。」





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第九章 親子 三吉の長~い一日4

前回

三吉の魂の執念にも似た願いを聞き入れる茂吉。晴れて恵み子になった三吉は二人の心配もよそに親を説得すると勇んで家路につく。


はじまり、はじまり



三吉は藤平屋敷内の子供部屋に寄ることも無く、そのまま雨の中を真っ直ぐ家に帰った。雨だったので世の吉はふらふら出歩くこともなく家に居た。

お陽は髭結(ひげゆ)いを生業(なりわい)としている。この世界の者は自分の体毛の柄を気にする。体毛を染めたり、髭にコテをあてたり、おしゃれをするのが大好きである。

お陽は腕がいいので商売は繁盛している。そんな世の吉は髪結いならず髭結いの亭主なのである。[お陽の髭結い床]と大きな看板が出てる。珍しく客も居ない、閑古鳥(かんこどり)が啼(な)いている。


父ちゃーん、母ちゃーん、ただいまぁ~!


こら三吉!店から入るんじゃないって何度言ったらわかるんだよ。裏から周りなね」

「いいじゃんかよぉ~、客なんか猫の子一匹、居やしないじゃないかぁぁ」

「もう!口ばっかり達者で困るよ~、どこかの誰かにそっくりだよ!」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
higeyuidoko.jpg

ごろり煙管(きせる)をふかしながら横になっていた世の吉がすかさず文句を言う。

「誰かって誰よ?まさか、この世の吉様の事じゃねえだろうなッ」

「あんた以外にここに誰か居ますか?ってんだよ~っ、このうすらトンカチ!


このアマぁーッ!勘弁ならねえッ!!


「何さっ!朝っぱらから、ずーっとゴロゴロしくさって、どうしてこうも働かないのかねぇっ。ちったぁ~やる気になったって三日と続かないし。どうしようもないダレ猫だよっ!」


ニャんだとーッ、ダレ猫だとぉーーッ!?


「父ちゃん、母ちゃん!いい加減にしてよっ!おいらは話をしたくて、、、」

「あっ!そういや、お種はよ?」

「お屋敷にいるよ」

「なんでお種を連れて帰って来ないのよ」

「島吉も小吉もいないじゃんかよ。てめえが一番の年嵩(としかさ)なんだから、ちゃんと連れて帰って来いってんだよ!全く責任感もないのかね」

「お前にそっくりだよ」

ニャんだとーぉ!?お陽ッ!もう一辺言ってみろ!」

「あーぁ、何度でも言ってやるよっ!責任感がないのはお前んとこの紛れもない血筋だよ!」

「あのさぁ~、そんなのどっちのも混ざってんだからどうでもいいじゃんよぉぉ~、それよりもおいらの話を聞いておくれよ~ぉ」

「ニャぁニャぁ五月蝿いガキだねえ。じゃ、聞いてやるからさっさと言いなよ」

「うん。おいらやっぱり【恵み子】だったんだって!」

「また始まったよ~」

世の吉とお陽はうんざりした顔をする。

「てめえの躾(しつけ)が悪いから、こんな阿呆みたいなことを自慢げに言うガキに育つだよッ!」

「何であたいなのさ?あたいよりお前の『ふらふら』の『ぶぅーら・ぶぅーら』がいけないんだよっ!

「なんだあぁ?その『ふらら・うららー』ってのは?」

「そうじゃないよ、『ふらふら』してて『ぶらぶら』してる事だよっ!」

店先でいつものように大声で口喧嘩。客が来ているのにも気がつかない。


いい加減に終わんないのかねえ~


業を煮やした近所の梅吉爺さん、大きな声で割って入る。

「あらやだよぉ~、梅吉おじさん、来てるんならそう言っておくれよ」

「さっきから、言ってるよ。お前達の夫婦喧嘩は菰傘の名物だよ」

「すんません」

世の吉コソコソ出掛けてく。

「ちょいとあんた!晩飯までには帰ってくんだよーぉ」

お陽は菰傘で育って母親の仕事を継いでいる。チャキチャキの菰傘っ子である。

「本当にお前の父ちゃんもそうだったけど、いつの間にか世の吉も髭結いの亭主だよ」

「本当にねぇ~。母ちゃんの苦労をあたいまでするなんて思わなかったよ」

「ねぇ、母ちゃーん」

「なんだい、まだ居たのかい?早いとこお種達を連れておいでな」

「だからぁ~、おいらの話がさぁ、、、」

「五月蝿いねぇー、お客様なんだよ。しっし!あっちに行きなっ」

三吉はプンプンして店から飛び出る。いつの間にか雨はあがっていた。ふらふらと五黄屋敷に向かう途中、五斗吉の店の前を通りかかる。

中を覗(のぞ)くと案の定、世の吉が五斗吉にしょうもない愚痴を零(こぼ)してる。いい迷惑なのが五斗吉である。

あれ以来、世の吉は五斗吉をたいそう気に入ったらしく三日にあげずに遊びに来ては愚痴を零して帰って行く。

「父ちゃんだ!」

「お、三吉か?お前の父ちゃん、連れて帰っておくれよ」

「うん。仕様がないなぁ~、父ちゃん!五斗のおじちゃんの迷惑でしょう」

「何を生意気言ってんだよ!もう【恵み子】のつもりでやんの!」

「だって本当なんだもん」

「へッ?そうなの!?そりゃ三吉はすごいねえーー!」

「えへへ。でもそうばかりは言ってらんないの」

「五斗!こいつに騙(だま)されんなよッ。ガキのくせしてよ、知恵だけはまわりやがるからよッ」

「まわんない父ちゃんよりましだよ」


何をぉーーッ!






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第九章 親子 三吉の長~い一日5


前回


三吉は案の定、撃沈する。店を追い出され仕方なく歩いていると、世の吉が五斗吉の店でおだを上げていた。
迷惑そうな五斗吉に呼び止められる。


はじまり、はじまり


「まあまあ、ここで親子喧嘩しないでさ~。でも、あっしは三吉みたいに頭のいい子は他では知らねえよぉ~」

「えへへ」

「ガキを煽(あお)ってどうすんのよ、阿呆くさッ」

「なんでよぉ~。だっておいら、お紺おばちゃんとお加奈を一緒に暮らせるようにしたんだよ。お紺おばちゃん泣いて喜んでたし、藤平おじちゃんや茂吉おじちゃんはすごく褒めてくれたんだもん」

これには世の吉も五斗吉も驚いた。


もっ、【茂吉】だってーーッ!?


お紺さんだってーッ!?


「あの【茂吉】様がいらっしゃってんのかよッ?」

「あのお紺さんがいるの?」


「これはどうもえらい事だよーッ!


ええーッ?どッ、どうしよう、、、どうしようッ!


二人共バラバラに違う事を言うので答えられない。

「もぉ~、どっちに返事をすればいいんだょー!」


「【茂吉】様に決まってるだろがッ!」


お紺さんに決まってるよ!」


三吉は急にニヤニヤする。とても子猫とは思えない風情。

「父ちゃん、【茂吉】おじちゃんの事は後にするよ。だけどさ、なんで五斗のおじちゃんがそんなにお紺おばちゃんの事を聞きたがるの?

変だよねぇ~、父ちゃんそう思わない?」

世の吉も気が付いて尻馬に乗る。そういう処はそっくりな親子である。

「違いねえ、不思議だよなあ~(チロッ)」

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barebaregottokichi.jpg

五斗吉、思わず言ってしまった言葉にどう反論していいかわからない。言葉に詰まっていると益々三吉の独り舞台である。

「そう言えば、、、『五斗吉さんはお元気?』なんて・・・」

「へッ?あっしの事を訊いてたのかい?何かあっしの事を言ってたのかい?
何てっ、何て言ってたんだいッ?

もの凄い勢いで乗り出してきて、三吉にしがみ付く。

「そう言ったらっていう例え話だょ~」

五斗吉、『ニ"ャーーッ!!』と叫んで外に飛び出して行った。

「おい、三吉!大人猫をからかうもんじゃねえよ。五斗の奴、可哀相によ~。あれあれ、あの勢いなら川まで走っちゃうね」

「へへ」

「ありゃ相当の熱だな~」

「そうだなぁ」

「なに生意気言ってんだよッ!」

ゴツン!

世の吉にごつんと頭に拳固(げんこ)をくらう。

「痛いよぉ~」

「いいんだよッ、全くどっからそんな知恵が出てくんだか!」

「ふぅーんだ!父ちゃんはおいらが学校行くの知ってる?」

「何だよそれ、知る訳ないだろが」

「おいら【恵み子】の学校に行くんだょ」

「何を勝手に決めてんだよッ!」

「だって、早いとこ勉強したいもの」

「あ、そぉーですかってんだよッ。そんなに行きたきゃどこにでも行きな!父ちゃんは五月蝿いのが居なくなりゃ、すっきりするわ」

「うそだね、本当じゃないょ」

「本当だよ!こまっしゃくれのガキの相手をしなくて済むんだから、有り難くって有り難くって涙が出るわ~」

「(ウ゛ッ).....父ちゃんの大馬鹿ちぃーーーん!

三吉は五黄屋敷の方へ駈けて行ってしまった。途中、川に突っ込んで濡れ猫姿の五斗吉とすれ違ったのだが、気が付かないで行ってしまう。

「あれ、三吉・・・何だろ、、、?泣いてたよ」

五斗吉がびしよ濡れで店に戻ると世の吉が煙草をふかしてる。

「三吉泣いてましたよー、又なんかしょうもない事を言ったんでしょ?」

「ふん!学校に行くって言いやがんのよッ」

「どこのですか?」

「【恵み子】様のよ」

え"ぇーーーッ!?やっぱりねえー!やっぱねーッ!『栴檀(せんだん)は双葉より芳(かんば)し』って云いますものねえー!」
                                    
「何だよ、その芳しってのは?」

「立派な猫に成るような子猫は、小さい時から違うってな事ですよ」

「はなからそう言いなよ!ちっとばかし俺より学があると思って、ひけらかすんじゃないよッ」

「皆、知ってますよ」

「(ぶーッ)とにかくだよ、俺とお陽の間に出来た子が【恵み子】だったらどうすんのよ?あり得ないよッ、全くもって阿呆話よッ!」

「だけど、あっしも三吉に物の見事に引っ掛かりましたよ。あれは並の知恵でねえですよ。あれが六つのガキの言う事ですかね?」

「確かになあ、、、お陽の奴、浮気したかね?」

「違いないね」

馬鹿たれ!何をとんでもねえ事言いやがるッ」

自分で言っておいて、五斗吉に猫パンチをする。

ニ"ャっ

「あいつは昔から俺にゾッコンなのよ」

「へいへい、そうですよね」

「そういや、お前も相当なお熱ですこと」

「へっ?誰にですよ」

「まーぁ、イヤだね~~五斗ちゃん!水臭いよ~」

「(?)・・・」

「お紺はいい女だものね~~」

「へい~」

「あの黒くて『綺麗なお耳』『つぶらな瞳』『すらりとしたお姿』」

「良くわかってますね~」

「当たり前よー。あんなにいい女、滅多に居ねえよ」

「そうですよねえ~。その上に気立ても良いんですから、もう堪(たま)んないですよね~~」

「へへ、白状してやんのー。どうにも嘘の付けない猫だね」

「(アニ゛ャ?)放っといて下さいよッ!」





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第九章 親子 三吉の長~い一日6


前回

五斗吉は二人に長年の思いを悟られてしまう。さて親子は純情五斗の役に立つやら、なんとやら。


はじまり、はじまり


「そうはいくかよ、放っておけないわ~だって、可愛い五斗ちゃんの願いだもの~。叶うものなら添わせてやりたい~!あ・チン♪トン♪シャン♪とくりゃあ」

「へっ?あッ、兄ぃーい!さすがは兄ぃだ!あっしの気持ちがお分かりになる。(ウッ)
あっしは嬉しいぃーーー!!

「どうよ?まっ、俺に任せなよ。ちょいとお紺の様子伺いでもしてくるかね~」

「え"っ、今からですか?」

「あったり前よー!こういうのはね、『鉄は熱いうちに打ち壊せ』ってね」

「壊さないで下さいよぉ」

「ふん、まっいいさ。『吉っぽけ』を待っとれ!」

「あっ、吉報ね」

「(ニ゛ャ?)そっ、そう言っただろがッ、ぼけニャン!

「はいはい、とにかく宜しくお願いしやすよぉ~」

世の吉は五斗吉に見送られて屋敷に赴(おもむ)く。その頃三吉は子供部屋にいた。藤平や茂吉に親を説得して来ると大見得を切った手前、できなかったとは言えず、子供部屋で遊んでいようと戻って来たのだった。

部屋に入ると子猫達はお紺の周りでコロコロ寝ている。お加奈はお紺の膝の上で気持ち良さそうに寝ている。三吉がお紺に声を掛ける。ニャコッとして口に肉球をあてる。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
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「静かにね」

「おばちゃん」

「なあに、三ちゃん」

「お加奈、嬉しそうだね」

「本当にねぇ、、、これも三ちゃんの御かげよ。あたし、こんな夢みたいな事があるなんて思わなかったわ」

お紺はお加奈の重たさを幸せに感じていた。あんなに小さく軽かった赤ちゃんが、今はこんなに大きくなった。これからはいつだってこの子を抱きしめられる。

なんて幸せなんだろう、、、。

「おばちゃん、なんか顔が変わったみたいだょ」

「えっ、そう?」

「うん。『お母さん』って顔してるょ」

「ふふ、嬉しいわ。やっとお加奈の母親になれたのだもの」

「良かったね」

「ありがとう。本当に、本当にありがとう」

「やだなぁ~、気にしないでょ。おいら、当たり前の事をしただけだょ」

「そんなことないわ。三ちゃんがお加奈の事を真剣に考えてくれたからだもの。お加奈の本当の兄ちゃんのようよ」

「へへ、照れちゃうょ」

「お加奈は皆に可愛がられて幸せね」

「うん、そうだよ。おいら達はね、遊ぶ前に五斗のおじちゃんとこに行くんだょ」

意外な名前を不意に言われ、お紺は動揺する。三吉はちゃーんと見ていた。

『我が意を得た』と言わんばかりに、ここでも独り舞台が始まる。

「五斗のおじちゃん知ってる?」

「えっ?えぇ、もちろんよ。干物屋の五斗吉さんでしょ?」

「うん、そうだょ。そう言えばあのおじちゃんの毛色って、ばっちい柄だよね?」

「そ、そうかしら?そんなことないわよ。よく見ると中々きれいよ」

「そうなの?おいら知らなかったなぁ~。五斗のおじちゃんの事、おばちゃんみたいに良く見た事ないものなぁ~」

ニヤニヤしてる三吉にお紺は漸(ようや)く気が付き、顔を紅くする。

「やあねぇぇ、三ちゃん。大人をからかうものじゃないわ」

「へへ。五斗のおじちゃんてね、いつもおいら達に飴玉くれるんだょ」

「そうなの?」

「うん。お加奈なんかね、お口の中の飴玉が無くなるまでおじちゃんの膝の上に座ってるんだょ」

「えー、そうなの?お加奈が・・・」

「うん。お加奈はね、五斗のおじちゃんが大好きなんだょ!」

「知らなかったわ、、、」

「そうでしょ?お加奈も喜ぶよなぁ~」

「何が?」

「例えばね、おじちゃんとおばちゃんが結婚して、五斗のおじちゃんがお加奈のお父ちゃんになったとしたらさぁ~」

何気なぁーく言う三吉に益々顔を紅くするお紺は声も出ない。

「おばちゃん商売上手だしさぁ~、おじちゃんの干物作りはぴかイチだしさぁ~。だけどねぇぇ、、、」

「だけど?だけどどうしたの?」

「おじちゃん愛想もないしさぁ、商売上手とはとても言えないよね。でもそこにさ、おばちゃんみたいに綺麗で愛想がいい猫がいてごらんよ。

忽(たちま)ち世界規模の干物屋になると思うなぁ~」

「三ちゃんたらぁ。上手を言うのだから、、、」

お紺も満更ではない様子。三吉の目がぴかりと光る。

「おばちゃんにしたら、あんなにばっちい柄の猫なんて問題外だものね?」

「そんなことっ、、、そんな事、絶対にないわ、、、」

「そうなの?五斗のおじちゃんのこと嫌いじゃないの?」

「そんなとんでもないわ!」

「ふぅーん。じゃ、どっちにとんでもないの?」

「いやねぇぇ。もう知らないわ(ポッ)」

「へへ。五斗のおじちゃんが、おばちゃんの気持ちを知ったら、嬉しくて産海(うみ)に飛び込んじゃうょ」

「駄目よ、三ちゃん。あたしのことなんて言っては駄目よぉ」




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第九章 親子 三吉の長~い一日7


前回

世の吉が五斗吉に安請け合いをしている頃、三吉は手もなくお紺の気持ちを探ってしまう。


はじまり、はじまり


「それこそ知らないよぉー。おいら、お加奈に父ちゃんも必要だって思ってるもの」

「だけど、お加奈には五黄様も藤平様も父親で居て下さるのよ」

「あのおじちゃん達は、お加奈には爺ちゃんだもの」

「・・・・・」

確かにその通りである。父親と云うよりは祖父、曾祖父であろう。三吉はお紺の気持ちを知ると何だか安心した。自分が居なくなっても、これで寂しい子猫は居なくなると思うとホっとした。

「おばちゃん」

「なあに?」

「おいらもおネムになっちゃったょ、、、」

「ふふ、三ちゃんもお眠り」

「うん」

三吉は子猫達のそばに横になる。お紺が子守唄を歌い、その心地好い歌声を聴いていく内にいつの間にか眠ってしまう。

三吉の後を追うように屋敷にやって来た世の吉は、お紺がどこにいるのかわからない。裏庭に廻ると取り敢(あ)えずお滝に声を掛ける。


お滝さん!


「あんらー、珍しいこと。世のさんじゃないの!」

「へへ、中々こちらには足が向かなくてねえ」

「悪いよ、藤平様のお耳は長いよ」

「違えねえや。それはそうと、お紺がここに居るって三吉に聞いたんだけど」

「そうなの?ちっとも知らないよ」

草助が通りかかる。

「ちょいと草ちゃーん!」

「なあによ、お滝さん」

「お紺ちゃん、ここに来てるの?」

「そういや見たような見てないような、、、藤平様のとこじゃないの?聞いて来てあげるよ」

草助はさっさと行ってしまう。

あっ、ちょっとー!いッ・・・いいのにもう、、、藤平様に言わなくていいのにぃー、もう・・・」

「はは、さすがの世の吉兄いも藤平様には敵わないものね」

「違えねえ、全くもって敵わないよ。そうそう、三吉がもう一つ言ってたんだけどね、茂吉様がいらしゃってるって?」

「耳が早いよ。村の者には内緒だよ!」

「そうなの?でも何の御用なのかねえ~?」

「そんなのあたしらみたいな下々(しもじも)の者にはわからないよ」

「そりゃそうだ」

草助が直ぐに戻って来ると世の吉に伝えた。

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「世の吉さん、藤平様がお呼びだよ」

え"ーーッ!やっぱり・・・あっ、ちょっと用事を思い出したよ!そいじゃ~失礼して、、、」

そそくさ逃げようとした世の吉はしっかりと草助に掴まれた。

「だめですよ。もう、態とらしいんだから!本当に藤平様がおしゃっていた通りなんだから、嫌になちゃいますね」

「だから用事が、、、って」

「『逃げないように首根っこ掴(つか)んどきなさい』ってね」

草助は世の吉より大分大きいので、掴まれてしまうと世の吉は身動きも取れない。

「さっ、行きましょう」

「へいへい!わかりましたよ。行きますから放して下さいよ」

「駄目ですよ、とにかく行くんです」


ニャぁーん


情けない声を上げながら連れて行かれる世の吉を笑っていたお滝は、足を洗わせるのを忘れていた事を思い出し、慌てて雑巾を持って追い掛けて行く。

足を拭かれて観念した世の吉はすごすごと草助の後に付いて行く。母屋を過ぎてもどんどん進むので世の吉はドキドキする。(ニャンだろぅ...)

まだ行った事のない藤平の洋館に行きそうなので段々緊張してくる。渡り廊下の先には重厚な欅(けやき)の扉が見える。草助が重々しい扉を開けると洋館の中が見える。

ホールとシャンデリヤの美しさに目を奪われ、思わず立ち止まってしまった世の吉の手を草助が引いてくれたので、気後れも其処(そこ)そこで洋館に入れた。


うわッーー!綺麗だなあーーー!!


「本当ですね、あたしもそう思います。さっ、こちらのお部屋ですよ」

草助は美しい百合の木彫りがされているドアをノックする。

「連れて参りました」

「お入り」

草助に促(うなが)され、世の吉は大きく深呼吸をすると覚悟を決めて前に進む。草助は世の吉に微笑んでその場を立ち去る。

ドアの取っ手を押っぺしたり引っ掻(か)いたりしたが、どうにもならないので、遂に大声を出す。

藤平様ーッ!この『戸襖(とぶすま)』開かないですよぉーッ!




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第九章 親子 世の吉夫婦1

前回


五斗吉に安請け合いをした世の吉は意気揚々と五黄屋敷に赴く。草助の親切心がそうさせたのか。運命なのか定かではないが、なぜか藤平と茂吉に会うことになる。


はじまり、はじまり


中から笑い声が聞こえるとふいにドアが開く。目の前に藤色の美しい長毛の猫が現れた。世の吉は目を丸くする。(どニャた?)【茂吉】を見た事がなかったのでわからなかった。

【茂吉】は優しく微笑んで、部屋の中に招き入れる。

「さっ、どうぞこちらに」

棒のように突っ立ってる世の吉を長椅子に座らせる。

「世の吉、お前【茂吉】を見た事なかったかね?」

「へっ?こ、このお方は、もも、もッ、も【茂吉】様なんですかーー!?」

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ひょぇ~~~ッ


世の吉は素っ頓狂(すっとんきょう)な声を上げると、座っていた椅子から転げ落ちるようにして平伏した。

へへーーーぃッ!世の吉めで御在ます。宜しくお見知りおきをーッ」

「困りましたね。世の吉さん、そんな事をなさらないで下さい」

茂吉は世の吉を無理矢理、長椅子に座らせ、きちんと挨拶をする。

「世の吉さん。こちらこそ、あたしは【茂吉】と言います」

あっ、あのッそのッ、、、あっ、あっしのような者がお、おッ、お会いしても、・よ・よ、宜しいんですかッ!?」

「世の吉や、茂吉はお前に会う事も、この度の里帰りの目的になっているのだよ」

「ひえっッ!も・も・も、茂吉様が、あっしに?あっしが?(アニャ?)あっしとーッ?会いたいと???・・・ひゃ"ーーッ!!

「何を言ってるのだよ」

二人は笑ってる。

「あっしは頭がくらくらしてきやした・・・」

「世の吉、落ち着きなさい」

「さっ、世の吉さん。そんなに緊張なさらずに」

藤平は自慢のコーヒーを煎れる。世の吉はこんなに美味しい珈琲を飲んだ事はなかった。舌の先から喉の奥へと広がる芳醇(ほうじゅん)な薫りとコク、一辺で気に入った。

藤平にすすめられるまま何杯もお代わりをした。お陰で気分も大分落ち着いた。茂吉はそんな世の吉をニャこやかに見つめていた。

「世の吉さん、三吉から何か聞きませんでしたか?」

「へっ?三吉のすっとこどっこいですか?さてと、、、あっ!そういや、懲(こ)りずに『おいらは【恵み子】だから学校に行くの』なーんて阿呆な事を言いましてね。

『そんなに行きたきゃ、どこにでも行きやがれ!』って怒(ど)やしつけてやりましたよ。とんでもない法螺吹(ほらふ)きになりやがっちまって困ったもんですよ」

「それで三吉はどうしましたか?」

「ええ、あっしに悪たれついて、こちらの方に駈けて行ったようですけど知りませんよ」

初めから三吉が説得できる相手ではないのだ。

「やはりね」

「ふふ、撃沈したようですね」

「さしもの三吉大将も世の吉将軍には敵わないとみえる」

「へっ?いやですよ~、あっしはそんなに偉いもんじゃないですよ~」

茂吉は世の吉をしげしげ見ながら微笑む。

「それにしても、世の吉さんは不思議な方ですね」

「あっしのどこがいけねえですか?まっ、いけねえと言われりゃ、いけねえとこだらけですけどね~、へへ。お見それしやした」

「何も茂吉はお前がいけないなんて言ってやしないよ。それに何にお見それしてんだよ、本当にお前は可笑しい猫だよ」

「へへ。言葉もねえ」

「世の吉、三吉は間違いなく【恵み子】なのだよ。それも《特別》に茂吉が迎えに来る程のね、、、」

え"ぇっーーーッ!?あの、こまっしゃくれのうちのガキがですか!?そんな~、あり得ねえ事ですよ~~~!」

「どうしてです?」

「だって、あっしとお陽の間に出来たガキですよ?そのガキたれが【恵み子】様だなんて、あり得ニャイですよ~!

そんなことになったら、あっしはどうすりゃいいんですよ?腹で茶を沸かさなきゃいけねえし、逆立ちして村中廻らなきゃなんねえ、ご免ですよ」

「ははははは」

「世の吉さんはお嫌なんですか?」

「嫌も何もそんなことはねえんだから、もぉー、冗談は止しにして下せいよ。あっしみてえな【もしもし】な者には関わりのない話ですよ」

「もしもし?」

「下々だよ」

「ふふ、世の吉さんは面白い方ですね」

「茂吉の旦那にそう褒められちゃ、穴が入ったら埋めときたいですよ」

「え?」

「ん・・・相変わらず勘違いして覚えてるのお。世の吉は面白いじゃろ?」

「ええ、とっても。三吉は良いお父様に育てられましたね」

「へへ嫌ですよ~、照れちまいますよ~」

その時ドアをノックする者がいる。






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第九章 親子 世の吉夫婦2

前回


いやいや連れてこられた世の吉は名高い茂吉に会い、藤平から三吉が恵み子であることを知らされる。


はじまり、はじまり


「お陽さんをお連れしました」

「中に入れてお上げ」

草助がビクビクするお陽を部屋に連れて来た。世の吉がいるのを見て、何を勘違いしたのか怒り出す。


あんたぁー!又、何か余計をしたんだねッ!藤平様のお怒りに触れるようなことして、、、あたしゃもう恥ずかしいよぉぉーッ!」

お陽は知らん振りしてる世の吉の耳を手酷く引っ張る。


ムギュー!


ふんぎゃーッ!何すんだよッ、このオカメ猫ッ!」


「今、何て言ったんだよッ!えッ?」

「それどこじゃねえよッ!早いとこ、その高い頭を下げるんだよッ!」

今にも夫婦喧嘩になりそうなので、草助も一緒に止める。

「こら、お止しなさい!お陽、違うのだよ」

「てめえーッ、違うって藤平様が、、、」

お陽が引っ張っていた世の吉の耳にいきなり噛み付いた。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります

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ふんぎゃーッ!


耳に噛み付いてるお陽をどうにか引き離すと世の吉はひぃひぃ泣いている。可哀相である。さすがの茂吉も声が無い。

「お陽、何をそんなに癇癪(かんしゃく)を起こしているのだよ」

「だって、どニャつもこニャつも行ったきりで帰って来ないんですよぉ。このボンクラもそうだし、三吉はお種を連れて帰って来ないし、、、

そうこうしてりゃ、草助さんが『藤平様がお呼びだ』って、血相変えてやって来るものだから、もう急いでこちらに来れば、このボンクラが部屋に居るのですもの。てっきり何かやらかしたかと・・・」

「ふふ、お陽の想像力には敵わないね。 茂吉、お陽だよ」

お陽が驚いたのは世の吉と同じ。似た者夫婦に同じように珈琲を飲ませて落ち着かせたのも一緒だった。但し、世の吉は耳の手当を草助にしてもらった。

草助が部屋から出て行くと、お陽は恥ずかしそうに俯(うつむ)いている。

「お陽さん、顔を上げて下さい。実はあたしがお呼び立てしたのです。お伺(うかが)いすればよろしかったのですが、成る可くなら内密にしたかったので、、、」

「いいえ、とんでもございません。あたしこそお恥ずかしい限りでございます。どうかお許し下さいませ」

「先程もね、世の吉に言ったのだけどね、三吉の事なのだよ」

お陽は藤平から三吉が【恵み子】であることを聞かされた。

「あたしと、このボンクラの子がですか?有り得ませんよ~、そんなご冗談をぉぉ~、おほホホホ~」

同じような答えをこの夫婦は言うので笑ってしまう。世の吉は照れ笑いをしている。

「ふふ、お陽さん。これは冗談でも何でもないのですよ。正真正銘に本当の事なのです。あなた方には晴天(せいてん)の霹靂(へきれき)でしょうが、どうか最後までお聞き下さい」

茂吉は居ずまいを正すと話し出した。ヘラヘラしていた世の吉もそんな茂吉を見て、ピシッと長椅子に正座をする。お陽も、何だかわからないまま、世の吉の真似をする。

「世の吉さん、お陽さん。あたしはあなた方ご夫婦にお願い致します。三吉の将来をあたしに預けて頂けませんでしょうか?

あの子はこれから【恵み子】の学校で学び、長じては【役所】に勤めるようになります。そして生涯を【恵み子】として生きていくのです。

決して楽ではなく、とてもとても辛く大変な道と思います。何よりも親子の縁を断って行かなくては成りません。
そうなれば、この世での再会は決して有りません。

会えたとしても、あなた達が天寿を全うし、死んでから行く【魂納めの宮】での再会のみです。その唯一の再会であっても言葉をかわす事すら決して有りません。

あたしが言っている事はおふた方には辛過ぎる申し出です。無理にとは言いませんが、お考え下さいますように宜しくお頼み申します」

「あんたぁ...」

世の吉は下を向いて考えている様だった。ずっと黙り込んでいるので、藤平が心配する。

「世の吉や、、、大丈夫かい?何も今日が今日、返事をする話じゃないんだよ。お陽ともさんざん相談しなきゃ決められないだろうしね、、、さっ、もういいからお帰り」

「そうですよ。あたしも急いで返事を欲しいなんて言いませんから、、、いつまでもお待ちしてますからね」

茂吉が優しく世の吉の肩に手をやる。世の吉はその手をぐっと握りしめた。


茂吉様ぁーーーッ!


「どうしました?世の吉さん、、、」




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追記

ご心配をおかけしましたが親友とも連絡が取れました。停電をしていたようです。アップはどうしようかと思ったのですが、こんな風にいつも通りの行動をすると日常に戻れた気がします。
災害に遭われた方々に一刻も早い支援が届きますようにお祈りします。

第九章 親子 世の吉夫婦3


前回

お陽は入るやいなや世の吉に噛みつく。普段が普段なので誤解するのも仕方ないが可哀想な世の吉。

藤平は幼い頃から喧嘩をしては仲良くしている二人を知っているだけに一層辛く感じた。茂吉に改めて聞いた世の吉は茂吉にすがる。



はじまり、はじまり



「三吉は、、、三吉は行きたがっているんでしょ?」

「・・・・・」

「そうなんですよねッ?いいえ、そうです、、、あいつは前からそう言っていやした。近頃なんざ、あっしにはさっぱりわからねえ御本を藤平様から借りて来ては読んでいやした。

『子供部屋の御本はどうしたのよ?』って聞くと『全部読んだ』という返事。あっしだって読んだ事もねえ、こちらさんの御本を全て読んでいたなんて驚きましたよ。

近頃、言う事にキラリと光るものがあると感じていやした。ええ、あっしに似てきやしてね、、、」

真剣に話しているのだが、世の吉は生まれついての面白猫なのか、言う事が可笑しい。

「へい!うちのガキ、どうやら裏付けあってのこまっしゃっくれ。この頃はご丁寧な法螺(ほら)まで吹きやがるわ、怒れば怒るであのガキは生意気な返答返し。

あっしら経験・知識共に豊かな大人猫も、あいつの減らず口には敵わない有り様。『先が思いやられる』と、お陽とも話していたくらいでしてね。

あっしはあいつが大人猫になって、もしかしたら舌先三寸の詐欺師にでもなったらどうしようかと、、、菰傘(こもかさ)の恥どころか、五黄様や藤平様に何てお詫びしようかと、、、」

「それどころか、大誉(おおほま)れだよ」

「へい!安心しやしたよ、詐欺師でなくて」

「そんな事ありませんよ」

「だってあっしみたいな、《うらなりのぼんくら猫》、言ってみりゃ《髭(ひげ)結いの亭主》ですから。自慢と云えば働き者のお陽に、こまっしゃくれた三吉と丈夫なお種だけですよ」

「素晴らしいですね。あたしは羨ましいですよ」

「そんなあ~、茂吉様に羨ましがられるような者じゃないですよ。あっしは【愚か者】です。ですけどね、、、【愚かな親】でいたくはありません。

あいつの望みは叶えてやりたいんです!どうか、どうか、あいつのこと、、、三吉を、三吉の事を宜しくお頼み申します!」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
yonokichifufu.jpg

世の吉のその言葉に二人は声もなかった。唖然(あぜん)とする二人に世の吉は、髭が折れるのも構わず顔が沈む程に絨毯(じゅうたん)に押し付け平伏した。

黙っていたお陽もやはり同じなのだろう、一緒に平伏している。その頭を下げる体は小刻みに震え、嗚咽(おえつ)をもらしている。

愛しい我が子を手離す辛さ...二度とこの世では会えない悲しみ...我が子の願いを叶えてやりたい親心...泣き叫びたい気持ちを堪(こら)えている姿が痛々しかった。

二人は、世の吉夫婦の親としての立派な態度と愛情に心を打たれた。


世の吉さん!お陽さん!


「世の吉、、、お陽、、、」

茂吉は三吉が愛して止まない父の姿に感動した。

「世の吉さん、お陽さん、どうか頭をお上げ下さい」

「へい、、、」

「あたしは三吉を見ていて、あの子が父親を大好きなのを良く知っています」

「三吉がですか?あの悪たれ坊主が...」

「ふふ、あなたも同じでしょ?良い親子ですよ。たいがいの【恵み子】は親とあまり反(そ)りが合わぬ子が多いいのですけどね。たまにあなた方のように仲睦まじい親子がいるのです。

そのような時は、双方共にきちんと納得しなければ、あたしもお引き受け出来ないのです。どんなにあたしが願っても、無理矢理に引き離せばどちらにとっても不幸です。納得なぞ出来よう筈も無いのです・・・」

「あっしは平気です!」

「どうか無理なさらないで下さい。何年先でも、何十年先でもいいのですよ。三吉が親とずっと居たいと言えば、幾らでもお待ちします」

「えっ!そうなんですかっ?そしたら・・・あたし.....もう少しだけでも、、、」

「お陽、未練だよ...」

世の吉はお陽の手に、そっと自分の手をやる。

「茂吉様。有り難いお言葉を・・・でも、あっしはあいつが望む通りにしてやりていです!あのちび助が本を読んでいる時、そしてそれをあっし達に話している時、本当に目をキラキラさせて、、、

これからもそうして目をキラキラさせて生きて欲しいんですよ。あっしにはあいつに何も教える事は出来ねえ。教えられるのは情けねえが酒や博打くらいですよ。

あいつの親は茂吉様!あなた様に、あなた様に成ってもらいやす。どうか末永く可愛がっておくんなさい」

「本当に宜しいのですか?」

「へい、構いません!お陽、そうだな!」

「あっ、あたし.....(ウッ)うゎーーーん(泣)」

お陽は泣いた。わかっていても可愛い子と一生会えなくなるかと思うと、泣けて泣けて堪らなかった。到頭、我慢出来なくなった。

世の吉もつられ、泣き出した。藤平も茂吉も泣けて来た。その内に、大人猫達がニャアニャア大声で泣き出した。猫族と云うのは、誰かが泣き出すと、つられるのだ。

しばらくして泪でびしょ濡れになったお互いの顔を見て、憑(つ)き物が落ちたように、猫達はすっきりした。今度は笑い出した。平和である。

お陽は自分と一緒になって泣いてくれた二人に、我が子に対する深い愛情を感じて嬉しかった。【茂吉】になら任せても大丈夫だと安心できた。

離れるのは死ぬ程辛く寂しい事だが、《三吉の為》とようやく納得出来た。




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先ほども地震がありました。
この物語を続けたのは心配して下さった皆様に私が返せるものは物語を続ける事だけだと思いました。
そして不安にかられる心をなんとか平常心に戻したい。
その気持ちだけです。
大震災に遭われた方々に深い哀悼の意と一刻も早い復興を願って止みません。

第九章 親子 世の吉夫婦4

前回


世の吉夫婦の親としての立派な態度に心打たれた藤平は誰に言うでもなかった遠い過去を話しだす。


はじまり、はじまり



「茂吉様、取り乱してしまい申し訳ありません。あの子を、、、(ウッ)三吉をどうぞ、どうぞ、宜しくお願いしますッ」

「お陽さん・・・」

茂吉は二人に深々頭を下げる。

「真に辛い思いをさせて申し訳なく、、、」

夫婦は驚いて茂吉に縋(すが)り付く。茂吉も二人の肩を強く抱く。何だか温かくなった。その温かさが、ずんと茂吉を切なくさせる。

思えば己よりもずっとずっと年若き夫婦。可愛い長男坊を、手元より離す寂しさは言葉にもならないだろう・・・。

藤平もそんな三人をじっと温かい目で見ている。
今日は親子・家族の大切さを改めて実感させる日のようだと思った。お紺はやっとお加奈と暮らすようになる。

かたや世の吉夫婦は掌中(しょうちゅう)の珠(たま)の三吉を手離さなくてはならぬ。皮肉なものよ、、、子を捨てた親がまた子と暮らすというのに、大事に子育てして来た親が別れなくてはならない。何の因果よ.....

「聞いてくれるかな?」

三人は肩を触れ合うようにして藤平の話に耳をかたむける。

「世の吉やお陽とこうして膝付き合わせて、話した事など今までなかったからのお、、、ましてや、茂吉と会う事もなかったから、こんな話をする機会もなかったが、どうか聞いておくれ。

私は本当にこの茂吉を目に入れても痛くなかった程に、メロメロの親だったのよ。可愛くて、可愛くて・・・今でも同じだがの」

茂吉は藤平の話に照れて、恥ずかし気に頭を掻(か)いてる。さすがの茂吉も藤平の前では今でも可愛い子猫なのである。世の吉達も何か嬉しい。

遠い存在であった茂吉の話を、普段は厳しい藤平の口から聞く事などとても意外であったが、全て自分達の為に話してくれるのがわかっているだけに嬉しさ・有難さがひとしおだった。

「今から、千年近く前の事よ。ノン吉が旅立った後、茂吉がいるから何とか居られたのよ。

茂吉が心の拠り所であったのよ。頼りにしていた。心底な、、、その茂吉がある日、突然居なくなった。私は気が触れたように狂乱したよ。

五黄様は、私がおかしいので『いつ【神々様】に命を返上するかしれない』と、あのフラフラ病も我慢して私に付きっきりでしたよ。私が何とか落ち着くのに百年もかかりました」


!?"


茂吉も知らなかった。自分が居なくなってからの藤平の話に胸が苦しかった。

「それから、たまにはノン吉が帰って来るようになった。なのに茂吉からは何の音沙汰も無く、ノン吉の元気な姿に慰められはしたが、さりとてノン吉はずっと屋敷に居てくれる訳でもなく、暫(しばら)くするとまた旅に出てしまう。

そうすれば余計に寂しいだけだった、、、どのくらい経ってからだったろう・・・

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります

nonkichitengu.jpg


ノン吉が羽を生やし四天狗とやって来たのは、、、聞けば『飛べる様になったので、嬉しくて私達に知らせに来た』と言う。

あの子もあの子なりに私を心配し、私を喜ばせたかったのじゃよ。可愛い子よ。己の羽を見せて楽しげに天狗達と乱舞する様は綺麗だった。

五黄様と私を連れて、【風雷宮(ふうらいきゅう)】へ、そして【天宮(てんぐう)】に行こうという事になって、私も嬉しかったが心の中では『茂吉も居ればさぞや喜んだろうに、、、』と、そばに居ないのが寂しく悲しく思ったよ。

久しぶりに【天宮】に行くと《おたあ様・おもう様》にお会い出来て楽しかったね。そしたらなんと!《おたあ様》が手を振ると茂吉が姿を現したのだよ。

私は目を疑ったよ!『どうして!?』と、言う疑問が浮かぶよりも前に、気が付いたら茂吉に抱きついて大泣きしてたよ。何度も何度も夢に見た茂吉に会えたのだもの。嬉しくて嬉しくてね、、、」

「そんな事があったんですか・・・」

「藤平様が・・・?」

「ふふ、本当じゃよ。私は【神々様】が茂吉に任された大変な仕事のことを聞き、漸(ようや)く納得したのよ。それでも【神々様】は私に知らせず茂吉を【天宮】に呼んだ事を詫びて下されたよ。

そしてこの子と色んな話ができてのお、、、【神々様】から直接のご指導・ご教育を受け、粉骨砕身(ふんこつさいしん)して[平和の為][国民の為]に身を捧げて行くと聞いたよ。

それから九百年以上経って、やっと里帰りしてくれた」

「そんなに長い間・・・」

「そうよ。茂吉は寝る間もなく働いておったのよ。私はね、『茂吉が可哀相過ぎる』と【神々様】に悪たれをつく程じゃったよ。

じゃがな、この子が頑張っていてくれているからこそ、この世界は人国事件のような大変な事も起きずに済んでいる。

有り難い事よ、、、今は【恵み子】達がこの子の助けにもなっておるから大分違うじゃろうがの。我が子がこのように働いている事は、私の誇りでもあり自慢なのよ」

「では三吉もいつか、茂吉様のお役に立てるようになるのですね?」

「そうよ。親としてこれ以上の誉(ほま)れはあるまいて。巣立って行く子を見送るのは寂しい。だが何れは離れて行くものよ、、、早いか遅いかの違いじゃよ。

三吉は姿は幼いが、心も魂も立派な【恵み子】。見送ってやろうぞ。羽ばたくあの子をな、、、」

世の吉夫婦は藤平の話に心が慰められた。





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第九章 親子 世の吉夫婦5

前回


藤平の言葉に慰められる自分達がいた。口うるさく厳しいのは見せかけだったと今さらながら思い知る。二人の側に居ると子供に返った気にもなる。幼い時、夢多く暮らした日々。忘れかけていた思い。


はじまり、はじまり


自分達よりも、幾総倍も辛い思いをした藤平の話に共感をした。一身を投げ働く茂吉の手伝いをすることになる我が子に誇らしさも感じた。

そして幼い頃、自分達が懐(いだ)いた夢。三吉とは比べものにはならないがそれぞれにあった。いつしか忘れていた夢、三吉に見続けて欲しいと思う、そう考えると心がすーっと穏やかになる。

我が子の巣立ちを心穏やかに、気持ちよく見送る事こそ自分達夫婦が出来る最後の愛情だと思うことが出来た。

「藤平様、茂吉様。よくわかりました、、、あっし達も三吉を気持ち良く見送ってやりてえです。ただ・・・それで、、、お願いがあります!」

「なんだい?」

「へい。今晩だけ、、、今晩だけ、せめてあいつとお種とあっしら夫婦で川の字になって寝てやりてい、、、そんな事くらいしか思いつかない馬鹿者ですが、どうか許してやっておくなさい!」

「ええ、勿論(もちろん)です。そうしてあげて下さい。それはとても良い思い出になります」

「おお、それがいい!是非ともそうするがいいわ」

「へい!お陽、そうしようなッ」

「はいよ、お前さん。あの子だってあたいらがメソメソして後ろ髪引かれたら行けないものね.....行ってしまえば、もう二度とこの腕に抱く事も会う事も出来ない【恵み子】様...だけど、今晩だけはあたいら『だけの』こまっしゃくれの三吉だものね」

茂吉は三吉の居場所がわかるのか、先に行く。三人は後を付いて行く。子供部屋には、お紺の周りで子猫達がコロコロ寝相悪く、ぽんぽん腹を出して寝ている。

お紺も疲れていたのであろう、安らかな寝息をたてている。茂吉が寝ている三吉とお種を夫婦に其れぞれ背負わせるとそっと部屋から出した。

「島吉と小吉達は心配いりませんよ。後でちゃんと送りますからね」

「あのぉ、、、お紺ちゃんがなんで居るんです?」

お種を背負っているお陽が不思議そうに訊く。

「ふふ、それは後で本人から聞きなさい。さっ、それよりも行きなさい」

「へい、ありがとうごぜいやす」

夫婦は通い慣れた道を家路に向かう。

「ねぇ、、、あんたぁ、、、」

「何だよ」

「そんなにタッタカタッタカ歩かないでよ、、、」

「えっ?」

「もっとゆっくりゆーっくり歩いておくれよ、、、そんなに早く歩いたら、直ぐに家に着いちまうよ。やだよ、やだよ、あたいは.....この子とこうして歩くのが最後なんだもの...」

「ああ、、、悪かったよ。そういや、大分重たくなったよ...」

「そうかい?お種もだよ」

「この頃はおぶさる事もなかったものな、、、」

「本当だね、、、。小さい頃の三吉はよく夜泣きしたから、その度におんぶしてたね、、、」

「お前もくたびれちまって、俺もやってたものなあ~」

「そうだよぉ~。三吉はあたいらの背中を覚えていてくれるかね、、、?(ウッ...)」

お陽はたまらずに踞(うずくま)る。世の吉は手を引っ張って立たせる。

「馬鹿、しっかりしろッ!お種が起きちまうだろッ。いいかお陽、、、三吉はな、俺達には過ぎた子なんだよ。

本当に【神様】からの【授かりもの】なんだ。今まで俺達のそばに居てくれただけでも有難い嬉しい事なのよ」

わかってるよ!わかってる.....だけどあんたがお腹を痛めたわけじゃないから、そんな惨(むご)い事を言うのよ!」

「そりゃ違いないよ、俺が産んだ訳じゃねえ。だけど、こいつ程俺に似てるガキもいねえよ」

「当たり前だよ、あんたの子だもの」

「そうだろ?俺等の子よ!どんなに離れていても、二度と会えなくても、俺等の三吉よ!いつまでも、いつまでもな、、、、、それで良いじゃねえか」

「ふふ、なんか変な納得のさせ方だけど勘弁してやるよ」

「悪いねえ~、おかみさん!」

「ふふ。ねぇ、あんた~」

「なんだよ?」

「あたいにも三吉をおぶわさせて」

「そうだな」

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
saigonokaerimichi.jpg

お陽はお種を草むらに寝かせ、世の吉から三吉を離し、背負わずに抱く。三吉は無邪気な顔で気持ち良さそうに寝ている。世の吉が背負わせようとするとお陽は首を振る。

お陽の心を察してか、世の吉もお種を抱くと二人はそのまま歩き出す。

「三吉はもう病気にもならないって茂吉様がおっしゃってたな」

「嬉しいね、健康が一番だもの」

「だよ、健康が一番さ」

「三吉や、、、いい子にしてるんだよ...母ちゃんも父ちゃんも、三吉をいつもいつも思ってるからね、、、」

「お陽、三吉は寝ているんだから、そんなこと言ったって仕方ないだろ」

「いいんだよ、三吉の魂に言ってるんだ。可愛いいあたいの三吉・・・こんなに、、、こんなに、、、重くなっていたんだね...」

我慢しても我慢しても涙があふれてくる。世の吉も同じだった。




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第九章 親子 世の吉一家1

前回


三吉やお種を抱いて歩く、普通であったことが明日からは違う。スヤスヤと寝息を立てる幼いこの子が夢に向かって歩こうとしている。後押しするしかできない自分達。違う!後押しが出来るんだと言い聞かせる。涙は涸(か)らしとこう、一杯泣けばきっと涸れてくれるから。


はじまり、はじまり



辛く寂しい気持ちのまま家に着くと、卓袱台(ちゃぶだい)の上には冷めたお菜が悲しげにある。子猫達を畳の上に静かに降ろすとお陽は前掛けをする。

「あんた、ちょいと五斗さんのとこに行って、立派な鯛のお頭付きを買って来ておくれ!」

「あいよー!じゃ、ちょっくら行ってくるわ!」

「お銭はよ?」

「へそくりがあるよ」

「あら」

五斗吉には何と言ったのかわからないが、世の吉は急いで帰って来た。お陽はすでに炭を熾(おこ)していて、飯も味噌汁も作り直していた。

お陽は世の吉から鯛を受け取ると手早く下処理を済ませ、慣れた手つきで串打ちをする。魚の鰭(ひれ)に化粧塩、全体に振り塩をすると炭の上に渡して焼き出す。

「立派な鯛だね~ぇ」

「そうよ!五斗がくれたのよ」

「どうしてさ?」

「まっ、気にすんなよ」

世の吉にも手伝わせて、やっと全てが出来上がる。お菜は、鯛の塩焼き・ぬかみそ・炊き立てのご飯・大根の味噌汁。

「何だかつまんないねぇ」

「何でよ?」

「だって鯛だけだよ、特別なのは」

「そうだ!明日は門出だからお赤飯にしたらよ?」

「そうだね!だけど本当なら、鯛とお赤飯が一緒なのにさぁ~、あたいったら、、、」

「いいじゃねえか、気にすんなよ」

「そうだよね、美味しければいいやね」

「良いともさ」

三吉とお種が目を覚まし眠そうな目を擦っている。いい匂いで目覚めたのだろう。

「父ちゃん?あニャ?母ちゃんも・・・あれれ~?何でおいら家に居るんだぁ~?」

「あたいも・・・お紺おばちゃんのそばで寝てたのに」

「ふふ、いいからお手て洗って来な。遅いけど晩飯だよ」

「三吉もお種もそうしな」

「何か変なのぉぉ」

「あたい、ニャムニャム(ねむねむ)だよ」

世の吉は二人を連れて外に行く。裏庭にあるポンプを動かして水を出すと二人はもたもた面倒そうに手を洗う。

「ついでに顔も洗っとけ」

「やだよーぉ」

「いニャぁ~」

「しょうがねえなあ~、まっ、いっか」

「いいよ」

「ニャア~」

家からお陽の大声がする。

「いつまでやってんだよー!早くしないとまた冷めちまうよー!」

「ほら見ろ、おまえらグズグズしてると母ちゃんの角が出るぞー!」

「ニャーッ」

「ニャ~ぁ」

二人は楽しそう。ようやく家に入るといつものお膳には立派な鯛がでーんとある。


ニャ~~~!


歓声を上げて喜ぶ。

「ニャんで、鯛が食べれるの?」

お種が言うと三吉がすかさず答える。

「そりゃ、おいらの為だよね?」

「兄ちゃんのお誕生日じゃニャいのにぃ~?」

「馬鹿だね、誰の為でもないよ。ねえ、お前さん」

「そうさ、五斗の奴がくれたのよ」

「何でよ?」

「【産海瓶(うみがめ)】でたまたま釣れたんだってよ。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
umigame.jpg

『あんまりデカいから一人じゃ食いきれねえ』ってな、持って来てくれたのよ」

【産海瓶】と云うのは人間の頃、漁師をしていた五斗吉があまりに海を懐かしむので不憫(ふびん)になった五黄は【産海瓶】を五斗吉にくれた。菰傘(こもかさ)村から【産海(うみ)】は遠方なのである。

この畳一帖程の不思議な大瓶は中を覗くとその中には【産海】が広がっている。【産海】と云うのは人間界の海とは似て非なるものである。

古代の魚も怪魚も何もかもそのまま生存していて、そして産まれ続けているのである。普通の魚も泳いでいる。鰯(いわし)や鯵(あじ)、章魚(たこ)烏賊(いか)も。人間界の海と何ら変わらぬ魚達も沢山泳いでいる。

まるで底の抜けた瓶を海に浸けて覗いているようなのだ。五斗吉は五黄にこの瓶から魚を釣って商売するが良いと言われた。

そうして五斗吉は干物屋を始めたのだ。立派な魚が釣れるとそのままで売る事もある。いつも家の裏庭にあり、大きな蓋(ふた)をしているので、近所の者もそのような物があるとは知らない。

世の吉には見つかってしまったので、仕方なく五斗吉も教えたのである。世の吉一家の晩餐(ばんさん)は賑やかに終わった。

そして、三吉とお種を真ん中にして川の字で世の吉夫婦は床についた。子猫達はいつもは自分達だけで寝ていたので嬉しくて仕方ないらしく、はしゃいでいた。

「家族みんなで寝たら狭いねえ」

「三吉が大分大きくなったからだよ」

「そうさ、前はお前とお種は一つの布団で間に合ったからね」

「そうなの?」

「そうよ。今はお前達は大きくなったし、寝相が悪いから一つの布団じゃとても無理だからね」

「本当だ。朝になったら布団の周りで寝ているのだものね」

「やだなぁ~、おいらそんなに寝相が悪いの?それはきっとお種だよ」

「あたい寝相いいもぉ~ん!」

「二人共だよ。今日は蹴られないように気をつけないとね」

「全くだ。三吉の足癖といったらは並の悪さでないからな」

「ほニャ~、兄ちゃんの方が悪いんだぁ」

「お種もよ。兄妹揃ってひどいもの」

他愛のない家族の会話が進む。その内に子猫達はスニャスニャ眠り出す。世の吉とお陽は子猫の寝顔を見ながら幸せに浸ってた。こんな風に川の字で寝るのも今夜が最後と思うとやり切れなかった。

『猫可愛がり』という言葉がある程である。猫族の愛情は産海の様に尽きる事が無いのである。




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第九章 親子 世の吉一家2

前回


あっという間に晩ご飯が終わってしまった。もっと話をと思っていたが三吉はすでに夢の中。心地良さそうに寝息をたてている。


はじまり、はじまり


「ねぇ、お前さん」

「なんだい?」

「こう見ると、三吉もお種も大分大きくなっていたんだね、、、」

「本当だなあ、、、三吉の髭なんてこんなに長いのがあるよ」

「あら、本当だよ!この子は男前になるよ~」

「おいらに似てるものなあ」

「何、言ってるんだよッ、あたいの系統だよ!この色男振りはね」

「まっ、確かにそうかもな」

「そうだよ~、見なね。おメメも大きいし、柄も綺麗な薄緑だよ。この肉球の綺麗な色を見てみなね、ツヤツヤしてるよ~」

「ふふ。お種も綺麗な子だし、楽しみだなあ」

「あぁ、そうよさぁ~。お種の亭主になる奴はあたいがしっかりと選ぶんだ。あたいみたいな苦労はさせたくないからねぇ~」

この言葉に世の吉はピッと切れた。


「このあまぁーッ!何を言いやがるッ!


何さ!本当の事だろがッ!ちょいと、あんたッ!子供が起きちまうだろッ。文句があるんなら外に出なよ、相手になってるッ!」

「何をたごとつきやがるッ!悔しいが今晩は特別に勘弁してやるッ!」

「あぁーら、そうですか!ふんだッ

この夫婦は仲良くし続けると云うのは無理のようである。お陽は世の吉に『あっかんべー』と舌を出すと布団を被って寝てしまった。世の吉も喧嘩相手が寝てしまったので、つまらなそうに行灯の火を消し寝てし まった。

お陽は朝も早い内から起き出すと大きな溜め息をついた。(ふぅーぅ)

「あ~ぁ、悲しいねぇ、、、目が覚めちまったよ。ずっと今日が来なきゃ良かったのに・・・でも、そんなこと有る訳ない、、、あーーッ、あたいらしくもない!そうよッ!

グズグズ思っているのはあたいの性に合わないもんね!三吉にとびっきりの朝飯を食べ させてあげよう!」

お陽は昨晩に洗って笊(ざる)に上げておいた餅米とうるち米、とろとろと弱火で煮たささげを蒸篭(せいろ)に入れ、茹だった釜の上に置く。強火で一気に蒸し上げるのだ。鉄鍋を良く焼き、煙が出ると一旦、火口(ほくち)から離す。今度は鍋に油を注ぐ。

そこに極々、細く千切りした牛蒡(ごぼう)と人参と生姜を入れて炒め始める。お陽は舌に絡(から)み付くように細い金平が大好きである。砂糖・醤油・出汁を入れてしばらく炒り煮すると金平が出来上がった。

お陽は赤飯を炊く時は必ず金平を作る。実家の真似である。『お種も嫁に行ったらこうするのかな、、、』と少し考えた。昨日の鯛のアラで味噌汁を作り、小口切りした葱(ねぎ)を散らして出来上がり。

蒸篭から勢いよく湯気が上がってる。蓋をずらすと、ささげの煮汁をまき、蓋をする。その間にぬかみそを出す。頃合いを見計らって蒸篭を釜から外した。ようやくお赤飯が蒸し上がった。いい匂いにつられて家族が起きて来る。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
lastmorning.jpg

「おはよう!早いとこ顔を洗ってお出で」

「ああ」

「わぁ~、いい匂いだぁー。」

「お腹空いたね~」

「今日は赤まんまだよ。美味しいよー、早く顔洗いな」

「わぁーい!」

子猫達は足早に井戸に行く。その後をのそのそ世の吉がついて行く。今朝は世の吉も神妙にしている。文句を言う元気も無いようだ。そんな事は知らぬ子猫達は仲良く井戸で顔を洗っている。

この日が三吉と過ごす最後の朝餉(あさげ)世の吉もお陽も胸が一杯になってしまって中々喉に通らない。それでも努めて顔に出さないようにいつも通りに振る舞った。自分達がメソメソしていれば、負けん気の強い三吉でも後ろ髪が引かれるだろう。

世の吉夫婦は、三吉の性格が手に取るようにわかっていた。いつも通りにする事が、この子への自分達が出来る精一杯の《はなむけ》だと夫婦は考えた。

「ねえ、母ちゃ~ん、おいらが【恵み子】だったらどうする?」

「ったく、又言ってるよー。【恵み子】様なら学校に行かなきゃいけないだろう?」

「そうだよ、おいら学校に行くんだよ」

「はいはい、どうぞ行って下さいな」

「いいの?行っても・・・いいの?だって行ったらそのままで、もうお家には帰れないんだよ?」

「そうかい。じゃ、それだけ大変なお勉強するんだろうよ」

「だけど、、、おいら母ちゃんが『行くな!』って言えば止めとくよ」

お陽は『そうしておくれー!』と言いたいのをぐっと堪(こら)えた。

「何言ってんだい!小さくても男猫がこうと決めた道を母ちゃんの気持ち次第でコロコロ変えるようじゃ、三吉は【恵み子】じゃないね、やっぱりだ!」

「本当だ!とてもじゃないがそんな【恵み子】様はいやしないな」

「えー、だってぇ・・・おいらが居なくなってもいいの?」

「良い訳ないだろ!だけど将来、立派なお仕事をするってわかっているから我慢してやるんだよッ!ねえ、お 前さん!」

「そうさ!だから三吉はあっちに行ったら、頑張って人一倍お勉強して、早くお役人様になって、この世のお役に立つようになるんだよ」

「ねぇねぇ~、なぁにぃ?【恵み子】様って」

「お種・・・」

お陽は自分の心とお種に言い聞かせるように話した。

「いいかい、お種。兄ちゃんはね、今日から遠いい所に行くんだよ。お種も寂しいだろうけど、それは父ちゃんも母ちゃんも同じだ。だけど、兄ちゃんの方がもっと寂しくて大変なんだよ」


「ニャんでぇぇー?


「兄ちゃんは立派なお役人様になる為に、大変なお勉強をするようになるんだよ。お家から学校は遠いいから通う事は出来ないの。だからこうして兄ちゃんと一緒に居られるのは今日だけなんだよ、、、」

お陽は溢(あふ)れる思いを抑え、つまる言葉に苦労しながら話した。


そんニャの嫌ーーっ!!いニャだぁぁーー!いニャいニャぁーーッ!


大きな声でべそをかく。

「お種、泣かないで。一緒に赤まんま食べて、兄ちゃんの門出を祝ってあげようね」

三吉は黙っていた。昨日の尾頭付きの鯛も、今朝の赤まんまも、全て親の心づくしだった事を理解した。三吉は自分が【恵み子】だと言っても、ちっとも相手にしてくれない親に腹を立てていたが、それが全くの勘違いだとわかった。

自分の里心が疼(うず)き、このまま家に居ようと一瞬思った。だが、やはり三吉は【恵み子】この世に使命を持って産まれた子だった。己の生き方は産まれた時から決まっていた。今は悲しいが親もわかってくれている。

「父ちゃん、母ちゃん、ありがとう、、、。おいら頑張るよ。お種、兄ちゃんが居なくなっても死んじゃう訳じゃないよ。こっからは遠いいけど、お勉強してるだけだよ。会えないのは悲しいけどお種も兄ちゃんを笑って送っておくれよ」

三吉がとても大人びた事を言うので、改めて驚いたが、これが【恵み子】なのであろうと理解をする。家族は無理にいつもの朝のようにした。

「さっ、もっとお食べ」

「うん、おいら沢山食べるよ」

「そうしな。金平だってお赤飯だって沢山あるんだからね」

黙ってぽろぽろ大粒の涙を流し泣きながら食べていたお種は、食べ終わると外に駈けて行ってしまった。





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第九章 親子 恵み子1


前回


お種は突然、三吉と一緒に食べるのが今日で最後と言われる。信じられなかった。当の三吉も否定しない。お種はどうしたらいいのかわからずに外に駈けて行ってしまう。



はじまり、はじまり



お種ーーッ!お種・・・」

「放っておきなよ、、、お種も辛いんだよ...」

「三吉。父ちゃんや母ちゃん、お種の事も心配しなくていいんだよ。お前は思う存分お勉強したらいい!」

「うん!おいら、なんか張り切っちゃうよ。」

「それは良い事だよ。まっ、程々にな」

何言ってんだいッ!程々なら程々にしかならないんだよ。やる時は死ぬ程頑張らなきゃ」

「そうするよ」

「そんな事言ったって、お陽、三吉はまだ子猫なんだし、、、」

「子猫だけど【恵み子】様なんだ!あたいらとは訳が違うんだよッ」

「そりゃそうだろうが、、、」

他愛のない夫婦喧嘩を見ていた三吉はこんなことも、もうないのだと思っていた。『こんな風にささいな事の方が思い出すんだろうな・・・』と冷静に考える。

その時だった。裏木戸を勢いよく開けて島吉と小吉が泣きながらお種と一緒に入って来ると三吉に抱きついた!話を聞いたらしく顔が涙でビショビショにぬれている。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります

iyadaer.jpg

兄ちゃぁーんッ!

ニャーん!

「兄ちゃん!お種のそばに居てよぉぉー!!

三吉は優しく子猫達をあやしている。夫婦がボーっとして見ていると子猫達の親も驚いて駆けつけて来た。子猫達と三吉の様子に目頭を熱くする。

「世の吉さん!お陽さん!あっしらは三吉にどれほど子猫達の面倒を見てもらったか知れないよぉ、、、」

豆腐屋の太吉がしみじみ言うと、周りにいつのまにか集まっていた村の者達が頷(うなづ)く。

「本当だよね!あの子が大将になって子猫達と遊んでくれていたから、あたいら商売するのに、心配も気兼ねもしなくて楽させてもらってたよーッ」

「三吉は何でも良く教えてくれたから、あたいのとこの島吉は平仮名が読めるもの」

其れぞれの親達は感謝の言葉を言う。世の吉もお陽も嬉しかった。そう言えば、自分達もお種の世話を三吉に任せっきりで何の心配もなかった。

村の者達が来ているのを知らない三吉は、島吉達に言い聞かせていた。

「島吉、おいらが居なくなったらお前が大将だ!いいかわかったか?」

「えーっ、おいらが?」

「そうだ。小吉は副将だぞ!」

「えぇー!それじゃ、あたいは?」

「お種は参謀だ!」

「ニャにそれ?」

「うーん、例えば、、、『今日は石蹴(け)りをする』とか、大将に進言するんだ」

「ふぅーん」

「で、それを島吉が決めるのよ!」

「おいら偉いの?」

「そうさ!一番偉いけどそのかわりに責任も重大なんだ。皆を泣かせたり、置いてけぼりもしちゃいけない。お加奈なんか小ちゃいから良く面倒見ないとね」

「大変そうだね~」

「そうだよ、止めとくか?」

「止めないよ!おいら兄ちゃんみたく大将になる!」

「よぉーし!そしたらメソメソしてたら大将じゃないぞ。お前達も副将に参謀なんだからな!わかったあ~?」


ニャーい!わかったぁ~!


可愛いものである。子猫達はころっと三吉に丸め込まれてしまう。三吉達はお加奈を迎えに外に飛び出して行った。親猫達も黙って見ていた。

「いいのかい?お陽ちゃん、、、」

「いいんだよ。あーしてるのが三吉にとって一番なんだもの。学校に行ったら、大将ごっこなんて出来やしないもの」

「そうだね。だけど三ちゃんが【恵み子】様だったなんてね、、、」

「へへ。俺様に似てるんだよ~!」

「ホント、似てなくて良かったよ」


な、なんだとーッ!


当たり前のように世の吉が夫婦喧嘩を始めるので村人達は笑い合った。いつものように三吉達は五斗吉の店に寄ると飴玉(あめだま)を貰う。

「おじちゃん!」

五斗吉は三吉が今日旅立つ事は知らない。

「何だい?三吉」

「おじちゃん!おいら、お紺おばちゃんに言っておいたよ」

三吉の言葉に明らかに動揺した五斗吉は茶色い顔を紅くする。

「へっ?なっ、何だいッ??」

「へへ、おばちゃんも満更でないようだったよ」

ひぃーーッ!三吉ッ!ほっ、本当かい!?」

「本当だよ!まっ、おいらの置き土産かな。おじちゃんには色々と世話になったしね」

「えっ?何、どういうことよ?」

「まっ、いいさ~ぁ。五斗のおじちゃん、今まで有り難うね。それから、こいつらの事をこれからも頼むね(ペコリ)」

「へっ?何、言ってるのさー。此(こ)れっきりみたいだよ」

「此れっきりなんだもの、仕方ないさ」

三吉は子猫達と駈けて行ってしまった。五斗吉は訳も分からずにいたが、三吉達が行ってしまうと世の吉夫婦や村の者達が歩いて来た。やはり三吉達が気になるのだろう、ザワザワしながらやって来る。

「兄いー!どうしたんですか?」

五斗吉は世の吉から説明されて、三吉の言ってた事に納得した。その頃、茂吉と藤平は三吉を迎えに歩いていた。お紺とお加奈親子も一緒に付いて来た。

「ああ、寂しいねえ、、、」

「どうしたのですか?」

「だって茂吉、お加奈はお紺と暮らすようになるから、これから私はお加奈の寝顔を毎日見てから寝てたのも出来なくなるもの」

「あら藤平様。あたしはまだお屋敷に泊まらせて頂きますよ」

「今はいいけど、いずれはお紺は菰傘に家を持つのだもの。寂しいよ。屋敷から村まで毎日通う訳いかないもの」

「父様は仕様がありませんね。あっ、そうだ!こんなのはどうですか?」

「なんだい?」

「お紺さん、あなたにも聞いて欲しいのです」

お紺も頷(うなづ)く。

「思うのですが菰傘(こもかさ)村まで来れない親も沢山居るのではないかとね。お紺さん、心ない言葉のように聞こえるだろうけど、申し訳ないがそう思いませんか?」

「えっ?いいえ、とんでもありません。あたしの事はお気になさらないで下さい。あのぉ、、、茂吉様いいですか?」

「どうぞどうぞ」

「こんな事言うのは口幅ったくて申し訳ないのですけど、あたしも菰傘のお屋敷の事を聞けたのは偶々(たまたま)なんです。知らなければそのままでした。

知らない者も多いいと思います。『もっと早く知っていれば、、、』と、思う親も居たと思います。」

「やはりね、父様」

「何だい?」

「父様の気晴らしにもなります」

「だから何だい?」

「はい、どうでしょう?子供を預かる場所をそこかしこにお造りになったらいかがでしょうか。気心知れた者を其処(そこ)に置いて、子供を預かれば父様が引き取りに行くのです。

ちょっとした旅にもなりますよ。あたしの学校のそばにも造れば良いし、そしたらその度に会いに来て頂けますし」

おおー!なんとまあ良い事を聞いた。それは良い事だよ。今まで屋敷で待つしか能がなかったよ。本当にそうしよう。お前の学校のそばにも、そして村々に一軒づつ造ろうかね」

「ふふ、それは造り過ぎですけど。父様のお好きにしたらいいですね」

「それなら、そんな親も安心できますね。烏滸(おこ)がましいですけど、あたしからも是非にお頼み申し上げます」

お紺は丁寧に藤平と茂吉に頭を下げる。




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第九章 親子 恵み子2

前回

三吉は子猫達に役割を伝えた、一方茂吉は藤平に提案をする。


はじまり、はじまり



お加奈はそんな親をつぶらな瞳で見ている。その時、橋の向こうから三吉達が『ニャアニャア』騒ぎながら駈けて来る。

お加奈は三吉達に気が付くと『ニャぁ~ぁ!』と嬉しそうに声をあげ、一目散に駈けて行く。お加奈は三吉達が大~好きだ。

いつも遊んでくれるから、寂しいのは屋敷で寝る時だけだった。でも、これからは母ちゃんが一緒に居てくれから寝る時も寂しくないと思うと尚更嬉しかった。

三吉達と合流するとお加奈は自分の役目を聞かされた。足軽だそうだ。意味はさっぱりわからなかったが、三吉達と一緒に居られれば何でも良かった。

『ニャぁ~♪ニャぁ~♪』と子猫達が楽しそうに騒いでいると茂吉達がやって来た。茂吉は三吉に声を掛ける。

「三吉、今日にしますか?もし迷っているのなら、いつでもいいのですよ」

「茂吉おじちゃん、大丈夫だよ。こいつらにも言い聞かせたし、父ちゃんと母ちゃんにもお別れを言ったもの」

三人は潔い三吉の言葉に驚く。

「本当にいいのですか?無理して我慢しなくていいのですよ。いくらでも待ちますよ」

「駄目だよ、そんな事言っちゃ~。おいらの決意が鈍るぜぇ」

「?・・・」

いつも通りの三吉に大人達は言葉もない。そうこうするうちに、世の吉夫婦や五斗吉、村の者達もやって来た。大騒ぎになっている。藤平の姿を見つけると村の者達は慌てて平伏(ひれふ)す。

へ、へぇ~~ぃ

しかし、藤平のそばに居る藤色の長毛のふかふか猫が気になるようだ。

ちろッ・ちろッ

年嵩(としかさ)の梅吉爺が勇気を出して藤平に尋ねた。

「おお、そうであったな。お前達、そんな事はお止め。まずは立ちなさい。お前達は初めてだろう。紹介するよ、ここが猫は【理(ことわり)知る茂吉】だよ」

【茂吉】の名前を聞いて村の者達は二度びっくりした!伝説の存在の【茂吉】が目の前に居るのである!驚いて目を剥(む)く者も居れば、『へへーーいッ!』と又、平伏す者も居る。困ったようにして茂吉が口を開く。

「困りましたね、あたしも元はこの村の住人ですよ。そんなことはなさらないで下さいな。あたしは好きではありません」

「ほら、茂吉はそんなことは嫌いだよ。皆、立ちなさい」

「そうして下さい。そうしなければ皆さんのお顔も見れませんものね」

「あの・・・茂吉様は、こちらにお出でになるのは久しぶりじゃないですか?」

「ええ、そうですね。ざっと千年振りですかね」


「ひゃー!?」


「ニ"ャー!?」



驚嘆の声しきりである。村の者達は目の前に居る藤平や茂吉が、自分達とは全く違い、神のような存在である事を改めて感じずにはいられなかった。

「少しばかり里帰りに手間取りましたが、皆さんにお会いする事が出来て嬉しいです」

「そんなあーッ、あっしらも光栄ですーッ!!」

「さて。世の吉さん、お陽さん、本当に今日で良いのですか?」

覚悟を決めた二人は黙って頷(うなず)くとその場に平伏した。

「茂吉様!どうか、どうか三吉の事を宜しく、宜しくお願いしますッ!」

見ていた周りの者も世の吉夫婦と同じにする。村の者達にとっても三吉は大事な村の宝なのだ。あちこちで啜(すす)り泣く者もいたが、お陽が堪(こら)えているので、周りの者が泣くのを止めさせる。茂吉は二人の顔を上げさせ、優しく微笑むと言った。

「はい、確かにお預かりいたします。愛情を込めて大切に大切に、、、。大事に教育していきます。
ですから、どうかご安心なさってください」

「あ、有り難うございますっ.....」

そう言ったきり夫婦は言葉が出ない。言いたい事が有り過ぎて言葉が喉に詰まって言葉が出て来ないのだ。そんな夫婦の気持ちが茂吉も藤平も、そして周りの者も痛い程わかった。わかるだけに黙っていた。

橋の袂で『ニャー、ニャー』無邪気に遊んでいる子猫達の姿が目につくと、世の吉が感極まって泣き出した。お陽も我慢出来なかった。周りの大人猫も泣き出す。

大人連中が『ニャッ、、、ニャッーあぁあぁー、ニャぁーーッ』と大声で泣き騒いでいるので、子猫達が気付いて急いでこちらに駈けって来る。茂吉も藤平も、皆が泣き止むのを黙って辛抱強く待った。

三吉達の心配そうな顔を見て世の吉は、『ハッ!』とする。ここで泣いてはいけないのだ。『三吉を笑顔で見送ってやるのだ!』と、自分に言い聞かせる。

「父ちゃぁ~ん、、、大丈夫?」

「何言ってんだッ、大丈夫に決まってんだろがー!急に砂嵐が来たから皆、目にゴミが入っちまったんだよ。なっ、みんなそうだよなッ?なッ?なッ!」

世の吉はお陽や他の者の顔を見回す。泣いていたお陽も村の者も大きく頷く。

「そ、そうなんだよねッ、お前さん!みんな!本当にイヤな砂嵐だよね~、全くねぇ~」

三吉は怪訝(けげん)な顔をしたが離れがたい親のそばに来た。そばに来ると『ぺこり』とお辞儀をした。

「父ちゃん、母ちゃん。それにおじちゃんやおばちゃん達。おいら、茂吉おじちゃんに学校に連れていってもらう事になったんだ。一生懸命にお勉強して偉いお役人様になるから、期待しててよ」

三吉の飄々(ひょうひょう)とした口振りに重い空気も和んで、村の者達からも声が掛かる。


「三吉~、期待してるよーぉ!」


「三ちゃん、頑張るんだよ~」


「へへ、任せておいてよ」

頭をポリポリ照れくさそうに掻(か)く姿は、どうして中々、様になっている。

「それでは三吉、参りましょうか?」

「はい、お願いします」


「兄ちゃん!」

「ニャぁニャ~ン」


「にいちゃーんッ」


「ニャニャー!」


三吉は子猫達一人、一人を強く抱きしめる。三吉と同じくらいに大きな島吉は半べそである。

「泣くなよ!いいか?おいらだって辛いのよ。だけどこれが男の生きる道さ」

笑ってはいけないのだが、大人猫達は三吉が可笑しな口をきくので、笑ってしまう。そんな様子を見ていた茂吉は、空に向かって呪文を唱え、手を振る。

棚(たな)引く雲が、見る間に白いフカフカの階段になる。見た事もない不思議な光景に、村の者達は驚いて声も出ない。

「それでは父様、これにて失礼します。又、お邪魔させて頂きます」

「おうおう。私もその内、会いに行くよ。三吉や、、、茂吉の言う事を良く聞いて、いい子にな」

「はい、藤平おじちゃん!父ちゃんと母ちゃんとお種達の事宜しくね」

「はいはい、わかりましたよ。安心なさい」

「父ちゃん、母ちゃん、お種、島吉、小吉、お加奈、じゃあね~!」

「三吉よ、三吉!頑張ってな!茂吉様の言う事を良ぉーく聞くんだよ!いいなッ?いいなッ?わかったな!」

「好き嫌い言わないで何でも食べるんだよ。体に気をつけるんだよ。」

「うん、わかったよ~」

茂吉は三吉に手を差し伸べた。三吉はしっかりと茂吉の手を掴(つか)む。とうとう三吉が旅立ってしまうのだとわかると、子猫達はただもう、がむしゃらに三吉に縋(すが)り付く。

挿絵参照↓↓↓  絵をクリックすると大きくなります
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そんな子猫達を其れぞれの親達がやっと引き離す。泣き叫ぶ子猫達は、親にしっかりと抱かれてしまって身動きも取れなかった。目で三吉の姿を追うのが精一杯だった。

茂吉と三吉は雲の階段に乗ると、そのまま『スーっ』と体が上がっていく。三吉は振り返ると、大きく体を揺らしながら、力の限り一所懸命に手を振っている。

二度と会えない皆の幸せに祈りを込め・・・そして今迄の感謝の気持ちを込めて・・・三吉の顔は一点の曇りもなく輝いていた。

涙で霞(かす)みながら、皆一様に三吉の姿をしっかり目に焼き付ける、大きく手を振って旅立ちを見送った。

こうして三吉は【恵み子】の道を歩き始めたのだった。



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